wiki クライムウェイヴ(Sysop読書録 活字をめぐる冒険) 内検索 / 「アナザヘヴン」で検索した結果

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  • アナザヘヴン
    アナザヘヴン 題名 アナザヘヴン 上/下 作者 飯田譲治/梓河人 発行 角川ホラー文庫 1998.4.25 初刷 価格 各\648  今年はある程度有名な国内ホラーはどんどん読んでしまおうと思う。『リング』で火をつけられてから、そう思い始めた。国内でのホラーブームは、小説でも映画でも、もはや侮れない存在として脹れ上がりつつある。何よりその根底に面白いという確かな手応えがある。  本書はまるで『ハンニバル』のような食人付き連続殺人事件に始まる。その殺しの現場のえぐさに釣られて読んでしまったのだけど、事件の方は人間界を少し離れて荒唐無稽化してゆき、若干ぼくとしてはついて行けなくなりかける。やばいな、という雰囲気。でもそれを繋ぎ止めるものがこの本には十分にある。  事件そのものの面白さ、奇怪さは勿論あって基本的にはこの本の魅力の半分はそこにあるのだ...
  • アナザヘヴン2
    アナザヘヴン2 題名:アナザヘヴン2 VOL.1~4 作者:飯田譲治/梓 河人 発行:角川ホラー文庫 VOL.1-2 2003.11.10/VOL.3-4 2004.01.10 初版 価格:各\514  殺害した死体の脳を料理して食うというマッドクック事件から十ヶ月後に始まる本書。オリジナル小説版での早瀬や飛鷹の刑事コンビに、TV版連続ドラマ『アナザヘヴン ecripse』の主人公、吾郎、紀子を加えて、まさに小説から映画TVとメディアミックスのプロジェクトとなったシリーズだが、小説として完結させたいという目論見で書かれたもののよう。  そこのところの関係がよくわからないままに、まあ小説の続編という気持ちで読み始めてしまったが、いきなり主人公が吾郎という設定に違和感。監督が小説と映画のどちらもプロデュースすると、彼の中では同じ一つの流れで...
  • 飯田譲治
    ...誘発者 2007 アナザヘヴン・シリーズ アナザヘヴン 1997 アナザヘヴン2 2003 梓 河人共著 ギフト 1997 アナン、 2000 コールドスリープ(短編集) 2002 盗作 2006 黒帯 2007
  • アナン、
    ...があればまだしも、『アナザヘヴン』、『ナイトヘッド』などで、飯田譲治がそれなりに印象的な映像作家であることを知ることはあっただろう。  また飯田譲治の原案を文章に焼き付けている梓河人という豊かな表現者に関しては、飯田譲治という人を介してしか、なかなか接することができない。梓氏は縁の下の力持ちでありながら、プロの仕事を確実にこなしている。映像化されたものと小説として書かれたものの感動の重さが同質である辺りにも、彼の役割の重要性は、充分に垣間見られる。  ホラーともSFとも犯罪小説とも取れる異色のジャンルでありながら、どこか日本の現代に生きる生身の人間のリアリズムを描き、そして常に人類の行方についての遥か未来を見据えたようなところのあるこの二人の作風は、ぼくにとっては、かつての手塚治虫みたいな存在でもある。特定の縛りを自らに設けることなく、自由にエンターテインメントのテク...
  • 誘発者
    ...りない思いがする。『アナザヘヴン』の1と2との間に感じた、より精神的なものにシフトしている作者の側の変化を、本書でも感じてしまった。  物語の作り手が具体から抽象に移行してしまうという傾向は、あまりいいことではないように思う。平井和正の『幻魔大戦』がどのように変化し、消滅して行ったかを思い起こすと、それは自明のことのように思われる。いつの世にも抽象を好む読者需要には事欠かないだろうが、少なくとも散文を業とする小説家は、その表現特性において、もっともっと具体的で地湧き肉踊る物語を示してゆくべきと思いたい。この作家にはそれができるはずなのだから。 (2007/07/08)
  • 魔力の女
    ...…。まるで飯田譲治『アナザヘヴン』で描かれた脳の捕食者のようである。そのエネルギーは、死んだマロリーのジョンへの未練であろう。まるで映画『危険な情事』の持つ悪夢性もが、主人公の一家を捉えてゆく。  いわゆる超現実的な現象が、ミシシッピの片田舎の極めて現実的な描写の中に緻密にリアルに埋め込まれてゆくのだ。極めてアンバランスと思われる両者を融合させるという離れ業を、アイルズの筆力がしっかりとやり遂げ、読者には今までにない種類のサスペンスを繰り広げてくれるわけだが、常に超常現象に対し、アンチテーゼとも言える解決策を主人公に提示するのが、かつてのアイルズ作品であり、しかもナチェズものとして南部色の濃い『沈黙のゲーム』で主人公を勤めた作家ペン・ケージなのである。  そのペン・ケージは『沈黙のゲーム』でも感じられたことだが、ジョン・グリシャムを想起させるリーガル・サスペンス作家と...
  • 魔物
    ...寄生する飯田譲治の『アナザヘヴン』の怪物のようでもある。半ばSF、はたまたファンタジーか。  しかし、それでいながら現実面の方をしっかりと抑えており、緻密でリアルな捜査側の情報をしっかりと書き込むことで、奇妙な話をコチラ側の世界に引き寄せようという技を作家は繰り出す。だからこそ、読めるのだ。子供のファンタジーではなく、大人たちの小説として。  海外で言えばデイヴィッド・アンブローズみたいな作家を髣髴とさせる。  怪物を描き、その始末を、主人公刑事のトラウマの過去の時間に結び付けて、しっかりと纏め上げるその力技にこそ、この作品の魅力、大沢在昌という定番ブランドの信頼が込められているのかもしれない。 (2008/03/02)
  • クレイジーヘヴン
    クレイジーヘヴン クレイジーヘヴン 題名:クレイジーヘヴン 作者:垣根涼介 発行:実業之日本社 2004.12.15 初版 価格:\1,600  『サウダージ』で見られたような反骨も意地もあるブラジル出身者の滅びと恋。あれに近いという印象だが、一方では馳星周あたりが書きそうなノワールの気配もある。少しずつ変異する垣根ワールドの、もう一つの屈折面がここに出現したのかもしれない。  『サウダージ』の強烈なデカダンスは、いわゆるゴダールの『勝手にしやがれ』や『気狂いピエロ』に繋がるネガティブ・エネルギーの発露みたいな部分があった。根底にあるニヒリズムは、自分が世界から認められないことに対する存在の証。  本書の主人公はブラジル出身でもなければ、泥棒業界に入門しようという色気もない。ただの旅行代理店のサラリーマン……といえば処女作『午前三時のルースター』へ...
  • ブルー・ヘヴン
    ブルー・ヘヴン 題名:ブルー・ヘヴン 原題:Blue Heaven (2007) 作者:C・J・ボックス C.J.Box 訳者:真崎義博 発行:ハヤカワ・ミステリ文庫 2008.08.25 初版 価格:\1,000  ワイオミングの高地を舞台にした猟区管理官ジョー・ピケットのシリーズで売り出したC・J・ボックスは、最初から気に入って追いかけている作家である。ネイチャー派のミステリというのはあまりないと思うが、この作家に限ってはあくまでもアメリカ北西部の大自然を舞台にした物語が似合う。元牧場職員、釣りガイド、編集者などを経ているだけに、作者の顔が作中に見え隠れするような作風でもある。  ジョーのシリーズは講談社文庫で継続中だが、ハヤカワはノン・シリーズである本作の翻訳権を獲得したのだろう。シリーズの翻訳の遅さを嘲笑う勢いで、翻訳小説をメインとするハヤ...
  • 約束 K・S・Pアナザー
    約束 K・S・Pアナザー 題名:約束 K・S・Pアナザー 作者:香納諒一 発行:祥伝社 2015.09.10 初版 価格:\1,850  待っていた作品をついに読んだ。そう思うくらい満足感が大きかった。香納諒一の作品に求めるものは一つに人間、それ以外の何ものでもない。人の生き方は、自分ですべてを決められるものではない。でも決められた運命の中でも、あらゆる境遇や状況を超えて選択してゆく道が人にはあるはず。獣は、生きるため、種の保存のためにだけに何かを選択するように遺伝子に仕向けられていると思う。しかし、人間には他者のために命を投げ出すという選択が残されている。たとえそれが親子血縁でなくても。  世の中の冒険小説やハードボイルドを読む時間、ぼくらがそれらの作品に求めているものはそうした人間らしい選択であり、そうした選択肢を持てる人という種の誇りであるように...
  • 沢木冬吾
    沢木冬吾 愛こそすべて、と愚か者は言った 1999 贖いの椅子 2003 天国の扉 ノッキング・オン・ヘヴンズ・ドア 2006 ライオンの冬 2008 握りしめた欠片 2009 約束の森 2012
  • kakine
    垣根涼介 午前三時のルースター 2000 ヒート アイランド 2001 ワイルド・ソウル 2003 ギャングスター・レッスン 2004 サウダージ 2004 クレイジー・ヘヴン 2004 ゆりかごで眠れ 2006 真夏の島で咲く花は 2006
  • ギフト
    ギフト 題名 ギフト 作者 飯田譲治/梓河人 発行 角川ホラー文庫 2000.6.1 初刷 価格 \619  これはとってもな佳品である。ことによっては『アナザへヴン』より完成度は高いか。同じ作者の長大な作品『NIGHT HEAD』よりは絶対確実に身が引き締まっていて美味しい。  この合体作者たち(飯田譲治原案、梓河人著と言ったコンビなのかな?)は、映像作家(言わずと知れた飯田譲治の方)の発想に基づいているだけに、全体の構成、特にラストへの収斂のしかたが大変に上手い。何よりもその一点に多くの庶民のハートを掴みつつ運んで行ってしまう、コツとかテンポといった、小説としては非常に重要な要素を抑えているのだ。  記憶喪失者が自分を捜す。過去の薄闇の向こうにはあまり知りたくない自分が見えて来そうな気配がする……と書くと真保裕一『奇跡の人』みたいでもあ...
  • 死を誘うロケ地
    シャロウ・グレイブズ(「死を誘うロケ地」改題) シャロウ・グレイブズ (ハヤカワ・ミステリ文庫) 死を誘うロケ地 (ハヤカワ・ミステリ文庫) 題名:死を誘うロケ地 原題:Shallow Graves (1992) 作者:Jeffery Wilds Deaver wrighting as William Jefferies 訳者:飛田野裕子 発行:ハヤカワ文庫HM 1995.7.31 初版 価格:¥680  やはり『ヘヴンズ・キッチン』の前に、こちらを先に読むべきだった。シリーズは順番に読まなくてはいけない。あとはどうであれ、少なくとも第一作は最初に読むべきだろう。ぼくも不幸だけれど、ハヤカワ文庫として最後に『シャロウ・グレイヴス』として出版されるのが本書だとしたら、多くのディーヴァー読者にしたって、当のディーヴァー本人にしたって、あまり幸せそうな顔はしな...
  • C・J・ボックス
    C・J・ボックス C.J.Box 森林管理官ジョー・ビケット・シリーズ 沈黙の森 2001 野口百合子訳 逃亡者の峡谷  2002 野口百合子訳 凍れる森 2003 野口百合子訳 神の獲物 2004 野口百合子訳 震える山 2005 野口百合子訳 裁きの曠野 2006 野口百合子訳 フリーファイア 2007 野口百合子訳 復讐のトレイル 2008 野口百合子訳 ゼロ以下の死 2009 野口百合子訳 狼の領域 2010 野口百合子訳 冷酷な丘 2011 野口百合子訳 鷹の王 2012 野口百合子訳 発火点 2013 野口百合子訳 越境者 2014 野口百合子訳 嵐の地平 2015 野口百合子訳 熱砂の果て 2016 野口百合子訳 長篇小説 ブルー・ヘヴン 2006 真崎義博訳 さよならまでの三週間 2008 真崎義博訳
  • 垣根涼介
    垣根涼介 長編小説 午前三時のルースター 2000/04 ワイルド・ソウル 2003/08 クレイジーヘヴン 2004/12 ゆりかごで眠れ 2006/04 真夏の島に咲く花は 2006/10 月は怒らない 2011/06 人生教習所 2011/09 狛犬ジョンの軌跡 2011.09 ヒート・アイランド・シリーズ ヒート・アイランド 2001/07 ギャングスター・レッスン(連作短編集) 2004 サウダ-ジ 2004/08 ボーダー リストラ請負人・村上真介シリーズ(連作短編集) 君たちに明日はない 2005/03 借金取りの王子 2007/09 張り込み姫 君たちに明日はない 3 2010/01 張り込み姫 君たちに明日はない 3 2010/01(再読) 勝ち逃げの女王 君たちに明日はない 4 2012/05(後に『永遠のディーバ 君たちに明日はない 4』へ改題) 迷子の王様...
  • 天国の扉
    天国の扉 ノッキング・オン・ヘヴンズ・ドア [429] Client error `POST https //webservices.amazon.co.jp/paapi5/getitems` resulted in a `429 Too Many Requests` response { __type com.amazon.paapi5#TooManyRequestsException , Errors [{ Code TooManyRequests , Message The request was de (truncated...) 題名:天国の扉 ノッキング・オン・ヘヴンズ・ドア 作者:沢木冬吾 発行:角川書店 2006.01.31 初版 価格:\1,900  骨のあるクライム・ノヴェルである。……1970年生まれの若手作家であることが信...
  • 香納諒一
    香納諒一 K・S・Pシリーズ K・S・P 孤独なき地 2007/03 K・S・P II 毒のある街 2008/09 K・S・P 噛む犬 2011/01 K・S・P 女警察署長 2012/07 K・S・Pアナザー 約束 2015/09 警視庁捜査一課シリーズ 刹那の街角 1999/05 贄の夜会 2006/05 無縁旅人 2014/03 刑事群像 2015/02 砂時計 警視庁強行犯係捜査日誌 2023/10 辰巳翔一シリーズ 無限遠/「春になれば君は」改題1993/12 蒼ざめた眠り/「虚国」改題  2010/03 さすらいのキャンパー探偵 降らなきゃ晴れ 2019/08 さすらいのキャンパー探偵 水平線がきらっきらっ 2019-09 さすらいのキャンパー探偵 見知らぬ町で 2019-10 鬼束啓一郎シリーズ 熱愛 2010/09 絵里奈の消滅 2018/09 刑事花房京...
  • ホテル・ネヴァーシンク
    ホテル・ネヴァーシンク 題名:ホテル・ネヴァーシンク 原題:The Hotel Neversink (2019) 作者:アダム・オファロン・プライス Adam Ofallon Price 訳者:青木純子 発行:ハヤカワ・ミステリ 2020.12.15日 初版 価格:¥1,900  ロバート・B・パーカーのスペンサー・シリーズの初期作品の一つである『キャッツキルの鷲』というタイトルはなぜか忘れがたいものがある。さてそのキャッツキルという地名だが、「キル」は古いオランダ語で「川」の意味なのだそうだ。古いオランダ語。うーむ。  ハドソン川に沿ったいくつかの土地の名には「キル」が付いてるらしい。この作品の直後にぼくが読むことになるアリソン・ゲイリン著『もし今夜ぼくが死んだら、』の舞台が、実はニューヨークに注ぐハドソン川流域の架空の町ヘヴンキルなのである。「キ...
  • もし今夜ぼくが死んだら、
    もし今夜ぼくが死んだら、 題名:もし今夜ぼくが死んだら、 原題:If I Die Tonight (2018) 作者:アリソン・ゲイリン Alison Gaylin 訳者:奥村章子 発行:ハヤカワ文庫HM 2020.3.25 初版 価格:¥1,260  真夜中に盗難車に轢かれ、死んだ少年。橋の下に落下した車。逃走した罪深き何者か。殺人事件というよりも突発的な事故のようにも見えるある夜の出来事を中心にして本書は、スタートする。場所はハドソン川流域の町ヘヴンキル。著者が住むのは同じくニューヨーク州ハドソン川流域のウッドストックだそうである。何と……!  エドガー賞、通称ペーパーバック賞受賞作品……にしては、やはりテーマは重たい気がする。最近のアメリカ小説でよく読むタイプのドメスティック・ミステリーであり、社会現象とも言えるネット虐めによる社会的暴力に真向...
  • ケルベロスの肖像
    ケルベロスの肖像 題名:ケルベロスの肖像 著者:海堂 尊 発行:宝島社 2012.07.20 初版 価格:\1,524  最近は、便利なことに海堂尊ワールドに関しては、ネット上で人物関係図や時系列できごと表などを見ることができる。この作家の作品を少し間を置いて読む場合、人物と前後の出来事に関しては失念していることがあるので、けっこう頻繁にこの二つの資料をチェックする作業が欠かせないようになってしまった。やっぱり読書は100%味わうべきものなのである。100%は無理だろうから少しでも完璧に近づける仕事がコストパフォーマンスを挙げる地道な努力というものだろう。  さて、チーム・バチスタ・シリーズだが、主人公は田口・白鳥コンビとしても、やはりこのシリーズは東城大医学部附属病院の主軸となるライン上に物語を展開させたものである。他に、スピンオフ作品やそのまま並行...
  • スティーヴン・ハンター
    スティーヴン・ハンター Stephen Hunter ボブ・リー・スワガー・シリーズ 極大射程 1993 ブラック・ライト 1996 狩りのとき 1998 四十七人目の男 2008 黄昏の狙撃手 2008 蘇るスナイパー デッド・ゼロ 一撃必殺 ソフト・ターゲット 第三の銃弾 2013 スナイパーの誇り 2014 狙撃手のゲーム 2015 アール・スワガー・シリーズ 悪徳の都 2000 最も危険な場所 2001 ハバナの男たち 2003 スワガー・サーガ外伝 ダーティ・ホワイト・ボーイズ 1994 長編小説 魔弾 1980 クルドの暗殺者 1982 さらば、カタロニア戦線 1985 真夜中のデッド・リミット 1989 我が名は切り裂きジャック 2015 公手成幸訳 ベイジルの戦争 2021 公手成幸訳
  • 北東の大地、逃亡の西
    北東の大地、逃亡の西 題名:北東の大地、逃亡の西 原題:Controlled Burn (2005) 作者:スコット・ウォルヴン Scott Wolven 訳者:七搦理美子 発行:ハヤカワ・ミステリ 2007.11.10 初版 価格:\1,300  スコット・ウォルヴンは、『ベスト・アメリカン・ミステリ』の常連。オットー・ペンズラーが全米の短篇小説を絞りに絞り、毎年、ゲスト編集者(有名作家が多い)により最終20作をチョイスしたものがこの『ベスト・アメリカン・ミステリ』である。ゲストの作家の好みが反映される傾向が強いとぼくは感じているのだが、ここ数年、毎年のように名前が登場する作家がこのスコット・ウォルヴンである。言わばどの傾向の作家であれ、ウォルヴンという作家を最終選考で残してしまうというミラクルが継続中であるわけだ。それも5年も6年もである。凄い! ...
  • 盗作
    盗作 題名:盗作 上/下 作者:飯田譲治/梓 河人 発行:講談社 2006.02.03 初版 価格:各\1,200  『アナン、』を絶賛した身としては、本書をこき下ろすことなどは絶対にしたくない。だが、本書は『アナン、』の持つ魅力をそのまま継承してはいないと思う。あまりの変容をもよしとする柔軟な読者にとっては、本書はそれなりにうまくできた作品であるのかもしれないのだが。  しかし、ぼくにとって本書は『アナン、』を継承するものではなかった。むしろ、『アナン、』では「言わずもがな」だった部分を敢えて説明してしまうことにより、成り立った本書は言わば蛇足であると思う。『アナン、』が持っていた魅力の一つ、つまり、書き手が自身に課する厳しさのようなものが、本書からはごっそりと抜け落ちているように思うのだ。  本書にも、もちろんそこそこ魅力的な人物が、例...
  • スコット・ウォルブン
    スコット・ウォルヴン Scott Walven 短篇小説集 北東の大地、逃亡の西 七搦理美子訳 2005
  • 梓 河人
    梓 河人 飯田譲治共著 ギフト 1997 アナン、 2000 コールドスリープ(短編集) 2002 盗作 2006 黒帯 2007 児童文学 ぼくとアナン 2001
  • ジョン・サンドフォード
    ジョン・サンドフォード John Sandford ルーカス・ダヴンポート警部補シリーズ サディスティック・キラー 1989 山田久美子訳 ブラック・ナイフ 1990 真崎義博訳 消された眼(『獲物の眼』へ改題) 1991 真崎義博訳 沈黙の獲物 1992 真崎義博訳 冬の獲物 1993 真崎義博訳 夜の獲物 1994 真崎義博訳 心の獲物 1995 真崎義博訳 一瞬の死角 1996 真崎義博訳 餌食 1999 北沢あかね訳 他、長編 ハッカーの報酬 1989 山田久美子訳
  • ベイジルの戦争
    ベイジルの戦争 題名:ベイジルの戦争 原題:Basil s War (2021) 著者:スティーヴン・ハンター Stepen Hanter 訳者:公手成幸 発行:扶桑社ミステリー 2021.08.10 初版 価格:¥1,155  かつてパソコン通信で冒険小説フォーラムを運営していた頃、極めて人気の高かったスティーヴン・ハンター。作家歴は長く、数々の話題作を提供してくれ、とりわけアール・スワガー、とその息子のスナイパーであるボブ・リー・スワガーという二人の主人公による、二つの時代に物語を紡いできた力業は、未だに忘れ難い印象を残す。  本編は、珍しく長編小説にしては短く、スピーディで、しかもテンポの良い独特の面白さを持ったもので、これまでのハンター作品の重厚さに対し、第二次世界大戦下の工作員の物語であるにも関わらず、どこか軽妙でリズミカル、かつスピーディ...
  • われら闇より天を見る
    われら闇より天を見る 題名:われら闇より天を見る 原題:We Begin At The End (2020) 著者:クリス・ウィタカー Chris Whitaker 訳者:鈴木恵 発行:早川書房 2022.8.25 初版 価格:¥2,300  これは凄い。おそらく今年、一押しの作品である。  ミステリーではあるけれど、それ以上に重厚な人間ドラマだ。二人の主人公が凄い。どちらも個性がしっかりとしている。少女ダッチェス13歳。ウォーク警察署長、難病との闘病中&勤務中。どちらも惑星のように独立し、人を惹きつける個性と魅力を持っている。  物語は、30年前のショッキングなシーンで幕を開ける。若きウォークがシシーを発見する。陰惨な姿で路傍に転がるシシーの死体を。このプロローグのシーンでは未だ後のヒロイン少女ダッチェは生まれてもいないが、発見された少女シシ...
  • 我が名は切り裂きジャック
    我が名は切り裂きジャック 題名:我が名は切り裂きジャック 上/下 原題:I, Ripper (2015) 作者:スティーヴン・ハンター Stephen Hunter 訳者:公手成幸 発行:扶桑社ミステリー 2016.5.10 初版 価格:各\900-  あまりにも有名な殺人鬼<切り裂きジャック>について書かれた本をぼくはこれまで読んだことがない。特に読まなかったことの理由はない。ほとんどの作品を読んでいるはずのパトリシア・コーンウェルが『切り裂きジャック』を書いた時にもなぜか食指が動かなかった。  ほとんどの作品を読んでいるこの作家スティーヴン・ハンターの本書にしても買ってすぐに手に取ったわけではない。半年以上経った頃になってようやく、それもどちらかと言えば気が向かぬままに手に取った。  古いロンドンの街を脅かした切り裂きジャックが有名...
  • 四十七人目の男
    四十七人目の男 題名:四十七人目の男 上・下 原題:The 47th samurai (2008) 作者:スティーヴン・ハンター Stephen Hunter 訳者:公手成幸 発行:扶桑社ミステリー 2008.06.30 初版 価格:各\819  何にせよ、お気に入りの作家や映画監督が日本を舞台にすることは、怖いものだ。あのリドリー・スコットだって、『ブラック・レイン』の日本はどこの時代のどこのファンタジーだと思えるようなものに変えてしまった。小説ではクライブ・カッスラーを読みやめてしまったのは、ダーク・ピットが日本に来てからだ。ジェイムズ・ボンドが浜美枝の海女さんとラブシーンを演じてからこの方、リュック・ベッソンが送り込んだジャン・レノの『WASABI』まで、有名ヒーローが日本で活躍しようとするとろくなことはなかった。  だから大好きなスティー...
  • ア行作家
    ア行作家 ポール・アードマン ジェフリー・アーチャー ディーパ・アーナパーラ エヴァ・ヴョルク・アイイスドッティル バリー・アイスラー グレッグ・アイルズ アイザック・アダムスン エース・アトキンス イゴール・デ・アミーチス トーヴェ・アルステルダール マーヴィン・H・アルバート カーリン・アルヴテーゲン ビクトル・デル・アルボル カトリーヌ・アルレイ ロベルト・アンプエロ マックス・アンナス デイヴィッド・アンブローズ ユージン・イジー ジャネット・イヴァノヴィッチ アーナルデュル・インドリダソン ジョン・ヴァーチャー アンドリュー・ヴァクス フレッド・ヴァルガス クリス・ウィタカー フレッド・ウィラード ティム・ウィロックス R・D・ウィングフィールド ドン・ウィンズロウ チャールズ・ウィルフォード ロノ・ウェイウェイオール ドナルド・E・ウェストレイク ジャン・ヴォートラン ミネッ...
  • 戸梶圭太
    戸梶圭太 長編小説 闇の楽園 1999 溺れる魚 1999 レイミ 聖女再臨 2000 ギャングスタードライブ 2000 赤い雨 2000 The twelve forces 2000 なぎらツイスター 2001 湾岸リベンジャー 2001 未確認家族 2001 牛乳アンタッチャブル 2002 アウトリミット 2002 燃えよ!刑務所 2003 ドクター・ハンナ 2003 CHEAP TRIBE―ベイビー、日本の戦後は安かった 2003 あの橋の向こうに 2003 天才パイレーツ 2004 自殺自由法 2004 クールトラッシュ―裏切られた男 2004 ビーストシェイク―畜生どもの夜 2005 グルーヴ17(セヴンティーン)  2005 嘘は止まらない 2005 東京ライオット 2005 ちぇりあい 2006 宇宙で一番優しい惑星 2006 もっとも虚しい仕事―ブラッディースクランブル...
  • ベスト・アメリカン・ミステリ スネーク・アイズ
    ベスト・アメリカン・ミステリ スネーク・アイズ ベスト・アメリカン・ミステリスネーク・アイズ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) 題名 ベスト・アメリカン・ミステリ スネーク・アイズ 原題:The Best American Mystery Stories 2004(2004) 作者:ネルソン・デミル&オットー・ペンズラー編 Nelson DeMille, Otto Penzler 訳者:田村義進、他 発行:ハヤカワ・ミステリ 2005.12.15 初版 価格:\1,900  アンソロジーのバイブルみたいな名シリーズである。ハヤカワが二年遅れくらいのテンポで翻訳出版を続けてくれるので、短編ファンにとっては有難い。  50本の短編に絞る役割をペンズラーが行い、その内から20本を選び出す責任ある作業を、ゲスト作家に任せる。ゲスト作家の方は、最後の篩い分けという...
  • ブラック・ナイフ
    ブラック・ナイフ ブラック・ナイフ (Hayakawa Novels) 題名:ブラック・ナイフ 原題:SHADOW PREY (1990) 作者:JOHN SANDFORD 訳者:真崎義博 発行:早川書房 1993.6.30 初版 価格:\1,800(本体\1,748)  シリーズを時間を置いて読むと前作の記憶がほとんど失せてしまい、人物的、または時間的な繋がりに関する興趣がすっかり失せてしまうといういい読書例がこの本であった。靄のかかった前作の記憶を刺激するような場面が頻発するにも関わらず、ダヴンポート刑事とその周辺を思い出すのはなかなか困難なのである。やはりシリーズものをとことん楽しむには一気読みに限る、とつくづく思うが、なかなかそうも言ってられないのが新刊追跡者たちの辛いところなのである。  さて本書は、前作とはまたがらりと趣向を変えて、叛アメリカ...
  • ハ行作家
    ハ行作家 T・ジェファーソン・パーカー J・D・バーカー ロバート・B・パーカー アラン・パークス ジョン・ハート ルー・バーニー W・R・バーネット ジェーン・ハーパー ジョーダン・ハーパー ブラッドリー・ハーパー マイクル・パーマー パトリシア・ハイスミス イヴリン・パイパー クリス・パヴォーネ ダシール・ハメット チャック・パラニューク トマス・ハリス ビル・S・バリンジャー ケント・ハリントン エドワード・バンカー エヴァン・ハンター スティーヴン・ハンター ジェン・バンブリィ ジャック・ヒギンズ ドロレス・ヒッチェンズ ドロシイ・B・ヒューズ デイヴィッド・ピース フランシス・ビーディング サムエル・ビョルク コリーン・フーヴァー アラン・ファースト テレンス・ファハティ マイケル・フィーゲル セバスチャン・フィツェック マリオ・プーヅォ ダン・フェスパーマン ロバート・フェリ...
  • 心の獲物
    心の獲物 題名:心の獲物 原題:Mind Prey (1994) 作者:John Sandford 訳者:真崎義博 発行:早川書房 1997.11.30 初版 価格:\2,200  シリーズ第7作。  サイコ犯罪者とルーカスを初めとするミネアポリス市警チームとのチェイス小説として、優れた面白さを持つ作品たちであるけれど、サイコ対市警というお定まりのパターンも何度も続けば、やっぱり飽きがくる。  そこで、シリーズの新機軸と言いたくなる本書。異常者ハンティング小説という以上に、異常者との対決小説という意味合いが強くなった。もともと第一作『サディスティック・キラー』の面白さはサイコ・キラーとルーカスとの知恵比べ合戦だったから、そのエッセンスをより追求したのが本作であるとも言える。  いつもの(?)連続猟奇殺人ではなく、今回の犯罪はなんと誘拐...
  • 侵入者 イントルーダー
    侵入者 イントルーダー 題名:侵入者 -イントルーダー- 原題:The Intruder (1996) 作者:Peter Blauner 訳者:白石朗 発行:扶桑社 1997.7.30 初版 価格:\2,381  ストーカーものと出版社は宣伝したいみたいだけど、どちらかというと転落して行くホームレスとブルックリンから這い上がった弁護士との二つの物語を主軸に展開する立体的なサスペンスと言っていいような気がする。「ストーカー」とかタイトルの「侵入者」という面ばかりを期待すると、実際にはちょいと違う味わいになってしまうだろう。  一つ、まずはこの作者の手による人物造形に興味を持った。類型的で両極端な人物のコントラストで物語を進めていながら、どこか巻半ばくらいから陰と陽が逆転してゆくあたりは面白いと思う。手放しで喜ぶようなシーンがほとんどない一方、現実のハ...
  • 黒い河
    黒い河 題名:黒い河 原題:Black River (2002) 作者:G・M・フォード G. M. Ford 訳者:三川基好 発行:新潮文庫 2004.05.01 初版 価格:\781  『憤怒』に続く、やさぐれライター、フランク・コーソのシリーズ第二弾。ノンフィクションの取材にかこつけながら事件にどっぷりと突っ込んでゆくコーソの魅力的なキャラクターがこのシリーズを当分の間引っ張ってゆく気配が感じられる。外見はポニーテールの巨漢であり、まるでスティーヴン・セーガル。その想起しやすいキャラクターに軽妙な話術を与え、どこにも組しない一匹狼の頑固を副えるとコーソの出来上がり。  さらに導入部の迫力。快テンポ。一筋縄では行きそうにない殺し屋たちを最初に登場させておいて、読者側にだけ明らかとされるサスペンスを盛り上げ、一方でじっくりとコーソの人生観を描いて...

  • 螢 蛍 題名:螢 原題:FIREFLIES 作者:DAVID MORRELL 訳者:山本光伸 発行:早川書房 1992.2.29 初版 価格:1,600  デヴィッド・マレルが癌で亡くした15歳の息子マシューに捧げる鎮魂歌(レクイエム)。「みんなぼくのことを忘れちゃう」というマシューの言葉から、作家である父が、作品という形で美しく凍りつかせた愛の結晶。帯ではラドラムとキングが賛辞を寄せている。そして子供の問題で心を通じ合わせるヴァクスとの手紙のやり取り。  冒険小説で軽々しく扱っていた命の問題も、今後息子の影響なしには描いてゆくことができないであろうという全生活的なショック症状のさなかから、振り絞るように生まれた作品である。子を亡くした親の心から悲しみが去ることはない。時は決してこの問題を解決することがない。新しい一日一日を親は悲しむしかない。こうした容...
  • 幽霊
    幽霊 幽霊 (ハヤカワ・ミステリ文庫―87分署シリーズ) 幽霊 (ハヤカワ・ミステリ 1400) 題名:幽霊 原題:Ghosts (1980) 著者:エド・マクベイン Ed McBain 訳者:井上一夫 発行:ハヤカワ文庫HM 1990.09.15 1刷 価格:\480  さて、<87分署>シリーズもようやく1980年代に突入した。そして本書ではいかにも時代に即したというべき新しい題材が選ばれている。その名はタイトルが示す通り幽霊話である。映画『エクソシスト』以来のオカルト・ブームがアイソラの街にも到来したように見える。そう。本篇はまさに超自然現象を主題にしている。  キャレラに協力する霊媒のヒラリー・スコットは、まるでこの作品のヒロインであるかのごとく証拠物件に触れてさまざまな暗示を受ける。キャレラは彼女の超自然的な霊能力によって得られるそれら...
  • 沈黙の森
    沈黙の森 題名:沈黙の森 原題:Open Season (2001) 作者:C・J・ボックス C.J.Box 訳者:野口百合子 発行:講談社文庫 2004.8.15 初版 2004.12.20 4刷 価格:\714  何年も経ってから誰からも口コミで聞いたことのない作品に出くわすことは決して少なくはない。本作品はあまり巷間で取り挙げられることなくぼくの周りを沈黙したまま過ぎていったが、狩猟区管理者という主人公の職業に惹かれるものがあって、手に取ってみた。まさに掘り出し物だった。  ワイオミングの山中を舞台に展開するミステリーというだけで、既に稲見一良、大藪春彦といった狩猟系ハードボイルドを思い起こさせ、同時に、森と銃はスティーヴン・ハンターの描く仮借なき死闘小説を思わせる。  そうした空気をいくばくかずつ掴み取りながら、この小説の背骨には...
  • 天空への回廊
    天空への回廊 天空への回廊 (光文社文庫) 天空への回廊 題名:天空への回廊 作者:笹本稜平 発行:光文社 2002.3.5 初版 価格:\2,000  何年か前のぼくであれば、文句なしにこの作品を一位に選んでいただろうなと思う。  何よりスケールが大きい。冷戦時代の宇宙兵器まで巻き込んだテロ絡みの国際謀略小説であり、舞台は世界最高峰という申し分なさ。エベレストの頂上近辺ばかりがほとんどのこの作品の舞台であり、それだけ山岳アクションとして特化した部分が評価されても不思議ではない。  主人公は日本人クライマー。世界の諜報員とゲリラと軍隊に囲まれて孤立無援のダイハードを演じる我らがヒーローは軽く『ホワイトアウト』あたりを凌駕する。何年か前なら、少なくとも『ホワイトアウト』以前であれば、あるいは『神々の山嶺』以前であれば、あるいは『遥かなり神々の座』以...
  • ファイト・クラブ
    ファイト・クラブ 題名:ファイト・クラブ 原題:Fight Club (1996) 作者:チャック・パラニューク Chack Palahnuik 訳者:池田真紀子 発行:早川書房 1999.2.15 初版 価格:\1,600  ウォルター・ヒルがまだ駆け出しで、少しばかりアナクロでシンプルな作品作りにばかりこだわっていた頃、あるいは彼自身、まだサム・ペキンパーの死を弔い切れていなかったかと思われる頃の映画『ストリートファイター』は、コバーン&ブロンソンというこれまたアナクロ空気を醸し出すにはぴったりの風貌の俳優二人を据えて、夜の影から影へと移動し繰り広げられるストリート・ファイトというアメリカの文化に焦点を当てた作品であった。都会から出てくる膿みのような貧困と不足感とがこうした夜のガレージでのファイトにカタルシスを求めてゆくのかもしれない。  そん...
  • 黄昏の狙撃手
    黄昏の狙撃手 題名:黄昏の狙撃手 上・下 原題:Night of Thuunder (2008) 作者:スティーヴン・ハンター Stephen Hunter 訳者:公手成幸 発行:扶桑社ミステリー 2009.10.30 初版 価格:各\800  ボブ・リー・スワガーも初老の年齢となったが、前作では、『キル・ビル』を彷彿とさせる、白羽を交えた闘いを、まさかの日本で展開してきたばかり。その死闘の古傷も癒えぬというのに、前作では荒れ地に馬を乗りこなしていた愛娘ニッキの危機を知り、ナスカー・レースの開催されるブリストルの街を訪れる。  剣に続いては車! 最近のハンター作品は、ボブ・リーの高齢化か、作者のそれか知らぬが、創作のモチーフにも趣味が混じるなど余裕の出てきた感が強い。もちろんその分だけ強引なストーリー展開に持ち込まねばならないのだが、そのあたり...
  • 硝煙のトランザム
    硝煙のトランザム 題名:硝煙のトランザム 原題:Transam (2001) 作者:ロブ・ライアン Rob Ryan 訳者:鈴木 恵 発行:文春文庫 2003.08.10 初版 価格:\933  前作は『9ミリの挽歌』であり、<文春パルプ・ノワール>のシリーズであったが、本作は、ぐっと冒険小説の方面に傾いた。スティーヴン・ハンターに近い元兵士たちによる、ハンターほどストレートではない物語。ハンターほどヒーローに恵まれない話。元々、ロブ・ライアンという作家は、アンチ・ヒーローに傾斜しているのかもしれない。  のっけから食いつき難いほどに多種多様な物語が併走する。赤ん坊の夜泣きに苦しむ夫婦。少年野球に熱を入れた結果、地獄を見ることになる夫婦。東欧からやってきたらしい謎の隣人。トレーラーパークのシングル・マザー。ソマリアで<ブラックホーク・ダウン>を経験し...
  • ハバナの男たち
    ハバナの男たち 題名:ハバナの男たち 上・下 原題:Havana (2003) 作者:スティーヴン・ハンター Stephen Hunter 訳者:公手成幸 発行:扶桑社ミステリー 2004.07.30 初版 価格:各\838  何かリズムに乗れないと感じていたが、なるほど、巻末の作者謝辞を読んで納得。同じアール・スワガーのサーガに代わりはないのに、なぜこれほど今までの疾走感を失い、アールに存在感がないのかという疑問に、それは応えている。この作品は、初めてハンターがアイディアに枯渇し、編集者のアイディアを頂いて書いた作品であるのだ。  舞台は革命以前のキューバ。タイトルどおりのハバナに、密命を帯びてやってくるアールというだけで、なんだかアールという人格を不自然に弄んでいる印象があったし、彼の胸中に存在する闘いへのモチベーションが他作品とダントツに...
  • 夜の獲物
    夜の獲物 題名:夜の獲物 原題:Night Prey (1994) 作者:John Sandford 訳者:真崎義博 発行:早川書房 1996.11.30 初版 価格:\2,200  アメリカではベストセラー作家で知られるジョン・サンドフォードの作品は日本では『サディスティック・キラー』でミステリー界をざわめかせて以来少し知名度が低迷を続けている気がする。  ひとつにはこのシリーズが、当時ブームであったサイコ・サスペンスという狭隘な範疇に無理やり押し込まれてしまったこともあったろう。実際にはぼくの知る限り、このシリーズはすべて刑事と犯人との追跡と逃走にこそ面白さを求めているものであり、原題のすべてに"Prey"(獲物)の文字が冠されている通り、間違いなくハンティング・サスペンスと言ってもいいほど犯罪とアクションに満ちた警察小説のシ...
  • エヴァン・スコットの戦争
    エヴァン・スコットの戦争 題名 エヴァン・スコットの戦争 原題 Karma (1994) 著者 ミッチェル・スミス Mitchell Smith 訳者 布施由紀子 発行 新潮文庫 1997.3.1 初版 価格 \800  最近は、イギリス冒険小説という王道がやや衰退気味で、代わりにアメリカの死闘小説とでもいうべきものが、幅を利かせ始めている。それはあたかも西部劇映画が現代に帰ってきたかのごとき現象であり、そうした小説中の主人公は闘いを肯定し、己の身や家族や仲間を守るため、死闘の中に身を投じて行く。  それら死闘小説とでも言うべき範疇の走りになったのが、スティーヴン・ハンターの『ダーティ・ホワイト・ボーイズ』であり、トム・ウィロックスの『ブラッド・キング』であり、この『エヴァン・スコットの戦争』である。どれも1997年の冬から春にかけて邦訳...
  • 消された眼
    消された眼 (『獲物の眼』へ改題) 消された眼 (Hayakawa Novels) 獲物の眼 (ハヤカワ・ミステリ文庫) 題名:消された眼 原題:EYES OF PREY (1991) 作者:JOHN SANDFORD 訳者:真崎義博 発行:早川書房 1994.3.31 初版 価格:\1,900(本体1,845)  一匹狼刑事ルーカス・ダヴンポート・シリーズの邦訳第三弾。一作目『サディスティック・キラー』が知能的な連続殺人犯との駆け引きでなかなか引っ張ってくれたわけで、続いて読み継いでいるわけだが、前の第二作『ブラック・ナイフ』が急激に派手なアクション物に変わってしまい、少々戸惑った。  『ランボー』シリーズに見られるようなアメリカ的なスケールアップ的変貌は、別にこうした刑事物の場合こちらは少しも望んでいないのだけど、この作者、もともとサービス過剰ぎ...
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