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きんぴか - (2007/06/04 (月) 23:35:24) の編集履歴(バックアップ)


きんぴか





題名:きんぴか
作者:浅田次郎
発行:光文社 1996.2.5 初刷
価格:\2,000



 かつてノベルズでシリーズものとして出ていた「きんぴか」のシリーズ3冊を一冊のハードカバーにまとめたものであるらしい。とにかくぼくにとっては初の浅田次郎である。

 噂には聞くし、書店ではよく見かけるようになったにも関わらず、あまり機会がなかった作家だが、開いてみておどろいたのは、ユーモア人情小説に辛口の味をつけた作品であるのね、これ。後になって読んだ『プリズンホテル』シリーズの前身とでも言うべき、辛口のスパイスが効いた味わい深いシリーズなのである。

 『プリズンホテル』シリーズと違うのは、あちらのほうは果てしもなき長編物語に近いのに比して、こちらは連作短篇集とでも言ったような構成。三人の反社会者と定年を迎えた元名物刑事の、毒で持って毒を制する物語集。

 後に『プリズンホテル冬』で再登場することになる「血まみれのマリア」などは、作者の医学的知識に平伏するリアルな救急病棟の凄絶さが、印象的。

 まあなんと言っても自衛隊あがりの「軍曹」の、勘違いしまくった愛国主義が群を抜いた存在でありこの「きんぴか」を光らせるキャラクターであろう。

 作者の好きな人間たちが、こういう風に型どられて世に出てゆく。作家としての光る才能を伺わせる逸品である。

(1996.07.07)