wiki クライムウェイヴ(Sysop読書録 活字をめぐる冒険) 内検索 / 「アフリカの蹄」で検索した結果

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  • アフリカの蹄
    アフリカの蹄 題名:アフリカの蹄 作者:帚木蓬生 発行:講談社 1992.3.10 初版 価格:\1,400(本体\1,359)  帚木蓬生といえば、一昨年新潮推理サスペンス大賞の佳作に選ばれた『賞の柩』。推理サスペンス大賞は国産作品の賞にしてはなかなか質が高いというか、まあぼくの好みのものが多い。さて本作『アフリカの蹄』は、何と『賞の柩』と同時応募したものの落選した方の作品であるらしい。出版社が応募先ではないというのも不思議な話だが、特に手を入れずに発表されてしまっているようでもある。ま、これは未確認情報ですが(^^;)。  さて本書は壮大なテーマ……国名こそ書かれていないが南アのアパルトヘイト問題に真っ向から取り組んだ作品である。『賞の柩』でノーベル賞そのものに反旗を翻した同じ作家が、同じ時期に書いていたもう一つの作品。本書は佳作にもなれなかった...
  • 帚木蓬生
    ...びの海峡 1995 アフリカの蹄 1996 臓器農場 1993 閉鎖病棟 1994 空夜 1995 総統の防具(「ヒトラーの防具」へ改題) 1996 逃亡 1997 受精 1998 安楽病棟 1999 空山 2000 薔薇窓 2001 エンブリオ 2002 国銅 2003 アフリカの瞳 2004 百日紅の恋人 2005 受命 2006 聖灰の暗号 2007 インターセックス 2008 水神 2009 ソルハ 2010 蠅の帝国―軍医たちの黙示録 2011 蛍の航跡―軍医たちの黙示録 2011 日御子 2012 天に星 地に花 2014 悲素 2015 受難 2016 守教 2017 沙林 偽りの王国 2021 短編集 風花病棟 2009年 ノンフィクション ギャンブル依存とたたかう 2004
  • 三たびの海峡
    ...56)  『アフリカの蹄』で南アフリカの人種差別事情を描いた作者の新作。病原菌による黒人幼児の大量抹殺という、問答無用の人非人たちが今もなお件の国にはいたりするのだよ、というような本で、なにか社会正義派の小説であったのだが、なにせ遠い国のできごとをルポルタージュ風にしか描いていない感じで、主人公たる日本人医師の問題意識がお仕着せがましく、作品としての魅力そのものに欠けていた。日本人読者に訴えかけるにはなにせ迫力にも欠けたいた。淡々としすぎていた。その作者が、今度は隣国朝鮮の悲劇の一端を書いた。作家として<書かねばならぬ>的モチーフを感じつつ書かれたのであろう同じ社会正義、同じ題材でも、朝鮮半島と日本とのこれまでの関わり方をぼくらに否応なく「どうだ?」と突き出してくることで、もう前作とは比較にはならない作品の存在を感じさせられた作品である。  純文学に組しないが単純に娯...
  • インターセックス
    ...  例えば、『アフリカの蹄』などは押し付けがましい小説として作家の善意ばかりが目立ち、読後感が悪く、読んだことを後悔さえした。解決方法はない開発途上国の医療に関してのみを語りたいならば、ルポという方法のほうがまだ身に入ってくると思う。残忍な感染小説を読まされても、感動はどこにもないのだ。 医療の情報小説的弱点を十分に予測した上で、娯楽小説に仕上げるという腕では、最近めきめき頭角を現し始めた海堂尊のような作家が、帚木サスペンスのような旧い実直派作家を脅かしている気がする。 帚木蓬生は、いわば生真面目すぎる作家なのだけれど、それで損をしている点も沢山あると思うのだけれど、本書は彼の医療ミステリとしては、まだいい方ではないのか。『閉鎖病棟』『臓器農場』といった彼の良かった面を久々に思い出した。  主人公のドクターに共鳴できる点、患者たち、脇役たちの個性が、それ...
  • チーム・バチスタの栄光
    ...に満ちていた。だが『アフリカの蹄』あたりから、ルポルタージュ色が強まってしまい、現実の側にミステリーが阿るように見え始め、小説としては重たさが増し、一方でエンターテインメントとしてはつまらなくなってしまった。その後、ぼくは医療ミステリーへのアレルギーを示すようになる。  この小説を手にしたのは、とある会社の同僚に勧められたためである。そもそもこの本を医療ミステリーとさえ知らなかった。手術チームが、スポーツチームのように人間ドラマを繰り返し、栄光を手にするまでのスポコンもののような小説なのかと勝手に思い込んでいた。  だから随分と遅くなってしまったが、同僚が、この小説の面白さは、最初の設定にありと、序章に当たる部分だけを喋って聴かせてくれたからだ。なるほど。そういう娯楽性に溢れたものであるのなら、読んでみようか。  実際に驚いた。ミステリーとしての手腕と、医者だ...
  • ウィルバー・スミス Wilbur A. Smith
    ウィルバー・スミス Wilbur A. Smith 長編 密猟者 1968 小菅正夫訳 ゴールド 1970 池央耿訳 ダイヤモンドハンター 1971 林太郎訳 二人の聖域 1974 名取光子訳 虎の眼 1975 飯島宏訳 熱砂の三人 1976 田中靖訳 灼熱戦線 1976 熊谷鉱司訳 飢えた海 1978 飯島宏訳 無法の裁き 1979 飯島宏訳 闇の豹 1984 山本光伸訳 アフリカの牙 1991 田村義進訳 リバー・ゴッド 1993 大澤晶訳 秘宝 1995 大澤晶訳 ネプチューンの剣 上野元美訳
  • 蛮族ども
    蛮賊ども 蛮賊ども (角川文庫) 題名:蛮賊ども 著者:船戸与一 発行:角川文庫 1987.12.20 再版 / 徳間文庫 1993.4.15 初刷 (初刊行は1982年) 価格:\460  船戸初期長編。舞台はアフリカ大陸、ローデシアから黒人革命のなったジンバブエ。黒人からの搾取で丸々と肥え太った金満家が、法に国外持ち出しを禁じられた自らの財産を秘密裡に傭兵を使って鉄路で運びだそうという計画。主役は9人の傭兵たち。そしてこの計画が黒人ゲリラ組織に洩れ、一方で金塊掠奪を企むプランが進む。またこれらすべてを阻止しようとする政府情報組織。すべてが列車と共にアフリカの大平原を疾走する物語だ。  文句なしに面白く、ちなみにぼくは百ページほど読んで床に就き、そのまま残り二百数十ページを読破、興奮してとうとう一睡もできず徹夜してしまったという凄玉娯楽大作なのである。相...
  • 蝕みの果実
    蝕みの果実 蝕みの果実 蝕みの果実 (講談社文庫) 題名:蝕みの果実 著者:船戸与一 発行:講談社 1996.10.11 初版 価格:\1,800  船戸与一の短編集は『祖国よ友よ』『カルナバル戦記』以来。つまり10年ぶり3冊目の短編集ということになるのだが、10年に一冊野ペースでしか短編集を出さないというところが、日本作家にしては既に破天荒な気がする。それだけ大長編作家としての船戸の体力にぼくらはいつも甘えてきたわけだが、たまには短編での腕のふるいを見てみたい、っていうのもファン心理の一つではなかろうか。  そういう好奇心を満足してくれるのがかくも珍しい船戸の短編集。首尾一貫してアメリカを舞台にスポーツを題材にしているということは、それなりにこうして一冊の短編集となる日を作者なりに考えていたのではないだろうか?  船戸の作品はアメリカ大陸から...
  • マイ・シスター、シリアルキラー
    マイ・シスター、シリアルキラー 題名:マイ・シスター、シリアルキラー 原題:My Sister, The Serial Killer (2017,2018) 著者:オインカン・ブレイスウェイト Oyinkan Braithwaite 訳者:粟飯原文子 発行:ハヤカワ・ミステリ 2021.01.15 初版 価格:¥1,700  ナイジェリア発新人女性作家によるデビュー・ヒットということである。ロンドンとナイジェリアの大都市ラゴス島を往来する若き女流作家(1988年生)のこれまでの人生がどのようなものかはわからないが、英国へ留学し、キングストン大学の学位を取得している上流育ち。写真は可愛らしくお洒落なイメージ。  まずはアフリカ発ミステリーというだけでも珍しいし、数々のミステリー賞を獲得したという、本作の煽情的なタイトルも話題性豊かで目立つだろう。ちなみ...
  • おれは殺し屋
    おれは殺し屋 おれは殺し屋 おれは殺し屋 (光風社文庫) 題名:おれは殺し屋 作者:森詠 発行:光風社出版 1992.3.20 初版 価格:\1,200(本体\1,165)  この本を買って読み終えたのは、単に自分が森詠のファンなもので、森詠の本は新しいものはどんどん買って読むという主義であったからに過ぎない。といって古い本を全部読破しているわけではないから、それほど思い入れのあるファンであるとも言えない。まあ、なんとなくチェックしておきたいジャンルの作家である、くらいかな?  それにしてもこの人は短編が多くて、たまにいい短編集も出すのだけど、ほとんどは雑誌掲載の細切れ作品を体裁よく纏めたものといった、しかもそれでいて値段の高いハードカバーが多い。この本は内容は大したこともないし(そろそろぼくも飽きてきてる)、わざわざハードカバーで出さんでも……と文句を...
  • 死神鴉 横浜狼犬 II
    死神鴉 横浜狼犬 II 題名:死神鴉 横浜狼犬 II 作者:森詠 発行:光文社カッパ・ノベルス 1999.8.25 初版 価格:\848  凄い傑作! なかなか見つからなかった本だけれど、アマゾン・コムが時間をかけて届けてくれた。ともかくも新宿鮫シリーズやら馳星周らがぶっ飛んでしまうようなアジアン・ノワールの傑作!   これは横浜狼犬/海道章のシリーズとしては、実は初作に当たる『嘆きの峠』に加筆補筆して改題した作品である。家の書棚に並んでいる『嘆きの峠』が未読だったのに、それと知らずこの手に入りにくい『死神鴉』を探し求めていた自分が今では愚かに見える。  しかし、これほどの傑作が絶版に近い状態(少なくとも『嘆きの峠』は絶版)に置いておくというのは、日本ハードボイルド&アジアン・ノワール愛読者にとって大変な不幸としか言いようがない。この作品...
  • ガダラの豚
    ガダラの豚 題名:ガダラの豚 作者:中島らも 発行:実業之日本社 1993.3.25 初版 価格:\2,000(本体\1,942)  とっても分厚いハードカバー。この本は、このまま武器として使えるかも知れない。抽象的な意味ではなく具体的にそのくらい重みと硬さのある本である。二冊に分けて欲しいとの声も高いのではないだろうか?  んで中身はというと、本の体裁がそのくらいなわけだから、やっぱり中身もすごいのである。重厚壮大で、前に読んだ『今夜すべてのバーで』からは創造もつかないくらいの冒険小説である。本当にいろいろな要素の混在したジャンル分け不明の国際面白恐怖アクション小説なのだ。  絶対にこの本は話題になるべきであるとも思う。『マークスの山』がなければ、この小説を今年のナンバー1に押したいほど、と言ってしまう。ううむ、絶賛してやるのだ。 ...
  • ベルリンで追われる男
    ベルリンで追われる男 題名:ベルリンで追われる男 原題:Illegal (2017) 著者:マックス・アンナス Max Annas 訳者:北川和代 発行:創元推理文庫 2019.09.20 初版 価格:¥1,080  ベルリンを舞台にしたランニング・アクション・ミステリー。全編よく走る主人公コージョは、ガーナ出身の不法滞在者。イリーガルな世界の住人が目撃してしまった殺人。  まるでヒッチコックの裏窓のようなシチュエイション。アパートの窓に見てしまった殺人。殴り殺される女。見る側は空き家に棲みついた不法滞在者。入国許可証を持たぬ有色人種ゆえに、常に司法の眼から逃れ、ベルリンの地下で生息する若者。と言ったって三十に手が届く。家族を捨て、家族に捨てられる漂流物のような人生。ガーナに帰ることは考えられない。  とにかく警察がわけもなく移民たちを追いま...
  • フォックスストーン
    フォックス・ストーン フォックス・ストーン (文春文庫) 題名:フォックス・ストーン 作者:笹本稜平 発行:文藝春秋 2003.05.15 初版 価格:\1,905  年間一作というペースがいい。雑なところがまったく見られない、練りに練られた文章だけで構成された小説作りがもののみごとに結果として反映されている。実力を見せつけるがごとき文章力によって鎧われたプロットがこれまた凝りに凝っている。一ページあたりの密度がそこらの小説に見習って欲しいほどで、どこもかしこも濃厚である。  主人公が日本人でありながらフランス外人部隊上がりの元傭兵、現セキュリティ・コンサルタントが、傭兵時代のパートナーの不審な死の謎を追って、アフリカ小国の虐殺の落とし物を拾って歩く物語。傭兵と聞いただけで、柘植久義あたりを思い出してぼくはうんざりする口なのだが、作品ごとに毛色を変えてくる...
  • 天童荒太/栗田教行
    天童荒太/栗田 教行 長編小説 孤独の歌声 1994.01 家族狩り 1995.01 永遠の仔 1999.03 包帯クラブ 2006.02 悼む人 2008.11 静人日記 2009 歓喜の仔 2012 ムーンナイト・ダイバー 2016.01 ペインレス 2018.4 巡礼の家 2019.10 ジェンダー・クライム 2024.01 栗田 教行名義 ジパング 林海象共著 1989.12 陽炎 1991.01 白の家族 (中編小説集) 1992.03 家族狩り 【新版】 幻世(まぼろよ)の祈り(新潮文庫 ) 家族狩り第1部 2004.02 遭難者の夢(新潮文庫 ) 家族狩り第2部 2004.03 贈られた手(新潮文庫 ) 家族狩り第3部 2004.04 巡礼者たち(新潮文庫 ) 家族狩り第4部 2004.05 まだ遠い光(新潮文庫 ) 家族狩り第5部 2004.06 短編集 あ...
  • 森 詠
    森 詠 燃える波濤 燃える波濤 第一部 1982 燃える波濤 第二部 1982 燃える波濤 第三部 1982 燃える波涛 明日のパルチザン 第4部 1988 燃える波涛 冬の烈日 第5部 1989 燃える波涛 烈日の朝 第6部 1990 キャサリン・シリーズ さらばアフリカの女王 1979 風の伝説 1987 陽炎の国 1989 横浜狼犬(ハウンドドッグ)シリーズ 青龍、哭く 1998 横浜狼犬(ハウンドドッグ) 1999 死神鴉 1999 警官嫌い 横浜狼犬エピソード〈1〉 2000 砂の時刻 横浜狼犬エピソード〈2〉 2001 オサム・シリーズ オサムの朝(あした) 1994 少年記―オサム14歳 2005 革命警察軍ゾル 革命警察軍ゾル〈1〉分断された日本 2006 続 七人の弁慶 七人の弁慶 2005 続 七人の弁慶 2006 長編小説 黒い龍 小説...
  • アフター・ダーク
    アフター・ダーク アフター・ダーク 題名:アフター・ダーク 原題:After Dark (1955) 作者:Jim Thompson 訳者:三川基好 発行:扶桑社 2001.10.30 初版 価格:¥1,429  ジム・トンプスンはパルプ・フィクションというよう安手の三流犯罪小説の作家でありながら、その実、天才的な暗黒小説の作家としてアメリカの正統派ハードボイルドよりとしてではなくノワール生誕の国フランスで評価された作家だと言う。パルプ・ノワールという言葉が現在では適切かもしれない。  『死ぬほどいい女』や『残酷な夜』のラスト・シーンは通常の小説としてみれば、断裂があり破綻があり、あまりにも前衛的であり、読者をある意味で無視しきっているように見える。  実はトンプスンはその破綻・前衛によって、実のところB級パルプ・フィクションという位置ににとどま...
  • 三時間の導線
    三分間の空隙 題名:三時間の導線 上/下 原題:Tre Timmar (2018) 著者:アンデシュ・ルースルンド Anders Roslund 訳者:清水由貴子・喜多代恵理子 発行:ハーパーBOOKS 2021.05.15 初版 価格:各¥1,040  グレーンス警部と潜入捜査員ピートとのW主人公シリーズ三部作も、いよいよ大団円を迎える。  『三秒間の死角』が、作品の完成度やインパクトのわりに正当な評価を得ていなかったものの、アンデシュ・ルースルンドの名は、元囚人の肩書きステファン・トゥンベリとの共著『熊と踊れ』二部作により、一気にエース級作家として知れ渡り、それを受けてか、『三秒間の死角』も『THE INFORMER/三秒間の死角』のタイトルでNYを舞台にストーリーもシンプル化した形に差し替えられたものの、ともかく映画化された。 ...
  • 007 白紙委任状
    007 白紙委任状 題名:007 白紙委任状 原題:Carte Blanche (2011) 著者:ジェフリー・ディーヴァー Jeffery Deaver 訳者:池田真紀子 発行:文藝春秋 2011.10.15 初版 2011.11.25 3刷 価格:¥2,380  最近、新しいキャラクター、コルター・ショーのシリーズを楽しんできたのに、本書は全然楽しめなかった。この作品が出た時代、ディーヴァーは売れっ子の頂点にあって、多作であることはもちろん、シリーズのポイントである警察捜査小説のシリーズも登場当初は大人気だったのが、徐々にワンパターン化し中弛みの時期を迎え始めた頃だったのだと思う。  そんな時期に、一応は鳴り物入りで売り出されたのが、原作者イアン・フレミングと数々の映画シリーズによって世界的スパイ・ヒーローとなった007ジェイムズ・ボンドに、ディ...
  • 浅田次郎
    浅田次郎 中国歴史ロマン 蒼穹の昴 1996 珍妃の井戸 1997 中原の虹 2006-2007 マンチュリアン・リポート 2010 きんぴか きんぴか(「三人の悪党」へ改題) 1992 気分はピカレスク キンピカ2(「血まみれのマリア」へ改題) 1993 ピカレスク英雄伝(「真夜中の喝采」へ改題) 1994 きんぴか(全作総集) 1996 プリズン・ホテル プリズンホテル 1993 プリズンホテル秋 1994 プリズンホテル冬 1995 プリズンホテル春 1997 天切り松闇がたり 天切り松闇がたり 闇の花道  第1巻 1996 天切り松闇がたり 残侠 第2巻 1999 天切り松 闇がたり 初湯千両 第2巻 2002 天切り松 闇がたり 昭和侠盗伝 第4巻 2005 長編小説 日輪の遺産 1993 地下鉄(メトロ)に乗って 1994 活動写真の女 1997 天国までの...
  • アメリカン・タブロイド
    アメリカン・タブロイド 題名 アメリカン・タブロイド 上/下 原題 American Tabloid (1995) 著者 James Ellroy 訳者 James Ellroy 発行 文芸春秋 1998.2.1 初版 価格 各\2,381  エルロイはやはり人を食っている。次々と視点を変え、文体を変え、作風を変えるんは今に始まったことはではない。しかし『ホワイト・ジャズ』から、のこのテンポの変化はやはり、これまでの読者を手玉に取ったものとしか言いようがない。  たいていは同じ主題、個のバイオレンスを低調音とした悪のアメリカ史を書いていながら、一作一作の作品のトーンを変えてしまうのは、見事としか言いようがない。この作品では、進行する物語をいくつもの【挿入文書】でサンドイッチしながら、読者の側を素晴らしいテンポで引き込んでゆ...
  • D.O.D.ダイス・オア・ダイ
    D.O.D.ダイス・オア・ダイ 題名:D.o.D.(DICE OR DIE) 作者:沢井 鯨 発行:小学館 2002.9.20 初版 価格:1,100  ぼくはこの作家が好きである。何故かというと、やはり昔山などをやっていた血が騒ぐというか、異郷や辺境へ向かってしまう内部システムというのは、通常の日本人にはあまりないわけで、それが最初からどこかに備わっていて、その行動原理ゆえに普通ではない世界へ飛び込んでゆくというのは、やはりぼくは好きなのだ。  この人はきっと滅多に本を書かなくても何とか食って行っているのだろうし、辺境を彷徨えるうちにこういう本を書くことによって、日本にどこかの部分で繋がっていたいというようなこともあるのかなとも思えないでもない。いわゆる漂流しそうになる船があくまで錨を下ろしておく場所としての作品。  ぼくにはこの作者のよう...
  • アメリカン・デス・トリップ
    アメリカン・デス・トリップ 題名 アメリカン・デス・トリップ 上/下 原題 The Cold Six Thousand (2001) 著者 ジェイムズ・エルロイ James Ellroy 訳者 田村義進 発行 文藝春秋 2001.9.15 初版 価格 各\2,381  『アメリカン・タブロイド』から6年。USAアンダーワールド三部作の第二作が漸く到着した。待ちに待たれたエルロイ、久々の長編。  JFKという名の祝祭に終わった前作。ダラスの熱い一日。葬られた者。悪と秘密を抱えたまま通り過ぎて行く者たちの夏は一度幕を閉じた。  そして本作。ダラスへ向かう者の登場。若造。父の差し金。クランとマフィアとヴェガスの物語が火を噴き始める。殺人と買収と裏切りの時代が、ぎりぎりと軋み始める。前作以上の密度で。重さで。風圧で。  ジ...
  • 生物学探偵セオ・クレイ 街の狩人
    生物学探偵セオ・クレイ 街の狩人 題名:生物学探偵セオ・クレイ 街の狩人 原題:Looking Glass (2018) 著者:アンドリュー・メイン Andrew Mayne 訳者:唐木田みゆき訳 発行:ハヤカワ文庫HM 2020.1.25 初版 価格:¥940  理科系が苦手な人はタイトルを見て本書を避けようとされるかもしれないが、理科系が苦手なぼくでもシリーズ一作目『生物学探偵セオ・クレイ 森の捕食者』ともども本作をしっかりと存分に楽しめたことを保証します。前作よりも理科系とかハイテク数学系などの場面に多くページが割かれている印象はあるものの、それらがストーリーや捜査に重要な小道具の役割を果たしてくれること、またそれら小道具の斬新さ、アイディアの豊富さで、理系云々以上にミステリー・ファンの好奇心をすごく掻き立ててくれるので是非ご安心頂きたい。  小...
  • 悪魔の羽根
    遮断地区 題名:悪魔の羽根 原題:The Devil s Feather (2005) 作者:ミネット・ウォルターズ Minette Walters 訳者:成川裕子 発行:創元推理文庫 2015.05.29 初版 価格:\1,340  中編集『養鶏場の殺人・火口箱』を読んでから、少しこの作家への見方がぼくの方で変わった。≪新ミステリの女王≫と誰が呼んでいるのか知らないが、この女流作家はミステリの女王という王道をゆく作家ではなく、むしろ多彩な変化球で打者ならぬ読者を幻惑してくるタイプの語り部であるように思う。  事件そのものは『遮断地区』特に強く感じられるのだが、時代性と社会性を背景にした骨太のものながら、庶民的な個の感情をベースに人間ドラマをひねり出し、心理の深層を描くことにおいて特に叙述力に秀でた作家なのだと思う。  本書はミネット・ウォル...
  • 用心棒
    用心棒 題名:用心棒 原題:The Boucer (2018) 著者:デイヴィッド・ゴードン David Gordon 訳者:青木千鶴訳 発行:ハヤカワ・ミステリ 2018.10.15 初版 価格:¥1,600  デイヴィッド・ゴードンと言えば、あの『二流小説家』で騒然たるデビューを果たした、あの作家。そう思っただけで、この本はポケミスであるにも関わらず、買い控えてしまっていた。当時はこの作家は、賛否両論で読者層を分断していたように思う。純文学への偏向が諸所に見られつつ、娯楽小説としても面白いということで、作品のミステリ部分だけが、何と日本で映画化された。ぼくはどちらも味わってみて、この手の小説は苦手なので、映画の方が面白かったかな、でもそちらも大したことはないか、などと正直うなされていたものだ。  それでも性懲りもなく、第二作『ミステリガール』も読...
  • 悪なき殺人
    悪なき殺人 題名:悪なき殺人 原題:Seules les bêtes (2017) 作者:コラン・ニエル Colin Niel 訳者:田中裕子 発行:新潮文庫 2024.11.1 初版 価格:¥850  何とも奇妙で不思議な小説である。フレンチ・ノワールの流れを汲みそうなイメージなのだが、何とやはり、というか既に映像化され、現在はDVDとして観ることができそうである(「悪なき殺人」”Only the Animals”(2019))。しかし、、、。  そう、しかし、である。本書は文章作品としての味わいが実に個性的なので、先に映像化作品を見ることはお薦めしない。本書の構成は5人の登場人物が各章毎に主人公となって語る形式の小説である。全員の証言を読む毎に、作品の世界がまるで違った角度から見えてくる。そのことがこの作品を、格別、個性的なものに化けさせているの...
  • 甦る帝国
    甦る帝国 題名:甦る帝国 上/下 原題:Spandau Phoenix (1993) 作者:Greg Iles 訳者:中津悠 発行:講談社文庫 1999.8.15 初版 価格:各\1,000  今現在、冒険小説の分野で壮大な叙事詩を書いて最も完璧に仕上げてみせる作家は、このグレッグ・アイルズをおいて他にないと思う。ぼくはこの作家はトマス・ハリス以来の、いわゆる王道をゆく作家であると感じている。同時に天才作家であるとも。  出版順序の逆にぼくは三作を読んでしまったのだが、普通逆行してどんどん面白くなってゆくということは、あまりない。しかもこの作品が彼のデビュー作とは、真に驚愕。西ドイツで少年時代を過ごしたというアイルズだからこそドイツへの造詣が深いのかもしれないが、世界情勢、大戦時の歴史、そういったものをすべて踏まえて、国際関係をもとにしたスパイ小...
  • アメリカン・ブラッド
    アメリカン・ブラッド 題名:アメリカン・ブラッド 原題:American Blood (2015) 作者:ベン・サンダス Ben Sanders 訳者:黒原敏行 発行:ハヤカワ・ミステリ 2016.7.15 初版 価格:\1,900-  世界は広い。そう感じさせる作家がまた一人登場。何と、ミステリにのめり込むあまり、高校生時代に習作なのだろうが長編小説を二作ほど書き上げた挙句、大学時代に、シリーズもののミステリを三作も出版させたというのがベン・サンダース。しかも聞いたことも読んだこともないけれど、この人はニュージーランドの作家だ。  なのに『アメリカン・ブラッド』という、アメリカの小説で世界デビュー。こうして日本でも翻訳されているのだが、作者の生年月日を考えると26歳で書き上げた作品ということになる。驚きの才能としか言いようがない。  荒削りと...
  • ベスト・アメリカン・ミステリ ハーレム・ノクターン
    ベスト・アメリカン・ミステリ ハーレム・ノクターン ベスト・アメリカン・ミステリ ハーレム・ノクターン (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) 題名:ベスト・アメリカン・ミステリ ハーレム・ノクターン 原題:The Best American Mystery Stories 2002(2002) 編者:ジェイムス・エルロイ&オットー・ペンズラー編 James Ellroy, Otto Penzler 訳者:木村二郎、古沢嘉通、他 発行:ハヤカワ・ミステリ 2005.3.15 初版 価格:\1,900  アメリカの短編小説が翻訳される機会は非常に少ないと思う。もしかしたらアメリカ人は短編小説なんて書かないんじゃないか、と錯覚を起こしそうになってしまう。  ぼくがアメリカの短編小説をとても面白いと感じたのは、近年ではローレンス・ブロックの『おかしなことを聞くね』...
  • 蝦夷地別件
    蝦夷地別件 蝦夷地別件〈上〉 (新潮文庫) 蝦夷地別件〈中〉 (新潮文庫) 蝦夷地別件〈下〉 (新潮文庫) 題名:蝦夷地別件 (上下) 作者:船戸与一 発行:新潮ミステリー倶楽部 1995.5.25 初版 価格:各\2,200(本体各\2,136)  船戸与一と言えば、一方で『山猫の夏』『非合法員』『黄色い蜃気楼』のような純エンターテインメント冒険小説を書いてはいるが、その主たる執筆活動は、むしろ世界各国の先住民族の歴史や現在に眼を向けられたものがほとんどであると言っていい。  南米・北米のインディオ、 南アフリカ、中近東・・・・ とこれまでの作品のほとんどが、先住民族の血塗られた生き様への傾斜の中で書かれているように思う。「日本は単一民族国家である」と国際的に発言した中曽根の例を見るまでもなく、薄れてきている日本という国家の中での先住民族=アイヌ...
  • 壊れた世界で彼は
    壊れた世界で彼は 題名:壊れた世界で彼は 原題:The Eastar Make Believes (2017) 著者:フィン・ベル Finn Bell 訳者:安達眞弓 発行:創元推理文庫 2022.5.31 価格:¥1,040  『死んだレモン』で衝撃的翻訳デビューを果たしたフィン・ベルは、作風もオリジナリティ豊か、発想も豊かだが、相当に毛色の変わった作家である。1978年アフリカ生まれ。ふうむ、若い! 法心理学者で受刑者のカウンセラー。ふうむ、やるな。ニュージーランドへ移住。思い切った人生転換。毛色の変わった作家だが、『死んだレモン』も電子書籍で自費出版したと言う。コロナの時代、作家になるのも新手の手法が出現しているとは驚愕の至り。それでもニュージーランド国内のミステリー文学賞を受賞しているのだ。強引だが個性的な作品が受けたのだろう。本業の知識経験ももちろ...
  • 死んだレモン
    死んだレモン 題名:死んだレモン 原題:Dead Lemons (2017) 作者:フィン・ベル Finn Bell 訳者:安達眞弓 発行:創元推理文庫 2020.07.31 初版 価格:¥1,200  七月の目玉となった作品。個性がいくつもある。一つにはニュージーランド発ミステリー。作者は、法心理学者としての本業の傍ら、小説は電子書籍でしか契約しないという欲のない姿勢を貫いているが、この通り、内容が素晴らしいため、作者の意に反して紙のメディアでも世界中に翻訳され、売れっ子となりつつある。  ページを開いた途端、絶体絶命の窮地にある主人公の現在が描写される。いきなりの海岸の崖に車いすごと足が岩に引っかかって宙ぶらりん。ぼくはこの作品の前に、クレア・マッキントッシュの『その手を離すのは、私』という本を読んでいて、その最終シーンが海辺の崖の上での意味深...
  • ブラック・ナイフ
    ブラック・ナイフ ブラック・ナイフ (Hayakawa Novels) 題名:ブラック・ナイフ 原題:SHADOW PREY (1990) 作者:JOHN SANDFORD 訳者:真崎義博 発行:早川書房 1993.6.30 初版 価格:\1,800(本体\1,748)  シリーズを時間を置いて読むと前作の記憶がほとんど失せてしまい、人物的、または時間的な繋がりに関する興趣がすっかり失せてしまうといういい読書例がこの本であった。靄のかかった前作の記憶を刺激するような場面が頻発するにも関わらず、ダヴンポート刑事とその周辺を思い出すのはなかなか困難なのである。やはりシリーズものをとことん楽しむには一気読みに限る、とつくづく思うが、なかなかそうも言ってられないのが新刊追跡者たちの辛いところなのである。  さて本書は、前作とはまたがらりと趣向を変えて、叛アメリカ...
  • 猟鬼
    猟鬼 題名:猟鬼 原題:The Button Man (1992) 著者:ブライアン・フリーマントル Brian Freemantle 訳者:松本剛史 発行:新潮文庫 2001.1.1 初版 価格:上\705/下\667  1.フリーマントルが、とうとう新しいシリーズを始めた。  2.しかもエスピオナージュではなく、何と警察捜査小説である。  この二点だけでフリーマントル・ファンならかなり興味をそそられる一冊であろう。実際に、読書を通じてこの新機軸に対する興味ばかりが働いて、何だか邪心ばかりで読んでしまっているような気にさえなってきた。  そうした新機軸でありながら、よくも悪くもフリーマントルの世界には違いなかった。プロフェッショナルとしての仕事の顔を表とすると、悩みやプレッシャーに抑圧されるような重い重い私生活が、男たちの裏の顔で...
  • 密猟者たち
    密猟者たち 題名:密猟者たち 原題:Porchers (1999) 作者:トム・フランクリン Tom Franklin 訳者:伏見威蕃 発行:創元コンテンポラリ 2003.06.13 初版 価格:\660  アメリカ小説ってたいていこんなもんだよな、と今まで翻訳小説で慣れ親しんでいた方に是非とも紹介したい本がこれ。少なくともぼくはこういう作品を読むと、現代アメリカ小説という世界の懐の深さを改めて思い知らされるからだ。アメリカ小説を、いや、アメリカという国をでもいい、知った風な顔をした通(つう)という奴に出くわしたなら、ぼくはその人間の傲慢さに対しこの作品をぶつけてやりたい。  それがこの本の価値であると思う。思いもかけないアメリカがあって、アメリカがヨーロッパではなくアメリカで在り続けたその存在の根本を考えさせられるようなある種、力を蓄えた作...
  • 欲望の街
    欲望の街 [429] Client error `POST https //webservices.amazon.co.jp/paapi5/getitems` resulted in a `429 Too Many Requests` response { __type com.amazon.paapi5#TooManyRequestsException , Errors [{ Code TooManyRequests , Message The request was de (truncated...) [429] Client error `POST https //webservices.amazon.co.jp/paapi5/getitems` resulted in a `429 Too Many Requests` response { __ty...
  • ベスト・アメリカン・ミステリ ジュークボックス・キング
    ベスト・アメリカン・ミステリ ジュークボックス・キング ベスト・アメリカン・ミステリ ジュークボックス・キング (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) 題名:ベスト・アメリカン・ミステリ ジュークボックス・キング 原題:The Best American Mystery Stories 2003(2003) 編者:マイクル・コナリー&オットー・ペンズラー編 Michael Connelly, Otto Penzler 訳者:古沢嘉通、他 発行:ハヤカワ・ミステリ 2005.4.15 初版 価格:\1.800  同じアンソロジーの名シリーズをハヤカワが立て続けに出した。確かにDHCの出版は2001年で止まっていた。でも今になっていきなり二冊というのは、不思議だ。ぼくの4月は、結局この二冊を読むのに大半を費やすことになった。それだけじっくり読める二冊だったわけだ。 ...
  • 処刑室
    処刑室 題名:処刑室 原題:THE CHAMBER (1994) 作者:JOHN GRISHAM 訳者:白石朗 発行:新潮社 1995.2.25 初版 価格:\2,700(本体\2,621)  『評決のとき』というデビュー作を読んだ時、ぼくは、それ以前のスリラー作家グリシャムというイメージから離れて、法律家出身の非常に骨の通った作家だという驚きを得たのであったが、これはその続編というべき小説である。スリラーでもミステリーでもない、映画『ミシシッピ・バーニング』を思い起こさせる、アメリカ裏面史に真っ向から挑戦した力作であった。  もちろん主題はタイトルから類推されるとおり、死刑制度そのものにもある。日本の死刑制度への疑問という意味では死刑囚官房で精神科医として勤務していた加賀乙彦の『死刑囚の記録』(中公文庫)『宣告』(上下・新潮文庫) などがあり...
  • イエロードッグ・ブルース
    イエロードッグ・ブルース 題名:イエロードッグ・ブルース 原題:A Little Yellow Dog (1996) 作者:Walter Mosley 訳者:坂本憲一 発行:早川書房 1998.9.30 初版 価格:\2,500  イージー(エゼキエル)・ローリンズとマウスことリチャード・アレグザンダーのシリーズ5作目。どの作品も忘れ難い印象を残し、アメリカの郷愁を漂わせる黒人探偵のシリーズだが、イージーとマウスは本作では堅気の仕事に就いている。驚きの滑り出し。だが……。  マウスは、スペンサー・シリーズにおけるホークであり、バーク・シリーズにおける音無しマックスである。イージーの暴力の部分を一手に引き受けるばかりではなく、イージーとの間にも常に生存の緊張感を漂わせる闇の王者。天性のキラー。だが本作ではイージー自らが暴力に向かう部分を持っている。自分...
  • われらがボス
    われらがボス われらがボス―87分署シリーズ (ハヤカワ・ミステリ文庫 13-3) 題名:われらがボス 原題:Hail to the Chief (1973) 著者:エド・マクベイン Ed McBain 訳者:井上一夫 発行:ハヤカワ文庫HM 1976.05.31 1刷 価格:\400  これは<87分署>版『カラーズ』の物語である。ストリート・ギャングが街をひっくり返して全面戦争に突入する。警察がこれを追う。冒頭に六つの死体。乳飲み子の死体まで混じっている。キャレラとクリングは眼を背ける。現代アメリカの最も病的な場所への第一歩。  構成が若干変わっている。まず犯人の一人(主犯?)と思われる人物がのっけから逮捕される。取り調べに応じて、ナスシズムの気のある脳天気なキッドは告白を始める。本書の肝心な部分はほとんどがこの供述書で成り立っている。供述書と、...
  • クレイジー・イン・アラバマ
    クレイジー・イン・アラバマ 題名:クレイジー イン アラバマ 原題:Crazy In Arabama (1993) 作者:Mark Childress 訳者:村井智之 発行:産業編集センター 2000.6.15 初版 価格:\1,600  今年のベストには絶対に入れようと思っている、ぼくとしてはかなりお気に入りの作品。  ルシールおばさんと少年ピージョーとの二つの物語が同時進行するブラックでヒューマンで何ともアメリカな物語であるのだけれど、何と言っても1965年のアラバマが舞台ってところが味噌。マーティン・ルーサー・キング牧師とアラバマ州知事ジョージ・ウォ-レスとの演説対決のシーンもあれば、夫を殺してその首を持ち歩きならがもハリウッド女優を目差しているルシールおばさんの『じゃじゃ馬億万長者』出演風景もある。  どちらかと言えばジョン・グリシ...
  • 帰らざる荒野
    帰らざる荒野 帰らざる荒野 (集英社文庫) 帰らざる荒野 題名:帰らざる荒野 作者:佐々木 譲 発行:集英社 2003.04.30 初版 価格:\1,500  すっかりこの作家の書く一つのジャンルとして定着した観のある北海道開拓ウェスタン。五稜郭戦争に端を発して、敗走した侍のその後から始まり、昨年は怪傑黒頭巾伝説に新解釈を持ち込んでの、蝦夷を舞台にした時代劇ヒーローまで創り上げた。  本書は、より開拓史に根ざそうという意図があったものか、五稜郭戦争から明治大正にかけての三代に渡る牧場主一家の物語を、年代記風にではなく、連作短編活劇という形で編み合わせた一冊である。  馬を使った商売を生業として函館から徐々に蝦夷の奥地へと移動してゆく牧場主の次男。旅は当時馬によるものが多く、鉄道も一部開通する。砂金取りや、流れ者が、あまり機能しているとは...
  • エヴァン・スコットの戦争
    エヴァン・スコットの戦争 題名 エヴァン・スコットの戦争 原題 Karma (1994) 著者 ミッチェル・スミス Mitchell Smith 訳者 布施由紀子 発行 新潮文庫 1997.3.1 初版 価格 \800  最近は、イギリス冒険小説という王道がやや衰退気味で、代わりにアメリカの死闘小説とでもいうべきものが、幅を利かせ始めている。それはあたかも西部劇映画が現代に帰ってきたかのごとき現象であり、そうした小説中の主人公は闘いを肯定し、己の身や家族や仲間を守るため、死闘の中に身を投じて行く。  それら死闘小説とでも言うべき範疇の走りになったのが、スティーヴン・ハンターの『ダーティ・ホワイト・ボーイズ』であり、トム・ウィロックスの『ブラッド・キング』であり、この『エヴァン・スコットの戦争』である。どれも1997年の冬から春にかけて邦訳...
  • ストレートタイム
    ストレートタイム [429] Client error `POST https //webservices.amazon.co.jp/paapi5/getitems` resulted in a `429 Too Many Requests` response { __type com.amazon.paapi5#TooManyRequestsException , Errors [{ Code TooManyRequests , Message The request was de (truncated...) 題名:ストレートタイム 原題:No Beast so Fierce (1973) 作者:Edward Bunker 訳者:沢川進 発行:角川文庫 1998.9.25 初刷 価格:\920  アメリカでは犯罪にまつわる小説は否応...
  • 帰らざる故郷
    帰らざる故郷 題名:帰らざる故郷 原題:The Unwilling (2020) 作者:ジョン・ハート John Hart 訳者:東野さやか 発行:ハヤカワ・ミステリ 2021.5.15日 初版 価格:¥2,100  1972年。舞台はノース・カロライナ。ヴェトナム帰還兵とその一家の物語。作者のジョン・ハートは1965年生まれだから、本書の背景の時代は、実は作家7歳の幼年期ということになる。翻って、読者のぼくはこの年、16歳。反戦のフォークソング、悲劇的で衝撃的なアメリカン・ニュー・シネマのショッキングなエンディングに、もろに曝されて育ったあの多感な時代。  だからこそ、というだけではないにせよ、この物語の時代背景を記憶に蘇らせながら、そこを通り抜けたアメリカの青春群像を生き生きと、現代に読み返し、想い出してゆくという読書行為は、何とも心にうずくもの...
  • 悪徳の都
    悪徳の都 悪徳の都〈上〉 (扶桑社ミステリー) 悪徳の都〈下〉 (扶桑社ミステリー) 題名:悪徳の都 上/下 原題:Hot Springs (2000) 作者:Stephen Hunter 訳者:公手成幸 発行:扶桑社ミステリ- 2001.2.28 初版 価格:各\781  『悪徳の都』……ううむなんたるタイトル……これじゃまるでパゾリーニやフェリーニの映画ではないか。原題が固有名詞なんだから、そのまま『ホット・スプリングス』でいいじゃないか、というのが最初の感想。とっても不思議な邦題だ。  ホット・スプリングスは実在の街である。そこで実際に起こった元軍人たちの蜂起という事件も、歴史的に記録された事実なのだそうである。スワガー・サーガそのものもアメリカの現代戦史に深く関わるものだとは思うけれども、この作品ほどに実名固有名詞が飛び交う作品というのは、今...
  • ダーティ・ホワイト・ボーイズ
    ダーティ・ホワイト・ボーイズ ダーティホワイトボーイズ (扶桑社ミステリー) 題名:ダーティ・ホワイト・ボーイズ 原題:Dirty White Boys (1994) 作者:Stephen Hunter 訳者:公手成幸 発行:扶桑社ミステリ 1997.2.28 初版 価格:\900(本体\874)  骨太の作風で寡作。S・ハンターの印象はこれに尽きる。だからこそ作品が出ただけで胸が高鳴る名前でもある。  この作品が邦訳で春先に出ていることを、ぼくは一度知らされていながら失念していたか、全く知らなかったかのどちらかである。FADVのオフにおいてこの作品を知らされたときには、再びぼくの読書欲の対象として強力に浮上してきた。  ハンターは寡作なだけに各作品にこれと言った傾向というのが見い出しにくい。各作品はどれもこれも舞台を変え質を変えて見える。本作品...
  • perish twice
    二度目の破滅 二度目の破滅―サニー・ランドル・シリーズ (ハヤカワ・ミステリ文庫) 題名:二度目の破滅 原題:Perish Twice (2000) 著者:ロバート・B・パーカー Robert B. Parker 訳者:奥村章子 発行:ハヤカワ文庫HM 2001.9.15 初版 価格:\760  ロバート・B・パーカーという作家がアメリカでベストセラーだということはわかる。しかしその読者層はどういったところなのだろうか? アメリカでどういう人たちにこの作家は人気があるのだろうか。  そんなことを思うのも、いつもスペンサーがスーザンを相手に、男女の自立の問題、恋愛の問題、セックスの問題などに取り組みつつ、スペンサーはむしろマチズモ、レイチェル・ウォーレスはフェミニズムといった、かなりの男女間の理解の距離を埋める作業に、パーカー作品の主人公らは苦労している...
  • ベスト・アメリカン・ミステリ スネーク・アイズ
    ベスト・アメリカン・ミステリ スネーク・アイズ ベスト・アメリカン・ミステリスネーク・アイズ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) 題名 ベスト・アメリカン・ミステリ スネーク・アイズ 原題:The Best American Mystery Stories 2004(2004) 作者:ネルソン・デミル&オットー・ペンズラー編 Nelson DeMille, Otto Penzler 訳者:田村義進、他 発行:ハヤカワ・ミステリ 2005.12.15 初版 価格:\1,900  アンソロジーのバイブルみたいな名シリーズである。ハヤカワが二年遅れくらいのテンポで翻訳出版を続けてくれるので、短編ファンにとっては有難い。  50本の短編に絞る役割をペンズラーが行い、その内から20本を選び出す責任ある作業を、ゲスト作家に任せる。ゲスト作家の方は、最後の篩い分けという...
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