wiki クライムウェイヴ(Sysop読書録 活字をめぐる冒険) 内検索 / 「スズキさんの休息と遍歴」で検索した結果

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  • スズキさんの休息と遍歴
    スズキさんの休息と遍歴 またはかくも誇らかなるドーシーボーの騎行 スズキさんの休息と遍歴―またはかくも誇らかなるドーシーボーの騎行 (新潮文庫) スズキさんの休息と遍歴またはかくも誇らかなるドーシーボーの騎行 題名:スズキさんの休息と遍歴 またはかくも誇らかなるドーシーボーの騎行 作者:矢作俊彦 発行:新潮社 1990.11.5 初版 1991.5.15 8刷 価格:\1,900(\1,845)  ぼくが高校に入ったばかりの頃、上級生が二人ばかり学生運動に参加して警察に捕まったらしかった。校舎の壁に垂れ幕が下がり、その内容は「我々の同志を釈放せよ!」とかなんとか叫んでいた。朝、登校の時にそれを見たけれど、一時限が始まる前に、その垂れ幕は教師の手によって、屋上からするするとたくし上げられ、やがて消えてしまった。それとともに、60年代の名残りのようなものがすべて一...
  • 矢作俊彦
    ...れ 1987.04 スズキさんの休息と遍歴 またはかくも誇らかなるドーシーボーの騎行 1990.11 あ・じゃ・ぱん! 1998.02 ららら科学の子 2003.09 悲劇週間 2006.01 傷だらけの天使 魔都に天使のハンマーを 2008.06 犬なら普通のこと  共著/司城志朗 2009.10 百発百中  狼は走れ豚は食え、人は昼から夢を見ろ 共著/司城志朗 2010.09 引擎 ENGINE 2011.05 ARAKURE あらくれ 共著/司城志朗 2011.06 中・短編小説 神様のピンチヒッター 1981.07 死ぬには手頃な日 1982.06 ブロードウエイの自転車 1982.07 さまよう薔薇のように 1984.06 舵をとり風上に向く者 1986.05 東京カウボーイ 1992.07 仕事が俺を呼んでいる 1993.05 火を吹く女 1995.08 ポルノグラフ...
  • あ・じゃ・ぱん
    ...バルを終えた矢作は『スズキさんの休息と遍歴』で、いわゆるスラップスティック作品とうものを初めて世に出して、これまでの矢作読者をあっけに取らせた。そして『仕事が俺を呼んでいる』という超短編集以降、ふたたび長いインターバル。その間、ぼくは『ニッポン百景』なるこれまた矢作らしからぬ雑誌連載で、今の矢作の心情やら視点やらをおぼつかないまなざしで見据えていた。『コルテスの収穫』の未発刊である下巻には既に見切りをつけた頃の話であった。  そして今、この『あ・じゃぱ・ん』傾向としては、スラップスティックだが、むしろ遥かな昔、漫画家・大友克弘に原作を提供した『気分はもう戦争』が最も距離のない作品と言えるのかもしれない。ごった煮、そして奔放。それでいながら最後に持ってゆく大団円に向けてこめられた伏線の数々。いずれにせよ矢作の中の多くの要素をこめた実に大技である。  矢作の作品がいとも簡...
  • 東京カウボーイ
    東京カウボーイ 東京カウボーイ 題名:東京カウボーイ 作者:矢作俊彦 発行:新潮社 1992.7.25 初版 価格:\1,400(\1,359)  矢作のすっごく久しぶりの短編集。と言っても半分は連作短編。矢作というのはとっても怠け者の作家なのだろうか? 長編の方が全然面白く書ける作家なのに、気まぐれのように短編集ばっかりいっぱい出している。  連作短編が多いのは、ちゃんとしたキャラクターを長い一息で描くことができないからなのではないだろうか? とにかく早く『コルテスの収穫』の完結篇を出せよお!  ま、ぼくは一生出ないほうに賭けるけどね。  んで、今回の短編は最低。『死ぬには手頃な日』とか『マンハッタン・オプ』などは同じ連作短編でも、一応見せ場が多かったり、文体だけで読む価値があったけど、歳を取った矢作俊彦は次第に一人よがりの世界に沈み始...
  • 主よ、永遠の休息を
    主よ、永遠の休息を 題名:主よ、永遠の休息を 作者:誉田哲也 発行:実業之日本社 2010.3.25 初版 価格:\1,600  休むひまもなく作品を書き続ける人気作家の本音? と思わせるような、あまりピンと来ないタイトルだが、内容は、人気作家ならではの現代的犯罪ネタを基調とし、よくこなれたクライム・ノヴェルである。  一方で警察詰めの若手記者の視点から、もう一方で都会のコンビニに働く地味目な若い女性の視点から、どちらも得意の一人称を駆使して物語を綴ってゆく。  深夜のコンビニ強盗捕獲事件をきっかけに、この作品の重要な登場人物たちは一同に出会う。もちろんその偶然を理解するのは、本人たちも、読者の側も、ずっと後になってからのことなのだけれど。  次第に明らかにされるのは、過去に起こった幼女殺害事件の真実である。その際の容疑者(山ほどのビデオを...
  • 新ニッポン百景1
    新ニッポン百景 衣食足りても知り得ぬ[……礼節……]への道標として』 新ニッポン百景―衣食足りても知り得ぬ「…礼節…」への道標として 題名:新ニッポン百景 衣食足りても知り得ぬ[……礼節……]への道標として 作者:矢作俊彦 写真:太田真三 発行:小学館 1995.8.10 初版価格:\1,800  1990年代に『週刊ポスト』を手に取ったことのある人ならば、比較的長期にわたって連載されていたこのコラムには覚えがあるだろう。ひときわ目を引く写真と、都度都度の気になるタイトルによって、それなりに印象的なグラビアページであった。もし矢作ファンであれば、既に抑えておられることだろう。むしろ今さら、旧く、絶版になってしまった本書を手にしているぼくの方が、似非矢作ファンと言われても仕方のないところかもしれない。  10年以上も前に書かれたコラムと写真。どれもが、今では大...
  • 16号線ワゴントレイル
    16号線ワゴントレイル あるいは幌を下げ東京湾を時計まわりに 16号線ワゴントレイル―あるいは帆を下げ東京湾を時計まわりに (ENS ̄U BUNKO) 題名:16号線ワゴントレイル あるいは幌を下げ東京湾を時計まわりに 作者:矢作俊彦 発行:二玄社 1996.04.15 初版 価格:\1,500  アメリカへの劣等意識が並外れて強いばかりに背伸びをしてやまない中年オヤジ。  矢作俊彦のような人を一括りにして無理やり言い表すならば、こうなってしまいそうだ。外車やハーレーダビッドソンを乗り回し、レザージャケット、スタジャン、アロハシャツ、あるいは米軍払い下げのアーミージャケットに身を包んだ、かつての洒落た、それでいてけっこう裕福そうなオヤジたち。  そんなオヤジは巷にいくらでもいて、中小企業の社長や独立してそこそこの金銭を稼いで中の上を超えた生活をして、...
  • お父さんのバックドロップ
    お父さんのバックドロップ 題名:お父さんのバックドロップ 作者:中島らも 発行:集英社文庫 1993.6.25 初刷 価格:\340(本体各\330)  中島らもの少年向け親子童話。こどもはおとなになるけれど、おとなに変わるのではない、こどもの部分はそのままにいろいろなものがくっついておとなになるのだ……そういう中島らもの物語の主人公には欠かせないこども的要素をいっぱいかかえた「お父さん」たちが、やけにおかしい 4 話構成の物語集。  自分がなりたいようなお父さんがいっぱい。自分のお父さんにもこういう部分ってあったよな、と思い出すような懐かしいシーンもあったりする。そしてお父さんというのは、こどもにペーソスというものを教えてくれる最初の先生であったような気がする。  お父さんの真実を越えてこどもたちはおとなになるからだ。  中島らもの...
  • 誉田哲也
    誉田哲也 刑事・姫川玲子シリーズ ストロベリーナイト2006 ソウルケイジ 2007 シンメトリー(連作短編集) 2008 インビジブル・レイン 2009.11 感染遊戯(連作中短編集) 2011.03 ブルーマーダー 2012.11 インデックス 2014.11 硝子の太陽 R -ルージュ 2015.5 強行犯係・魚住久江シリーズ ドルチェ 2011.10 ドンナ ビアンカ 2013.02 別収録短編 女の敵(『誉田哲也 All Works』収録) 2012.03 ジウ・シリーズ ジウ I 警視庁特殊犯捜査係[SIT] 2006 ジウ II 警視庁特殊急襲部隊[SAT] 2006 ジウ III 新世界秩序[NWO] 2006 スピン・オフ作品 国境事変 2007 歌舞伎町セブン 2010.11 歌舞伎町ダムド 2014.09 硝子の太陽 N -ノワール 2015.5 ...
  • 巡査の休日
    巡査の休日 巡査の休日 題名:巡査の休日 作者:佐々木 譲 発行:角川春樹事務所 2009.10.19 初版 価格:\1,600 矢作俊彦の二村刑事の休日を描いた中編小説『リンゴォ・キッドの休日』を思い浮かべ、道警シリーズの誰か(佐伯刑事あたり)が休日に何らかの事件に出くわすという勝手な思い込みで読み始めたのだが、休日ではなく平日の物語。しかも主役は今回に限っては小島百合刑事。意外な展開に戸惑いつつも、シリーズとしてずっとある一定のレベルをキープしつつ何となく定着してきたシリーズの安定感を感じざるを得ない。  本書もいきなりの容疑者脱出劇から始まり、同時多発的に展開するあちこちの事件とそれぞれに携わる佐伯、津久井たちお馴染みの面々がそれぞれに『うたう警官』の事件を引きずりつつも、その生き様を変えず、道警という巨大組織との対決姿勢を変えず、信念に基づいた捜査を...
  • スズメバチの巣
    スズメバチの巣 題名:スズメバチの巣 原題:Hornet s Nest (1997) 作者:Patoricia D. Cornwell 訳者:相原真理子 発行:講談社文庫 1998.7.15 初版 価格:\933  これはひどい。端的に言ってひどいな、と思うのだ。あらゆる意味で中途半端な小説である。多方面に渡って出来の良い才能豊かな人が中途半端なものを目指すとこうなってしまうという悪しき見本と言っていいだろう。リラックスして楽しんで書いている様子がうかがわれるなどの巻末の訳者の弁解は、この作品の低質さには何の効果もないと思う。  ではいったい何が中途半端なのだろう。まずは一番鼻につくのがユーモア。笑えないブラックさは、読書において最悪である。フロスト・シリーズの人気が作者の意図の片隅にあるのなら、それは大きな誤りである。この作者はヒステリックで笑いの...
  • 異邦人
    異邦人 題名:異邦人 上/下 原題:Book Of The Dead (2007) 作者:パトリシア・コーンウェル Patricia Cornwell 訳者:相原真理子 発行:講談社文庫 2007.12.26 初刷 価格:各\762  現在のところ、ケイ・スカーペッタは、サウスカロライナ州チャールストンに新居を構え、民間型の研究施設を運営している。ケイの物語もここのところダイナミックために、変化が激しく、新作を手にするたびに、彼女の所属する組織や役職がわからなくなっている自分に気づく。  ここのところ、ベントンやルーシーやマリーノと、昔のキャストをそのままに皆で私企業を立ち上げ、それぞれが得意な分野で、公的警察組織の外注仕事を請け負ったりしているようである。元公務員たちが集まって、元の職場に恨まれることなく、そんな事業が経営できるのかどうか、ア...
  • 張り込み姫 君たちに明日はない 3
    張り込み姫 君たちに明日はない 3 題名:張り込み姫 君たちに明日はない 3 作者:垣根涼介 発行:新潮社 2010.01.15 初版 2010.1.25 2刷 価格:\1,500  『君たちに明日はない』の一巻目が出てから早や5年。2.5年ぶりに出た三冊目のシリーズ作品集は、ちょうど本シリーズがテレビドラマ化される機会に合わせて出版されたものなのだろう。なので、第二巻では『借金取りの王子』以外に副題がなかったのだが、本書ではテレビドラマで作品に馴染んだニューカマーをしっかり捕まえようと、ドラマと同じ副題がしっかり接続された。  小説では顔などのはっきりしなかった人物たちにテレビドラマでは、顔が与えられてしまうのだが、これを無視して読んでも、意識に取り込んで読んでもそれは読者の勝手である。ドラマを気に入るかどうかがポイントかもしれない。ぼくはこのドラマが気...
  • 楽園の眠り
    楽園の眠り 題名:楽園の眠り 作者:馳 星周 発行:徳間書店 2005.09.30 初版 価格:\1,600  元々は書評家・坂東齢人であり、エッセイスト・佐山アキラであり、FADVにあってはバンディーダというハンドルの、オフ&チャット好きのパンク青年であった彼は、『不夜城』のヒット以来、作品そのものの価値よりもずっと、馳星周というノワール作家ブランドの方に、居心地のよさを見出してしまったみたいだ。駄目だなあ、といつも彼を見ていて思った吐息が、今も継続してぼくの口から洩れる。立派かもしれないけれど、それじゃあ駄目だよ……と。  自分で構築した有名作家という名の防壁に囲繞され、出口なしの戦いを強いられて抜け出せないでいるようにも見える。転がる石を山頂に向けて際限なく持ち上げているシーシュポスだ、まるで。  彼がまだ、ぼくの近くにいて、酒を浴...
  • 黒野 伸一
    黒野 伸一 坂本ミキ、14歳。(『ア・ハッピー・ファミリー』改題) 万寿子さんの庭 長生き競争! 幸せまねき 女子は、一日にしてならず 限界集落株式会社 2011.11
  • runatic
    月の光 (ルナティック) 作者:花村萬月 発行:廣済堂出版 1993.4.15 価格:\1,500(本体\1,456)  このどちらかと言えば弱小出版社から出る作品は、『聖殺人者イグナシオ』もそうだったんだけど、萬月さんの作品群の中での主流ではなく、亜流だなあ、という気がする。でもそれだけに萬月さんの小説実験室とでも言えそうな奔放なところも多分にあって、最近、ノベルズで連続している萬月ハードボイルドの主流群にはない、未完成で荒削りな魅力を味わうことができる気がする。  『ブルース』や『真夜中の犬』のように完成度の比較的高い彼の力作とは、一線を画しているから、どうしてもこれらは小品であるとの印象を免れない。あちらの作品で萬月はすごいやと思いつつ、こちらの作品はどうもなあ、との印象を持たれる読者もけっこう多いのではなかろうか? まあ、しかし、そこを萬月、奔放、粗...
  • ナイトホークス
    ナイトホークス 題名:ナイトホークス 上/下 原題:The Black Echo (1992) 著者:マイクル・コナリー Michael Connelly 訳者:古沢嘉通 発行:扶桑社ミステリー 1992.10.30 初版 価格:各\540(本体各524) 1994年のぼくは、ずっとフランシスとベック・シリーズに明け暮れていたので、傑作の噂高い『ブラック・アイス』を読みたくなった。シリーズは順を追って読まないと気が済まないぼくは、この一作目をまずは手に取ってみたんだけど、なぜにこの作品が FADV で話題にならなかったのか不思議なほど、素晴らしい大作かつデビュー作だった。 FADVでは Gan.さんの捉え方は否定的。よくあるパターンで水準以下というのがGan.さんの評価だけど、ぼくは全く逆の感想です。なんのなんの、この作品、自分の読書歴に加...
  • アイアン・ハウス
    アイアン・ハウス 題名:アイアン・ハウス 原題:Iron House (2011) 作者:ジョン・ハート John Heart 訳者:東野さやか 発行:ハヤカワ文庫HM 2012.1.25 初版 価格:各\850  ジョン・ハートの『ラスト・チャイルド』での第一印象は、ずばり、読みやすい、面白いの二点であった。『アイアン・ハウス』を手に取って、読み始めたら止まらないそのページターナーぶりに、改めてそのときの感触を思い出した。三年弱ほどこの作家の本を手にとっていなかったのだということに、改めて気づく。  この物語の主人公は、殺し屋である。しかも引退しようとしている殺し屋である。しかも組織専属の殺し屋。彼を拾ってくれた親父さんの逝去、彼の愛した女性に子供ができたこと、これにてやばい殺し屋稼業から引退。まあ、わからないではない話である。しかし親父さんの...
  • 砂時計 警視庁強行犯係捜査日誌
    砂時計 警視庁強行犯係捜査日誌 題名:砂時計 警視庁強行犯係捜査日誌 作者:香納諒一 発行:徳間書店 2023.10.31 初版 価格:¥2,000  ほとんど国内小説を読まなくなってしまったのは、今の国内ミステリの作家が知らない人ばかりになってしまったからである。読者とともに作家も歳を取り、ぼくという読者より大抵年上であった作家たちの新しい作品が製造中止のような状態になってしまったからである。基本的には新しい作家の新しい作品に関する情報を自分が積極的に手に入れようとしていないこともあるが、かつて愛読していた既知の作家の名前が書店から消えてゆき、国産ミステリ作品の顔ぶれが相当に入れ替わってしまっている現状に相当面食らってしまっているのだ。  本書の書き手である香納諒一は、ぼくという読者から見て最初から年下の方であったし、彼の作品はデビュー当初から全作読...
  • サクリファイス
    サクリファイス サクリファイス (ハヤカワ・ミステリ文庫) サクリファイス (Hayakawa Novels) 題名:サクリファイス 原題:SACRIFICE (1991) 作者:ANDREW VACHSS 訳者:佐々田雅子 発行:早川書房 1993.5.30 初版 価格:\1,900 (本体各\1,845)  先に原書を読まれた方とは違い、佐々田雅子さんのあとがきで、ヴァクスが一応とりあえずはバーク・シリーズに終止符を打ったらしいことを知ってから読み出したぼくは、これが最後のバークの闘いなのだということを肝に命じて読み進めた。例の如く一つの文章を二三度ずつ、貴重なほどのスローペースで、ヴァクスの、いや佐々田さんの文章を、味わい尽くした。この作品を味わい尽くした。  初めての女性名以外のタイトルであるのは、内容を見るとなるほどと思う。これまでも繰り...
  • 町でいちばんの美女
    町でいちばんの美女 題名 町でいちばんの美女 原題 The Most Beautiful Woman In Town Other Stories (1983) 著者 チャールズ・ブコウスキー Charles Bukouski 訳者 青野 聰 発行 新潮文庫 1998.6.1 初刷 価格 \667  『パルプ』みたいな自由度の高い散文を書く作家の手になる短編集ってどんなものだろう。そんな気持ちで怖々と手に取ったこの本には、奇妙な味の短編作品が実に30も詰まっていた。  ショートショートに近いほどに短い作品が多い。でも落ちのあるショートショートに比べて、ほとんど落ちの工夫さえない、だらけたこれらの作品群の方が、遥かに面白く感じられるのは一体どうしたわけだろう。  ぼくは東京札幌間の高度一万メートルの高さでこれを手に取ったけれど...
  • 酔いどれの誇り
    酔いどれの誇り 酔いどれの誇り (ハヤカワ・ミステリ文庫) 酔いどれの誇り (1984年) (Hayakawa novels) 題名:酔いどれの誇り 原題:THE WRONG CASE ,(1975) 作者:JAMES CRUMLEY 訳者:小鷹信光 発行:新潮文庫 1992.4.30 初刷 価格:\660(本体\641)  帯に<極上のハードボイルド>とあり、ほんとかよ、と疑いながら読んでみたが正真正銘<極上のハードボイルド>だった。クラムリーを読まずしてハードボイルドを語る資格はない。  さて<ハードボイルドとは何ぞや>なんてさんざん語り合ったとこころで、読書遍歴はそれぞれ様々だし、なかなか文学史の教授なども友達にいないせいか、まとまりはつかない。いつだって結論は出ず、ハードボイルドとは、それぞれの勝手な思い込みだ、とまで開き直りたくもなってくる...
  • ガン・ロッカーのある書斎
    ガン・ロッカーのある書斎 ガン・ロッカーのある書斎 題名:ガン・ロッカーのある書斎 作者:稲見一良 発行:角川書店 1994.10.11 初版 価格:\1,400(本体\1,359)  これこそ稲見さんのラスト・ブックなのだろう。ひょっとすると読めないのかもしれないと思っていた、 10 年前の連載エッセイがこんな形でハードカバーになってくれたことが、まずは嬉しい。  『ミス・マガ』に連載された『ガン・ロッカーのある書斎』が約四分の一、残る四分の三を『モデルガン・チャレンジャー』という雑誌に連載された『ミッドナイト・ガン・ブルー』というこれも同質のエッセイが占める。前者が後者の一部のような感じなので、若干のダブりがあるのだが、前者にない銃以外のナイフ、その他の武器についても後者は語っている。  銃器、ナイフ、その他の武器というフィルターを通して見た稲見...
  • 日々翻訳ざんげ エンタメ翻訳この四十年
    日々翻訳ざんげ エンタメ翻訳この四十年 題名:日々翻訳ざんげ エンタメ翻訳この四十年 著者:田口俊樹 発行:本の雑誌社 2021.2.20 初版 価格:¥1,600  田口俊樹翻訳作品で自分の読んだ本を数えてみたら54作であった。特に翻訳者で本を選んでいるわけではないのだけれど、ぼくの好きな傾向の作家を、たまたま多く和訳して頂いているのが田口俊樹さんということであったのだと思う。特に、完読しているローレンス・ブロック作品は、ほぼ全作田口さん訳なので、ぼくのように読書歴にブロックのあの時代があったミステリー・ファンは、少なからず田口俊樹訳で読んでいることになるのです。  他に田口訳作品でお世話になったところでは、フィリップ・マーゴリン、トム・ロブ・スミス、最近の(パーカーBOOK版になってからの)ドン・ウィンズロウ。いずれも大変な作家揃い。  ...
  • 仏陀の鏡への道
    仏陀の鏡への道 題名:仏陀の鏡への道 原題:The Trail To Buddba s Mirror (1992) 作者:Don Winlow 訳者:東江一紀 発行:創元推理文庫 1997.3.14 初版 1999.6.18 8刷 価格:\880  当然ながらこれを読んで初めて『高く孤独な道を行け』における中国でのプロローグの意味がわかった。やはりシリーズ物は順番どおりに。  ニール・ケアリー・シリーズの二作目は重厚感。何が重厚といって中国現代史の重厚が凄い。アメリカ人の作家でここまで中国の歴史に凝った人というのはあまりいないのではないだろうか。地理的説明も歴史的背景も独特のブラックな語り口で切り裁いてみせるが、ある意味でニールのこの種の彷徨の過程をディテールから描写してゆく作法は、このシリーズに共通したものかもしれない。  一作目がロンド...
  • nemurineko
    眠り猫 作者:花村萬月 発行:徳間書店 1990.9.30 初版 価格:\1,300(本体\1,262) ぼくや香介が、関口さんに連れられて、新宿<蔵人>のドアを潜ったのは、ちょうど『眠り猫』発表後間もない頃だったろう。<蔵人>には集英社の編集長に連れられて花村萬月が来ていた。関口さんが「『眠り猫』よかったよ!」と声をかけると、萬月さんは恐縮して喜んでいたっけ。ぼくは萬月さんのことも作品『眠り猫』のことも全然知らずにいたが、なかなかの作家であるらしいという噂が噂を呼ぶ頃には、『眠り猫』は既にそこらの本屋の棚から奇麗に消え失せてしまっていた。なお、新宿<蔵人>のこの夜のことについては『聖殺人者イグナシオ』のあとがきで触れられてもいる。 ま、そういう思い出も含めて読んだ作品であり、なかなか入手も遅れた作品であり、なんとなく大切に読んでしまった。たまにはこういう風...
  • 終わりなき復讐
    終わりなき復讐 題名:終わりなき復讐 原題:The Bearpit (1989) 作者:ブライアン・フリーマントル Brian Freemantle 訳者:染田屋茂 発行:新潮文庫 1992.7.25 初版 価格:\720(本体\699)  最近フリーマントルの本はどんどん厚くなってきているような気がする、マフィンものも厚くなってから、 簡単には登場しないようになっちゃったし (;_;)  『消されかけた男』というのは、 ぼくはあの短さのわりに内容が詰まっていて、 衝撃的で優れているんだ、と思っていたから、最近の長くこってり味わってもらうんだよ的なフリーマントルの世界は、 ただでさえ暗示に満ちたわかりにくいプロットで作られるゆえに、 とっても近寄りがたい大人の雰囲気に満ちてしまっている。 最もフリーマントルはスパイ物ノンフィクションを書いたり調べたりし...
  • 私の鎖骨
    わたしの鎖骨 わたしの鎖骨 (文春文庫) 題名:わたしの鎖骨 作者:花村萬月 発行:毎日新聞社 1994.3.25 初版 価格:\1,400(本体\1,359)  短編はあまり構想を練って書いていないんじゃないかなあ、と思われるのが萬月短編集で、前回の短編集『ヘビーゲージ』でもぼくはそう言ったような気がする。なので三作の短編はまあ読むこたあないと皆さんに言ってしまう。  満月の長編もそうなんだけど、萬月さんの小説って情景描写に流されると、会話とか性描写とかで延々流されるところが多いよね。それはそれで構わないんだけど、構成によってはこういう点が長所にも短所にも変わってしまう。ぼくは『ブルース』ではこれは成功していると思うけれど、最近の作品『月の光』『永遠の島』などでは何だかストーリーとかプロットからの逃避のように思えて、何だか物足りないのである。 ...
  • hugger mugger
    ハガーマガーを守れ 題名:ハガーマガーを守れ 原題:Hugger Mugger (2000) 著者:ロバート・B・パーカー Robert B. Parker 訳者:菊池 光 発行:早川書房 2000.12.15 初版 価格:\1,900  命令系のタイトルと言うと、何故かクライブ・カッスラーを思い出してしまう。ひと頃の冒険小説は何故かこういう命令形のタイトル形式が多かった。だからこの本のタイトルもとっても大時代で古めかしい印象だ、とぼくには思えるのだけど……。それからハガーマガーとは競走馬の名前である。読まなくてはわからないようになっているのだけれど。  最近のパーカーは、確実に他のシリーズの方が気合が入っているような気がする。ここのところ好調だと思っていたスペンサーのシリーズも、何故か少しだけ中弛み状態に思えたこの一冊。  すべてが大甘。ア...
  • 鼓動を盗む女
    鼓動を盗む女 題名:鼓動を盗む女 作者:藤田宜永 発行:集英社 1997.5.30 初版 価格:\1,700  ぼくは藤田宜永は、今や日本を代表する、もしくは代表してもいい、短編の名手であると思っている。『じっとこのまま』は志水辰夫もかなわない佳品集だと思っているし、相良治郎シリーズは、もうハードボイルドを書かなくなってしまった矢作俊彦の次代を担う私立探偵小説だとさえ思う。買いかぶり過ぎかもしれないけれど、短編できちんとしたプロットと締めの一文を用意するということは、すごく難しいことだろうし、実際思いどおりの本がそう多くはないからこそ、いい短編集は価値が高いのだ。  さてここまで誉めておきながら、本書はというと藤田宜永短編集の中でも、とりわけ亜流である。日本短編集の中でもとりわけ亜流かもしれない(^^;)。幻想小説集とでも言おうか、本来モダンホラー部...
  • 鉄道員(ぽっぽや)
    鉄道員(ぽっぽや) 題名:鉄道員(ぽっぽや) 作者:浅田次郎 発行:集英社 1997.4.30 初版 1997.5.30 2刷 価格:本体\1,500  先日出張で稚内へ一人出かけた。サロベツの常宿《あしたの城》に今年三度目の宿泊をし、利尻に沈む、宿主によれば今年一番の夕焼けを見て、翌朝、稚内へ行き仕事を済ませて札幌へと南下した。  音威子府蕎麦というのはそれなりにこのあたりでは有名で、町らしき町とも言えない音威子府の駅に、ぼくは立ち食い蕎麦を食べに寄った。昔、ホームで暖かい蕎麦を食べて、そこで蕎麦を作っていたオバサンに「ここの蕎麦はいやにおいしいね」と言うと「ここの蕎麦はつなぎを使っていないからねえ」と自慢げに微笑みを返してくれたものだった。  音威子府の駅舎はそののち、やたらきれいでウッディなデザインとなり、記念写真を撮ってゆく観光客の姿...
  • 証言拒否 リンカーン弁護士
    証言拒否 リンカーン弁護士 題名:証言拒否 リンカーン弁護士 原題:The Fifth Witness (2011) 作者:マイクル・コナリー Michael Connelly 訳者:古沢嘉通 発行:講談社文庫 2016.2.13 初版 価格:各\910-  素晴らしい。読了直後の感想である。称賛の想いが溜息となって洩れる。いや、読後の感想ではない。この「素晴らしい」は、読書中どのページにおいても通奏低音のようにぼくの心の中に鳴り響いていた気がする。今年のベストミステリー海外部門は、この作品で決定。もし覆るとするならコナリーのもう一つのシリーズ新作"The Drop"が年内に登場した場合だろう。この作家は、自分の作品を次作で凌駕し得る才能とおそらくは努力の塊のような人だから。  もともとがジャーナリストであったコナリーは、...
  • クレイジー・イン・アラバマ
    クレイジー・イン・アラバマ 題名:クレイジー イン アラバマ 原題:Crazy In Arabama (1993) 作者:Mark Childress 訳者:村井智之 発行:産業編集センター 2000.6.15 初版 価格:\1,600  今年のベストには絶対に入れようと思っている、ぼくとしてはかなりお気に入りの作品。  ルシールおばさんと少年ピージョーとの二つの物語が同時進行するブラックでヒューマンで何ともアメリカな物語であるのだけれど、何と言っても1965年のアラバマが舞台ってところが味噌。マーティン・ルーサー・キング牧師とアラバマ州知事ジョージ・ウォ-レスとの演説対決のシーンもあれば、夫を殺してその首を持ち歩きならがもハリウッド女優を目差しているルシールおばさんの『じゃじゃ馬億万長者』出演風景もある。  どちらかと言えばジョン・グリシ...
  • 象牙色の嘲笑
    象牙色の嘲笑 題名:象牙色の嘲笑 原題:The Ivory Grin (1952) 作者:ロス・マクドナルド Ross Macdonald 訳者:小鷹信光・松下祥子 発行:ハヤカワ文庫HM 2016.4.15 初版 価格:\1,000-  ロスマクは読んでいなんだ、と言うと驚かれる。チャンドラーのマーロウものとハメットのスペードものは網羅しているのに、ロスマクまで歴史を追えないうちに、早くもジェイムズ・クラムリィ、ジョー・ゴアズ、ロバート・B・パーカー、アンドリュー・ヴァクス、ウォルター・モズリィなど、自分にとってのリアルタイム・ハードボイルドを追うことで忙しくなってしまったのだと思う。  なのでここに来て恥ずかしながら初のロスマク。これもきっと小鷹信光さんの最後の仕事と知らなかったら、そしてハヤカワがハードボイルド翻訳家の旗手である小鷹さんをしっか...
  • 砂漠で溺れるわけにはいかない
    砂漠で溺れるわけにはいかない 題名:砂漠で溺れるわけにはいかない 原題:While Drowning in the Desert (1996) 作者:ドン・ウィンズロウ Don Winslow 訳者:東江一紀 発行:創元推理文庫 2006.08.11 初版 価格:\720  このシリーズは感覚的には長かったような気がするけれど、実際にはたったの5作しかなかった。これはその完結篇に当たる最終作品。5作にしては名残惜しい気がするのは、作品と作品の間が長く空いたためだろう。本書巻末で訳者も書いているのだけれど、5作を完訳するのに何と13年もかかったそうである。本書だって、10年前の作品の言わば忘れた頃の邦訳だ。  さて昨年に続き立て続けに翻訳された最新二作はどちらも小編である。どちらかと言えばユーモア・ミステリーに分類されるだろう。東直己のすすきの探...
  • 聖なる怪物
    聖なる怪物 題名:聖なる怪物 原題:Sacred Monster (1989) 作者:ドナルド・E・ウェストレイク Donald E. Westlake 訳者:木村二郎 発行:文春文庫 2005.01.10 初版 価格:\714  いきなりの絶叫に始まる独白。続いてフラッシュバック。この主人公は一体何者なのだ? そんな当惑から始まる一人の男の半生の物語。女、金、欲、そして俳優として成功してゆく男が、今なぜこんなにも狂気の渦中にあるのか? 喜劇タッチで今の狂気を描きつつ、過去から浮上してくる思いもかけぬ真実が、破片だらけに見えたわかりにくい物語を一本の明白なクライム・スリラーに変えてゆく。  どこがミステリーなのかわからぬほどに不思議なリズムで書き綴られてゆく。フラッシュバックと幕間があり、それらを狂った一人称で縫い合わせる。ジム・トンプスンやチャ...
  • 猫は忘れない
    猫は忘れない 題名:猫は忘れない 作者:東 直己 発行:早川書房 2011.9.25 初版 価格:各\1,800  すすきの探偵シリーズは、ちょっと前に昔の話に戻ってしかも文庫化、として話題になった『半端者』が間に挟まったせいか、最近の年取った方の「俺」がどんなだったか失念してしまい、読み始めのあたり、妙に久しぶりのシリーズだなあとの感が強かった。  今回は、探偵の動機らしい動機が薄いのだが、何せ死体を発見してしまったというのが最初の動機である。さらにその死体である美人スナック・ママは旅行に行くと言い置いて、「俺」に猫を預けていたのだ。便利屋だから、探偵だけが商売ではない、ということを思い出させる出だしである。  さて、今回は部屋に戻るたびに猫の気配を濃厚にまとわせながら小説は進む。  作品はいつものように毒々しい悪の気配を匂わせ...
  • 愛情
    愛情 愛情 題名:愛情 作者:花村萬月 発行:文芸春秋 2007.06.30 初版 価格:\1,790  花村萬月という作家の本は、重たいと思われるものが多いのだが、時に、さりげなくこういう本が世に出ることがある。昔はこうしたものを短い長編作品でスピーディに作っていたこともあったのだが、最近は、最低限の極みという気配をどの書物にも忍ばせている。それは本書のような連作短編小説集でも同様の、この作家の姿勢だ。ぼくにはその姿勢が真摯すぎて、いつも眩しい。  変わった構成である。すべては女性を主人公とした一人称短編小説。全八篇。その女性たちの誰もが、「情さん」と呼ばれる作家とのひと時の交情を語る。交情そのものが小説のメインテーマであることもあれば、交情は(あるいは「性交は」と言い直してもいい)作品のほんの副材料であって、そうでない独白部分のほうが主軸、と読み取れる作...
  • 札幌のカラス3
    札幌のカラス3 題名:やっぱりそうでしょ 札幌のカラス3 作者:中村眞樹子 発行:北海道新聞社 2020.9.6 初版 価格:¥1,400  我が家を訪れるカラスの一家は、最早、家族みたいなもので、とて可愛い。同じ気持ちを共有するカラス博士マキコさんの本『札幌のカラス3』が出ました。売れ行きが良いということは、カラスのことを知る人、好きな人、興味を持つ人たちが増えてきたのかな、嬉しいことこの上ない。  うちのカーコたちの、子育ての半年間に付き合えたのは、我が家にとってとても貴重な経験だった。この春生まれたてのガッチャンは、赤い口の中を見せて、未だ大人になり切れないがらがらした声で、親たちに餌をねだったり、時にはぼくや妻にも羽をばたつかせて甘えた声を出して餌を食べたいよ、と歩き回る。  そのガッチャンは秋になり、ついに親離れしたようで、姿を見せな...
  • atohiki
    あとひき萬月辞典 あとひき萬月辞典―花村萬月ベスト・アンソロジー 光文社文庫 作者:花村萬月 発行:光文社 1998.3.25 初版 価格:\1,500  花村萬月さんとは冒険小説協会の10周年記念大会で、1時間程度お話をさせていただいたことがある。宴会のあとの誰かの部屋で、作家と読者とその他の人々が酒を飲みながら駄弁っていた。ほとんどぼくの方はただのミーハー状態で、萬月さんの作品についてとか、北海道のツーリングの話だとかに耳を傾けたり、質問魔となったりしていたのだけど、読者に対しては礼儀正しく優しく接してくださった。  文章からは狂暴性ばかりが浮かんできていて、非常に怖いイメージがあるんだけど、実際にお会いすると非常にやさしい声で満面に笑みを湛えて話してくれる作家だ。ぼくは最初に『眠り猫』を手に取る前にもお会いしているんだけど、そのときも腰の低い低い人だと...
  • 鋼鉄の騎士
    鋼鉄の騎士 題名:鋼鉄の騎士 作者:藤田宜永 発行:新潮ミステリー倶楽部 1994.11.25 初版 価格:\3,000(本体\2,913)  ノベルスであれば全 5 巻ほどの分量になる書き下ろし作品を、このような形で意地で一冊にまとめちゃった新潮社は偉いんだけど、寝床で持ち上げながら読む身になってみればこれはまるで本というよりバーベルであったかもしれない。まあこんな分厚い本を読んだのは生まれて初めてであった。  自分は自動車というものに毎日お世話になっているせいか、自動車にも自動車レースにもさして感興を抱かない一人なので、こういう風にもろに自動車レースの本だと宣伝されているものが、どうして冒険小説でありうるのか、といささかの不審不安を伴いながら手に取ったのだが、何の何の、これは自動車レース以上にスパイ冒険小説の要素が強く、そのスケールと原初的なエ...
  • 悪徳の都
    悪徳の都 悪徳の都〈上〉 (扶桑社ミステリー) 悪徳の都〈下〉 (扶桑社ミステリー) 題名:悪徳の都 上/下 原題:Hot Springs (2000) 作者:Stephen Hunter 訳者:公手成幸 発行:扶桑社ミステリ- 2001.2.28 初版 価格:各\781  『悪徳の都』……ううむなんたるタイトル……これじゃまるでパゾリーニやフェリーニの映画ではないか。原題が固有名詞なんだから、そのまま『ホット・スプリングス』でいいじゃないか、というのが最初の感想。とっても不思議な邦題だ。  ホット・スプリングスは実在の街である。そこで実際に起こった元軍人たちの蜂起という事件も、歴史的に記録された事実なのだそうである。スワガー・サーガそのものもアメリカの現代戦史に深く関わるものだとは思うけれども、この作品ほどに実名固有名詞が飛び交う作品というのは、今...
  • 陰謀の黙示録
    陰謀の黙示録 題名 陰謀の黙示録 上/下 原題 The Apocalypse Watch (1995) 著者 Robert Ludlum 訳者 山本光伸 発行 新潮文庫 1998.7.1 初版 価格 上\781/下\743  ぼくにはもうラドラムは読めない。昔、冒険小説読者となったきっかけの作家であるラドラムやヒギンズが、もう読めない作家になってゆく。時代の移ろい。ぼくの読書遍歴の屈曲。作家の側の時間経過。世界の出版事情。いろいろな要素が重なって、いろいろなものを変えてゆく。この激流の最中でラドラムはもうぼくが手離した遠い岩の一部になってしまった。  フランス・ワールドカップのフーリガン騒ぎで一躍悪名を轟かせたネオ・ナチ。ラドラムが老いて目を向けた悪党は彼らだった。でもネオナチがかつての鷲ノ巣のような要塞/研究所を山奥に築いてい...
  • 中島らも
    中島らも 長編小説 お父さんのバックドロップ 1989 超老伝 カポエラをする人 1990 今夜、すべてのバ-で 1991 ガダラの豚 1993 永遠も半ばを過ぎて 1994 水に似た感情 1996 バンド・オブ・ザ・ナイト 2000 全ての聖夜の鎖 2000 空のオルゴール 2002 こどもの一生 2003 酒気帯び車椅子 2004 ロカ 2005 短編集 人体模型の夜 1991 らも咄 1991 らも咄 2 1993 白いメリ-さん 1994 流星シャンハイ 1994 牛乳時代 らも咄 1996 エキゾティカ 1998 寝ずの番 1998 輝きの一瞬 短くて心に残る30編 1999 君はフィクション 2006 エッセイ集 頭の中がカユいんだ 1986 舌先の格闘技必殺へらず口大研究 1986 中島らもの明るい悩み相談室 1987 中島らものたまらん人々 1987 恋は底...
  • vachss
    アンドリュー・ヴァクス Andrew Vachss  モダン暗黒小説の切っ先のような存在であるヴァクス。ハードボイルド極まりない文体。異様な脇役陣と恐ろしい敵役を配し、休息のない街に緊迫した生き方を強いられるアウトロー、バーク。幼児虐待のみ引き受ける無免許探偵。語られる追憶の数々は血が流れるほどに痛いものばかりだ。荒んだ街をゆく現代のアンチヒーローの凄まじい死闘の数々は今も闇を切り拓く一閃のメスであり続ける。 アウトロー探偵バーク・シリーズ フラッド 1985 佐々田雅子 赤毛のストレーガ 1987 佐々田雅子 ブルー・ベル 1988 佐々田雅子 ハード・キャンディ 1989 佐々田雅子 ブロッサム 1990 佐々田雅子 サクリファイス 1991 佐々田雅子 ゼロの誘い 1994 佐々田雅子 鷹の羽音 1995 佐々田雅子 嘘の裏側 1996 佐々田雅子 セー...
  • james sallis
    ジェイムズ・サリス 長編小説 黒いスズメバチ コオロギの眼 ドライブ
  • 白夜行
    白夜行 題名:白夜行 作者:東野圭吾 発行:集英社 1999.8.10 初版 1999.8.28 2刷 価格:\1,900  松本清張の『砂の器』などを読むと、罪を犯してしまう犯罪者以上に、犯人を育んだ時代そのものの屈折を感じる。『砂の器』ではハンセン氏病患者への差別ということから暗い旅を強いられる主人公の姿が鋭利に描かれていた。  松本清張の新作を楽しみにしていたが殺人事件の発生によって休暇を奪われた刑事……という書き出しには、巨匠の踪跡を追うかのような東野圭吾自身の意気込みを感じた。  そしてこの作品は犯罪者そのものの屈折を描き出しながら、そうした犯罪者を生み出した時代そのものの屈折とそこに蠢く人間たちの姿をまるで悪の年代記のように衝撃的に綴ってゆく。時代そのものの悪というものがあまり感じられないのは、清張の時代とは違って、高度成長期か...
  • 逃避行
    逃避行 逃避行 題名:逃避行 作者:篠田節子 発行:光文社 2003.12.20 初版 価格:\1,500  隣家の幼児を噛み殺してしまったゴールデンレトリーバー。思わず老犬とともに家を飛び出して逃避行を始めてしまう五十歳の主婦。こう書くと、犬とおばさんの冒険物語、という風味だが、そこは篠田節子、犬をきっかけに女の自由を取り戻そうとするヒロインの決意、そしてずっと主婦であったからこそ生まれる苦労の数々がリアルで切ない。もちろん冒険もたっぷりなので、あっという間の一気読み本であったりもする。  車の運転もできず、体力もなく、若さも美貌も容姿も誇れず、家族のために奉仕した人生から背を向けて目指す場所すら掴めない。五里霧中、四面楚歌といった状況下で、愛犬のポポが活躍を見せる。犬と主婦との間に流れる互いへの惜しげもない交情が、ピュアで何とも言えない。そして人間の生...
  • ダブル・オー・バック
    ダブルオー・バック ダブルオー・バック (新潮文庫) ダブルオー・バック 題名:ダブルオー・バック 作者:稲見一良 発行:大陸書房 1989.5.18 初版 価格:\1,250(本体\1,214)  一挺の銃をめぐる4つの物語……って、これ聞いたことある。昔テレビでやっていた『魔法の拳銃』という人形劇もそうだった。これは確か中村メイ子が一人ですべての声優をやってしまうものであった。その後『ウインチェスターM70』とかいうのがなかったっけ。映画だったか、大薮春彦の小説だったか……これも一挺の銃の辿る連作物語ではなかったか。  とにかく稲見一良氏は、こうした連作短編が巧い。第一冊目のハードカバーなのだけど、4つの物語を劇的にまとめてくれている。ハンティング小説という意味では第一人者になるのだろうか。これまでも吉村昭によるマタギの話、熊撃ちの話はあったがこ...
  • 猟鬼
    猟鬼 題名:猟鬼 原題:The Button Man (1992) 著者:ブライアン・フリーマントル Brian Freemantle 訳者:松本剛史 発行:新潮文庫 2001.1.1 初版 価格:上\705/下\667  1.フリーマントルが、とうとう新しいシリーズを始めた。  2.しかもエスピオナージュではなく、何と警察捜査小説である。  この二点だけでフリーマントル・ファンならかなり興味をそそられる一冊であろう。実際に、読書を通じてこの新機軸に対する興味ばかりが働いて、何だか邪心ばかりで読んでしまっているような気にさえなってきた。  そうした新機軸でありながら、よくも悪くもフリーマントルの世界には違いなかった。プロフェッショナルとしての仕事の顔を表とすると、悩みやプレッシャーに抑圧されるような重い重い私生活が、男たちの裏の顔で...
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