wiki クライムウェイヴ(Sysop読書録 活字をめぐる冒険) 内検索 / 「アリゾナ無宿」で検索した結果

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  • アリゾナ無宿
    アリゾナ無宿 アリゾナ無宿 (新潮文庫) アリゾナ無宿 題名:アリゾナ無宿 作者:逢坂剛 発行:新潮社 2002.4.20 初版 価格:\1,600  ロバート・B・パーカーが『ガンマンの伝説』を書いた同じ年に逢坂剛が同じようなピュア・ウェスタンに取り組んだ本を出すなんて、おそらく偶然なのだろうけれど、滅多にないことだけに相当に不思議。  パーカーは3-4ヶ月で一作を一気に書き上げてしまうという集中力を使うことのできるアメリカ的ベストセラー作家境遇なのだけれど、最近の逢坂剛は博報堂時代の二足の草鞋のよい意味でのアマチュアリズムが影を潜め、じっくりと作品を書いてはいないのが見え見えになってきている。この作品も雑誌に何度か分けて出したものを後で加筆して纏めてあるという日本作家定番のスタイル。  『ガンマンの伝説』はさほど凄い作品でもなく集中力がある...
  • 逢坂剛
    ...8 ウエスタン アリゾナ無宿 2002 逆襲の地平線 2005 禿鷹シリーズ 禿鷹の夜 2000 無防備都市(禿鷹の夜 2) 2005 禿鷹狩り 2006 ノンシリーズ長編 スペイン灼熱の午後 1984 カディスの赤い星 1986 さまよえる脳髄 1988 斜影はるかな国 1994 燃える地の果てに 1998 幻の祭典 1999 熱き血の誇り 2004 短編作品集 空白の研究 1981 コルドバの女豹(「赤い熱気球」を改題) 1982 幻のマドリード通信 1983 情状鑑定人 1985 水中眼鏡(ゴーグル)の女 1987 まりえの客 1994 デズデモーナの不貞 1999 御茶ノ水署迷走コンビ・シリーズ(連作短編集) しのびよる月 1998 相棒に気をつけろ 2001 配達される女 2004 恩はあだで返せ 2005 重蔵始末シリーズ(連作短編集) 重蔵始末(...
  • 新・探偵物語
    新・探偵物語 題名:新・探偵物語 作者:小鷹信光 発行:幻冬舎 2000.10.10 初版 価格:\1,600  初回の探偵物語はTVと同じ設定である雑踏の都会がその活動の拠点であり、街自体が舞台であった。二作目では北海道の十勝の大平原が広大な舞台となっていた。そして21年ぶりの新作になる本書では、作品の上を同じだけの時間が経過していて、舞台も北米大陸に移っていた。  LAからラスベガス、アリゾナ、デス・バレイへと虚無とともに工藤俊作が旅を重ねる。ハードボイルドの国を舞台にしての、和製ハードボイルド。小鷹信光の傑作がまた一つ。ぼくの揺らぎのない昨年トップ作品である。  アメリカを舞台にしているからには、当然のことながら銃撃戦もカーチェイスもありである。どこかクラムリーの『明日なき二人』(小鷹訳です!)あたりを髣髴とさせる。人生とか時間とかい...
  • 銃撃の宴
    銃撃の宴 銃撃の宴 (徳間文庫 140-2) (↑アマゾンで購入) 題名:銃撃の宴 作者:船戸与一 発行:徳間文庫 1984.6.15 初版 価格:\460  船戸与一初期短編集。すべてアメリカを舞台にして、主人公は流れ者の日本人であるというところが興味深い。冒険小説の舞台として、森詠や逢坂剛と並び船戸が海外の辺境に題材を求めるのは、日本ではあまりリアリティのない銃撃シーンが作品の中に欲しいからではないだろうか。銃撃シーンを日本国内でふんだんに取り入れると、おそらく往年の日活無国籍アクション映画の様相を呈することになってしまう。冒険小説の生まれ育ちにくい土壌であるがゆえに、主人公たちは、海外の辺境に逃れたり、佐々木譲の如く過去に旅することになる。『銃撃の宴』という作品が収められているわけではない本書は、その名のとおりの活劇シーンを、アメリカの闇の部分に求めて...
  • セバスチアン・ジャプリゾ
    セバスチアン・ジャプリゾ Sèbastien Japrisot / ジャン=バティスト・ロッシ Jean Baptiste Rossi 長編小説 寝台車の殺人者 1962 シンデレラの罠 1962 新車の中の女 1966 平岡 敦訳 殺意の夏 1977 長い日曜日 1991 田部 武光訳 ジャン=バティスト・ロッシ名義 不幸な出発 1950
  • アクアリウム
    アクアリウム アクアリウム (新潮文庫) 題名:アクアリウム 作者:篠田節子 発行:スコラ 1993.3.8 初刷 価格:\1,600  ぼくの篠田節子最後の読み残しである初期長編。粒揃いの作品が多い中でもこれは上々の一作。まず発想がいいし、イメージが素晴らしい。この人の最大の長所は、ジャンルに捉われることのないその主題の独自性だと常々思っているだけに、この作品の独自性がまたひときわなので、嬉しくなってしまう。  導入部からもう異常小説の始まりって感じで、ジャンルを素早く逸脱して行くその離れ業とイメージの豊富さにただただ度肝を抜かれる。文章が流麗で読みやすいのもこの人の特徴。これと言って奇を衒っていないだけにこういうのが巧い文章なのだなと、改めて納得させられること頻り。  地底湖へのスキューバ・ダイビングと、そこで出会う死体、魚たち、不思議な象徴的な...
  • サ行作家
    サ行作家 マイケル・サイモン トーマス・サヴェージ コートニー・サマーズ ジェイムズ・サリス ベン・サンダース ジョン・サンドフォード フェルディナント・フォン・シーラッハ グラント・ジャーキンス ホリー・ジャクソン ハロルド・ジャフィ レイ・シャノン セバスチアン・ジャプリゾ マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー ベルンハルト・シュリンク マイケル・シェイボン ジョゼ・ジョバンニ マウリツィオ・デ・ジョバンニ ジェイソン・スター リチャード・スターク ドメニック・スタンズベリー マリア・V・スナイダー ウィルバー・スミス シェイマス・スミス スコット・スミス ミッチェル・スミス トム・ロブ・スミス メアリ=アン・T・スミス カリン・スローター セーアン・スヴァイストロプ ボー・スヴェーンストレム ピーター・スワンソン アレクサンデル・セーデルベリ レイ・セレスティン
  • 長い日曜日
    長い日曜日 第名:長い日曜日 原題:Un Long Dimanche De Fiancaille (1995) 作者:セバスチアン・ジャプリゾ Sebastian Japrisot 訳者:田部 武光 発行:創元推理文庫 2005.3.11 初刷 価格:\940  図書館で、ハードカバーを手に取ったことがある。1994年に発刊されたハードカバーだった。いずれ時間の取れたときに読もうと思っているうちに、文庫化されてしまった。文庫化の理由としてはよくあるパターンで、映画化を機にというものだ。映画のタイトルは『ロング・エンゲージメント』。  小説を6作しか書いていないにも関わらず、フランスを代表するミステリー作家として筆頭に立つセバスチアン・ジャプリゾは、出す作品がヒットを飛ばしたり映画になったりするので有名だ。映画のシナリオも手がけているから、ぼく...
  • アリアドネの弾丸
    アリアドネの弾丸 題名:アリアドネの弾丸 作者:海堂 尊 発行:宝島社 2009.09.24 初版 価格:\1,429  海堂尊『アリアドネの弾丸』読了。日曜日にあと50ページを残しながら、なかなか読み終わらないのは、遅い帰宅と真夜中近い晩酌、そして訪れる強烈な睡魔のせいだ。ぶつぎりにページを繰ったためこの作品には気の毒だが、トリックの多い本格ミステリに近い作品であるように思えた。宝島大賞で始まったシリーズだけに、宝島社から出る作品は、海堂尊の中でも主流と呼べるものが多く、田口、白鳥の迷コンビを軸に、エンターテインメント性が強い。  一方で『ジーンワルツ』の帝華大シリーズはどちらかと言えば少し生真面目な作風かな。  今回は久々に原点回帰のミステリ、そしてテーマは、作者がこれを現実化するために作家になったとまで言う死後画像診断。警察のサイドで...
  • 戦場のアリス
    戦場のアリス 題名:戦場のアリス 原題:The Alice Network (2017) 著者:ケイト・クイン Kate Quinn 訳者:加藤洋子訳 発行:ハーパーBOOKS 2019.3.20 初版 価格:¥1,204  最初に手ごわそうな予感。一見して、気難しい貴婦人のように見えるこの物語は、大抵の魅力的な女性がそうであるように、時間とともにようやく心からの笑顔を浮かべ始める。最初の100ページは、とりすましたよそ行きの表情を浮かべるばかりか、興が乗らないでいると、今にも、構えたルガーの引き金を引きそうな、緊張感に満ちた険悪な悪女との出会いといったところだ。しかし、とっつきくい女ほど、後になって味が出てくる。そして情が濃い。本書はそんな、ファム・ファタルみたいな、いい女を思わせる、とても魅力的で奥深い作品なのだった。  第一次大戦時、ドイツ占領下...
  • 小杉健治
    小杉健治 長編小説 陰の判決 1985.05 弁護側の秘密 1985.12 二重裁判 1986.06 死者の威嚇 1986.06 月村弁護士逆転法廷 1986.07 法廷の疑惑 1986.11 夏井冬子の先端犯罪 1987.04 絆 1987.06 裁かれる判事  越後出雲崎の女 1987.08 東京‐岐阜Σ(シグマ)0秒の罠 1987.10 影の核心 1988.04 疑惑 1988.06 汚名 1988.10 崖 1989.02 土俵を走る殺意 1989.05 最終鑑定 1990.01 虚飾の自画像 1990.06 飛べない鴉 1990.09 下へのぼる街 1991.05 検察者 1992.12 裁きの扉 1993.05 特許裁判 1994.01 宿敵 1994.08 沈黙の土俵 1995.02 帰還 1995.04 花の堤 新・向島物語 1995.09 荒城の蒼き殺意 1995.1...
  • メアリ=アン・T・スミス
    メアリ=アン・T・スミス Mary-Ann Tirone Smith FBI特別捜査官 ポピー・ライス・シリーズ テキサスは眠れない 2002 かもめの叫びは聞こえない 2003 他、長編 殺人を綴る女 1998
  • アリソン・ゲイリン Alison Gaylin
    アリソン・ゲイリン Alison Gaylin 長編 もし今夜ぼくが死んだら、  奥村章子訳 2018
  • 私の庭 蝦夷地篇
    私の庭 蝦夷地篇 題名:私の庭 蝦夷地篇 作者:花村萬月 発行:光文社 2007.01.25 初版 価格:\2,400  浅草篇を読んだのが随分昔なので、多くの詳細は忘れてしまった。覚えているのは、権介が士農工商のヒエラルキーから外れた存在の記録されない無宿人であるということ。そんな権助が幕末の浅草で、刀の修行だけを研ぎ澄まし、人斬りになって、縄張りを後にしたところで浅草篇が終わったということだけである。  なのでいきなり蝦夷地篇を開いたものの、過去の人物、十郎だとか爺だとか夢路だとかが、誰だったのかを確認する為に、何度か浅草篇のページをぱらぱら繰り直さねばならなかった。  しかし、本書は浅草篇という過去を引きずりはするものの、権介以外の登場人物は一新している。舞台だって津軽から海峡を渡り、渡島半島のどこかの浜に漂着するところから始まる、い...
  • ホテル・ネヴァーシンク
    ホテル・ネヴァーシンク 題名:ホテル・ネヴァーシンク 原題:The Hotel Neversink (2019) 作者:アダム・オファロン・プライス Adam Ofallon Price 訳者:青木純子 発行:ハヤカワ・ミステリ 2020.12.15日 初版 価格:¥1,900  ロバート・B・パーカーのスペンサー・シリーズの初期作品の一つである『キャッツキルの鷲』というタイトルはなぜか忘れがたいものがある。さてそのキャッツキルという地名だが、「キル」は古いオランダ語で「川」の意味なのだそうだ。古いオランダ語。うーむ。  ハドソン川に沿ったいくつかの土地の名には「キル」が付いてるらしい。この作品の直後にぼくが読むことになるアリソン・ゲイリン著『もし今夜ぼくが死んだら、』の舞台が、実はニューヨークに注ぐハドソン川流域の架空の町ヘヴンキルなのである。「キ...
  • 新車のなかの女
    新車のなかの女 [429] Client error `POST https //webservices.amazon.co.jp/paapi5/getitems` resulted in a `429 Too Many Requests` response { __type com.amazon.paapi5#TooManyRequestsException , Errors [{ Code TooManyRequests , Message The request was de (truncated...) 題名:新車のなかの女 原題:La Dame Avec Des Lunettes Un Fusil (1966) 作者:セバスチャン・ジャプリゾ Sébastien Japrisot 訳者:平岡 敦 発行:創元推理文庫 2015/7/31 初版 ...
  • アリステア・マクリーン Alistair Maclean
    アリステア・マクリーン Alistair Maclean 長編小説 女王陛下のユリシーズ号 1955 村上博基訳 ナヴァロンの要塞 1957 平井イサク訳 シンガポール脱出 1958 伊藤哲訳 最後の国境線 1959 矢野徹訳 北極戦線 1959 森崎潤一郎訳 恐怖の関門 1961 伊藤哲訳 黒い十字軍 1961 平井イサク訳 イアン・スチュアート名義 黄金のランデヴー 1962 伊藤哲訳 悪魔の兵器 1962 平井イサク訳 原子力潜水艦ドルフィン 1963 高橋泰邦訳 八点鐘が鳴る時 1966 矢野徹訳 荒鷲の要塞 1967 平井イサク訳 ナヴァロンの嵐 1968 平井イサク訳 麻薬運河 1969 矢野徹訳 巡礼のキャラバン隊 1970 高橋豊訳 北海の墓場 1971 平井イサク訳 歪んだサーキット 1973 平井イサク訳 軍用列車 1974 矢野徹訳 地獄の綱渡り 1975 矢野徹...
  • 狼は天使の匂い
    狼は天使の匂い 題名:狼は天使の匂い 原題:Black Friday (1954) 作者:デイヴィッド・グーディス David Goodis 訳者:真先義博 発行:ハヤカワ・ミステリ 2003.07.15 初版 価格:\900  二時間を越すルネ・クレマンの映画『狼は天使の匂い』が作られたのが1974年。監督のルネ・クレマンも脚本のセバスチャン・ジャプリゾも売れっ子だった。ジャン・ルイ・トランニャンも売れっ子だった。ロバート・ライアンは晩年の一つ手前ということもあり、この映画では相当に老けて見える。だが米仏の二大人気男優による共演など、密かな人気を集めるフィルム・ノワールであった。  当時フランス映画の題材として頻繁に取り上げられた原作がアメリカでさほど評価されることがなかったことは今に始まったことではない。ジム・トンプスンと同じように、本書のノ...
  • 狙われた楽園
    狙われた楽園 題名:狙われた楽園 原題:Camino Winds (2020) 著者:ジョン・グリシャム John Grisham 訳者:星野真里 発行:中央公論新社 2021.9.25 初版 価格:¥1,800  最近は文庫化された邦訳本がほとんどだが、その中身は、相変わらず充実したリーガル・スリラー。一方で時々、毛色の変わった作品を書くこともあるジョン・グリシャムは、らしくない(?)ジャンル外エンターテインメントで楽しませてくれることも多い。本書はその手の最新シリーズの一つ、本好きミステリー『「グレート・ギャッツビー」を追え』の続編である。  前作と同じキャラクターたちの上に、さらに興味深い登場人物を増強。前作でおなじみの架空の高級リゾート地であるフロリダ州楽園カミーノ・アイランドは、本作では予想を超える規模の巨大ハリケーンの上陸と、全米スケール...
  • 極北クレイマー
    極北クレイマー 題名:極北クレイマー 作者:海堂 尊 発行:新潮社 2009.04.30 初版 価格:\1,600  破産した北の架空の自治体・極北市を舞台とする。いや、舞台というより、この破産した土地の医療現場である極北市立病院そのものが、この小説の主人公であるのかもしれない。  誰がどう読んでも、夕張という実在の破産自治体がモデルであることは自明である。私立病院があり、破綻した医療システム、駅に隣接した豪奢なリゾート・ホテル、その裏の破綻したスキー場、破綻した遊園地。そのどれもが夕張以外の何者をも想起させない。  ぼくは、昔、医療関連の仕事をしていた頃、ここの市立病院に何度か入ったことがある。そこは、まぎれもなく老朽化した暗い建物だった。純白のリゾート・ホテルからいくらも歩かない場所に、病院は、古びて傾いていた。  病院前から延...
  • 喪失のブルース
    喪失のブルース 題名:喪失のブルース 原題:The Lost Ones (2017) 著者:シーナ・カマル Sheena Kamal 訳者:森嶋マリ訳 発行:ハーパーBOOKS 2018.4.15 初版 価格:¥991  アンチ・ヒーローならぬアンチ・ヒロイン。十代後半でこの世の悲劇がすべて襲いかかってきたような女性ノラ・ワッツ、ネイティブ・アメリカンとのハーフでもである彼女の三部作の幕開け第一作である。さてその悲劇。レイプと暴力と遺棄。ジャーナリストに救出されたものの、長い昏睡期間を経て出産の大量出血のさなかで目覚める。レイプ犯の子を妊娠していたのだ。精神を病んだままのノラ。生まれた娘は里子に出され、ノラはブルース・シンガーとしての才能を活かし歌手を志したもののアルコール依存症となる。  アル中からどうやら脱け出せたという段階で、探偵事務所の調...
  • 罪深き海辺
    罪深き海辺 題名:罪深き海辺 作者:大沢在昌 発行:毎日新聞社 2009.07.25 初版 価格:\1,700  二つの勢力が対立する地方の閉ざされた町に不意に現われる流れ者。彼が現われた時にすべてが動き出す。 この手の設定ときたら、黒沢明監督『用心棒』であり、ハメットの『赤い収穫(血の収穫)』であり、もちろんクリント・イーストウッドを一躍世界的スターにしたセルジオ・レオーネの黒沢リメイク『荒野の用心棒』であったのだ。  そんな世界に、作家なら誰もが挑みたいのかもしれない。かつて船戸与一が『山猫の夏』で挑んだように、冒険小説の最早大家と言っていいだろう、大沢が挑んだのである。  日本の田舎町ならではの空気が濃厚に出ているが、ちと複雑に絡み合うストーリーを追いすぎたのか、この人の欠点である旅情とか叙情というものの欠如がやはり目立つ感じがした...
  • 愚者(あほ)が出てくる、城塞(おしろ)が見える
    愚者(あほ)が出てくる、城塞(おしろ)が見える 題名:愚者(あほ)が出てくる、城塞(おしろ)が見える 原題:O Dingos, O Shateaux (1972) 作者:ジャン=パトリック・マンシェット Jean-Patrick Manchette 訳者:中条省平 発行:光文社古典新訳文庫 2009.1.20 初版 価格:\552  中条昌平が岡村孝訳の『狼がきた、城へ逃げろ』をタイトルからして誤訳であるして、自分がもっとマンシェットの雰囲気をと、ペンを執り直し、改めて訳したものだそうだが、見た限りでは、訳者なんていうレベルではなくマンシェットのラディカルなパワーしか感じることができなかった。  他者訳のタイトルを批判しながら「愚者」を「あほ」と読ませたり「城塞」を「おしろ」と読ませたり、いかにランボオの中原中也訳をイメージしたからと言ってマンシェッ...
  • 死のドレスを花婿に 
    死のドレスを花婿に 題名:死のドレスを花婿に 原題:Robe de marié (2009) 作者:ピエール・ルメートル Pierre Lemaitre 訳者:吉田恒雄 発行:文春文庫 2015/4/10 初刷 2015/4/20 3刷 価格:\790  今年は昨年の『その女アレックス』の大ヒットを受けて、フランス小説としては異例の翻訳化の嵐が吹き荒れている。年間3作品も翻訳出版されるスピードは、海外小説ということからしても奇異な現象である。何かの受賞作品一作だけで翻訳を見切られる作家も、海外小説という不況市場では珍しくない状況下、このような空前のヒットは歓迎すべきことである。これを機に北欧ミステリに続いてのフランスのミステリ、ひいては海外ミステリの翻訳に順風が吹いてくれることを期待したい。  そのためには一発屋的ヒットではなく、次々と翻訳紹介される作品...
  • 帰郷者
    帰郷者 題名:帰郷者 原題:Die Heimkehr (2006) 作者:ベルンハルト・シュリンク Bernhard Schlink 訳者:松永美穂 発行:新潮クレスト・ブックス 2008.11.30 初版 価格:\2,200  ベルンハルト・シュリンクの年齢は、本書を書いている時点で、62歳。円熟というべき作家年齢である。43歳『ゼルプの裁き』で作家デビュー、51歳『朗読者』で世界的名声をものにした。遅咲きの作家であればこそ、戦争の影を引きずる。  この作家が純文学であろうが、ハードボイルド作家であろうが、実のところそれは小説スタイルの問題であって、この作家を読もうとする場合、ある意味あまり重要ではない。書かれようとしている主題は、ホロコーストの罪悪を引きずる戦後ドイツ、世界の中心となってぐらりと動いた東西統合時のドイツなのだから。すべてが大戦の...
  • 天国でまた会おう
    天国でまた会おう 題名:天国でまた会おう 上/下 原題:Au revoir là- haut (2013) 作者:ピエール・ルメートル Pierre Lemaitre 訳者:平岡 敦 発行:ハヤカワ文庫HM 2015.10.15 初版 価格:各\740-  売れっ子のピエール・ルメートルの版権を獲得した早川書房は、その快挙に欣喜雀躍したに違いない。ハードカバーと文庫との同時出版となったのもその表れだろう。  しかし、実のところルメートルの作品は、あの怪作『その女アレックス』の登場後、即座に、過去に翻訳出版されていたにも拘わらずその時点では全く注目を集めなかったルメートルのデビュー作『死のドレスを花婿に』、そして少し後にカミーユ・ヴェルーヴェン警部のシリーズとしては第一作に当たる『悲しみのイレーヌ』も出版されるというルメートル旋風が、翻訳小説界に...
  • ただの眠りを
    ただの眠りを 題名:ただの眠りを 原題:Only To Sleep (2018) 著者:ローレンス・オズボーン Lawrence Osborne 訳者:田口俊樹 発行:ハヤカワ・ミステリー 2020.01.15 初版 価格:¥1,700  いつまでも語り継がれ、愛される私立探偵フィリップ・マーロー。またの名をハードボイルドの代名詞。卑しき街をゆく騎士道精神。作者チャンドラー亡き後、遺構を引き継いだロバート・B・パーカーの二作『ピードル・スプリングス物語』、『夢を見るかもしれない(文庫版で『おそらくは夢を』と改題)』、ベンジャミン・ブラックによる『長いお別れ』の続編『黒い瞳のブロンド』。そこまではマーローを如何に復活させるかを意図して書かれたもの。しかし本書は少し違う。  老いたマーローの活躍をえがく本書では、マーローは72歳。足を悪くし、杖を突く。一...
  • その女アレックス
    その女アレックス 題名:その女アレックス 原題:Alex (2011) 作者:ピエール・ルメートル Pierre Letmaire 訳者:橘明美訳 発行:文春文庫 2014.09.10 初版 2014.10.20 3刷 価格:\860  パリ発のミステリを新作で読めるなんて一体何年ぶりだろうか。ジャン・ボートラン『グルーム』とか、セバンスチャン・ジャプリゾの『長い日曜日』以来だろうか。  近年北欧ミステリが欧米のそれを凌駕するくらい大量に翻訳されるようになり、ヨーロッパの娯楽小説が見直されてきているが、そういう潮流に、本来の文芸王国であり、フィルム・ノワール、ロマン・ノワールのお膝元であるフランスがこういう作品をきっかけに日本の書店にも並んでくれると有難い。一昨年、フランスを旅行したときに、あちこちの店で目に付いたのがダグラス・ケネディだったことを思...
  • 帰りなん、いざ
    帰りなん、いざ 帰りなん、いざ (講談社文庫) 題名:帰りなん、いざ 作者:志水辰夫 発行:講談社 1990.04.02 初版 価格:\1,300  浅茅という山梨・長野の県境の山村が舞台である。ぼくはこう訊いただけで、すぐに5万分の1の地図を取り出してしまう。根っからの山ヤなのだ。調べてみた。この付近にはもう5~6度行っている。奥秩父最西端の山、金峰(きんぷ)山・瑞牆(みずがき)山 には同じくらい登っている。深夜、道を間違えて、車で妙な峠に入ってしまったこともある。韮崎から増富温泉へ向かって深い渓谷を登ると、金山平・銀山平と文字通り、かつての鉱山跡がある。少し西へ下れば、清里や野辺山といった、だれでもが知っている新しいリゾート地があるのだが、八ケ岳の麓を離れ少し秩父側に寄ると、この小説の舞台のような名もなき山村が、谷あい深く眠っている。地図をよく調べてみ...
  • グレート・ギャツビーを追え
    グレート・ギャツビーを追え [429] Client error `POST https //webservices.amazon.co.jp/paapi5/getitems` resulted in a `429 Too Many Requests` response { __type com.amazon.paapi5#TooManyRequestsException , Errors [{ Code TooManyRequests , Message The request was de (truncated...) 題名:グレート・ギャツビーを追え 原題:Camino Island (2017) 著者:ジョン・グリシャム John Grisham 訳者:村上春樹 発行:中央公論新社 2020.10.10 初版 価格:¥1,800  ...
  • コンタクト・ゾーン
    コンタクト・ゾーン [429] Client error `POST https //webservices.amazon.co.jp/paapi5/getitems` resulted in a `429 Too Many Requests` response { __type com.amazon.paapi5#TooManyRequestsException , Errors [{ Code TooManyRequests , Message The request was de (truncated...) [429] Client error `POST https //webservices.amazon.co.jp/paapi5/getitems` resulted in a `429 Too Many Requests` response {...
  • 闇という名の娘
    闇という名の娘 THE DARKNESS 題名:闇という名の娘 THE DARKNESS 原題:Dimma (2015) 著者:ラグナル・ヨナソン Ragnar Jonasson 訳者:吉田薫訳 発行:小学館文庫 2019.12.11 初版 価格:¥800  一方の端からもう一方の端へと振れ幅の広さにまず驚く。  昨年、アイスランドのシグルフィヨルズルという北極に最も近い漁村の警察官アリ・ソウルのシリーズに驚いたぼくは、この人の作品は書かれた順番に読もうと誓っている。なので、アリ・ソウル・シリーズも一作、二作という順に読んで、先に翻訳された五作目はそのまま手元にあるが読まない。この作品はこのシリーズの三作、四作と読んでから取り組むべきなのである。それを感じたのは一作から二作へ渡される作者の想いのようなものだと思う。時間というバトンは決して軽くない。作...
  • 審判
    審判 競馬シリーズ 『審判』 ディック・フランシス/フェリックス・フランシス 題名:審判 原題:Silks (2008) 著者:ディック・フランシス/フェリックス・フランシス Dick Francis & Felix Francis 訳者:北野寿美枝 発行:ハヤカワ・ノヴェルズ 2008.12.25 初版 価格:\1,900  ディック・フランシスが一度ぺンを折った、いやさ、折りかけたのは、メアリ夫人の逝去が、ディックの心に投げかけた痛手が重すぎ大きすぎたためだろうと思われていた。それ以上に、メアリ夫人はずっとディック作品に共著とされてもおかしくないほど作品に深く関わっていたと伝えられる。  ディックの作品には、毎作毎に異なる職業の主人公が据えられるが、その職業に応じて作品世界は彩色される。いわば競馬界とミステリ界しか知らない(おっと、飛行機...
  • 私のイサベル
    私のイサベル 題名:私のイサベル 原題:Säg att du är min (2017) 著者:エリーザベト・ノウレベック Elisabeth Noreback 訳者:奥村章子訳 発行:ハヤカワ・ミステリ 2019.3.15 初版 価格:¥2,100  不在とは、存在を否定するものではない。血の繋がる親子であれば、なおのこと。互いがそこに不在であろうと、それぞれの心の中にそれぞれが常に存在を続ける。  20年前、当時一歳の娘アリスが、ビーチで行方不明となった。母親のステラは、それからの人生を、娘から眼を話したことへの悔いと罪悪感を心に負って生きることになった。その時の夫とは離婚し、新しい夫との間に新しい息子を産み、育て、新しい別の人生を送っている。仕事は心理カウンセラー。ある日、イサベルと名乗る学生が彼女の勤務するクリニックを訪ねてきた。その瞬間に、ス...
  • 日々翻訳ざんげ エンタメ翻訳この四十年
    日々翻訳ざんげ エンタメ翻訳この四十年 題名:日々翻訳ざんげ エンタメ翻訳この四十年 著者:田口俊樹 発行:本の雑誌社 2021.2.20 初版 価格:¥1,600  田口俊樹翻訳作品で自分の読んだ本を数えてみたら54作であった。特に翻訳者で本を選んでいるわけではないのだけれど、ぼくの好きな傾向の作家を、たまたま多く和訳して頂いているのが田口俊樹さんということであったのだと思う。特に、完読しているローレンス・ブロック作品は、ほぼ全作田口さん訳なので、ぼくのように読書歴にブロックのあの時代があったミステリー・ファンは、少なからず田口俊樹訳で読んでいることになるのです。  他に田口訳作品でお世話になったところでは、フィリップ・マーゴリン、トム・ロブ・スミス、最近の(パーカーBOOK版になってからの)ドン・ウィンズロウ。いずれも大変な作家揃い。  ...
  • ウォータースライドをのぼれ
    ウォータースライドをのぼれ 題名:ウォーター・スライドをのぼれ 原題:A Long Walk Up The Water Slide (1994) 作者:ドン・ウィンズロウ Don Winslow 訳者:東江一紀 発行:創元推理文庫 2005.7.29 初版 価格:\980  久々のウィンズロウ節。あまりにも時間が空いてしまったために、いろいろなことを忘れている。ニール・ケアリーの所属する朋友会という名前だって忘れていたし、カレンと一緒に暮らしているいきさつだって忘れていた。でも、そういうものはまあいい。確かにシリーズモノではあるけれど、一作ごとに、独立した大スケールの物語で、起承転結がはっきりした作品であることには間違いないだろうから。  そんな気軽な気分で読み出したものの、東江訳による文章の面白さは、やはり読み流すには、あまりにも惜し過ぎる。か...
  • ケイト・クイン Kate Quinn
    ケイト・クイン Kate Quinn 長編小説 戦場のアリス 2017 加藤洋子訳 亡国のハントレス 2019 加藤洋子訳 ローズ・コード 2021 加藤洋子訳 狙撃手ミラの告白 2022 加藤洋子訳
  • クレイグ・ホールデン Craig Holden
    クレイグ・ホールデン Craig Holden 長編小説 リバー・ソロー 近藤澄夫訳 1994 ラスト・サンクチュアリ 近藤純夫訳 1995 夜が終わる場所 近藤純夫訳 この世の果て 近藤純夫訳 ジャズ・バード 近藤純夫訳
  • 評決のとき
    評決のとき 評決のとき〈上〉 (新潮文庫) 評決のとき〈下〉 (新潮文庫) 題名:評決のとき (上・下) 原題:A TIME TO KILL (1989) 作者:JOHN GRISHAM 訳者:白石朗 発行:新潮文庫 1993.7.25 初版 価格:各\640(本体各\621)  グリシャムの最初は売れなかったデビュー作であるという。だからと言うわけではないのだろうが、ぼくには、これを読むとグリシャムの長所も短所もよく見えて来る、という本であるような気がした。  長所というのは、リズムに乗ったときのストーリーの急展開であり、その淡々とした描写の妙。読み始めるとなかなか本を手放せなくなるというのは、今やアメリカでベストセラーになるための必須条件であると思うが、この作家は間違いなくその部類であると思う。  ただし短所ということで挙げておきたいの...
  • 夏の災厄
    夏の災厄 夏の災厄 (文春文庫) 夏の災厄 題名:夏の災厄 作者:篠田節子 発行:毎日新聞社 1995.3.25 初版 価格:\2,000(本体\1,942)  不思議な作家なので、続けて読んでいますが・・・・。これはあまり奇をてらわない正攻法の作品であるような第一印象。今まで感染ものといえば和洋問わずにけっこう傑作が出ていると思っていたから、敢えて書店で買おうという気にはならないでいたのだけど、世の中が篠田節子、篠田節子とあまり話題にするようだから、図書館で見つけたのを期に、読んでしまったもの。そしたら、まあ、リアリズム溢れる正統派感染サスペンスでありながら、これだけ面白いとは・・・・。  『聖域』よりはぼくはこちらですね。何と言っても主人公不在という離れた視点から描いた埼玉県昭川市の物語である点に注目したい。川田弥一郎の『白い狂気の島』は狂犬病が猛威...
  • さいはての彼女
    さいはての彼女 題名:さいはての彼女 著者:原田マハ 発行:角川文庫 2008/9 初版 2021/12/30 32刷   価格:¥520  沖縄旅行に出かけたはずが、辿り着いたのは女満別空港。高級外車をレンタルしているはずがおんぼろの軽自動車。仕方なく走り始めるとすぐに故障。途方にくれる女性社長涼香は、ハーレーダビッドソンを操る聴覚障害の少女ナギに救われバックシートに乗り風に向かって走り始める。  タンデム。ぼくはその言葉を知らないが、作者からの説明もないままにバイクの二人乗りのことだと想像しつつこの物語に入り込んだ。ナギが、とにかく良い。二人は知床峠を越えて羅臼へと走り抜ける。ぼくには女満別も網走も羅臼も何だか近所感があるので、親しみやすい。ナギの姿が素敵である。  というのが短編4作でできているこの本の第一話『さいはての彼女』の感想。言...
  • 真夏の島に咲く花は
    真夏の島に咲く花は 真夏の島に咲く花は 題名:真夏の島に咲く花は 作者:垣根涼介 発行:講談社 2006.10.10 初版 価格:\1,700  『ゆりかごで眠れ』に続き、今年二作目の長編となる本書。この二作品の温度差にまず驚いてしまった。同じ作者のものだとは到底思えないほど、異なる二冊。かたや血の抗争を繰り広げるコロンビア・マフィアの血と死闘の生涯。かたや南国フィジーに起こった無血革命の影響下、不安定な状況下で揺れ動く男たち女たちの恋のやりとりをトレンディー・ドラマのように生ぬるく掻き回したようなこの作品。  この作家がクライム・ノベルの書き手だなどという頭がこちら側に最初からなかったら、本書はもしかしたらそう悪くない作品であるのかもしれない。しかし生憎私は垣根涼介という作家をクライム・ノベルの書き手として高く評価しているので、本書は悪くないどころか、あ...
  • アナザヘヴン
    アナザヘヴン 題名 アナザヘヴン 上/下 作者 飯田譲治/梓河人 発行 角川ホラー文庫 1998.4.25 初刷 価格 各\648  今年はある程度有名な国内ホラーはどんどん読んでしまおうと思う。『リング』で火をつけられてから、そう思い始めた。国内でのホラーブームは、小説でも映画でも、もはや侮れない存在として脹れ上がりつつある。何よりその根底に面白いという確かな手応えがある。  本書はまるで『ハンニバル』のような食人付き連続殺人事件に始まる。その殺しの現場のえぐさに釣られて読んでしまったのだけど、事件の方は人間界を少し離れて荒唐無稽化してゆき、若干ぼくとしてはついて行けなくなりかける。やばいな、という雰囲気。でもそれを繋ぎ止めるものがこの本には十分にある。  事件そのものの面白さ、奇怪さは勿論あって基本的にはこの本の魅力の半分はそこにあるのだ...
  • ローリー・R・キング Laurie R. King
    ローリー・R・キング Laurie R. King ケイト・マーティネリ・シリーズ 捜査官ケイト 1993 森沢麻里訳 愚か者の町 1995 森沢麻里訳 消えた子 1996 森沢麻里訳 夜勤 2000 森沢麻里訳 捜査官ケイト -過去からの挨拶 布施由紀子訳 メアリ・ラッセル・シリーズ シャーロック・ホームズの愛弟子 1994 山田久美子訳 女たちの闇 1995 山田久美子訳 マリアの手紙 1996 山田久美子訳 バスカヴィルの謎 1998 山田久美子訳 公爵家の相続人 2002 山田久美子訳 疑惑のマハーラージャ 山田久美子訳 長編 奥津城 1999  佐々田雅子訳
  • 北帰行
    北帰行 題名:北帰行 作者:佐々木 譲 発行:角川書店 2010.01.31 初版 価格:\1,800  何だかかぶる話である。船戸与一の『夜来香海峡』とかぶるのだ。あちらは秋田から夕張、稚内へと北へ向う話。物語の軸は逃走中の謎の女。こちらは、東京、新潟、稚内へとやはり北へ向う展開。物語の軸は妹の仇を狙うロシア人のヒットウーマン。そしてどちらも最後は稚内フェリー埠頭近辺での激しい決闘。やっぱり、かぶりすぎる。  しかももう一作、舞台やストーリー展開は異なるが、少し似たような話が佐々木譲の作品にはあったような気がする。思い出した。『真夜中の遠い彼方』だ。ベトナム難民の少女をある新宿の一夜を舞台に救い出してやろうと逃走させる一連の庶民たちの活躍を描いた作品であった。ちなみに同じ時期に読んだ梁石日の『断層海流』はフィリピン人女性が日本の闇の中で自由を求めて足掻く...
  • 被害者の顔
    被害者の顔 被害者の顔 (ハヤカワ・ミステリ文庫 13-6 87分署シリーズ) 題名:被害者の顔 原題:Killer s Choice (1958) 著者:エド・マクベイン Ed McBain 訳者:加島祥造 発行:ハヤカワ文庫HM 1978.9.30 1刷  はっきりいって<87分署>中毒である。  むかし『幻魔大戦』中毒というものにかかったことがあるが、あれは自分にとって非常にあと味の悪い、悔恨多きものであったし、今でも平井和正と聞くと詐欺師の代名詞のようにしか思えないぼくである(ファンの方にはごめんなさい)。そのころに較べると、87分署中毒というのは実に爽快で、醍醐味のある中毒なのである。一作読んでしまった瞬間からもう全部読まずにいられない衝動に駆られてならないのだ。そういう読者をまたシリーズが決して裏切らない。そういう読者と作者の信頼関係とい...
  • 夜明けのフロスト クリスマス・ストーリー
    夜明けのフロスト クリスマス・ストーリー 『ジャーロ』傑作短編アンソロジー3 題名:夜明けのフロスト クリスマス・ストーリー    『ジャーロ』傑作短編アンソロジー3 編者:木村仁良 作者:R・D・ウィングフィールド、他 訳者:芹澤 恵、他 発行:光文社文庫 2005.12.20 初版 価格:\571  『クリスマスのフロスト』とは別のクリスマスを過ごす、あの警部フロストの新しい中篇ストーリーを収録したアンソロジー。クリスマスのたった一日にいきなり沢山の事件が押し寄せて、窒息しそうになりながらも、次々と解決に導いてゆくフロストの八面六臂の活躍ぶりが、とても懐かしいし、こうした物語を、別のすべてのクリスマス作品集と一緒に読めるアンソロジーなんて、とても気のきいた本であると思う。  短編の名手エドワード・D・ホックの引退刑事レオポルドのシリーズ『ク...
  • 祝宴
    祝宴 題名:祝宴 原題:Dead Heat (2007) 著者:ディック・フランシス/フェリックス・フランシス Dick Francis & Felix Francis 訳者:北野寿美枝 発行:ハヤカワ・ノヴェルズ 2007.12.15 初版 価格:\1,900  もはやこのシリーズはディック・フランシスという一人の作家の小説というだけではなく、フランシス・プロジェクトと呼んだほうがいいのかもしれない。  メアリ夫人の逝去により、それまで彼女が取材活動を行っていたということが明らかにされた。少なくとも日本ではそうだった。ディックは、以前よりずっと家族の協力において本シリーズを書き続けてきたのであった、ということをぼくはそれまで全然知らなかった。  本シリーズにおいて作品を支える新しい素材への取材活動は重要である。確かな考証こそが、それぞれの小説のエ...
  • 花ならアザミ
    花ならアザミ 花ならアザミ (講談社文庫) 題名:花ならアザミ 作者:志水辰夫 発行:講談社 1991.04.26 初版 価格:\1.300  『行きずりの街』に続く長編新作。まず興味を惹くのは主人公が女性であること。それも見た目にはとても地味で真面目でおとなしい感じのこれが本当に主役なのかと思われるような若い女性。勤め先は潰れかかった古本屋。早稲田の裏通りから目白にかけての地形描写などは、またも志水独特の執拗なリアリズムによって親近感を感じさせられる。いったいどんな事件が起こるのかと疑う間に、どうやら新しく起こるできごとが問題なのではなく、状況そのものが伏魔殿であることに気づいてしまう。  志水の作風はいつも文体の巧さで読者を強引に引っ張ってゆくものだけど、今回は割りとその辺りがおとなしく抑制されているように思われた。その代わり最近富に描かれること...
  • マ行作家
    マ行作家 フィリップ・マーゴリン マイケル・マーシャル デイヴィッド・マーティン アレックス・マイクリーディーズ コーマック・マッカーシー エイドリアン・マッキンティ クレア・マッキントッシュ ロス・マクドナルド クイーム・マクドネル コーディ・マクファディン エド・マクベイン ジェイムズ・A・マクラフリン アリステア・マクリーン ホレス・マッコイ グスタボ・マラホビッチ マルコ・マルターニ エルザ・マルポ デイヴィッド・マレル シェイン・マローニー ヘニング・マンケル ジャン=パトリック・マンシェット ジグムント・ミウォシェフスキ ギョーム・ミッソ ベルナール・ミニエ レックス・ミラー リズ・ムーア レミギウシュ・ムルス アンドリュー・メイン ヴィクター・メソス ウォルター・モズリイ カルメン・モラ ピエテル・モリーン
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