wiki クライムウェイヴ(Sysop読書録 活字をめぐる冒険) 内検索 / 「セーフハウス」で検索した結果

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  • セーフハウス
    セーフハウス セーフハウス (ハヤカワ・ミステリ文庫) 題名:セーフハウス 原題:Safe House (1998) 著者:アンドリュー・ヴァクス Andrew Vachss 訳者:菊池よしみ 発行:ハヤカワ文庫HM 2000.1.31 初版 価格:\900  なんと本作からバーク・シリーズも文庫新刊で出版。しかも翻訳も佐々田雅子から菊池よしみにバトンタッチ。新刊の文庫化はジョン・サンドフォードのシリーズも同時発生ということで、ハヤカワは、ロング・シリーズの新刊を買いやすくという、消費者には大変ありがたい戦略に出てくれたのか? 思えば、新潮・扶桑・講談社などは売れ筋の作家であるスティーヴン・ハンター、トマス・ハリス、マイクル・コナリー、パトシシア・コーンウェルなど全部、全部、文庫新刊で発売しているのだ。ディック・フランシスやロバート・B・パーカーもぜひ文庫新...
  • vachss
    ...96 佐々田雅子 セーフハウス 1998 菊地よしみ クリスタル 1999 菊地よしみ グッド・パンジイ 2000 菊地よしみ その他 凶手 1993 佐々田雅子
  • 裁きを待つ女
    ...を賭けて身を寄せ合うセーフハウスのようなねぐら。通常の弁護士事務所とはとても言えぬ負け犬たちが傷を舐め合い擬似家族を形成する。お互いにお互いをこれほど愛したことも愛されたこともなかったと感じる男女三人の兄弟のごとき関係。三人は被告の裏側に横たわる闇の深さに挑みかかり、思いもかけぬ過酷な運命に飛び込んで行った。 起承転結の段差が激しい小説だ。「転」でいきなり断崖から突き落とされ、「結」で鉄路に飛び込む。後戻りのきかない過酷な道を選んだ者が氷のような知略と悪意に切り結んでゆく末路はあまりにも印象的である。 プロットの確かさに惹かれると同時に、文章が新人離れした屈折に満ちていて、デリカシーに荒っぽさを混じえたような翻訳もまた素晴らしいと感じた。文庫書き下ろしであることを考えると、総合的に見てコストパフォーマンスが極めて高い一冊である。 (2003.03.28)
  • アイアン・ハウス
    アイアン・ハウス 題名:アイアン・ハウス 原題:Iron House (2011) 作者:ジョン・ハート John Heart 訳者:東野さやか 発行:ハヤカワ文庫HM 2012.1.25 初版 価格:各\850  ジョン・ハートの『ラスト・チャイルド』での第一印象は、ずばり、読みやすい、面白いの二点であった。『アイアン・ハウス』を手に取って、読み始めたら止まらないそのページターナーぶりに、改めてそのときの感触を思い出した。三年弱ほどこの作家の本を手にとっていなかったのだということに、改めて気づく。  この物語の主人公は、殺し屋である。しかも引退しようとしている殺し屋である。しかも組織専属の殺し屋。彼を拾ってくれた親父さんの逝去、彼の愛した女性に子供ができたこと、これにてやばい殺し屋稼業から引退。まあ、わからないではない話である。しかし親父さんの...
  • アルファベット・ハウス
    アルファベット・ハウス 題名:アルファベット・ハウス 原題:Alfabethuset (1997) 作者:ユッシ・エーズラ・オールスン Jussi Adler-Olsen 訳者:鈴木 恵 発行:ハヤカワ・ミステリ 2015.10.15 初版 価格:\2,000  戦争に赴く若き兵士たちと、戦地での悪夢のような体験。戦争を挟んで、30年後出会った幼な馴染みは、地獄のような体験により狂気という犠牲を払って待っていた。  ひどく簡単に本書の概要を記すとこうなるが、こうしてみると1970年代に劇場で観た強烈なベトナム映画『ディア・ハンター』を思い出す。主役のロバート・デ・ニーロとその周りを固める同郷の戦友たちの物語であって、ベトナムという地獄がもたらした人間性破壊の悲劇でもあった故に、若かった魂を心底揺すぶられた作品である。  本書は、あのディア・ハ...
  • ペインテッド・ハウス
    ペインテッド・ハウス 題名:ペインテッド・ハウス 原題:A Painted House (2001) 作者:ジョン・グリシャム John Grisham 訳者:白石 朗 発行:小学館 2003.11.20 初版 価格:\2,400  リーガル・スリラーの書き手、しかもスタイリッシュでモダンな作品を次々とベストセラーとして世界に送り出し、そのほとんどの作品が映画化されて売れに売れているトップランナーとも言える作家。だからこそ、このグリシャムという人が、南部作家であったかという点について今さらながら、あっと思わせられる。そう言えばデビュー作である『評決のとき』はまさに人種混淆の南部を舞台とした差別に真っ向から挑んだ作品であった。しかしそれにしても、この作家が今アメリカから次々と送り出されている南部の書き手であるというところまでは、正直思い至ってもいなかっ...
  • ユッシ・エーズラ・オールスン Jussi Adler-Olsen
    ユッシ・エーズラ・オールスン Jussi Adler-Olsen 特捜部Qシリーズ 特捜部Q -檻の中の女- 2008 吉田奈保子 特捜部Q -キジ殺し- 2008 吉田 薫・福原美穂子 特捜部Q -Pからのメッセージ- 2009 吉田 薫・福原美穂子 特捜部Q -カルテ番号64- 2010 吉田 薫 特捜部Q -知りすぎたマルコ- 2012 吉田 薫 特捜部Q -吊るされた少女- 2014 吉田奈保子 特捜部Q -自撮りする女たち- 2016 吉田奈保子 特捜部Q -アサドの祈りー 2019 吉田奈保子 特捜部Q -カールの罪状- 2021 吉田奈保子 長編 アルファベット・ハウス 1997 鈴木 恵
  • スキッピング・クリスマス
    スキッピング・クリスマス 題名:スキッピング・クリスマス 原題:Skipping Cristmas (2001) 作者:ジョン・グリシャム John Grisham 訳者:白石 朗 発行:小学館文庫 2005.12.1 初刷 2002/12 初版 価格:\571  そういえば、最近見ない。ジョン・グリシャムという作家の名前を。毎年のようにリーガル・サスペンスの逸品を世に送り出し、映画化作品もまた常に話題になってきたのに。  日本では「超訳」とされる作品も二、三見られたけれど、そういうものには、なんだか活字文化を馬鹿にされているようで、どうも腰が引けてしまう。なのでぼくは『ペインテッド・ハウス』(ノン・ミステリーの素晴らしい作品だった)を最後にグリシャム作品にしばらくお会いしていない。  本書はそうしたグリシャム・リストの山の中、思わぬ...
  • マイケル・ドブズ Michael Dobbs
    マイケル・ドブズ Michael Dobbs 長編 ハウス・オブ・カード 1989 伏見威蕃訳 ウォール・ゲーム 1990 野本征史訳 最後に死すべき男 1991 伏見威蕃訳 危険な選択 1994 布施由紀子訳
  • ジョン・ハート John Hart
    ジョン・ハート John Hart 長編小説 キングの死 2006 東野さやか訳 川は静かに流れ 2008 東野さやか訳 ラスト・チャイルド 2010 東野さやか訳 アイアン・ハウス 2012 東野さやか訳 終わりなき道 2015 東野さやか訳 帰らざる故郷 2020 東野さやか訳
  • ジョン・グリシャム
    ジョン・グリシャム John Grisham ブルース・ケーブル・シリーズ グレート・ギャツビーを追え 2017 村上春樹訳 狙われた楽園 2020 星野真里訳 長編小説 評決のとき 1989 白石朗訳 法律事務所 1991 白石朗訳 ペリカン文書 1992 白石朗訳 依頼人 1993 白石朗訳 処刑室 1995 白石朗訳 原告側弁護人 1995 白石朗訳 陪審評決 1996 白石朗訳 パートナー 1997 白石朗訳 路上の弁護士 1998 白石朗訳 テスタメント 1999 白石朗訳 スキッピング・クリスマス 2001 白石朗訳 ペインテッド・ハウス 2001 白石朗訳 最後の陪審員 2004 白石朗訳 大統領特赦 2007 白石朗訳 奇跡のタッチダウン 報酬はピッツァとワインで2007 白石朗訳 謀略法廷 2008 白石朗訳 アソシエイト 2009 白石朗訳 自白 2010 白...
  • ナイト・エージェント
    ナイト・エージェント 題名:ナイト・エージェント 原題:The Night Agent (2019) 著者:マシュー・クワーク Matthew Quirk 訳者:堤朝子 発行:ハーパーBOOKS 2020.11.20 初版 価格:¥1,182  冒険小説の時代は終焉したのだと、嫌でも感じさせられる現在のエンタメ小説界で、少数ながら頑張っている作家たちは今も確かにいるのだけれど、かつてのスパイもの、国際謀略ものといった国家レベルの大スケールのものは少なく、巨大犯罪組織とりわけ南米の麻薬ビジネスや、暴力的宗教団体などをテーマにしたスリラーがトレンドになっている気がする。  本書は、そういう意味では昔懐かしい米露間の諜報合戦や、国家的裏切り行為を扱った少し古典的な冒険小説と言える気がする。政府中枢部内での汚職かつスパイ行為に巻き込まれ、知られざる危機に見舞...
  • 名もなき毒
    名もなき毒 名もなき毒 題名:名もなき毒 作者:宮部みゆき 発行:幻冬舎 2006.08.25 初版 価格:\1,800  この世界は写実だろうか。それともデフォルメされた寓話なのだろうか? いずれにせよ、宮部みゆきは『模倣犯』以降、暗い現代世相を反映した世界を作品の中に再構築するようになった。  主人公自体は『誰か』に登場した杉村という市井人なのだが、作品は多くの人々の様々な個性によって構成されている。一人称小説でありながら、不思議と群像小説という言葉を想起させる。それは、作品がストーリー以上に世界を描写する傾向にあるからだ。  タイトルの妙は、「毒」という字義の様々な解釈をメタファーとして用いる作者の意図に基づくものだろう。メインの犯罪は無差別毒殺事件でありながら、ストーリーは縦軸を取らず、世界を面で捉えようと趣向を凝らす。  主人公の...
  • 樹縛
    樹縛 樹縛 (新潮文庫) 樹縛 (新潮ミステリー倶楽部) 題名:樹縛 作者:永井するみ 発行:新潮ミステリー倶楽部 1998.4.20 初版 価格:\1,700  12年前の白骨死体が2体。杉の樹木の根元。秋田、東京新木場を結ぶ製材業界。環境汚染であるシックハウス症候群。そして情念。  巧い作家である。一作目『枯れ蔵』でもその力量をいかんなく発揮した作者が二作目では樹木を題材に、またも大きなテーマに挑んだ。  快いのは、描写の落ち着き、生硬で歯切れのいいテンポと、誠実な作風。そして意気込み。  二つの自殺死体に『ゼロの焦点』を想起させられたのも、松本清張の正当な後継者の香気があるからだ。主題は地味かもしれない。でも、心に傷を負う二人の主人公の中で優しさも殺意も、とても人間らしく生き生きと息吹いて見える。これだけ大人の感覚で描いてくれる作家...
  • 鏡の顔
    鏡の顔 題名:鏡の顔 作者:大沢在昌 発行:ランダムハウス講談社 2009.02.18 初版 価格:\1,600  こうした短編集と向き合うとき、ぼくは自分とその作者との距離感についていろいろなことを考えてしまう。  例えばぼくは大沢在昌を好きな作家だと言えるだろうか? 答:好きな作家の中に挙げることはあまりない。  では、大沢在昌の作品をとても高く評価しているのか? 答:ほとんどを高く評価していない。たまにとても高く評価することがある。  では、好きな作家でもなく、高く評価もしていないのに、なぜ多くの作品を読むのか? 答:まず空振りに終る作品は少なく一定レベルの面白さの提供は約束されている上、たまにはホームランもあるということからである。  高く評価した作品は? 答:『北の狩人』『雪蛍』『心では重すぎる』『狼花』  新宿...
  • ジャック・ヒギンズ
    ジャック・ヒギンズ Jack Higgins リーアム・デブリン登場作 鷲は舞い降りた 1975 菊池 光訳 鷲は舞い降りた【完全版】 1975 菊池 光訳 テロリストに薔薇を 1982 菊池 光訳 黒の狙撃者 1983 菊池 光訳 鷲は飛び立った 1991 菊池 光訳 ショーン・ディロン・シリーズ 嵐の目 1992 黒原敏行訳 サンダー・ポイントの雷鳴 1993 黒原敏行訳 密約の地 1994 黒原敏行訳 悪魔と手を組め 1996 黒原敏行訳 闇の天使 1997 黒原敏行訳 大統領の娘 1997 黒原敏行訳 ホワイトハウス・コネクション 1998 黒原敏行訳 審判の日 2000 黒原敏行訳 復讐の血族 2001 黒原敏行訳 ジャック・ヒギンズ名義 復讐者の帰還 1962 槙野 香訳 地獄の群集 1962 篠原 勝訳 虎の潜む嶺 1963 伏見威蕃訳 裏切りのキロス 1963 ...
  • ハルモニア
    ハルモニア ハルモニア (文春文庫) ハルモニア 題名:ハルモニア 作者:篠田節子 発行:マガジンハウス 1988.1.1 初版 1988.1.21 2刷  価格:\1,800  篠田節子の数多いジャンルの引き出しの中で、けっこう初期の頃からしぶとく書き続 けているのが芸術もの。絵画や音楽に関しての奇妙な感触の小説はけっこう多く書いて いる。そうした芸術を題材にした作品群の中でもとりわけ優れた一冊が本書。  『ゴサインタン』や『弥勒』のような秘境神秘譚に比べると物語の運び方は軽くてス ムースなんだけど、それなりの興味を引き起こす起点といったものの据え方が超一流で ある。  篠田節子は非常に整合性の取れたプロットを、やわらかい文体で綴る作家だ。そうい う意味ではこの作品は篠田節子の一方の代表作と言えるし、直木賞以降の作品に賭ける 意気込...
  • 暗夜
    暗夜 暗夜 (新潮文庫) 暗夜 題名 暗夜 作者 志水辰夫 発行 マガジンハウス 2000.3.23 初版 価格 \1700  帯にあるほど<暗黒小説>ではなかった。そんな新しみより何より、ぼくにとってはひさびさにシミタツ節のハードボイルドが読めるってことだけで、十分価値あり。正直、シミタツが原点に帰還したような、何だか懐かしくなるような、しみじみといい一冊なのだ。  それでも新しさは確かにあった。シミタツにしては珍しく中国、それも洛陽が物語の要衝となっており、ストーリー自体も十分に国際化している。処女作『飢えて狼』以来の本格冒険小説での海外シーンが待ち受けているという貴重な作品。  また考えの掴まえにくい主人公、という設定も、彼には珍しいかもしれない。大抵もう少しおしゃべりな主人公に軽口を叩かせて、多くの過去や人生を語らせるのが、シミタツ節のこ...
  • ヨコハマ・ベイ・ブルース
    ヨコハマ・ベイ・ブルース ヨコハマベイ・ブルース 題名 ヨコハマ・ベイ・ブルース 作者 香納諒一 発行 幻冬舎 2000.3.10 初版 価格 \1,600  二人コンビの刑事もの映画が好きだ。とりわけ二人の主役の個性が際立っていてそれぞれに演じる役者が上手いとなるとそれだけで、映画は低予算であれなんであれ成功したようなものではないだろうか。  『破壊』のエリオット・グールドとロバート・ブレイク。『フレンチ・コネクション』のジーン・ハックマンとロイ・シャイダー。『フリービーとビーン大混戦』のジェイムズ・カーンとアラン・アーキン。『48時間』のニック・ノルティとエディ・マーフィ。それぞれに対照的なコンビでその不調和が映画のストーリー軸を波打たせ、観客を事件そのものとは別のリズムで乗せて行く。こういう乗せられ方は好きだ。  香納諒一という作家は二人組コン...
  • 奇跡のタッチダウン
    奇跡のタッチダウン 題名:奇跡のタッチダウン 報酬はピッツァとワインで 上/下 原題:Playing For Pizza (2007) 作者:ジョン・グリシャム John Grisham 訳者:白石 朗 発行:ゴマブックス 2008.10.10 初版 価格:各\1,800  グリシャムの旺盛な執筆活動がすっかり復活した観がある。ここのところ立て続けに、翻訳も進んでおり、翻訳者の白石朗氏の旺盛かつ質の高い仕事ぶりにも本当に感心させられるばかり。  本来リーガル・サスペンスの巨匠として売れっ子ぶりが注目されたこの作家、頂点を極めたとの印象が強いところで、ぐっと急ブレーキを踏み込んだ。翻訳小説としてしばらく読者の目の前から姿を消していた。ぼくの場合、訳者未詳の超訳といういい加減な仕事に関してははカウントしないので、悪しからず。  頂点を極めた...
  • godbrase
    ゴッド・ブレイス物語 作者:花村萬月 発行:集英社 1990.2.25 初版 価格:\1,000(本体\971)  第二回小説すばる新人賞受賞作ということで長編というには足りない表題作に、書下ろし作品『タチカワベース・ドラッグスター』を付け加えての一冊。いわゆる花村萬月のデビュー作ということなんだろうか? このところ手に入った花村作品を次々に読んでいるので、花村萬月作品を連続して紹介したいと思っている。ただし冒険小説とかハードボイルドとひとことで言い切れるのは『なで肩の狐』(紹介済み)と『眠り猫』だけで、あとはどちらかというと青春小説というようなジャンルに当たるのかもしれない。でも、どの本もぼくのような世代にとっては、ジャンルの隔壁を作りたくなくなるような、ある熱い匂いに充ち充ちている。  『ゴッド・ブレイス物語』  花村作品にある種共通のテーマともなっ...
  • ワイルド・ソウル
    ワイルド・ソウル ワイルド・ソウル〈上〉 (幻冬舎文庫) ワイルド・ソウル〈下〉 (幻冬舎文庫) ワイルド・ソウル 題名:ワイルド・ソウル 作者:垣根涼介 発行:幻冬舎 2003.08.25 初版 価格:\1,900  アントニオ猪木が、桁外れな人間なのは、ブラジルから帰ってきた男だからというのが、まあプロレス好きな人間の間では通説になっている。島国日本ではなく、広大なブラジルという国に生まれたスケールを運んできた男というわけだ。猪木のやらかしてきたこと、そして猪木の太々しい容貌や、底知れぬ陽気を見ていると、実に信憑性のあるそれは見方だと思ってしまう。  ブラジルをサッカーというスポーツを通じて見る機会の多いぼくには、ブラジルの持つ貧富差のようなものは何となくわかる。またアマゾンを抱え込んでいる南米大陸の手のつけられない野性、といったところには観光...
  • ハートブレイカー
    ハートブレイカー 題名:ハートブレイカー 原題:Heartbreaker (1999) 作者:Robert Ferrigno 訳者:浅尾敦則 発行:アーティストハウス 1999.10.31 初版 価格:\1,900  帯に「J・エルロイ、M・コナリー大絶賛の超A級ハードボイルド!!」とあるので、見かけない出版社だけど騙されたと思って意を決し買った本。フェリーニョという作家はこれが初物というわけではなく講談社文庫から既に『無風地帯』『チェシャ・ムーン』と邦訳されているのだそうだ。  悪党ばかりが、欲得ずくでカリフォルニアを蠢き化かし合うという、言わば世紀末版ノワール。プロットの懲り方よりも、表現の懲り方に力点を置いているように見える。  何よりもキャラクター造詣にとても力を注いでいて、会話の格闘技とでも言うべき世界をのっけから飽かず展開してく...
  • 白の海へ
    白の海へ 題名:白の海へ 原題:To The White Sea (1993) 作者:James Dickey 訳者:高山恵 発行:アーティストハウス 2000.10.31 初版 価格:\1,000  ジェイムズ・ディッキーという名前をぼくは知らなかった。しかしその名前を、映画関連データベース・サイトで検索すると、ジョン・ブアマン監督、ジョン・ボイト&バート・レイノルズ主演『脱出』の原作者であり、かつ脚本家でもあるということがわかる。ネイチャー派の作家でありながら、タフなアクションを描く、しかしそれでいてどこまでも純文学系の作家、と言ったところだろうか。  本書は、けっこう凄まじい。  東京大空襲のさなか、撃墜された機銃手が、ひたすら北海道を目差して本州を北へと逃走する物語なのである。なぜ北を目差すかと言うと、アラスカ育ちでハンティングを生...
  • アメリカミステリ傑作選2001
    アメリカミステリ傑作選 2001 アメリカミステリ傑作選 2001 (アメリカ文芸年間傑作選) 題名:アメリカミステリ傑作選 2001 原題:The Best American Mystery Stories 1999 (1999) 編者:オットー・ペンズラー&エド・マクベイン編 Otto Penzler 訳者:加藤郷子、他 発行:DHC 2001.06.27 初版 価格:\2,800  『ケラー最後の逃げ場』ローレンス・ブロック・田口俊樹訳/『父親の重荷』トマス・H・クック・鴻巣友季子訳/『まずいときにまずい場所に』ジェフリー・ディーヴァー・大倉貴子訳/『ルーファスを撃て』ヴィクター・ギシュラー・加藤淑子訳/『ジェイルハウス・ローヤー』フィリップ・マーゴリン・加賀山卓朗訳/他 全18作収録  アンソロジーなんて滅多に読まない。好きな作家のシリーズ短編...
  • ラスト・ドリーム
    ラスト・ドリーム ラストドリーム 題名:ラスト・ドリーム 作者:志水辰夫 発行:毎日新聞社 2004.09.30 初版 価格:\1,700  志水辰夫は自分に制限をかけなくなったな、と本書を読んでつくづく思った。その分だけ書きたいという方向性が主体的にになった。読者におもねるのではなく、自分が小説を書くことで創り出しつつ、思念を紡いでゆく方向。面白い小説を書く作家から、最近では花村萬月に近いわがままさが出てきた。これを歓迎すべきか否かは、読者次第だということだろう。  本書からは、新聞小説ならではのゆったり感もあるだろうがそればかりではなく、作者の側でのリズム、つまり思念の空気のようなものを嗅ぎ取ることができる。無理に形に収めようというのではなく、ある程度自由な時間の流れを人の通常の思念のように行き来し、全体像は終わったときに見えてくるという形である...
  • 石の猿
    石の猿 石の猿 題名:石の猿 原題:The Stone Monkey (2001) 作者:ジェフリー・ディーヴァー Jeffery Deaver 訳者:池田真紀子発行:文藝春秋 2003.05.30 初版価格:\1,900  蛇頭はアメリカにも難民を送り出すのか。蛇頭は陸続きのロシアに船を用意したりするのか。蛇頭は大西洋にも乗り出すのか。そうやって蛇頭はマンハッタンのチャイナタウンにまで難民を送り込むのか。そういうことは全然知らなかった。蛇頭は、アジアに老朽船を送り込んで、荒波に沈めたりしているものだとばかり思っていた。  さてそうした蛇頭に送り込まれる難民船という設定がまずはリンカーン・ライム・シリーズとしては実に意外だった。ましてやその難民船に謎の殺し屋が潜伏していて、嵐の中で船を爆破するなどとは、もしかしてこれは英国冒険小説? などとの疑惑が首をもたげた...
  • サバイバー
    サバイバー 題名:サバイバー 原題:Survivor (1999) 作者:チャック・パラニューク Chack Palahnuik 訳者:池田真紀子 発行:早川書房 2001.1.31 初版 価格:\1,900  ある意味、難物である。厄介なしろものだと言ってもいい。何せ、最初のページが324ページで始まる。以下ページを繰るにつれ、323、322、321……。何せ最初の章が47に始まる。以下、46、45、44……。最後のページは無論1ぺージだ。こういう具合に、パラニュークはまたもやってくれる。  パラニュークのこれまでの3作品すべてが、衝撃の結末からスタートしている。何とも予断の許さない状況を読者に突きつけておいて、そこから物語は、思いもかけぬ方向へとねじ曲がってゆくのだ。本書も、誰もいない旅客機、四つのエンジンがすべてフレームアウトして、ひたす...
  • 疾風ガール
    疾風ガール 疾風ガール 題名:疾風ガール 作者:誉田哲也 発行:新潮舎 2005.9.30 初版 価格:\1,400  『下妻物語』は現代の日本の少女をとことん戦うキャラクターに変えて痛快無比だったけれど、ここに今度は小説というかたちで、少女ヒロインがまた一人誕生した。現代日本のメディアに露出される少女たちの馬鹿さ加減を毎日見せつけられていればこそ、こうしたタフガイならぬタフガールの登場が、おじさんたちの救いになっているのかもしれないけれど。  夏美はインディーズ界をメジャーめがけて駆け上りつつあるロックバンド、ペルソナ・パラノイアの天才的ギタリスト。彼女の一人称と、芸能マネージャー祐司の三人称を交互に綴りながら、物語はエネルギッシュに進行する。  この作家『アクセス』でホラーサスペンス大賞で特別賞を受賞している。その作品については、欠点も見られるも...
  • 汚染訴訟
    汚染訴訟 題名:汚染訴訟 / 上・下 原題:Gray Mountain (2014) 作者:ジョン・グリシャム John Grisham 訳者:白石 朗 発行:新潮文庫 2017.2.1 初版 価格:上¥750 下¥670  地道に作品を書き続けるグリャシャム。シドニー・シェルダン張りの超訳という暴挙に曝された初期の何作か以外は全部読むことにしているので、少し溜まってしまった読み残しに手を付ける。 本書は、リーマンショックを受けてアソシエイトの整理に大わらわとなったマンハッタンの巨大法律事務所の朝で幕を開ける。  主人公は珍しく『依頼人』(スーザン・サランドン主演の映画も名作『グロリア』ばりに良かった)以来となる女性である。しかもキャリア3年。訴訟経験なしだが、家庭環境はまるで法曹界サラブレッド。  多くの弁護士が職を失う中で我が...
  • rnoie
    Rの家(ノベルズ化に当たって「ロビンソンの家」へ改題) 作者:打海文三 発行:マガジンハウス 2001.01.25 初版 価格:\1,800  打海文三の小説作法は基本的に独創的な人物の造形に尽きると思っていたのだが、それも散文化を極めすぎると、こういう自由構成のような脱線現象となる、ということなのだろうか。アーバン・リサーチという枠組みによるシリーズの締めつけから解放され、独立したものという見方よりはむしろ、ハードボイルドという寡黙な技法から離れ、ずっとずっと饒舌に語られ始めようとしたときに、この『Rの家』という無味乾燥な作品ができあがったのかもしれない。 たとえば寡黙な技法であるなら、ストーリーを回してゆくしかない。人物を次々と行動に走らせ、そのパターンを冷たく距離を置いて描写してゆくしかないのだ。しかし饒舌技法でいいのならば、ストーリーなどは不...
  • ホワイト・シャドウ
    ホワイト・シャドウ 題名:ホワイト・シャドウ 原題:White Shadow (2006) 作者:エース・アトキンス Ace Atkins 訳者:熊谷千寿 発行:ランダムハウス講談社文庫 2008.08.10 初版 価格:\950  ミシシッピの大学で南部音楽史の教鞭を取る元プロフットボーラー、ニック・トラヴァースのシリーズで既に二作の翻訳がされているが、日本では相変わらずほとんど知られていないであろう実力派ノワール作家として、エース・アトキンスの名をホンモノにする作品は、もしかしたら本書かもしれない。  少なくとも一人称で進行させるシリーズとはリズムやテンポを大きく変えて、他視点による錯綜した都会の暗黒分野を描き出そうと、現実の迷宮入り事件に材を取って、まさにエルロイのロス暗黒史以来の充実を見せつけてくれる本格ノワールとして、完成度の高さが伺われ...
  • 横浜狼犬(ハウンドドッグ)
    横浜狼犬(ハウンドドッグ) 題名:横浜狼犬(ハウンドドッグ) 作者:森詠 発行:光文社カッパノベルス 1999.3.1 初版 価格:\819  ここのところすっかり軍事シミュレーション作家に堕してしまった感のある森詠。かつては『雨はいつまで降り続く』のような国際派ハードボイルド作家として、元ジャーナリストの手腕がきらりと光っていたはずなのに。  そういうわけでここのところぼくとしては完璧に見切りをつけていた……はずの、森詠の新境地ということでまたも手に取ってしまうファン心理の複雑さ。  この作家にしては珍しく警察小説の新シリーズに挑戦してきたのがこの作品。タイトルも中身も『新宿鮫』の影響を抜きには語れない。キャラクター作りにもかなり力を入れているみたいだし、鮫の大沢在昌に比べてさすが一日の長を感じる部分がある。鮫シリーズは街の闘争を描くため...
  • エウスカディ
    エウスカディ 題名:エウスカディ 上/下 作者:馳 星周 発行:角川書店 2010.9.30 初版 価格:各\1,800  日本冒険小説協会ができた頃、その名の通り、日本では冒険小説の名が一躍読書会を賑わした。これまでとはスケールを異にした日本の作家による世界を舞台にした冒険小説が次々と書かれ、時代の寵児とも言われるべき作家の精鋭たちが登場したのだ。  船戸与一、逢坂剛、佐々木譲、森 詠、いずれの作家もその後日本のエンターテインメントを代表するような活躍を見せ、確かにあの時代に金字塔を掲げて今、さらに題材を求め、語り部の術に磨きをかけ冒険小説を追求する道を選ぶ者もあれば、異なるジャンルや時代のニーズにフィットして自分を変えてゆく道を選ぶ者もあったろう。  その日本冒険小説協会の会長にはハードボイルド芸人・内藤陳が会長となったわけだが、彼が...
  • ケモノの城
    ケモノの城 題名:ケモノの城 作者:誉田哲也 発行:双葉社 2014.04.20 初版 価格:\1,600  誉田哲也という作家は今、すごく売れているんだろうと思う。映画やドラマでは『武士道シックスティーン』から『ジウ』から『ストロベリーナイト』まで。『ジウ』は深夜枠のドラマだったけれど、『ストロベリーナイト』はTV連続ドラマからMovieへ! というまるで作品の赤絨毯みたいな道を通っていった。  何年もかけて一冊一冊、この作家の作品の娯楽性の良さに導かれてはきたけれど、その人気がここまで来てみると、作品を良くしているようには見えない気がする。すくなくともぼくは最近そんな思いでこの作家を案じている。  この作家の娯楽要素はスピーディさと過激さ、そしてヒーロー、ヒロインたちの魅力であろう。特にヒロインたちの等身大な魅力や、逆に影のある魅力(暗い...
  • 黒き荒野の果て
    黒き荒野の果て 題名:黒き荒野の果て 原題:Blacktop Wasteland (2020) 作者:S・A・コスビー S.A.Cosby 訳者:加賀山卓朗訳 発行:ハーパーBOOKS 2022.2.20 初版 価格:¥1,210  ホンモノのノワールがやって来た。古いフレンチ・ノワールの世界が、現代に帰ってきた。そういう小説の時間をもたらしてくれる作品である。  70年代のアメリカン・ニューシネマのフィルムの傷を想定しながら読む。暗闇に潜んで見上げていた傷だらけのスクリーン。暗くくすんだカラー。映画館内に漂う煙草のにおい。小便臭いコンクリート打ちっぱなしの廊下の匂い。しかしスクリーンの向こうには、野望を持つ男と女のしゅっとした切れの良さがある。銃口と硝煙。カーブの向こうを見据えるドライバーの冷徹な眼差し。  それらは大抵。美しい犯罪ストーリ...
  • ノー・セカンド チャンス
    ノー・セカンドチャンス 題名:ノー・セカンドチャンス 原題:No Second Chance (2003) 著者:ハーラン・コーベン Harlan Coben 訳者:山本やよい 発行:ランダムハウス講談社文庫 2005.9.13 初版 価格:上¥750/下¥780  ずっとマイロン・ボライター・シリーズを書いてきたハーラン・コーベンは、21世紀に入ってから、馴染みのシリーズを離れ、がらりと作風を変えた単独ミステリーに傾注してゆく。その現象が、後から顧みて、どうも不思議である。どちらかと言えば陽気でユーモラスで、軽妙で、それでいながら血が熱くなるような、人間の内側に潜り込んで書いていたようなウェットな作家だったように思うが、本書を見る限りはスリルとサスペンスという物語の側に軸を移し、より過激に、より血腥く、そしてよりエンターテインメント色を強めるよう意識し...
  • シリウスの道
    シリウスの道 [429] Client error `POST https //webservices.amazon.co.jp/paapi5/getitems` resulted in a `429 Too Many Requests` response { __type com.amazon.paapi5#TooManyRequestsException , Errors [{ Code TooManyRequests , Message The request was de (truncated...) 題名:シリウスの道 作者:藤原伊織 発行:文藝春秋 2005.6.10 初版 価格:\1,714  この作家の一番好きな長編作品は? と聞かれたら、ぼくは間違いなく『てのひらの闇』答える。逆に鮮烈デビュー作『テロリストのパラ...
  • 銃撃の宴
    銃撃の宴 銃撃の宴 (徳間文庫 140-2) (↑アマゾンで購入) 題名:銃撃の宴 作者:船戸与一 発行:徳間文庫 1984.6.15 初版 価格:\460  船戸与一初期短編集。すべてアメリカを舞台にして、主人公は流れ者の日本人であるというところが興味深い。冒険小説の舞台として、森詠や逢坂剛と並び船戸が海外の辺境に題材を求めるのは、日本ではあまりリアリティのない銃撃シーンが作品の中に欲しいからではないだろうか。銃撃シーンを日本国内でふんだんに取り入れると、おそらく往年の日活無国籍アクション映画の様相を呈することになってしまう。冒険小説の生まれ育ちにくい土壌であるがゆえに、主人公たちは、海外の辺境に逃れたり、佐々木譲の如く過去に旅することになる。『銃撃の宴』という作品が収められているわけではない本書は、その名のとおりの活劇シーンを、アメリカの闇の部分に求めて...
  • 沈黙のメッセージ
    沈黙のメッセージ 題名:沈黙のメッセージ 原題:Deal Braker (1995) 著者:ハーラン・コーベン Harlan Coben 訳者:中津悠 発行:ハヤカワ文庫HM 1997.5.15 初版 価格:¥840  ハーラン・コーベンという作家には、様々な新しい試みをやってやろうという独創性への渇望と、意気込みがとても強く見受けられるが、四半世紀前のデビュー作である本書には、その思いのたけがたっぷり過ぎるくらいにぎっしりと詰まっているように見える。  文体としては、軽妙で読みやすく、三人称なのだが、もしこれが一人称であれば、ロバート・クレイスのエルヴィス・コール・シリーズにすごく似てそうだ。メタファー、体言止め、ユーモア。  しかし、主人公は私立探偵ではなく、スポーツエージェント。FBIに一時在籍した経験を活かしての探偵もどき、といった少し...
  • ありふれた祈り
    ありふれた祈り 題名:ありふれた祈り 原題:Ordinary Grace (2013) 作者:ウィリアム・ケント・クルーガー William Kent Krueger 訳者:宇佐川晶子 発行:ハヤカワ・ミステリ 2014.12.15 初版 価格:\1,800  アメリカには少年の冒険小説がよく似合う。トム・ソーヤーやハックルベリー・フィンに始まった少年が冒険する物語は、少年向けの小説であったとして、スティーブン・キングの『スタンド・バイ・ミー』やロバート・マッキャモンの『少年時代』などなぜかホラー作家の正統派少年小説として、かつて少年であった大人たちに読まれ、評価された名作として知られている。  時を経て、リーガル・サスペンスの巨匠、兼売れっ子作家であるジョン・グリシャムですら、『ペインテッド・ハウス』というジャンル外の傑作をものにしている...
  • 危険な男
    危険な男 題名:危険な男 原題:A Dengerous Man (2019) 著者:ロバート・クレイス Robert Crais 訳者:高橋恭美子 発行:創元推理文庫 2021.01.29 初版 価格:¥1,360  今年の初めに読んだのが『天使の護衛』。ご存じエルヴィス・コールの相棒ジョー・パイクを主人公に据えたシリーズ第一作品である。その後三作ほど置いてのシリーズ新作が本書、十年以上ぶりの邦訳となるが、素直にこうした機会が得られたことは喜ぶべきだろう。  ともかく、へらず口を得意とする探偵を書いている作家が、無口な相棒を主人公にここまで書ける、というところがパイク・シリーズの何と言っても味噌なのである。  ところで『天使の護衛』を出版したランダムハウス社は、最後まで侮れない海外作家出版の一角を成していたのだが突然倒産してしまった。それによ...
  • モルフェウスの領域
    モルフェウスの領域 題名:モルフェウスの領域 作者:海堂 尊 発行:角川書店 2010.12.15 初版 価格:\1,500  ここのところ海堂尊のシリーズ作品を読みつつ、『チーム・バチスタの栄光』が傑作である以上に、シリーズ全体に影響をより強く与えている作品は『ナイチンゲールの沈黙』と『ジェネラル・ルージュの凱旋』の二作ではないだろうかとの思いを強くしている。これに加えて『螺鈿迷宮』か。というのは、今はなき救急病棟と、小児病棟として残ることのできたオレンジ新棟が、この後もずっとシリーズ作品で顔を出してゆくからである。  奇しくも『アリアドネの弾丸』と本作では、『ナイチンゲールの沈黙』に登場した二人の男の子が手分けして登場、それなりに重要な役割を担うようになった。とりわけ本作の主人公は、あのアツシ君である。「ハイパーマン・バッカスが瑞人兄ちゃんと小...
  • 大統領特赦
    大統領特赦 題名:大統領特赦 上/下 原題:The Broker (2006) 作者:ジョン・グリシャム John Grisham 訳者:白石 朗 発行:新潮文庫 2007.03.01 初版 価格:各\667  ジョン・グリシャムの長編作品をちゃんと読むのは何年ぶりだろう。かつては一年一作ペースで出るハードカバー作品を、次々と楽しんだものだ。リーガル・サスペンスという枠の中に納まりきらない、はち切れんばかりのエネルギーを詰め込んだスリラーを、ストーリー・テリングの巧さとヒューマンな内容とで、とにかく「読ませる」作家であった。  日本ではシドニー・シェルダンで当てた無名な出版社が、超訳という訳者不詳、原作文章を変質させても日本人向けに強引に訳してしまうという乱暴な所業で、グリシャム作品の何作かを持って行ってしまい、それらは当然ぼくの読書タスク・リ...
  • ハード・キャンディ
    ハード・キャンディ ハード・キャンディ (ハヤカワ・ミステリ文庫) ハード・キャンディ (Hayakawa Novels) 題名:ハード・キャンディ 原題:Hard Candy (1989) 著者:アンドリュー・ヴァクス Andrew Vachss 訳者:佐々田雅子 発行:早川書房 1991.4.30 初版 価格:\1,700(本体\1,650)  さてヴァクスの第四作『ハード・キャンディ』。続けて読めて何という幸せ者! というのは、この本は基本的に新しい物語ではなく、これまでのバークの取り残してきたさまざまな事件を総ざらいしてしまうという内容だからだ。なんとなく『赤毛のストレーガ』で感じたマフィアの老依頼主ジュリオの獣的な悪をバークたちが見捨てていたのが心残りだったし、ストレーガの病からもバークは恐怖と寒気の中で逃避していた。『ブルー・ベル』の方は一旦...
  • ススキノ ハーフボイルド
    ススキノ、ハーフボイルド ススキノ、ハーフボイルド (双葉文庫) 題名:ススキノ、ハーフボイルド 作者:東 直己 発行:双葉社 2003.07.25 初版 価格:\1,700  『探偵くるみ嬢の事件簿』を思わせる、リラックスした雰囲気のススキノに、例の太った男、通称<便利屋>が絡んで、東直己ならではの夜中のススキノに、人間たちの欲望や哀しみのドラマが展開する。  通常のススキノ便利屋シリーズであれば、それなりの人間的でハートウォーミングなハードボイルドになるところを、今回は敢えて、便利屋シリーズの外伝風に、しかも本来脇役でしかないはずの高校生の視点で捉えてゆく。高校生ならではの一人称の軽いタッチな文体。十代ならではの大人の世界へのドキドキ感が、何となく大人が読み返す自分の若かりし頃のようで、懐かしくもあり、切なくもある。  通常の高校生よりは少しだけ...
  • 鈴蘭
    鈴蘭 題名:鈴蘭 作者:東 直己 発行:角川春樹事務所 2010.6.8 初版 価格:\1,900  「札幌での題材がなくなって書けなくなったんだよ」  ある時期、東直己がワイドショーのゲストコメンテーターばかりやって、ちっとも新作を出さなかった時期に、いきつけの酒場のマスターは、ぼくの「東直己本出さないねえ」という問いかけに対し、そう答えた。東直己がサイトにコラムを書いている寿郎社の社員とカウンターに隣り合わせたのもその頃。マスターに新作を提供するのだが、駄目だよ、金払って買ってもらわなきゃ、って思っていたのは、ぼくの頭の中の声。好きな作家のためには本は買わなきゃ。  その後、無事、ばりばりに復帰した東直己は年間に何作もシリーズ新作をかっ飛ばすようになった。寿郎社でのコラムもやめたし、TV出演もなくなり、作家らしい生活リズムを刻み始めたように思...
  • フリーファイア
    フリーファイア 題名:フリーファイア 原題:Free Fire (2007) 作者:C・J・ボックス C.J.Box 訳者:野口百合子 発行:講談社文庫 2013.6.14 初版 価格:\1,000  一作で二作分くらい楽しめる内容のツイストぶり、かつエンターテインメント性、練度を増してきたストーリーテリングの極み、それらを支える初期からのオリジナルな発想としての猟区管理官という職業。すべてにおいて、ますます重量感を増してくる様相を呈し、読者を驚かせてやまないのがC・J・ボックスという作家である。  そもそも人があまり住んでもいない、大自然ばかりのワイオミングという土地で、探偵でもない稼業の、派手でもない主人公とその一家族が、シリーズに値するほどの物語やプロットを紡ぎ出せるものなのかさえ疑問であったはず。第一作からディック・フランシスばりの小説...
  • ハーフムーン街の殺人
    ハーフムーン街の殺人 題名:ハーフムーン街の殺人 原題:The House On Harf Moon Street (2018) 著者:アレックス・リーヴ Alex Reeve 訳者:満園真木 発行:小学館文庫 2020.03.11 初版 価格:¥950  やれやれ、この作家、よくもここまで難度の高い小説を書きあげたものだ。主人公は、体は女性だが心は男性というトランスジェンダー。現代であればありがちな設定なのだろうけれど、なんと舞台は19世紀1880年のロンドン。難度に難度を重ねるチャレンジングな設定。  今年読んだ『探偵コナン・ドイル』の設定が本書とほぼ同時期で、ホームズが登場し、切り裂きジャックが夜を掻き回していた時代であり場所である。同じ、ロンドンの夜は、本作でもかなり手強い暴力や殺意に満ちており、怪しい霧に包まれて真相がなかなか見えないとこ...
  • ディープサウス・ブルース
    ディープサウス・ブルース 題名:ディープサウス・ブルース 原題:Dark End Of The Street (2002) 作者:エース・アトキンス Ace Atkins 訳者:小林宏明 発行:小学館文庫 2004.04.01 初版 価格:\695  いわゆるミュージック・ミステリとでも言おうか。同じ南部の音楽ミステリシリーズとしてはカントリー・ミュージックに材を取ったリック・リオーダン『ホンキートンク・ガール』(カントリー・ミュージック)が記憶に新しいが、こちらのほうは、よりディープに南部音楽へのこだわりを見せ、ストーリーの核に黒人音楽が息づいていることを感じさせる。  何しろ主役はミシシッピの大学で南部音楽史の教鞭を取る元プロフットボーラー。このニック・トラヴァースのシリーズは第一作『クロスロード・ブルース』(1998年、角川文庫)が邦訳されて...
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