wiki クライムウェイヴ(Sysop読書録 活字をめぐる冒険) 内検索 / 「クライム・マシン」で検索した結果

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  • クライム・マシン
    クライム・マシン クライム・マシン (晶文社ミステリ) 題名:クライム・マシン 原題:The Crime Machine and Other Stories (1958-1989) 作者:ジャック・リッチー Jack Ritchie 訳者:好野理恵、他 発行:晶文社 2005.09.30 初版 価格:\2,400  短編集にもいろいろある。ローレンス・ブロックは自分の楽しみのために、短編を書くという。長編小説を書くときのように商品価値を意識せず、ただ短編作品を作る楽しみのために書く、という。オットー・ペンズラーは、短編集の編纂家としてつとに有名だが、彼の毎年の『ベスト・アメリカン・ミステリ』は、ただのミステリーというよりも、どちらかと言えば文学的志向が強いかに見える。短編にしては重く、一行一行に読み応えの感じられるものが多い。  そこへゆくと、こちらの...
  • ジャック・リッチー
    ジャック・リッチー Jack Ritchie 短編集 クライム・マシン 2005 10ドルだって大金だ 2006 ダイアルAを回せ 2007
  • 10ドルだって大金だ
    ...  ちょうど『クライム・マシン』から13ヶ月。本書でも短編集が合計3冊しかない作家でありながら、350篇もの短編を書いた作家であるジャック・リッチーを本にするには、日本でだけ特別編集してゆくしかないのだろう。しかもたった一人の短編作家が日本という読書市場でモノになるためには何かで話題にならなきゃならない。  ミステリー系作品の年別序列付けとしては、「文春」「このミス」が取り上げられ、各出版社もこれが一桁台の順位であれば、帯をプリントし直して重版して一気に年末商戦辺りで売り出しをかける。「クライム・マシン」は、あろうことか、ディーヴァーやコナリーを抜いて2005年の海外ベスト1ミステリー作品に選ばれてしまったのである。  そんな奇跡でも起きない限り、この作家の作品を掻き集めて翻訳出版する作業なんて面倒はどこの出版社も抱え込もうとはしなかっただろう。しかし読者にとっ...
  • クライム・ウェイヴ
    クライム・ウェイヴ 題名 クライム・ウェイヴ 原題 White Jazz (1999) 著者 ジェイムズ・エルロイ James Ellroy 訳者 田村義進 発行 文藝春秋 2000.7.20 初版 価格 \2,476   『わが母なる暗黒』までは、エルロイという作家も、彼の抱える過去も特に読者の前には直接的には出て来ることがなかった。しかし、『クライム・ウェイヴ』という中短編小説、エッセイ、ノンフィクションというこのごった煮本のなかでは、まさに物語世界とエルロイの現実とがシームレスに共存しているかに見える。  『わが母なる暗黒』から繋がる部分、あるいはそこへ向かうルート。破壊力満点の中編が読み応え抜群。少なくとも映画ではダニー・デビートの演じていた『ハッシュハッシュ』紙の編集長は脇役であった。LA四部作においても。だが、ここでは...
  • トゥルー・クライム・ストーリー
    トゥルー・クライム・ストーリー 題名:トゥルー・クライム・ストーリー 原題:True Crime Story (2021) 著者:ジョセフ・ノックス Josepf Knox 訳者:池田真紀子 発行:新潮文庫 2023.9.1 初版 価格:¥1,150  驚愕の結末でシリーズ三部作を終えたJ・ノックスの次なる弾(たま)が楽しみだったが、その要求にしっかり応えてくれたようなノックスらしい一作。何と、驚愕の結末の次は、驚愕の構成と来たのである。何しろすべてがインタビューとメール往還のみで成り立ったアンチ小説とでも言いたくなるくらいの奇妙な体験を、読者は体感することになる。ノックス弾、またやってくれたな、という苦笑と共に、少し慣れない読書時間がのろのろと始まる。  最初に本書を手に取った読者はその分厚さに気圧されるかもしれないが、じつは口語体で多くの人物に事...
  • ジェンダー・クライム
    ジェンダー・クライム [429] Client error `POST https //webservices.amazon.co.jp/paapi5/getitems` resulted in a `429 Too Many Requests` response { __type com.amazon.paapi5#TooManyRequestsException , Errors [{ Code TooManyRequests , Message The request was de (truncated...) 題名:ジェンダー・クライム 著者:天童荒太 発行:文藝春秋 2024.01.15 初版   価格:¥1,700  ずっと家族の軋轢をテーマに描き続けてきた作家・天童新太の久々の新作を手にする。デビュー当時の作品に一時のめり込ん...
  • フランキー・マシーンの冬
    フランキー・マシーンの冬 題名:フランキー・マシーンの冬 上/下 原題The Winter of Frankie Nachiene (2006) 作者:ドン・ウィンズロウ Don Winslow 訳者:東江一紀 発行:角川文庫 2010.09.25 初版 価格:各\743  ウィンズロウである。いかにもウィンズロウであるなあ。うーん、と唸りたくもなるのだ。  『犬の力』から一年、あの超大作の馬力と迫力をそのままに、今度は凄腕の老マフィア最後の戦いを綴った傑作を書いてしまった。『犬の力』の半分くらいの長さの作品だけど、作者アベレージで言うとこれも大作の部類に入ると思う。それとも未訳の新作はみんな厚めに書いているのかな? そのあたりは不明。  最初は何も始まらず、事件らしい事件もなく、引退した老マフィアのまるで機会のように規則正しい生活のリ...
  • 007 白紙委任状
    007 白紙委任状 題名:007 白紙委任状 原題:Carte Blanche (2011) 著者:ジェフリー・ディーヴァー Jeffery Deaver 訳者:池田真紀子 発行:文藝春秋 2011.10.15 初版 2011.11.25 3刷 価格:¥2,380  最近、新しいキャラクター、コルター・ショーのシリーズを楽しんできたのに、本書は全然楽しめなかった。この作品が出た時代、ディーヴァーは売れっ子の頂点にあって、多作であることはもちろん、シリーズのポイントである警察捜査小説のシリーズも登場当初は大人気だったのが、徐々にワンパターン化し中弛みの時期を迎え始めた頃だったのだと思う。  そんな時期に、一応は鳴り物入りで売り出されたのが、原作者イアン・フレミングと数々の映画シリーズによって世界的スパイ・ヒーローとなった007ジェイムズ・ボンドに、ディ...
  • ゴースト・スナイパー
    ゴースト・スナイパー [429] Client error `POST https //webservices.amazon.co.jp/paapi5/getitems` resulted in a `429 Too Many Requests` response { __type com.amazon.paapi5#TooManyRequestsException , Errors [{ Code TooManyRequests , Message The request was de (truncated...) 題名:ゴースト・スナイパー 上/下 原題:The Kill Room (2013) 著者:ジェフリー・ディーヴァー Jeffery Deaver 訳者:池田真紀子 発行:文春文庫 2017.11.10 初刷 2014/10 初版 ...
  • レゾリューションの対決
    レゾリューションの対決 題名:レゾリューションの対決 原題:Resolution (2008) 作者:ロバート・B・パーカー Robert B. Parker 訳者:山本 博 発行:早川書房 2008.10.25 初版 価格:\2,000  麻袋のようなテキスチャーに、破れ、焦げかけ、脱色した古いフォトグラフ。二頭の馬に乗ったガンマンが、低く垂れ込めた雲の下、地平線目指す写真。彼らの行手に何があるのかを期待とともに匂わせる印象的なブックカバーは、『アパルーサの決闘』を引き継ぐデザインで、この本が前作の続編であることを如実に示している。  ウエスタンは映画で見るもので本で読むものではないと、半世紀近く思っていた。40年ほど前に盛んに見ていた銀幕の幌馬車やインディアンの襲撃シーンを、まさか活字で読むとは思いもしなかった。逢坂剛が今になってウエスタンを書い...
  • クライ・マッチョ
    クライ・マッチョ 題名:クライ・マッチョ 原題:Cry Macho (1975) 著者:N.リチャード・ナッシュ N.Richard Nash 訳者:古賀紅美 発行:扶桑社ミステリー 2022.1.14 初版 価格:¥1,300  クリント・イーストウッドという生涯の憧れだった映画俳優が、91歳になるというのに、新作映画で主演も監督も請け負っていることにまず驚愕した。原作ノヴェルとして新たに翻訳され発掘されたこの作品は1975年の作品だ。ぼくがに三日に一回というペース(深夜の5本立てなども含む)で映画館という映画館のスクリーンに噛り付いていたアメリカン・ニューシネマの時代に映画人の誰からも振り向かれることなく、映画化もされなかった本作が、今、この時期に翻訳されるとは! まさにイーストウッド映画のお裾分けのように、映画を未だ観ていないぼくが原作に出会えた。しか...
  • 繋がれた明日
    繋がれた明日 [429] Client error `POST https //webservices.amazon.co.jp/paapi5/getitems` resulted in a `429 Too Many Requests` response { __type com.amazon.paapi5#TooManyRequestsException , Errors [{ Code TooManyRequests , Message The request was de (truncated...) 題名:繋がれた明日 作者:真保裕一 発行:朝日新聞社 2003.05.30 初版 価格:\1,700  はっきり作風が変わったのだとわかる。かつての神保裕一はクライム・ノベルの書き手であったと思う。あくまでミステリーの範疇でとりわけ犯...
  • ナミヤ雑貨店の奇蹟
    ナミヤ雑貨店の奇蹟 題名:ナミヤ雑貨店の奇蹟 著者:東野圭吾 発行:角川書店 2012.03.30 初版 価格:\1,600  ぼくはこういう作品が好きである。何人もの人間が登場するのに、その誰ひとりおろそかにしないで、それぞれに人生があることをしっかり読者に伝え切る。いろいろな出来事が時系列順にではなく語られてゆくのに、どれもこれもがきちんと原因と結果によって繋がっていて、多発する入れ子構造の小さな物語さえ蔑ろにしない。整合性を取るというだけではなく、しかもそれぞれの人間の悩みと葛藤を描き、その中で人生の大事なものを見つけてゆく人間たちの懸命さとたくましさのようなものを最後には見せてくれる。これほどまでに作品に対し、あるいは作品の登場人物に対し誠実の限りを尽くす作家であることが、改めて証明されてしまう、東野圭吾の本当に100%の作品だと、ぼくはこの本を閉じる...
  • 拳銃(ガン)
    拳銃(ガン)/ 「魔の拳銃」改題 拳銃 (1980年) (ハヤカワ・ミステリ文庫) 題名:拳銃(ガン) 原題:GUNS (1976) 作者:エド・マクベイン Ed McBain 訳者:久良岐基一 発行:ハヤカワ・ミステリ文庫 1980.4.30 初版 1986.7.15 2刷 価格:\420  マクベインの死を悼んで、古い未読のノンシリーズ作品に手をつけてみた。  こいつは、87分署シリーズのような健康的なクライム・ミステリでないばかりか、銃によって狂ってゆく若い犯罪者の救いのない破滅的な一夜の物語だった。マクベインには、ノン・シリーズのものにも光るものが数多くあるが、エヴァン・ハンターと共著と遊んでみせた『キャンディランド』にせよ、異色作『盗聴された情事』にせよ、どちらかと言えばシリアスで、ペーソスに満ちたものが多い。一言で言えば暗い小説が多い。 ...
  • 馬鹿★テキサス
    馬鹿★テキサス 題名:馬鹿★テキサス 原題:Buck Fever (2002) 作者:ベン・レーダー Ben Rehder 訳者:東野さやか 発行:ハヤカワ・ミステリ文庫 2004.05.15 初版 価格:\740  思い切ったタイトルの文庫本に巻きついたコシマキには「バカだらけ!!!」の大きな文字。さらには「爆笑必至のコミック・ミステリ登場」。  という割には、期待していたものとは大幅に違うもので、いわゆるペーパーバック・クラスの普通のクライム・ノヴェルであり、爆笑するシーンというのは一つもない。馬鹿は確かにいっぱい出てくるけれども、クライム・ノヴェルあるところには馬鹿は当然沢山登場するのであり、この鉄則はロス・トーマスでもジョン・リドリーでも古今に渡って不動であると思う。  それにお笑いでもブラックなユーモア感覚でも今挙げた二人のほうが...
  • ジョセフ・ノックス Joseph Knox
    ジョセフ・ノックス Joseph Knox エイダン・ウェイツ・シリーズ 堕落刑事 2017 池田真紀子訳 笑う死体 2018 池田真紀子訳 スリープウォーカー 2019 池田真紀子訳 ノン・シリーズ トゥルー・クライム・ストーリー 2021 池田真紀子訳
  • 7月のダークライド
    7月のダークライド 題名:7月のダークライド 原題:Dark Ride (2023) 著者:ルー・バーニー Lou Berney 訳者:加賀山卓朗 発行:ハーパーBOOKS 2024.2.20 初版 価格:¥1,230  久々のルー・バーニーという作家の名前だけで、冒険小説好きの好奇心が全面反応してしまう。ちなみに若かりし頃、冒険小説のフォーラムを主宰していたとは言え、ぼくは軍事オタクでもスパイオタクでもない。冒険小説とは日常生活の中から逸脱してあるアクションをやむを得ず選択してゆく勇気や意志を描くもの。ぼくはそう理解している。題材ではない。あくまでそこに介在する人間とその魂を描くフィクションのことを冒険小説と呼ぶのだ。  さてルー・バーニーだ。何年ぶり? 何と5年ぶり。しかも第三長編。何とも寡作である。でも書けばただじゃおかないとばかりに骨のある作...
  • 血と暴力の国
    血と暴力の国 題名:血と暴力の国 原題:No Country For Old Men (2005) 作者:コーマック・マッカーシー Cormac McCarthy 訳者:黒原敏行 発行:扶桑社ミステリー 2007.08.30 初版 価格:\857  何となくノワールの匂いがするので買ってみた本である。この作者がどういうレベルの作家なのか全然予備知識はなかった。  読んでみて、驚いたのは、期待に違わぬノワール。いや、期待を遥かに上回る迫力のノワールと言うべきか。増してや文体は、心理描写、一切ゼロの、純粋ハードボイルド・スタイルである。淡々とテンポよく進んでゆく血の凍るような活劇。タイトルの通り、バイオレンスに彩られた神なき土地に展開する物語である。  秀逸なのは、行動描写と会話だけで表現する、キャラクター造形である。特に死を目前にした者と、...
  • スリーピング・ドール
    スリーピング・ドール 題名:スリーピング・ドール 原題:The Sleeping Doll (2007) 作者:ジェフリー・ディーヴァー Jeffery Deaver 訳者:池田真紀子 発行:文藝春秋 2008.10.10 初版 価格:\2,381  近頃、ディーヴァーがすっかり好きじゃなくなったのに、なぜぼくはディーヴァーを読むのだろうと、自分に問いかけてしまう。まあディーヴァーはそこそこ面白いと言うことだけは言えるからな、と自分に肯く。ただ、マンネリに陥っているところがあるし、何よりもご都合主義の目立つプロットが鼻につくんだよな。じゃあ、読まなければいいのだが、本当に好きになりきれない作家の場合は、図書館で借りることができるし、何も散在するわけじゃない。ディーヴァーのハードカバーはとても高いし、ちょうどそんな具合に無料(ただ)だと思って読めばいい。 ...
  • 葬列
    葬列 題名:葬列 作者:小川勝己 発行:角川書店 2000.5.10 初版 価格:\1,500  何だか『OUT』みたいな始まり方……と思いきや、実はこれそうしたミステリー、サスペンス系ではなく、むしろ乾いたドンパチを主体とした和製では珍しいクライム・アクション。しかもクライムよりも遥かにアクションの方に重点が置かれているという意味で。傑作の噂が高いので後ればせながら手に取ったのだけれど、これは今年の目玉。『このミス』の採点締め切り直前になった今でも自分の最終候補にはしっかりと残っている作品。ま、それほど面白かったのである。  まず、である。キャラクターの書き分けが凄いのだ。だれもかれもがかなり凸凹した癖があり、極度に個性的。その書き分けだけでも十分に楽しめるのに、展開は中盤からいきなりスピーディに様変わりする。そして裏の裏、そのまた裏へと、玉ねぎの...
  • ラム・パンチ
    ラム・パンチ ラム・パンチ (角川文庫) 題名:ラム・パンチ 原題:Rum Punch (1992) 作者:エルモア・レナード Elmore Leonard 訳者:高見 浩 発行:角川文庫 1998.03.25 初刷 価格:\820  タランティーノの映画というだけでそわそわわくわくするくせに、『ジャッキー・ブラウン』の原作小説を今もって読んでいないことに罪悪感を覚えていた。しかも文庫解説によれば、タランティーノが最も敬愛する作家(なんてことも知らなかった)エルモア・レナードの作品を一冊も読んでいないなんて、クライム小説ファンとしてはもぐりに近いか。  とにかく全ての罪悪感とコンプレックスを背中に負う気分に痛めつけられながら、この作品を読んでゆく。読めば読むほどに、痛みは増すばかりだ。こうした傑作小説を読んでいなかった自分が恥ずかしい。レナードという作...
  • 真夏の島に咲く花は
    真夏の島に咲く花は 真夏の島に咲く花は 題名:真夏の島に咲く花は 作者:垣根涼介 発行:講談社 2006.10.10 初版 価格:\1,700  『ゆりかごで眠れ』に続き、今年二作目の長編となる本書。この二作品の温度差にまず驚いてしまった。同じ作者のものだとは到底思えないほど、異なる二冊。かたや血の抗争を繰り広げるコロンビア・マフィアの血と死闘の生涯。かたや南国フィジーに起こった無血革命の影響下、不安定な状況下で揺れ動く男たち女たちの恋のやりとりをトレンディー・ドラマのように生ぬるく掻き回したようなこの作品。  この作家がクライム・ノベルの書き手だなどという頭がこちら側に最初からなかったら、本書はもしかしたらそう悪くない作品であるのかもしれない。しかし生憎私は垣根涼介という作家をクライム・ノベルの書き手として高く評価しているので、本書は悪くないどころか、あ...
  • キューバ・リブレ
    キューバ・リブレ 題名:キューバ・リブレ 原題:Cuba Libre (1998) 作者:エルモア・レナード Elmore Leonard 訳者:高見 浩 発行:小学館文庫 2007.11.11 初版 価格:\781  クライム・ノヴェルの名手と言われるエルモア・レナードが初めて挑戦した時代活劇小説が本書。もともと少しレトロ風味がかったレナードの世界に、さらにセピアのフィルターをかけて、時間軸を巻き戻してあげたような、それはそれは味わいのあるビターなドリンクに仕上がっている。もともとクーバリブレというカクテルが、本書のタイトルだ。ぐっと一息に飲み干すがいい。  米西戦争として知られる1898年のエポックを背景に、例によって一筋縄では行かないパーソナリティの数々が、騙し合い、化かし合い、殺し合い……といったレナードならではの本領を発揮し合う。史実に即...
  • ハートの刺青
    ハートの刺青 ハートの刺青 (ハヤカワ・ミステリ文庫 13-4) 題名:ハートの刺青 原題:The Con Man (1957) 著者:エド・マクベイン Ed McBain 訳者:高橋泰邦 発行:ハヤカワ文庫HM 1976.7.15 1刷  <87分署>シリーズ第4作。このシリーズは今までのところどれも一定の水準に達しているばかりか、はっきりいって安心してその面白さを堪能できる。そうした確信を持つに至ってしまったのだ、ぼくは。しかしとりわけこの第4作は、面白かった。  主題は詐欺である。この本は、大小の詐欺について語られた一冊である。このなかには、わずか5セントを掠め盗る詐欺から、殺人をも容赦なく絡めた詐欺まで、さまざまな犯罪が盛り込まれている。そして、これらが平行に進行してゆき、複数の事件が複数の捜査員の手によって解決してゆく。  最も凶悪...
  • ダークライン
    ダークライン 題名:ダークライン 原題:A Fine Dark Line (2003) 作者:ジョー・R・ランズデール Joe R. Lanzdale 訳者:匝瑳玲子 発行:早川書房 2003.03.15 初版 価格:\1800  まだランズデール初心者であるのに、こんなに美味しいところからいただいてしまって本当によろしいのだろうか? 贅沢すぎて後が怖い、というのが今の読後感である。世界ミステリ界の頂点とも言えるMWA賞を受賞した『ボトムズ』に引き続き、ほぼ同じレベルで綴られてしまった最新作を読んでしまったのだから。 ちなみに巻末解説の池上氏は本書がランズデールの最高作品と断言している。ぼくはと言えば、どちらも甲乙つけがたい。しかし敢えてどちらかを選べと言われれば仕方ない、苦しみ迷いぬいた末に、やはりランズデールとの出逢いとなった『ボトムズ』に...
  • 9ミリの挽歌
    9ミリの挽歌 題名 9ミリの挽歌 原題 Nine Mil (2000) 著者 ロブ・ライアン Rob Ryan 訳者 鈴木 恵 発行 文春文庫 2001.10.10 初版 価格 \848  思わぬ拾い物と言って良い作品。パルプ・ノワールとあるけれども、ぼくとしてはむしろ全編に侠気を感じさせる人情巨編と読める。敗者たちがふたたび立ち上がるクライム・ノベル。出来の悪い主人公たちが一人ずつ結集して、ろくでもない復讐劇をもくろむ。巨悪への挑戦であり、現ナマの強奪であり、今いる日常への決別でもあるが、それぞれに負った傷は重すぎる。  挑戦すべき悪党たちは、闇の掟で縛られ、裏切り、処刑する。地下室で弾ける頭蓋に、跳ね上がる泥と血。あまりにも残酷な描写の彼方に、驚くべきクライマックスが待ち受けている。  野良犬の糞よりも安っぽく見える人の命と腐っ...
  • クイーム・マクドネル Caimh McDonnell
    クイーム・マクドネル Caimh McDonnell ダブリン・トリロジー 平凡すぎて殺される 2016 青木悦子訳
  • ワイルド・ソウル
    ワイルド・ソウル ワイルド・ソウル〈上〉 (幻冬舎文庫) ワイルド・ソウル〈下〉 (幻冬舎文庫) ワイルド・ソウル 題名:ワイルド・ソウル 作者:垣根涼介 発行:幻冬舎 2003.08.25 初版 価格:\1,900  アントニオ猪木が、桁外れな人間なのは、ブラジルから帰ってきた男だからというのが、まあプロレス好きな人間の間では通説になっている。島国日本ではなく、広大なブラジルという国に生まれたスケールを運んできた男というわけだ。猪木のやらかしてきたこと、そして猪木の太々しい容貌や、底知れぬ陽気を見ていると、実に信憑性のあるそれは見方だと思ってしまう。  ブラジルをサッカーというスポーツを通じて見る機会の多いぼくには、ブラジルの持つ貧富差のようなものは何となくわかる。またアマゾンを抱え込んでいる南米大陸の手のつけられない野性、といったところには観光...
  • ビッグ・ピクチャー
    ビッグ・ピクチャー 題名 ビッグ・ピクチャー 原題 The Big Picture (1997) 著者 ダグラス・ケネディ Douglas Kennedy 訳者 中川 聖 発行 新潮文庫 1998.7.1 初版 1998.12.25 4刷 価格 \781  あの名作『シンプル・プラン』(スコット・スミス著)の強烈な作風を覚えておいでだろうか。あれ以来重厚でじわじわと染みとおってくるタイプの怖いミステリーにはなかなか遭遇してこなかったのだが、ひさびさに出くわした。それがこれである。『このミス』や『週刊文春』がこうした傑作をべスト上位に拾ってくれたことに大変感謝。  この物語の凄いところは、序盤のリアリティ。そして人生の生き甲斐、成功への遠い憧れや現実とのギャップといった、大人のテーマをクライム・ノベルのなかにしっかりと埋め込んで、ドラマティ...
  • 覗く銃口
    覗く銃口 題名:覗く銃口 原題:The Murder Exchange (2003) 作者:サイモン・カーニック Simon Kernick 訳者:佐藤耕士 発行:新潮文庫 2005.10.1 初版 価格:\857  『殺す警官』で鮮烈デビューした作家の翻訳第二作。英国ネオ・パルプ・アクションの潮流とも言うべき、従来のミステリーとは一線を画す動きを見せる作家の一人が、このサイモン・カーニックである。  少し荒っぽいストーリー・テリングが巻を厚くしている印象はあるものの、二人の登場人物を交互に錯綜させて描く暗黒世界の死闘は、まるでエルロイの様でもあり、それでいてレナードのユーモアを忘れず、L・ブロックの情感も入れてゆく。アメリカンな影響を多分に感じさせる作風でもある。通貨単位や地名が出てこなければ、英国作品とはわからないくらいに。  元傭...
  • ネヴァー・ゲーム
    ネヴァー・ゲーム 題名:ネヴァー・ゲーム 原題:The Never Game (2019) 著者:ジェフリー・ディーヴァー Jeffery Deaver 訳者:池田真紀子 発行:文藝春秋 2020.9.25 初版 価格:¥2,500  リンカーン・ライム・シリーズの幕開けとなる『ボーン・コレクター』は、思えばズキュンと胸を撃つ類いの作品であった。捜査官ライムの身体的設定にせよ、ただものではない悪党にせよ、絶妙なストーリーテリングにせよ!  実はライム・シリーズの前から、ディーヴァー作品には、ぼくは少なからずこだわっていた。『眠れぬイヴのために』『静寂の叫び』など単発作品の強い印象である。そこに来てこの『ボーン・コレクター』。ディーヴァー作品は、どれもスリリングで先が読めない。出版された途端にすぐに手に取り読んでゆく時代が僕の中で続く。翻訳されたものは...
  • フルスロットル トラブル・イン・マインド I
    フルスロットル トラブル・イン・マインド I 題名:フルスロットル トラブル・イン・マインド I 原題:Touble In Mind (2014) 著者:ジェフリー・ディーヴァー Jeffery Deaver 訳者:池田真紀子 発行:文藝春秋 2022.4.10 初版 価格:¥1,200  コルター・ショウ三部作を終えたと思いきや、そちらのシリーズはさらに続編があるというニュースもあるし、リンカーン・ライムの新作も間もなく出るという中で、春先には短編集を二分冊で出していたので、ディーヴァーのワーカホリックぶりはどれだけ凄いのか、とびっくりさせられるのだが、これは2014年の短編集なので、凄いのはディーヴァーだけではなく、むしろ続々日本の読者に彼の作品を届けてくれる翻訳の池田真紀子さんなのだ。  感謝の気持ちを抱きながら作品集に取りかかる。個人的にはこ...
  • 聖なる怪物
    聖なる怪物 題名:聖なる怪物 原題:Sacred Monster (1989) 作者:ドナルド・E・ウェストレイク Donald E. Westlake 訳者:木村二郎 発行:文春文庫 2005.01.10 初版 価格:\714  いきなりの絶叫に始まる独白。続いてフラッシュバック。この主人公は一体何者なのだ? そんな当惑から始まる一人の男の半生の物語。女、金、欲、そして俳優として成功してゆく男が、今なぜこんなにも狂気の渦中にあるのか? 喜劇タッチで今の狂気を描きつつ、過去から浮上してくる思いもかけぬ真実が、破片だらけに見えたわかりにくい物語を一本の明白なクライム・スリラーに変えてゆく。  どこがミステリーなのかわからぬほどに不思議なリズムで書き綴られてゆく。フラッシュバックと幕間があり、それらを狂った一人称で縫い合わせる。ジム・トンプスンやチャ...
  • らせん階段
    らせん階段 題名:らせん階段 原題:Some Must Watch (The Spiral Staircase) (1933) 作者:エセル・リナ・ホワイト Ethel Lina White 訳者:山本俊子 発行:ハヤカワ・ミステリ 2003.9.30 初版 価格:\1,200  1946年に公開されたアメリカ映画『らせん階段』(ロバート・シオドマク監督、ドロシー・マクガイア主演)の原作だそうだが、本よりも映画の方が人気が高かったのかもしれない。ポケミス名画座でも、翻訳要望の強さでは『ハイ・シエラ』に続いて第二位という強力さである。しかもその後TVドラマを含めれば三度もリメイクされている。個人的には1975年の劇場版リメイク作品を見てみたい気がしている。ジャクリーン・ビゼット主演だから。  なぜさほどに人気が高いかという理由の一つに、当時ヒッチコック...
  • 君たちに明日はない
    君たちに明日はない 題名:君たちに明日はない 作者:垣根涼介 発行:新潮社 2005.3.30 初版 価格:\1,500  今年の長者番付でサラリーマンがトップを獲った話題に関してTVでかまびすしい。年間所得が百億円と、半端ではない数字ゆえに、メディアの取り扱いに対する熱心さも、国民のおそらく平均感情よりはるかに、際立っているみたいだ。  当たり前のことをやっていては決して獲得できない所得を、人並みではない方法により、目の付け所を変えて稼ぐ以外に、サラリーマンがのし上がる可能性は、あまりないだろう。だから、百億円の所得を得るというところに関心があって当たり前だというのが、TV側の言い分なんだろう。  しかし、それ以前にノースーツ姿のホリエモンが、ああしたオタッキーでもてない男との典型みたいな坊ちゃん面を曝け出しながら、野球球団やメディア会社...
  • 張り込み姫 君たちに明日はない 3
    張り込み姫 君たちに明日はない 3 題名:張り込み姫 君たちに明日はない 3 作者:垣根涼介 発行:新潮社 2010.01.15 初版 2010.1.25 2刷 価格:\1,500  『君たちに明日はない』の一巻目が出てから早や5年。2.5年ぶりに出た三冊目のシリーズ作品集は、ちょうど本シリーズがテレビドラマ化される機会に合わせて出版されたものなのだろう。なので、第二巻では『借金取りの王子』以外に副題がなかったのだが、本書ではテレビドラマで作品に馴染んだニューカマーをしっかり捕まえようと、ドラマと同じ副題がしっかり接続された。  小説では顔などのはっきりしなかった人物たちにテレビドラマでは、顔が与えられてしまうのだが、これを無視して読んでも、意識に取り込んで読んでもそれは読者の勝手である。ドラマを気に入るかどうかがポイントかもしれない。ぼくはこのドラマが気...
  • james ellroy
    ジェイムズ・エルロイ James Ellroy <ノワールの核>  自ら母が殺害され、その犯人は今もって不明。悪の獣道を歩んできたエルロイは、天才的で破壊的な文体を駆使して、世界に暗黒のクロニクルをつきつけてみせた。今も、母の死を見つめ、闇に潜む暴力を捜し求めるエルロイの、魂の悲鳴が綴ってきたその作品群は、エルロイの生そのものであるように見える。唯一無比の圧倒。現代のドストエフスキー。これまでに出逢った世界最高峰の作家、エルロイは間違いなくその一人である、と豪語しよう。 ホプキンズ三部作 血まみれの月 1984 小林宏明 ホプキンズの夜 1984 小林宏明 自殺の丘 1986 小林宏明 1950年代、ロス暗黒史四部作 ブラック・ダリア 1987 吉野美恵子 ビッグ・ノーウェア 1988 二宮 馨 LAコンフィデンシャル 1990 小林宏明 ホワイト・ジャズ 1...
  • ジェフリー・ディーヴァー
    ジェフリー・ディーヴァー Jeffery Deaver リンカーン・ライム・シリーズ ボーン・コレクター 1997 池田真紀子訳 コフィン・ダンサー 1998 池田真紀子訳 エンプティー・チェア 2000 池田真紀子訳 石の猿 2002 池田真紀子訳 魔術師(イリュージョニスト) 2003 池田真紀子訳 12番目のカード 2005 池田真紀子訳 ウォッチメーカー 2007 池田真紀子訳 ソウル・コレクター 2008 池田真紀子訳 バーニング・ワイヤー 2010 池田真紀子訳 ゴースト・スナイパー 2013 池田真紀子訳 スキン・コレクター 2014 池田真紀子訳 スティール・キス 2016 池田真紀子訳 ブラック・スクリーム 2017 池田真紀子訳 カッティング・エッジ 2018 池田真紀子訳 真夜中の密室 2022 池田真紀子訳 キャサリン・ダンス・シリーズ スリーピング・ドール...
  • アイム ソーリー ママ
    アイム ソーリー ママ 題名:アイム ソーリー ママ 作者:桐野夏生 発行:集英社 2004.11.30 初版 価格:\1,400  すっかりノワール系に染まってしまった桐野夏生だが、最近はその針も極端に振られるようになってきている。エロとグロと狂気に囚われた醜い女たちを描いて『グロテスク』『残酷記』の救いのなさは、過激極まりないものだったが、その延長上にあるこの作品は、は女性版シリアル・キラーの血と炎で綾なされた一生の物語。  アメリカンなシリアル・キラーのようにクライムの匂いが格段するわけでもなく、日常の狭間にふと口をあけた狂気の洞のような存在として描かれる、悪のヒロインでもなんでもないただの醜い中年女だからこそ、桐野の殺人者は怖い。  孤児とて娼館で育ち、娼婦たちに虐待される幼年期。施設に住み込みながら学校へ通う少女時代。そこを一息に...
  • ウィリアム・ディール
    ウィリアム・ディール William Francis Diehl, Jr. 長編小説 シャーキーズ・マシーン 1978 宮脇孝雄訳 カメレオン 宮脇孝雄訳 フーリガン 宮脇孝雄訳 タイ・ホース 1988 田村源二訳 27 1990 田村源二訳 マーティン・ヴェイル三部作 真実の行方 1993 田村義進訳 邪悪の貌 1995 広津倫子訳
  • 扇動者
    扇動者 題名:扇動者 上/下 原題:Solitude Creak (2015) 著者:ジェフリー・ディーヴァー Jeffery Deaver 訳者:池田真紀子 発行:文春文庫 2019.11.10 初刷 2016/10 初版 価格:各¥820  前作を引き継ぐかのように音楽テーマでスタートする本作だが、なんとコンサート会場が火災を装ったパニック騒動となり、死傷者が出る騒ぎに。それを仕掛けて喜ぶ陰湿な犯罪者というのが幕開けの単純な構図。  もちろんかと言ってディーヴァー作品がそんな単純構造であるわけがない。その裏には、人種間のヘイトクライム、またはそれを装った犯罪組織の影、またはそれを利用して殺しを楽しむゲーマーの世界。単独犯なのか、組織犯罪なのか? 視点が入れ替わることで、次々と見え方が変わってくる第一の事件に続いて、第二第三の仕掛けが重なっ...
  • ブルーバード、ブルーバード
    ブルーバード、ブルーバード 題名:ブルーバード、ブルーバード 原題:Bluebird, Bluebird (2017) 著者:アッティカ・ロック Attica Locke 訳者:高山真由美 発行:ハヤカワ・ミステリ 2018.12.15 初版 価格:¥1,800 訳者:高山真由美 発行:ハヤカワ・ミステリ 2018.12.15 初版 価格:¥1,800 「ジョーがまずギターを取り出した。沢山の人々の--ジョーの、次いでマイケルの、そして今やランディとダレンの--運命を変えたギブソン・レスポール」  伝説のギターマン、ジョー・スウィート。彼のギターをシカゴから追いけかけてきたマイケル・ライトの遺体がバイユーで発見された。ついで白人女性の死体が同じバイユーの少し下流で。  東テキサス、シェルビー郡。人口178人の小さな田舎町。法律家になる...
  • 悪党パーカー/怒りの追跡
    悪党パーカー/怒りの追跡 悪党パーカー 怒りの追跡 (ハヤカワ ポケット ミステリ) 題名:悪党パーカー/怒りの追跡 原題:The Sour Lemion Score (1968) 作者:リチャード・スターク Richard Stark 訳者:池上冬樹 発行:ハヤカワ・ミステリ 1986.11.15 初刷 価格:\580  エルモア・レナードの『ラム・パンチ』が作中の解説によると違法マネー搬送の行為の隠語であるように、本書の原題は、解説者でもあり本書の訳者でもある池上冬樹によれば「徒労に終わった苦々しい仕事(ヤマ)」の隠語であるらしい。この手のクライム・ノベルでは、仕事がまっとうに終わりスムースに運ぶことなんて、むしろゼロに等しいわけで、そうでなければ退屈きわまりない話が、空しく山となって積みあがるだけである。  確かにドナルド・E・ペンドルトンのマッ...
  • マイクル・クライトン Michael Crichton
    マイクル・クライトン Michael Crichton 長編 アンドロメダ病原体 1969 浅倉久志訳 五人のカルテ 1970 林克巳訳 ターミナル・マン 1972 浅倉久志訳 大列車強盗 1975 乾信一郎訳 北人伝説 197 乾信一郎訳 失われた黄金都市 1980 平井イサク訳 スフィア -球体- 1987 中野圭二訳 ジュラシック・パーク 1990 酒井昭伸訳 ライジング・サン 1992 酒井昭伸訳 ディスクロージャー 1993 酒井昭伸訳 ジュラシック・パーク2 -ロスト・ワールド 1995 酒井昭伸訳 エアフレーム -機体- 1996 酒井昭伸訳 ツイスター 1996 酒井昭伸訳 タイムライン 1999 酒井昭伸訳 プレイ -獲物- 2002 酒井昭伸訳 恐怖の存在 2004 酒井昭伸訳 Next 2007 酒井昭伸訳 パイレーツ -強奪海域 2009 酒井昭伸訳 マイクロワ...
  • 贖いの椅子
    償いの椅子 償いの椅子 (角川文庫) 償いの椅子 題名:償いの椅子 作者:沢木冬吾 発行:角川書店 2003.04.25 初版 価格:\1,900  骨のあるクライム・ノヴェルである。この新鋭の作品は『愛こそすべて、と愚か者は言った』(新潮ミステリー倶楽部)に続く長編第二作。1970年生まれの若手作家であることが信じられないほどに内容が濃くて太い。導入部の文章では若書きの印象が強いのだが、書き進むうちにどんどんこなれてゆくばかりか、読者を唸らせるような言葉が頻出して来る。書き進むうちにも作家的進化が窺えるほどに、今後の成熟が楽しみな作家だと思う。  五年ぶりに車椅子に乗って姿を現わした能見亮司。五年前に彼とともに死んだ秋葉は実は生きているのか? 五年前のつけを清算しに戻ってきたのか? 警察内にある特殊チームと民間から徴用されたメンバーたち。能見を中心に...
  • アイム・トラベリング・アローン
    アイム・トラベリング・アローン 題名:アイム・トラベリング・アローン <オスロ警察殺人捜査課特別班> 原題:I m Traveling Alone (2013) 著者:サムエル・ビョルク Samuel Bjork 訳者:中谷友妃子訳 発行:ディスカヴァー文庫 2019.3.30 初版 価格:¥1,600  しっかりしたキャラクター作りは、今や北欧ミステリーの一番のセールスポイントではないだろうか。特に長期シリーズを見据えた作品作りに取りかかる時、作り手である作家は、綿密な経歴書をキャラクター毎に作ることを余儀なくされるだろう。日本の出版事情の場合、新人作家がシリーズに取り組もうとすると、まずは一作目が好評で売れ行きが十分であることが確認されなければならないだろう。そうでなければ続編を作ることはまだリスキーと判断されるだろう。しかし、慎重派の日本出版時事情とは...
  • 仮面同窓会
    仮面同窓会 題名:仮面同窓会 作者:雫井脩介 発行:幻冬舎 2014.3.20 価格:\1,600  高校時代にさんざん嫌な目に合わされた体育教師に復讐をしようと四人のOB生徒がある悪戯を考えつくが、悪戯の翌朝、教師は湖上の死体となって発見される。互いに疑心暗鬼となる四人。  と、ここまでなら平凡なミステリかな、と思われるが、この物語の主人公の洋輔には死んだ兄が別人格となって寄生しているらしい。その兄の独白が、いきなり小説中に挟み込まれるのである。雫井脩介は『犯人に告ぐ』などで、劇場型犯罪ならぬ劇場型捜査というアイディアを前面に出し、度肝を抜いたが、ミステリの伝統芸に対しさらにツイストを利かせ伝統的手法を逆利用するような、言わばあざとい作家である。だから、この物語も一筋縄ではゆかない。  ただこうした娯楽面に徹するあまり、本来の雫井節が唸るヒ...
  • ヨコハマ・ベイ・ブルース
    ヨコハマ・ベイ・ブルース ヨコハマベイ・ブルース 題名 ヨコハマ・ベイ・ブルース 作者 香納諒一 発行 幻冬舎 2000.3.10 初版 価格 \1,600  二人コンビの刑事もの映画が好きだ。とりわけ二人の主役の個性が際立っていてそれぞれに演じる役者が上手いとなるとそれだけで、映画は低予算であれなんであれ成功したようなものではないだろうか。  『破壊』のエリオット・グールドとロバート・ブレイク。『フレンチ・コネクション』のジーン・ハックマンとロイ・シャイダー。『フリービーとビーン大混戦』のジェイムズ・カーンとアラン・アーキン。『48時間』のニック・ノルティとエディ・マーフィ。それぞれに対照的なコンビでその不調和が映画のストーリー軸を波打たせ、観客を事件そのものとは別のリズムで乗せて行く。こういう乗せられ方は好きだ。  香納諒一という作家は二人組コン...
  • ニューヨーク1954
    ニューヨーク1954 題名:ニューヨーク1954 原題:Night Life (2015) 著者:デイヴィッド・C・テイラー David C. Taylor 訳者:鈴木恵訳 発行:ハヤカワ文庫NV 2017.12.20 初版 価格:¥1,260  これは昨年末に読んだ本。先日読了したダグラス・ケネディ『幸福と報復』で、全米を襲ったマッカーシーによるレッド・パージ旋風と、その渦中で赤狩りの犠牲となる人々の細微に渡って綴られる悲劇に接し、過剰なまでの弾圧の実態を覗くことになった。本書はその同じ時代を警察小説という形で描いている。よりエンターテイメント性が強く、よりバイオレントな、いわゆる今どき映画風な小説として描かれている。著者デイヴィッド・C・テイラーは20年以上に渡って映画やTVの脚本家として活躍してきた人なのだそうだ。納得。テイラーの父親は名作『麗しのサブリ...
  • マ行作家
    マ行作家 フィリップ・マーゴリン マイケル・マーシャル デイヴィッド・マーティン アレックス・マイクリーディーズ コーマック・マッカーシー エイドリアン・マッキンティ クレア・マッキントッシュ ロス・マクドナルド クイーム・マクドネル コーディ・マクファディン エド・マクベイン ジェイムズ・A・マクラフリン アリステア・マクリーン ホレス・マッコイ グスタボ・マラホビッチ マルコ・マルターニ エルザ・マルポ デイヴィッド・マレル シェイン・マローニー ヘニング・マンケル ジャン=パトリック・マンシェット ジグムント・ミウォシェフスキ ギョーム・ミッソ ベルナール・ミニエ レックス・ミラー リズ・ムーア レミギウシュ・ムルス アンドリュー・メイン ヴィクター・メソス ウォルター・モズリイ カルメン・モラ ピエテル・モリーン
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