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逆襲 - (2006/12/17 (日) 22:46:03) の最新版との変更点

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*逆襲 題名:逆襲 作者:東 直己 発行:光文社文庫 2001.6.20 初版 価格:\619  文庫オリジナルのノン・シリーズ短編集。東直己と言えば、思えばシリーズものしかすぐには頭に浮かばないわけで、少なくとも長編では『沈黙の橋』一作以外すべてシリーズ内作品ということになる。『フリージア』は出版当初はシリーズにない作品だったとは思うけれども、実際にはススキノ探偵シリーズと合体させてしまうことにより、それはそれで榊原のシリーズとなった。あれはもうこれ以上続くことはないだろうけれども。  本書は、1994年の『安売り王を狙え』以外の7作に関しては1997年から1999年と、つまり探偵シリーズに一段落を置いた時期に書かれていることが興味深い。ほとんど畝原シリーズの立ち上げに全力投球していたものと思われるが、その合間に、まるでローレンス・ブロックみたいに肩の力を抜いた形の、どちらかと言えば軽く楽しい部類の短篇をこうして書いていたというのは、仕事という意味では息抜き的な部分として気持ちがわかる。  だからこの本自体は、東直己という作者の出版物としては極めて珍しいくらいにリラックスしたイージー・リーディングの部類の短編集である。『探偵くるみの事件簿』の方がまだしも集中力があるように思える。  何年間の間に、あまり短篇を書かない作家があちこちにたまに書いた短篇を、光文社が一冊でも多く本を出したくて無理やり纏めた本という印象のせいか、あまり普通の売れっ子作家が出すほど、あるテーマで括られた作品の束というイメージはない。本当にただ雑然と集めてしまった短篇の束。  だから作品のベクトルが多様過ぎて、ある作品はリラックスし過ぎ、ある作品は生真面目でと、しかもお馴染みのキャラは全然出て来ないものだから、ある意味東直己を読んでいる気がしない。  もう一つその理由は北海道を舞台にしているようには思えない作品。つまりこの作者にしてはなかなか思い当たらないくらいに脱北海道している短篇集なのである。小樽とはっきり北海道地名の作品もあるにはあるけれど、薪谷市であるとか渋多喜村であるとか本州らしい土地での物語には少し驚かされた。東直己にはこんな支流があるんだというくらいの軽い気持ちで手に取ると良いような、実はかなり珍しい一冊である。東ファンでない人が読んだら、何だこれ? と思うかもしれないけれども。 (2002.11.17)
*逆襲 #amazon(4334731600,text) (↑アマゾンで購入) 題名:逆襲 作者:東 直己 発行:光文社文庫 2001.6.20 初版 価格:\619  文庫オリジナルのノン・シリーズ短編集。東直己と言えば、思えばシリーズものしかすぐには頭に浮かばないわけで、少なくとも長編では[[『沈黙の橋』>http://www21.atwiki.jp/fadv/pages/205.html]]一作以外すべてシリーズ内作品ということになる。[[『フリージア』>http://www21.atwiki.jp/fadv/pages/101.html]]は出版当初はシリーズにない作品だったとは思うけれども、実際にはススキノ探偵シリーズと合体させてしまうことにより、それはそれで榊原のシリーズとなった。あれはもうこれ以上続くことはないだろうけれども。  本書は、1994年の『安売り王を狙え』以外の7作に関しては1997年から1999年と、つまり探偵シリーズに一段落を置いた時期に書かれていることが興味深い。ほとんど畝原シリーズの立ち上げに全力投球していたものと思われるが、その合間に、まるで[[ローレンス・ブロック>http://www21.atwiki.jp/fadv/pages/159.html]]みたいに肩の力を抜いた形の、どちらかと言えば軽く楽しい部類の短篇をこうして書いていたというのは、仕事という意味では息抜き的な部分として気持ちがわかる。  だからこの本自体は、東直己という作者の出版物としては極めて珍しいくらいにリラックスしたイージー・リーディングの部類の短編集である。[[『探偵くるみの事件簿』>http://www21.atwiki.jp/fadv/pages/214.html]]の方がまだしも集中力があるように思える。  何年間の間に、あまり短篇を書かない作家があちこちにたまに書いた短篇を、光文社が一冊でも多く本を出したくて無理やり纏めた本という印象のせいか、あまり普通の売れっ子作家が出すほど、あるテーマで括られた作品の束というイメージはない。本当にただ雑然と集めてしまった短篇の束。  だから作品のベクトルが多様過ぎて、ある作品はリラックスし過ぎ、ある作品は生真面目でと、しかもお馴染みのキャラは全然出て来ないものだから、ある意味東直己を読んでいる気がしない。  もう一つその理由は北海道を舞台にしているようには思えない作品。つまりこの作者にしてはなかなか思い当たらないくらいに脱北海道している短篇集なのである。小樽とはっきり北海道地名の作品もあるにはあるけれど、薪谷市であるとか渋多喜村であるとか本州らしい土地での物語には少し驚かされた。東直己にはこんな支流があるんだというくらいの軽い気持ちで手に取ると良いような、実はかなり珍しい一冊である。東ファンでない人が読んだら、何だこれ? と思うかもしれないけれども。 (2002.11.17)

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