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獏の食べのこし - (2007/12/15 (土) 22:39:53) のソース

*獏の食べのこし

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題名:獏の食べのこし
作者:中島らも
発行:集英社文庫 1993.1.25 初刷
価格:\420(本体\408)



 うーん、この人はエッセイが巧いなあ。雑誌に連載されていたのだろうと思われる細切れエッセイ集だけど、本当に中島らもの文章というのは楽しめます。
 
 『道頓堀あたりのこと』----  道頓堀を見ていると、映画『ブレードランナー』の「強力ワカモト」の宣伝と、ハリソン・フォードが屋台のうどん屋に入るシーンを思い出してしまうという。「ウドン・フォー」「二つで十分ですよ」「イエス。ウドン、フォー!」。うーん、この辺りぼくの好きなシーンでもあったなあ。
 
 「混沌の世紀末」はリドリー・スコットの中でこだわりとなり『ブラック・レイン』へと繋がって行くのだったなあ。
 
  『「ええ男」の謎』----  芸術家的・創造的な仕事は女性的なもので、男的なものというのは、どちらかというと不毛な破壊や死であると言う。確かに戦争で闘い死をもたらすか、スポーツで意味のないゲームに昂じるのが男の部分だものなあ。山登りも男的な非生産的な部分なんだろうなあ。
 
 『失恋について』----  恋愛を避けたいのは、別れの悲痛さをいくつも持ちたくないため、恋愛とはいつかは決定的に来るであろう「別れ」を引き伸ばす作業に他ならないから、というイメージも、なんとなく恐ろしくてわかる。
 
 その他『ガダラの豚』や『今夜すべてのバーで』の根底体験とも言えるべき話しが詰まっていて、中島らもファンにとってはなかなか楽しめる一冊です。

(1993.08.23)