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**月の光 (ルナティック) 作者:花村萬月 発行:廣済堂出版 1993.4.15 価格:\1,500(本体\1,456)  このどちらかと言えば弱小出版社から出る作品は、『聖殺人者イグナシオ』もそうだったんだけど、萬月さんの作品群の中での主流ではなく、亜流だなあ、という気がする。でもそれだけに萬月さんの小説実験室とでも言えそうな奔放なところも多分にあって、最近、ノベルズで連続している萬月ハードボイルドの主流群にはない、未完成で荒削りな魅力を味わうことができる気がする。  『ブルース』や『真夜中の犬』のように完成度の比較的高い彼の力作とは、一線を画しているから、どうしてもこれらは小品であるとの印象を免れない。あちらの作品で萬月はすごいやと思いつつ、こちらの作品はどうもなあ、との印象を持たれる読者もけっこう多いのではなかろうか? まあ、しかし、そこを萬月、奔放、粗削り、ゆえに早期廃版という可能性だってなきにしもあらずと思えば、ハードカバーに \1,500 を投じたって読んでおきたいではないですか (^_^) もっとも、早めに文庫になるという可能性だってあるんだろうけれど。  さて本書は一言で紹介すると、志水辰夫『滅びし者へ』のジャンルを花村萬月に書かせるとどうなるかなあ、という問いへの一つの答である。志水の『滅びし者へ』はけっこう世の中から冷たく扱われたものの、彼なりの新ジャンルへの挑戦であり、またアクション・シーンが珍しく連続する娯楽色の強い作品であったと思う。そして全くそれと同じことがこの『月の光』にも言えそうなのである。  もっとも『イグナシオ』の方も、途中で性格は変わっちゃったけれど、やはり最初はひどく宗教色の強い出だしであったように思う。萬月さん自身が洗礼を受けたクリスチャンであったりもするので、彼の作品に宗教が反映することがあっても少しも不思議じゃないし、後書きで彼自身、そのあたりの意識を少しだけ語ってもいる。  この小説の一番の読みどころは、珍しく一人称小説であることかもしれない。思えばデビュー作『ゴッドブレイス物語』はヒロイン朝子の一人称小説であった。だが今度の一人称の主人公は作家であり、バイク・マニアであり、かなりの点で萬月さん自身の分身的なところがあるみたいで、そういうところがファンとしては誠に興味深かったりもするのである。  必読とは言わんけど、ファンはぜひ読んでおいてね、と言いたい作品かな。 (1993/04/18)
**月の光 (ルナティック) #amazon(4167642042,image) 作者:花村萬月 発行:廣済堂出版 1993.4.15 価格:\1,500(本体\1,456)  このどちらかと言えば弱小出版社から出る作品は、『聖殺人者イグナシオ』もそうだったんだけど、萬月さんの作品群の中での主流ではなく、亜流だなあ、という気がする。でもそれだけに萬月さんの小説実験室とでも言えそうな奔放なところも多分にあって、最近、ノベルズで連続している萬月ハードボイルドの主流群にはない、未完成で荒削りな魅力を味わうことができる気がする。  『ブルース』や『真夜中の犬』のように完成度の比較的高い彼の力作とは、一線を画しているから、どうしてもこれらは小品であるとの印象を免れない。あちらの作品で萬月はすごいやと思いつつ、こちらの作品はどうもなあ、との印象を持たれる読者もけっこう多いのではなかろうか? まあ、しかし、そこを萬月、奔放、粗削り、ゆえに早期廃版という可能性だってなきにしもあらずと思えば、ハードカバーに \1,500 を投じたって読んでおきたいではないですか (^_^) もっとも、早めに文庫になるという可能性だってあるんだろうけれど。  さて本書は一言で紹介すると、志水辰夫『滅びし者へ』のジャンルを花村萬月に書かせるとどうなるかなあ、という問いへの一つの答である。志水の『滅びし者へ』はけっこう世の中から冷たく扱われたものの、彼なりの新ジャンルへの挑戦であり、またアクション・シーンが珍しく連続する娯楽色の強い作品であったと思う。そして全くそれと同じことがこの『月の光』にも言えそうなのである。  もっとも『イグナシオ』の方も、途中で性格は変わっちゃったけれど、やはり最初はひどく宗教色の強い出だしであったように思う。萬月さん自身が洗礼を受けたクリスチャンであったりもするので、彼の作品に宗教が反映することがあっても少しも不思議じゃないし、後書きで彼自身、そのあたりの意識を少しだけ語ってもいる。  この小説の一番の読みどころは、珍しく一人称小説であることかもしれない。思えばデビュー作『ゴッドブレイス物語』はヒロイン朝子の一人称小説であった。だが今度の一人称の主人公は作家であり、バイク・マニアであり、かなりの点で萬月さん自身の分身的なところがあるみたいで、そういうところがファンとしては誠に興味深かったりもするのである。  必読とは言わんけど、ファンはぜひ読んでおいてね、と言いたい作品かな。 (1993/04/18)

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