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*顔 FACE #amazon(4198922330,left,image) #amazon(4198615861,image) 題名:顔 FACE 作者:横山秀夫 発行:徳間書店 2002.10.31 初版 価格:\1,600  すっかりブームに乗り遅れて、今ごろやっと横山秀夫も三作目になるのだが、今度は連続ドラマになった『顔』にも乗り遅れてしまったらしく、読み終わったときには最終回が終わったあとだったみたいだ。もっともドラマのオフィシャル・サイトを見る限りでは、ストーリーは原作とは全然関係がないもののようだけれど。  これまで読んだ『半落ち』『第三の時効』は、あまり多くを語らない短文連発のハードボイルドな警察機構小説といった冷たさと、男の職場というなんかむさ苦しいまでの無骨さみたいなものが感じられたけれども、本書は婦警に憧れ婦警になった女性警官の姿を通して、警察という男尊傾向の強い職場における女性の立場の復権みたいな部分にかなりアクセントを置いて書いている。  あれほど男の物語を描いている横山秀夫という作家が、これほど女性の感性を捉えて書くというスタイルを見て、思わずロバート・B・パーカーのサニー・ランドル・シリーズが浮かんできてしまった。日頃、男らしさを描くことの多い作家は、やはり常にその対岸にある女らしさをも意識しているのだなあ、と思うのだった。つまり職場や社会における性差の壁ということを意識しているのだと。  横山秀夫の『半落ち』が著者初の長編小説というくらいだから、この作家は基本的には短編作家なのかもしれない。長編もそう長い作品ではないところをみると、この切れ切れの短文文体では長い作品には向かないかな、と思えるところもある。そう、女性の物語を書いていても、文体そのものはまことに男らしいのだ。堅苦しいと言ってもいいほどに。  事件の材料として、あるいは職場の根っこにあるものとして、人間同志の葛藤をこの作家はよく描くみたいなのだけれど、主人公の内面に踏み込むのはあまり得意ではないのかなと思えるところがある。社会的な正義感やモラルに関しては描いても、主人公が恋に苦しんだり、欲望に悶えたりすることはほとんどないみたいだ。  この連作短編集のヒロインである女性似顔絵捜査官も、結局のところ職業モラルであるとか、フェミニズムであるとか、職場でのスタンスとかそうしたことでしか悩んではいない。それが警察官なのだと言われれば、それまでなのだが。横山秀夫がそうしたきわめて限定的な小説作りをしてゆく以上、読者もそうしたエンターテインメント形式なのだと割り切ってつきあってゆく方が懸命なのかもしれない。ぼく自身、三作目にしてこの作家の小説作法にようやく慣れてきたところなのである。 (2003.06.26)
*顔 FACE #amazon(4198922330,left,image) #amazon(4198615861,image) 題名:顔 FACE 作者:横山秀夫 発行:徳間書店 2002.10.31 初版 価格:\1,600  すっかりブームに乗り遅れて、今ごろやっと横山秀夫も三作目になるのだが、今度は連続ドラマになった『顔』にも乗り遅れてしまったらしく、読み終わったときには最終回が終わったあとだったみたいだ。もっともドラマのオフィシャル・サイトを見る限りでは、ストーリーは原作とは全然関係がないもののようだけれど。  これまで読んだ『半落ち』『第三の時効』は、あまり多くを語らない短文連発のハードボイルドな警察機構小説といった冷たさと、男の職場というなんかむさ苦しいまでの無骨さみたいなものが感じられたけれども、本書は婦警に憧れ婦警になった女性警官の姿を通して、警察という男尊傾向の強い職場における女性の立場の復権みたいな部分にかなりアクセントを置いて書いている。  あれほど男の物語を描いている横山秀夫という作家が、これほど女性の感性を捉えて書くというスタイルを見て、思わずロバート・B・パーカーのサニー・ランドル・シリーズが浮かんできてしまった。日頃、男らしさを描くことの多い作家は、やはり常にその対岸にある女らしさをも意識しているのだなあ、と思うのだった。つまり職場や社会における性差の壁ということを意識しているのだと。  横山秀夫の『半落ち』が著者初の長編小説というくらいだから、この作家は基本的には短編作家なのかもしれない。長編もそう長い作品ではないところをみると、この切れ切れの短文文体では長い作品には向かないかな、と思えるところもある。そう、女性の物語を書いていても、文体そのものはまことに男らしいのだ。堅苦しいと言ってもいいほどに。  事件の材料として、あるいは職場の根っこにあるものとして、人間同志の葛藤をこの作家はよく描くみたいなのだけれど、主人公の内面に踏み込むのはあまり得意ではないのかなと思えるところがある。社会的な正義感やモラルに関しては描いても、主人公が恋に苦しんだり、欲望に悶えたりすることはほとんどないみたいだ。  この連作短編集のヒロインである女性似顔絵捜査官も、結局のところ職業モラルであるとか、フェミニズムであるとか、職場でのスタンスとかそうしたことでしか悩んではいない。それが警察官なのだと言われれば、それまでなのだが。横山秀夫がそうしたきわめて限定的な小説作りをしてゆく以上、読者もそうしたエンターテインメント形式なのだと割り切ってつきあってゆく方が懸命なのかもしれない。ぼく自身、三作目にしてこの作家の小説作法にようやく慣れてきたところなのである。 (2003.06.26)

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