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フクロウの囁き - (2019/04/22 (月) 12:06:08) の1つ前との変更点

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*フクロウの囁き #amazon(right,4799324535) 題名:フクロウの囁き <オスロ警察殺人捜査課特別班> 原題:Uglen (2015) 著者:サムエル・ビョルク Samuel Bjork 訳者:中谷友妃子訳 発行:ディスカヴァー文庫 2019.3.30 初版 価格:¥1,500  コミックや劇画ばりの面白さ。でも、あまり面白すぎるストーリーは、かえって逆効果を招くことがある。偶然性に頼り過ぎることで、必然性が薄くなることだってある。面白くしようと工夫を凝らせば凝らすほど、実は物語はあり得ない方向へ向かい、可能性の薄い道筋を辿り始め、やがて真実味や現実性から逃げてゆく。  面白さと、作品の現実的重さとは、互いに牽制し合うものだと思う。そのバランスを危ういところで取りながら、サムエル・ビョルクは、シリーズを進めてゆかねばならない。面白くなくては読まれない。面白過ぎると現実味が薄れるので、これまた与太話扱いされ読まれない。しかし今のところ、本書はオランダの書評サイトで最優秀スリラー賞受賞や自国ノルウェイ国内でも書店対象ノミネートなど、社会的評価を受けている。際どいところで踏みとどまりつつ、なおかつ面白いという分岐点でバランスを取っているのだ。  本書は前作で派手な花火を打ち上げた警察シリーズ第二弾。前作を継承して、奇妙な死体を用意したセンセーショナルな殺人事件。前作よりも数歩踏み込んできた感のある刑事たちそれぞれに課せられた現時点のサブストーリー。新人が入隊し、レギュラーが去ってゆく気配を見せたり、シリーズならではのロングスパンでの物語の方もおそろかにせず、またもや凝りに凝ったプロットと、独特のハイ・テンポ感で、前作を凌ぐタイトさを見せつつ事件は疾走し、個性的なキャラクター群像も見せてくる。  思わせぶりな人物や、奇妙な自白など、ミスリードの仕掛けが多く、生真面目な読者にはこの辺りはまた批判の礫にさらされそうだ。同時に伏線も多く用意され、謎解きの魅力や、自殺願望の癒えないヒロイン、ミアのスリリングな日常生活に変化球が投げられつつあるのを感じる。  そして前作で孫娘が狙われたムンクは、またも家族の一員を試練に巻き込む運命に翻弄されるが、チーム力で救い合うストーリーの流れはいささかも緩まず、誰もが独りで生きているのではない、誰もが誰かに救済され、そして救済し続けている、という社会のポイントを抑えているゆえに、陰惨な事件や病的な憎悪に対比される友情や家族愛もまたフューチャーされるのだ。  本書は、気になるラストシーンで締め括られる。次作への助走路が用意され、シリーズとしての期待感も抱かさせる。意味深なエンディングだ。 (2019.04.22)
*フクロウの囁き #amazon(right,4799324535) 題名:フクロウの囁き <オスロ警察殺人捜査課特別班> 原題:Uglen (2015) 著者:サムエル・ビョルク Samuel Bjork 訳者:中谷友妃子訳 発行:ディスカヴァー文庫 2019.3.30 初版 価格:¥1,500  コミックや劇画ばりの面白さ。でも、あまり面白すぎるストーリーは、かえって逆効果を招くことがある。偶然性に頼り過ぎることで、必然性が薄くなることだってある。面白くしようと工夫を凝らせば凝らすほど、実は物語はあり得ない方向へ向かい、可能性の薄い道筋を辿り始め、やがて真実味や現実性から逃げてゆく。  面白さと、作品の現実的重さとは、互いに牽制し合うものだと思う。そのバランスを危ういところで取りながら、サムエル・ビョルクは、シリーズを進めてゆかねばならない。面白くなくては読まれない。面白過ぎると現実味が薄れるので、これまた与太話扱いされ読まれない。しかし今のところ、本書はオランダの書評サイトで最優秀スリラー賞受賞や自国ノルウェイ国内でも書店対象ノミネートなど、社会的評価を受けている。際どいところで踏みとどまりつつ、なおかつ面白いという分岐点でバランスを取っているのだ。  本書は前作で派手な花火を打ち上げた警察シリーズ第二弾。前作を継承して、奇妙な死体を用意したセンセーショナルな殺人事件。前作よりも数歩踏み込んできた感のある刑事たちそれぞれに課せられた現時点のサブストーリー。新人が入隊し、レギュラーが去ってゆく気配を見せたり、シリーズならではのロングスパンでの物語の方もおそろかにせず、またもや凝りに凝ったプロットと、独特のハイ・テンポ感で、前作を凌ぐタイトさを見せつつ事件は疾走し、個性的なキャラクター群像も見せてくる。  思わせぶりな人物や、奇妙な自白など、ミスリードの仕掛けが多く、生真面目な読者にはこの辺りはまた批判の礫にさらされそうだ。同時に伏線も多く用意され、謎解きの魅力や、自殺願望の癒えないヒロイン、ミアのスリリングな日常生活に変化球が投げられつつあるのを感じる。  そして前作で孫娘が狙われたムンクは、またも家族の一員を試練に巻き込む運命に翻弄されるが、チーム力で救い合うストーリーの流れはいささかも緩まず、誰もが独りで生きているのではない、誰もが誰かに救済され、そして救済し続けている、という社会のポイントを抑えているゆえに、陰惨な事件や病的な憎悪に対比される友情や家族愛もまたフューチャーされるのだ。  本書は、気になるラストシーンで締め括られる。次作への助走路が用意され、シリーズとしての期待感も抱かさせる。意味深なエンディングだ。 (2019.04.22)

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