wiki クライムウェイヴ(Sysop読書録 活字をめぐる冒険) 内検索 / 「ダイイング・アイ」で検索した結果

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  • ダイイング・アイ
    ダイイング・アイ 題名:ダイイング・アイ 作者:東野圭吾 発行:光文社 2007.11.25 初版 価格:\1,600  1998年から99年に雑誌連載されていた長編をこれまで発表せずにいた理由が何であったのかぼくは知らない。作者にとってこの作品がどうであったのかもわからない。とにかくいずれにせよ、何年もの時を経てハードカバーとなり、出版される本、ということでそれなりの興味を持ち読み始める。  さすがに作者が十歳近い年齢差を経ての、今の作品とその頃の作品の差というものは少なからず感じる。技術的なものよりも、書こうとする題材の変化の方がむしろそれは大きいように思われる。  ぼくはこの作者の古い読者ではない。『天空の蜂』『白夜行』といった有名どころはそのときどきに抑えてきたものの、推理小説ということにさほど興味を持たないぼくは、謎そのもので読...
  • 東野圭吾
    ...けの街で 2007 ダイイング・アイ 2007 流星の絆 2008 パラドックス13 2009 カッコウの卵は誰のもの 2010 プラチナデータ 2010 白銀ジャック 2010 マスカレード・ホテル 2011 ナミヤ雑貨店の奇蹟 2012.03 夢幻花 2013.05 虚ろな十字架 2014 ラプラスの魔女 2015.05 人魚の眠る家 2015 危険なビーナス 2016 希望の糸 2019 -クスノキの番人 2020 -ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人 2020 白鳥とコウモリ 2021.04 天下一大五郎シリーズ 名探偵の掟 1996 名探偵の呪縛 1996 浪花少年探偵団シリーズ 浪花少年探偵団 1988 浪花少年探偵団2 1993 連作短編集 殺人現場は雲の上 1989 依頼人の娘(「探偵倶楽部」へ改題) 1990 交通警察の夜(「天使の耳」へ改題...
  • グレッグ・アイルズ
    グレッグ・アイルズ Greg Iles ジョナス・スターン二部作 甦る帝国 1993 中津悠訳 ブラッククロス 1995 中津悠訳 FBI捜査チーム・シリーズ 神の狩人 1997 雨沢泰訳 戦慄の眠り 2001 雨沢泰訳 血の記憶 2005 雨沢泰訳 ノンシリーズ長編 沈黙のゲーム 1999 雨沢泰訳 24時間 2000 雨沢泰訳 魔力の女 2002 雨沢泰訳 神の足跡 2003 雨沢泰訳
  • アイム・トラベリング・アローン
    アイム・トラベリング・アローン 題名:アイム・トラベリング・アローン <オスロ警察殺人捜査課特別班> 原題:I m Traveling Alone (2013) 著者:サムエル・ビョルク Samuel Bjork 訳者:中谷友妃子訳 発行:ディスカヴァー文庫 2019.3.30 初版 価格:¥1,600  しっかりしたキャラクター作りは、今や北欧ミステリーの一番のセールスポイントではないだろうか。特に長期シリーズを見据えた作品作りに取りかかる時、作り手である作家は、綿密な経歴書をキャラクター毎に作ることを余儀なくされるだろう。日本の出版事情の場合、新人作家がシリーズに取り組もうとすると、まずは一作目が好評で売れ行きが十分であることが確認されなければならないだろう。そうでなければ続編を作ることはまだリスキーと判断されるだろう。しかし、慎重派の日本出版時事情とは...
  • ロング・グッドバイ
    ロング・グッドバイ THE WRONG GOODBYE THE WRONG GOODBYE ロング・グッドバイ 題名:ロング・グッドバイ THE WRONG GOODBYE 作者:矢作俊彦 発行:角川書店 2004.09.11 初版 価格:\1,800  矢作のハードボイルドを全部持っている。ハードカバーで、書棚の取って置きの場所に並べている。文庫はそれなりにそれなりの場所で大切に保管している。人に譲る気持ちはこれっぽっちもない。  自分は矢作のファンなのかと聞かれると首を傾げたくなる。さほど好きではない種類の人間であるという確信がある。もうひとり我が家では同じ扱いを受けている人に村上春樹という作家がいる。どうも友達にはなりたくないのに、なぜか著作は初版ハードカバーで、我が家の書棚のとてもいい位置をちゃっかり占拠している。  ぼくが書物として撮ってお...
  • ア行作家
    ア行作家 ポール・アードマン ジェフリー・アーチャー ディーパ・アーナパーラ エヴァ・ヴョルク・アイイスドッティル バリー・アイスラー グレッグ・アイルズ アイザック・アダムスン エース・アトキンス イゴール・デ・アミーチス トーヴェ・アルステルダール マーヴィン・H・アルバート カーリン・アルヴテーゲン ビクトル・デル・アルボル カトリーヌ・アルレイ ロベルト・アンプエロ マックス・アンナス デイヴィッド・アンブローズ ユージン・イジー ジャネット・イヴァノヴィッチ アーナルデュル・インドリダソン ジョン・ヴァーチャー アンドリュー・ヴァクス フレッド・ヴァルガス クリス・ウィタカー フレッド・ウィラード ティム・ウィロックス R・D・ウィングフィールド ドン・ウィンズロウ チャールズ・ウィルフォード ロノ・ウェイウェイオール ドナルド・E・ウェストレイク ジャン・ヴォートラン ミネッ...
  • ブラック・アイス
    ブラック・アイス 題名:ブラック・アイス 原題:The Black Ice (1993) 著者:マイクル・コナリー Michael Connelly 訳者:古沢嘉通 発行:扶桑社ミステリー 1994.5.30 初版 価格:\720(本体\699)  こういう小説はアメリカではかなり受けるだろうなあと、ぼくは心底思うのだ。一匹狼刑事というのは現代の刑事ものならけっこうあると思う。しかしそれでも良き理解者である刑事仲間などに恵まれていることが多いのではないか? ダーティ・ハリーだっていつも信頼できるパートナーを得ているじゃないか。しかし、このシリーズほど徹底して信頼できる仲間に恵まれない主人公も、かなり珍しいと思う。  だからこそ、これまでのパターンを踏襲しているようなベトナム後遺症の刑事でありながら、この主人公エネルギッシュぶりたるや、世の一匹狼...
  • ダンシング・ベア
    ダンシング・ベア ダンシング・ベア (ハヤカワ・ミステリ文庫) 題名:ダンシング・ベア 原題:DANCING BEAR ,(1983) 作者:JAMES CRUMLEY 訳者:大久保寛 発行:早川書房 1996.3.31 4刷 価格:\1,236(本体\1,200)  『酔いどれの誇り』の私立探偵ミロの後日談。8年の開きのある作品だけに前作とは全然状況が違っている。ミロは警備員の勤めをしながら、何と山の中の丸太小屋で生活をしている。モンタナ州は秋から冬にかけての厳寒の季節。ハードボイルドは都市の中にだけあるなんて言ったのはどこの誰だろう。  まず驚いたのがこれが本当にミロのシリーズなのか? ということ。あまりに前作とは異なる匂いにまず驚かされる。ちょうどヴァクスのバーク・シリーズでの『ブルーベル』から『ハード・キャンディ』への変貌に対比されるような種類の...
  • バリー・アイスラー
    バリー・アイスラー Barry Eisler 日米ハーフの殺し屋ジョン・レイン・シリーズ 雨の牙 2002 池田真紀子訳 雨の影 2003 池田真紀子訳 雨の罠 2004 池田真紀子訳
  • エヴァ・ヴョルク・アイイスドッティル Evu Björg Ægisdóttur
    エヴァ・ヴョルク・アイイスドッティル Evu Björg Ægisdóttur 長編小説 軋み 2018 吉田薫訳
  • 24時間
    24時間 題名:24時間 原題:24 Hours (2000) 作者:Greg Iles 訳者:雨沢泰 発行:講談社文庫 2001.9.15 初版 価格:\1086  グレッグ・アイルズというと大作しか書かない寡作の作家というイメージがあった。例えばトマス・ハリスみたいな。でもこれは上下巻に別れるほどの長さもないし、これまでの彼の作品の半分くらいのヴォリュームで、しかもわりとありきたりなサスペンス小説であるかのように紹介されている。これはグレッグ・アイルズという名の別の作家なのかもしれないとさえ思ってしまっていた。  でもなぜ作品が短いのかは、読み出してすぐにわかった。これは誘拐を扱ったクライム・サスペンス。完全犯罪と言える誘拐を何度も反復している知能犯の犯人グループ。誤算だったのは誘拐された娘が24時間以内に投薬しないと命が危ない糖尿病患者であっ...
  • ハンティング・タイム
    ハンティング・タイム 題名:ハンティング・タイム 原題:Hunting Time (2022) 著者:ジェフリー・ディーヴァー Jeffery Deaver 訳者:池田真紀子 発行:文春文庫 2023.9.30 初版 価格:¥2,800  ディーヴァーの主力シリーズのリンカーン・ライムが、全身麻痺で動けないヒーロー(現代版アームチェア・ディテクティヴ)であるのに対し、近年になって登場したコルター・ショウはひとところに落ち着くことのない動く探偵である。初期シリーズであるジョン・ペラムに似ているが、そちらはロケ・ハンターという職業で、本シリーズ同様、米国内のあちこちに活躍の舞台を移していた。作者としてはペラムの進化型として、コルター・ショウのようなひとところに定住しない放浪型主人公を新たに生み出したのではないだろうか。  当初三部完結と言われた本シリーズ...
  • スキッピング・クリスマス
    スキッピング・クリスマス 題名:スキッピング・クリスマス 原題:Skipping Cristmas (2001) 作者:ジョン・グリシャム John Grisham 訳者:白石 朗 発行:小学館文庫 2005.12.1 初刷 2002/12 初版 価格:\571  そういえば、最近見ない。ジョン・グリシャムという作家の名前を。毎年のようにリーガル・サスペンスの逸品を世に送り出し、映画化作品もまた常に話題になってきたのに。  日本では「超訳」とされる作品も二、三見られたけれど、そういうものには、なんだか活字文化を馬鹿にされているようで、どうも腰が引けてしまう。なのでぼくは『ペインテッド・ハウス』(ノン・ミステリーの素晴らしい作品だった)を最後にグリシャム作品にしばらくお会いしていない。  本書はそうしたグリシャム・リストの山の中、思わぬ...
  • ベスト・アメリカン・ミステリ スネーク・アイズ
    ベスト・アメリカン・ミステリ スネーク・アイズ ベスト・アメリカン・ミステリスネーク・アイズ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) 題名 ベスト・アメリカン・ミステリ スネーク・アイズ 原題:The Best American Mystery Stories 2004(2004) 作者:ネルソン・デミル&オットー・ペンズラー編 Nelson DeMille, Otto Penzler 訳者:田村義進、他 発行:ハヤカワ・ミステリ 2005.12.15 初版 価格:\1,900  アンソロジーのバイブルみたいな名シリーズである。ハヤカワが二年遅れくらいのテンポで翻訳出版を続けてくれるので、短編ファンにとっては有難い。  50本の短編に絞る役割をペンズラーが行い、その内から20本を選び出す責任ある作業を、ゲスト作家に任せる。ゲスト作家の方は、最後の篩い分けという...
  • ロスト・アイデンティティ
    ロスト・アイデンティティ 題名:ロスト・アイデンティティ 原題:East Of Hounslow (2017) 著者:クラム・ラーマン Khurrum Rahman 訳者:能田優 発行:ハーパーBOOKS 2022.3.20 価格:¥1,300  イギリス在住の作者クラム・ラーマンはパキスタンはカラチ生まれ。一歳で英国移住、ロンドン育ちの現在はIT企業会社役員、という珍しい肩書の新人作家だ。本書は、作者お馴染みの、ロンドン西部の移民率が高い自治区にあるハウンズロウに育ったムスリムの青年たちの日常からスタートする。  主人公のジェイ・カシームは麻薬の売人だが、友人の一人は警察官、もう一人はテロリストキャンプにまで参加する民族主義者。再婚相手ができたばかりの母は冒頭からカタールに引っ越ししてしまい、父なし子のジェイは、初めての独り立ちを迎える。 ...
  • シャッター・アイランド
    シャッター・アイランド 題名:シャッター・アイランド 原題:Shutter Island (2003) 作者:デニス・ルヘイン Dennis Lehane 訳者:加賀山卓朗 発行:早川書房 2003.12.15 初版 価格:\1900  『ミスティック・リバー』の二週間後に本書を読む。他のルヘインは知らない、というぼくのような読者の場合、両作品のあまりの趣味の違いに戸惑いを感じるであろう、ということなのだろうか。予め、作者の新境地であると聞かされていたせいもあるのかもしれないが、とりわけ当惑感はゼロであった。素材にミステリーやホラーの要素が散りばめられていて、『ミスティック……』よりもずっとエンターテインメント性が高いという部分を除けば、やはりこれはデニス・ルへインの文芸色豊かな、男と女の精神史の物語であり、やはりそこに現出するのは社会層のなかに滲み出...
  • ザ・ロング・サイド
    ザ・ロング・サイド 題名:ザ・ロング・サイド 原題:The Wrong Side (2021) 作者:ロバート・ベイリー Robert Bailey 訳者:吉野弘人 発行:小学館文庫 2024.2.11 初版 価格:¥1,200  マクマートリー教授シリーズ4部作の後、ボーのその後を描く二部作の後半部が本書である。新たな事件でありながら前作を引きずるかたちの展開で、マクマートリーとボーによる<けつの穴全開>シリーズ全作? の完結編であることで、本シリーズはとうとう幕を閉じる。「胸アツ」の強烈形容詞を携えて一気に読者の胸倉を引っ張ってきた感のあるスポ根リーガル・ミステリーの最終の一幕をまたもしっかりと味わってしまった。  舞台は、KKK誕生の地のプレートが遺る曰くつきの街、テネシー州プラスキ。主人公は元アラバマ大フットボールチーム花形選手だった黒人弁護...
  • ドライビング・レッスン
    ドライビング・レッスン ドライビング・レッスン (ヴィレッジブックス) 題名:ドライビング・レッスン 原題:Driving Lessons (2000) 作者:エド・マクベイン Ed McBain 訳者:永井 淳 発行:ヴィレッジブックス 2002.01.20 初版 価格:\500  オットー・ペンズラー・ブックスの売りの一つである巨匠によるノヴェラというものらしい。軽い書き下ろしなのだが、もともとは朗読向けのオーディオ・ブックスとして出版されたものを、ペンズラー氏(大物ミステリー・プロデューサーなんだそうです)が依頼し、本にしたもの。  オーディオ向け作品というと、軽い、短い、というのは基本になるのかもしれないけれど、それ以上に、文章力のある作家の手になる完成度の高い作品でなければいけない。これは矢作俊彦の「マンハッタン・オプ」シリーズでインプ...
  • バーニング・ワイヤー
    バーニング・ワイヤー 題名:バーニング・ワイヤー 原題:The Burning Wire (2010) 著者:ジェフリー・ディーヴァー Jeffery Deaver 訳者:池田真紀子 発行:文藝春秋 2012.10.15 初版 価格:¥2,400  とにかくハードカバーの新刊は高いので、と手を出すことを止めてしまって以来、早や12年が経ってしまった。初期の頃のリンカーン・ライム・シリーズは驚愕の面白さで読者に常に驚きを与えてくれていたが、いつの日にかパターン化して新鮮さが消えてゆく。  本書は、そんなぼくにとってあまりに久しぶりのライムのシリーズである。10年前に発刊された本書から、シリーズ読書を再開すべきか否かのリトマス試験紙にもしてみたい。  本書序盤は、電気を使った殺人、電気への復讐、と、電気がとにかく本書のテーマ、と、電気、電気、電気...
  • キング・オブ・クール
    キング・オブ・クール 題名:キング・オブ・クール 原題:The King of Cool (2012) 作者:ドン・ウィンズロウ Don Winslow 訳者:東江一紀 発行:角川文庫 2013.8.25 初版 価格:\952  映画版『野蛮なやつら』をまだ見ていない。ラップミュージックで刻んだ詩のような小説原作がとても印象的かつ唯一無比のウィンズロウ節であまりの個性にぶっ飛びそうになっただけに、それの映画版を観るのがどうやら怖いらしい。言葉で刻まれたテンポ良いクライム小説を映画版で見るべきなのかどうか迷っているらしい。美しくも残酷極まりない血と硝煙の物語を叙情味たっぷりに描いた傑作小説が映像化されることによってどのくらい変容されてしまうものなのかを検証するのが耐え難い。それほどにぼくは『野蛮なやつら』という作品に魅せられたのだ。  しかしそろそろ気を...
  • サムエル・ビョルク Samel Bjork
    サムエル・ビョルク Samel Bjork オスロ警察殺人捜査課特別版 アイム・トラベリング・アローン 2013 中谷友妃子訳 フクロウの囁き 2015 中谷友妃子訳
  • ライジング・サン
    ライジング・サン [429] Client error `POST https //webservices.amazon.co.jp/paapi5/getitems` resulted in a `429 Too Many Requests` response { __type com.amazon.paapi5#TooManyRequestsException , Errors [{ Code TooManyRequests , Message The request was de (truncated...) 題名:ライジング・サン 原題:Rising Sun (1992) 作者:マイクル・クライトン Michael Crchton 訳者:酒井昭伸 発行:早川書房 1992.6.30 初版 価格:\2,500(本体\2,472)  今年...
  • 戦慄の眠り
    戦慄の眠り 題名:戦慄の眠り 上/下 原題:Dead Sleep (2001) 作者:グレッグ・アイルズ Greg Iles 訳者:雨沢 泰 発行:講談社文庫 2004.04.15 初版 価格:各\800  一貫して娯楽小説の王道をゆく作家が、グレッグ・アイルズではなかろうか。面白いというだけではなく、その向こうにアメリカ的なもの、歴史的な罪の堆積をほのめかせて、壮大なスケール感溢れる迷宮世界を構築し、その中で決して謎解きにだけは向かわず、人間たちの克服のドラマを埋め込んでいる辺り、うまみと深みとの両方を切れ味鋭く抉る作家として、読者には心地よい。だからこそ安心して読める「定番」作家であり、惹き寄せられる何かを持った書き手である。  また作品のジャンルが定まらない故に、次の作品がどんなであるのかという点についても、興味を掻き立てられる。どきどき...
  • チェイシング・リリー
    チェイシング・リリー 題名:チェイシング・リリー 原題:Chasing The Dime (2002) 作者:マイクル・コナリー Michael Connelly 訳者:古沢嘉通・三角和子 発行:早川書房 2003.09.15 初版 価格:\1.900  そもそもハリー・ボッシュ以外のノン・シリーズは少ないと言える作家だ。『ポエット』『わが心臓の痛み』に続いて、これが三作目。日本の作家がシリーズだけでは食べて行けない現状に比して、アメリカの作家は、売れればシリーズだけで食べて行けるのだろう。だから日本の作品のようにレギュラー登場人物のメンツだけを揃えてシリーズと名乗るような空疎さはない。シリーズはそれなりにシリーズの個性や変化そのものを売りものにして前向きにぐいぐいと進んでゆく。それがアメリカ小説のシリーズの意味であり、ハリー・ボッシュのシリーズもまさ...
  • ウイニング・ラン
    ウイニング・ラン 題名:ウイニング・ラン 原題:Darkest Fear (2000) 著者:ハーラン・コーベン Harlan Coben 訳者:中津悠 発行:ハヤカワ文庫HM 2002.4.30 初版 価格:¥980  スポーツ・エージェント、マイロン・ボライターのシリーズ最終翻訳済み作品7作目である本書についに辿り着いてしまった。この先4作までは本国では既刊となっているのだが、和訳作品はこれで、現在のところ最後となる。それも23年前のことだから、この後の作品は埋もれ、忘れ去られてしまうだろうか? と思いきや、2024年に本シリーズの新作(タイトル未定)が用意されているらしい、とはWikipedia情報である。これを機に残るマイロン・シリーズ作品も全部翻訳して頂けると嬉しいのだけれどなあ。うるうる。  ともあれ、四半世紀も遅れて読んでいるへぼ読者の...
  • 魔力の女
    魔力の女 題名:魔力の女 原題:Sleep No More (2002) 作者:グレッグ・アイルズ Greg Iles 訳者:雨沢 泰 発行:講談社文庫 2005.11.15 初刷 価格:\1,086  グレッグ・アイルズの小説としては、極めて異色だとしか言いようがない。歴史に材を取ったり、精緻なサイコ・スリラーを描いたりと、どれをとっても凝りに凝った仕掛けと精密なプロットで読者を唸らせてきた作家である。その彼が、たいへん自由度の高いテーマに手を出した。どちらかと言えばスティーヴン・キング系の「あれ」である。  ミシシッピ州ナチェズで石油試掘地点を投資家に助言する仕事をしている主人公ジョン・ウォーターズの前に、突然謎の美女が現れる。ナチェズの不動産会社を営むイヴ・サムナーである。彼女は徐々に接近を迫り、挙句に、自分はジョンの死んだ恋人マロリー・...
  • スリーピング・ドール
    スリーピング・ドール 題名:スリーピング・ドール 原題:The Sleeping Doll (2007) 作者:ジェフリー・ディーヴァー Jeffery Deaver 訳者:池田真紀子 発行:文藝春秋 2008.10.10 初版 価格:\2,381  近頃、ディーヴァーがすっかり好きじゃなくなったのに、なぜぼくはディーヴァーを読むのだろうと、自分に問いかけてしまう。まあディーヴァーはそこそこ面白いと言うことだけは言えるからな、と自分に肯く。ただ、マンネリに陥っているところがあるし、何よりもご都合主義の目立つプロットが鼻につくんだよな。じゃあ、読まなければいいのだが、本当に好きになりきれない作家の場合は、図書館で借りることができるし、何も散在するわけじゃない。ディーヴァーのハードカバーはとても高いし、ちょうどそんな具合に無料(ただ)だと思って読めばいい。 ...
  • 神の足跡
    神の足跡 題名:神の足跡 上/下 原題:The Footprints of Good (2003) 作者:グレッグ・アイルズ Greg Iles 訳者:雨沢 泰 発行:講談社文庫 2006.07.14 初刷 価格:各\895  かつて@niftyで冒険小説&ハードボイルドフォーラムを運営していた頃、その電脳世界に手錬のメンバーが山ほどいて、真夜中のチャットも大いににぎわっていた頃、この本の作者グレッグ・アイルズは、作品を出すたびに話題の中心になったものだった。  『甦る帝国』『ブラック・クロス』『神の狩人』三作は中でも読んだ人が多く、その書評はどれも絶賛に近いものであり、それに誘発され読者は増え、アイルズ熱気とでもいうようなものが一時代を席捲したものである。  そのアイルズと言えども、もともとが日本では主流ではない。ハードカバーの作品は...
  • ドリーミング・オブ・ホーム&マザー
    ドリーミング・オブ・ホーム&マザー 題名:ドリーミング・オブ・ホーム&マザー 作者:打海文三 発行:光文社 2008.02.25 初版 価格:\1,700  故人の本を読むのは、大変に複雑な気持ちだ。それもごく最近故人になったばかりの作家の場合。しかもそれが突然の死であった場合。さらにその作家が、唯一無二の作風を持つかけがえのない作家であり、その作家に読者として個人的に極めて入れ込んでいた場合。  その最悪の喪失感を迎えて間もなく、この白鳥の歌は上梓された。もちろんぼくにとって、かけがえのない大切な宝だ。天才作家・打海文三が、最後に完成させた楽曲である。ページの合間から聴こえてくる音色の一つ一つに耳を傾け、全神経を集中させて読むのだ。かくして、作家以上に、読者の側が力んで取り組む読書の時間が、札幌の片隅でひそやかに成立する。  本書は恋愛...
  • 血の記憶
    血の記憶 題名:血の記憶 上/下 原題:Blood Memory(2005) 作者:グレッグ・アイルズ Greg Iles 訳者:雨沢 泰 発行:講談社文庫 2008.10.15 初刷 価格:各\971  アイルズの小説は大きく二種類に切り分けることができる。一つは『ブラッククロス』のような壮大な冒険小説、もう一つは『神の狩人』に代表されるような精神の深層に迫るサイコ・サスペンス。  スケールに大小はあるものの、もちろん物語密度では両者間に格差はない。ただ、サイコ・サスペンスの側は、ニューオーリンズやナチェズといったアメリカ南部の湿度を感じるという意味で、大抵は舞台が狭い範囲に限られている。  一方で国際的な謀略ものを描き、世界を股にかける作品を描きながら、アイルズの地元であるニューオーリンズ一帯の雨や湿度を感じさせる南部的要素は、精神...
  • レイジ
    レイジ 題名:レイジ 作者:誉田哲也 発行:文芸春秋 2011.07.15 初版 価格:\1,476  青春バンド小説、である。  そもそもこの作者に出会ったのは、2005年の『疾風ガール』。中ノ森文子をカバー写真に据えた、ガールズ・バンドの青春ミステリー小説であった。  原点回帰か? それとも『武士道シックスティーン』の乗りの荒手の青春小説か、とそれなりに楽しみに読み始めると、いい意味でそれらすべてが裏切られてゆく快感がある、やはり作者ならではのこだわりロック・バンド青春小説は、独自なカラーに終始しているのであった。  まず時代設定が古いというのが嬉しい。今を背景にしているのではなく、あのロック黄金時代を背景にしているのである。そんなバンドの中でいきなり主役の二人が仲間割れする。リーダーのワタルはロックの歴史にのめり込むようにコピ...
  • ヘニング・マンケル Henning Mankell
    ヘニング・マンケル Henning Mankell 刑事ヴァランダー・シリーズ 殺人者の顔 リガの犬たち 白い雌ライオン 笑う男 目くらましの道 五番目の女 背後の足音 ファイアーウォール 霜の降りる前に ピラミッド 苦悩する男 2007 柳沢由美子訳 フレドリック・ヴェリーン二部作 イタリアン・シューズ 2006 柳沢由実子訳 スウェーディッシュ・ブーツ 2015 柳沢由実子訳 長編小説 タンゴステップ 北京から来た男 エッセイ集 流砂
  • 沈黙のゲーム
    沈黙のゲーム 題名:沈黙のゲーム 上/下 原題:The Quiet Game (1999) 作者:グレッグ・アイルズ Gred Iles 訳者:雨沢 泰 発行:講談社文庫 2003.7.15 初版 価格:上\971/下\933  アイルズが南部作家であることにまでは思いが至っていなかった。戦争スリラーニ作は、作者が少年時代を過ごした西ドイツの影響が色濃く出ていたものと言える。『神の狩人』はPCメールを使った恐怖の印象が今も強いサイコ・スリラーで出色だった。今思えば『神の狩人』の舞台も南部だったようだ。しかし今ここにきて、南部を舞台に、主題に据えて、こうした直球ストレートミステリにアイルズが挑んでいる姿を見ると、やはり少しだけ違和感を覚える。しかし、これだけは言える。アイルズという作家は、作品傾向の絞りにくいところはあるが、しかし紛れもなく、完成度の高い...
  • ヒート・アイランド
    ヒート アイランド ヒートアイランド (文春文庫) ヒートアイランド 題名:ヒート アイランド 作者:垣根涼介 発行:文芸春秋 2001.7.15 初版 価格:\2.048  この作家についてはタイトルが何を表しているのかよくわからないのだが、最後に文章の中にタイトルを埋め込んで拍手って感じで終わらせたい、そんなところがあるのだろうか。その辺りの感覚はともあれ、内容はデビュー作よりも緊張感で上を行っていて、ちょうど『ワイルド・ソウル』への通過点になっているように思われる。  車へのこだわりが前作に通じるもので、この作家よくよく車が好きなのに違いない。銃に関してこだわりもあるから、やはり大藪以来の和製ハードボイルドのMONO志向は継いでいるといったところか。  商社や旅行代理店の勤務経験を経て培われたのが、日本国内のせせこましい経済に絡め取られた...
  • 夜明けのフロスト クリスマス・ストーリー
    夜明けのフロスト クリスマス・ストーリー 『ジャーロ』傑作短編アンソロジー3 題名:夜明けのフロスト クリスマス・ストーリー    『ジャーロ』傑作短編アンソロジー3 編者:木村仁良 作者:R・D・ウィングフィールド、他 訳者:芹澤 恵、他 発行:光文社文庫 2005.12.20 初版 価格:\571  『クリスマスのフロスト』とは別のクリスマスを過ごす、あの警部フロストの新しい中篇ストーリーを収録したアンソロジー。クリスマスのたった一日にいきなり沢山の事件が押し寄せて、窒息しそうになりながらも、次々と解決に導いてゆくフロストの八面六臂の活躍ぶりが、とても懐かしいし、こうした物語を、別のすべてのクリスマス作品集と一緒に読めるアンソロジーなんて、とても気のきいた本であると思う。  短編の名手エドワード・D・ホックの引退刑事レオポルドのシリーズ『ク...
  • マイクル・コナリー Michael Connelly
    マイクル・コナリー Michael Connelly  LA市警ハリウッド署刑事、通称ハリー・ボッシュ(本名ヒエロニムス・ボッシュ)。エルロイの暗闇に通底する過去を持つボッシュの物語では、ぼくらは事件そのものを読みながら、より深くボッシュその人の人生を読み取っている。ボッシュをいつもエネルギッシュに動かしている深い情念の底にあるものを捜す旅に、ぼくらは彼自身とともに出かけてゆく。他のシリーズには得られない屈曲点の多さが、激しく燃え上がる男ボッシュを否が応でも浮き立たせてゆく。妥協なきシリーズは今もまったく眼を離せない緊張に満ちている。 ハリー・ボッシュ・シリーズ ナイトホークス 1992 古沢嘉通 ブラック・アイス 1993 古沢嘉通 ブラック・ハート 1994 古沢嘉通 ラスト・コヨーテ 1995 古沢嘉通 トランク・ミュージック 1997 古沢嘉通 堕天使は地獄へ飛ぶ(「エ...
  • 続・用心棒
    続・用心棒 題名:続・用心棒 原題:The Hard Stuff(2019) 作者:デイヴィッド・ゴードン David Gordon 訳者:青木千鶴 発行:ハヤカワ・ミステリ 2021.4.15日 初版 価格:¥1,900  『用心棒』というだけで怪しげな邦題のジョー・ブロディ・シリーズ第二作。『続・用心棒』とは、何だか昔の時代劇映画みたいだ。マカロニ・ウェスタンの『荒野の用心棒』『夕陽のガンマン』が「続」とか「新」とか、まるで別の作品なのに、タイトルで売れっ子俳優クリント・イーストウッドの二番煎じ三番煎じを狙ったという当時の映画界事情が思い浮かぶ。  いかがわしさ満載のこの作品は、あの毒々しい当時の映画看板を思い出させ、何だか汗臭く、昭和っぽく、やたらと懐かしい。ぼくは仕方なく、C・イーストウッドのイメージでジョーを思い描くことにしています。 ...
  • 殺しのパレード
    殺しのパレード 題名:殺しのパレード 原題:Hit Parade (2006) 作者:Lawrence Block 訳者:田口俊樹 発行:二見文庫 2007.12.25 初版 価格:\829  高校時代か大学時代のどこかで、アメリカの小説を読み漁ったことがある。ユダヤ人や黒人の作家ばかりで、WASPの作家はどこにも見つからなかった。70年代のことだからわからないでもない。思えば、70年代のWASPには執筆の動機がなかったのかもしれない。  中でも『ニューヨーカー短編集』を読んだことがある。今、紐解いてみると、バーナード・マラムッド、ソール・べロウ、ジョン・アップダイク、フィリップ・ロスなんて面々が並んでいて、ミステリーでもなんでもない。サリンジャーなんてとても好きだったが、ミステリアスではあってもミステリーではなかったと思う。シーモア・グラー...
  • イベリアの雷鳴
    イベリアの雷鳴 イベリアの雷鳴 (講談社文庫) イベリアの雷鳴 題名:イベリアの雷鳴 作者:逢坂剛 発行:講談社 1999.6.14 初版 価格:\2,200  歴史上の大物暗殺をめぐる物語というのは、ある意味では冒険小説の王道をゆくものだと思う。ドゴール暗殺を扱う『ジャッカルの日』、チャーチル暗殺を扱う『鷲は舞いおりた』に代表されはするが、けっこう国内の歴史小説などでも信長、秀吉、家康あたりの暗殺ものというのは多いのではないだろうか。  しかしあくまで暗殺そのものを一つの作戦として展開させるところに、冒険小説としての醍醐味があるのだと思う。作戦はターゲットが大きければ大きいほど胸踊るものなのであり、そこに至る緻密な戦略が実に遠まわりであっても、ストーリーとしては一本の野太い線が常に引かれているわけである。  そこへゆくと本書は版元と作者の折り合...
  • ベルリンで追われる男
    ベルリンで追われる男 題名:ベルリンで追われる男 原題:Illegal (2017) 著者:マックス・アンナス Max Annas 訳者:北川和代 発行:創元推理文庫 2019.09.20 初版 価格:¥1,080  ベルリンを舞台にしたランニング・アクション・ミステリー。全編よく走る主人公コージョは、ガーナ出身の不法滞在者。イリーガルな世界の住人が目撃してしまった殺人。  まるでヒッチコックの裏窓のようなシチュエイション。アパートの窓に見てしまった殺人。殴り殺される女。見る側は空き家に棲みついた不法滞在者。入国許可証を持たぬ有色人種ゆえに、常に司法の眼から逃れ、ベルリンの地下で生息する若者。と言ったって三十に手が届く。家族を捨て、家族に捨てられる漂流物のような人生。ガーナに帰ることは考えられない。  とにかく警察がわけもなく移民たちを追いま...
  • 甦る帝国
    甦る帝国 題名:甦る帝国 上/下 原題:Spandau Phoenix (1993) 作者:Greg Iles 訳者:中津悠 発行:講談社文庫 1999.8.15 初版 価格:各\1,000  今現在、冒険小説の分野で壮大な叙事詩を書いて最も完璧に仕上げてみせる作家は、このグレッグ・アイルズをおいて他にないと思う。ぼくはこの作家はトマス・ハリス以来の、いわゆる王道をゆく作家であると感じている。同時に天才作家であるとも。  出版順序の逆にぼくは三作を読んでしまったのだが、普通逆行してどんどん面白くなってゆくということは、あまりない。しかもこの作品が彼のデビュー作とは、真に驚愕。西ドイツで少年時代を過ごしたというアイルズだからこそドイツへの造詣が深いのかもしれないが、世界情勢、大戦時の歴史、そういったものをすべて踏まえて、国際関係をもとにしたスパイ小...
  • リング
    リング リング (角川ホラー文庫) 題名 リング 著者 鈴木光司 発行 角川ホラー文庫 1993.4.24 初刷 1993.5.20 2刷 価格 \560  ぼくは基本的にホラーは読まない人なんだが、ホラー界空前のヒットを実現したこの作品のそうしたメディア・ミックス人気とは別個にずっと気にしていた作品だった。映画化もヒットするのも遅咲きの作品だった。ぼくはこの本は角川ホラー文庫発刊のときに買ったけれども、未読リストに加えていたのはさらにれ以前、『本の雑誌』でそしてこのフォーラムで坂東零人(馳星周)が絶賛していたことによる(当時の『リング』感想はバンディーダ名義でデータライブラリに収納されている)。  彼だって別にホラー趣味ではなく、『本の雑誌』の書評仕事でミステリー外の国産物を月に7冊程度読まねばならなかっただけであるが、ミステリー外でもけっ...
  • アンソロジー
    アンソロジー オットー・ペンズラーのベスト・アメリカン・ミステリ アメリカミステリ傑作選 2000 スー・グラフトン編 アメリカミステリ傑作選 2001 エド・マクベイン編 アメリカミステリ傑作選 2002 ドナルド E.ウェストレイク編 アメリカミステリ傑作選 2003 ローレンス・ブロック編 ベスト・アメリカン・ミステリ  ハーレム・ノクターン ジェイムズ・エルロイ編 2002  ベスト・アメリカン・ミステリ ジュークボックス・キング 2003 マイクル・コナリー編 ベスト・アメリカン・ミステリ スネーク・アイズ 2004 ネルソン・デミル編 ベスト・アメリカン・ミステリ アイデンティティ・クラブ 2005 J・C・オーツ編 ベスト・アメリカン・ミステリ クラック・コカイン・ダイエット 2006 スコット・トゥロー編 『ジャーロ』傑作短編アンソロジー 『ジャーロ』傑作短編アンソロ...
  • 砂漠で溺れるわけにはいかない
    砂漠で溺れるわけにはいかない 題名:砂漠で溺れるわけにはいかない 原題:While Drowning in the Desert (1996) 作者:ドン・ウィンズロウ Don Winslow 訳者:東江一紀 発行:創元推理文庫 2006.08.11 初版 価格:\720  このシリーズは感覚的には長かったような気がするけれど、実際にはたったの5作しかなかった。これはその完結篇に当たる最終作品。5作にしては名残惜しい気がするのは、作品と作品の間が長く空いたためだろう。本書巻末で訳者も書いているのだけれど、5作を完訳するのに何と13年もかかったそうである。本書だって、10年前の作品の言わば忘れた頃の邦訳だ。  さて昨年に続き立て続けに翻訳された最新二作はどちらも小編である。どちらかと言えばユーモア・ミステリーに分類されるだろう。東直己のすすきの探...
  • 獣たちの庭園
    獣たちの庭園 獣たちの庭園 (文春文庫) 題名:獣たちの庭園 原題:Garden Of Beasts (2004) 作者:ジェフリー・ディーヴァー Jeffery Deaver 訳者:土屋 晃 発行:文春文庫 2005.09.10 初版 価格:\905  逢坂剛が得意なのは、トリックを煮詰めることではなく、描写によって読者の眼を欺くことである。『百舌の叫ぶ夜』の帯には「トリックからプロットへ」という表現がなされていて、それがどういう意味なのか、何が斬新なのかと考え悩んでしまったことがあるが、その作品がエンターテインメントとして実に成功した作品で、本当に読者としてころりと騙されてしまった記憶がある。  しかし後になって考えてみるとプロットをしっかり練って、あとは描写によってある部分を隠すことが読者を欺くという、この技法は、難しいトリックに頼るよりもずっと...
  • ノー・セカンド チャンス
    ノー・セカンドチャンス 題名:ノー・セカンドチャンス 原題:No Second Chance (2003) 著者:ハーラン・コーベン Harlan Coben 訳者:山本やよい 発行:ランダムハウス講談社文庫 2005.9.13 初版 価格:上¥750/下¥780  ずっとマイロン・ボライター・シリーズを書いてきたハーラン・コーベンは、21世紀に入ってから、馴染みのシリーズを離れ、がらりと作風を変えた単独ミステリーに傾注してゆく。その現象が、後から顧みて、どうも不思議である。どちらかと言えば陽気でユーモラスで、軽妙で、それでいながら血が熱くなるような、人間の内側に潜り込んで書いていたようなウェットな作家だったように思うが、本書を見る限りはスリルとサスペンスという物語の側に軸を移し、より過激に、より血腥く、そしてよりエンターテインメント色を強めるよう意識し...
  • 催眠 上・下
    催眠 題名:催眠 / 上・下 原題:Hypnotisoren (2009) 作者:ラーシュ・ケプレル Lars Kepler 訳者:へレンハルメ美穂 発行:ハヤカワ文庫HM 2010.7.25 初版 2010.8.25 2刷 価格:各¥880  実は2009年にスウェーデンで書かれ、2010年7月に邦訳出版された時期外れの作品。覆面作家としてデビューしたらしいが邦訳時には既に、他ジャンル(イングマル・ベルイマン監督や実在の天文学者をモデルにした小説等)で売り出していたアレクサンデル・アンドリル、アレクサンドラ・コエーリョ・アンドリル夫妻であることが明らかにされている。思うに、誰かをモデルにした物語よりは、こうした娯楽小説の方が売れるのだろうな。現に本家作品は本作と違って邦訳もされていないわけだし。ましてやこの時期は『ミレニアム』やら、ヘニング・マン...
  • 垣根涼介
    垣根涼介 長編小説 午前三時のルースター 2000/04 ワイルド・ソウル 2003/08 クレイジーヘヴン 2004/12 ゆりかごで眠れ 2006/04 真夏の島に咲く花は 2006/10 月は怒らない 2011/06 人生教習所 2011/09 狛犬ジョンの軌跡 2011.09 ヒート・アイランド・シリーズ ヒート・アイランド 2001/07 ギャングスター・レッスン(連作短編集) 2004 サウダ-ジ 2004/08 ボーダー リストラ請負人・村上真介シリーズ(連作短編集) 君たちに明日はない 2005/03 借金取りの王子 2007/09 張り込み姫 君たちに明日はない 3 2010/01 張り込み姫 君たちに明日はない 3 2010/01(再読) 勝ち逃げの女王 君たちに明日はない 4 2012/05(後に『永遠のディーバ 君たちに明日はない 4』へ改題) 迷子の王様...
  • ミスティック・リバー
    ミスティック・リバー 題名:ミスティック・リバー 原題:Mystic River (2001) 作者:デニス・ルヘイン Dennis Lehane 訳者:加賀山卓朗 発行:ハヤカワ文庫HM 2003.12.31 初刷 2004.2.15 4刷 価格:\980  ゴールデングローブ賞の主演・助演男優賞受賞はショーン・ペンとティム・ロビンス、どちらもかつてヤング・アダルトという名で呼ばれた若き獅子たちの世代である。この世代は、主役と脇役が、作品に応じ、年齢に応じて多様に入れ代わり、独特の癖のある演技が光るという人たちが多いように思う。T・クルーズやM・シーンの息子たちも有名であったが、T・ハットン、K・サザーランドといった性格俳優系も印象的だった。  そんな中で、とりわけショーン・ペンは、悪党、チンピラ、裏切り者といった負の役柄を演じるたびに凄味を発揮...
  • デニス・レヘイン(ルヘイン)
    デニス・レヘイン(ルヘイン)  Dennis Lehane 長編 ミスティック・リバー 加賀山卓朗訳 2001 シャッター・アイランド 加賀山卓朗訳  2003 ザ・ドロップ 加賀山卓朗訳 2014 コグリン家三部作 運命の日 加賀山卓朗訳 2008 夜に生きる 加賀山卓朗訳 2012 過ぎ去りし世界 加賀山卓朗訳 2015 私立探偵パトリック・ケンジー・シリーズ スコッチに涙を託して 鎌田三平訳 1994 闇よ、我が手を取りたまえ鎌田三平訳  1996 穢れしものに祝福を鎌田三平訳  1997 愛しき者はすべて去りゆく鎌田三平訳  1998 雨に祈りを鎌田三平訳  1999 ムーンライト・マイル 鎌田三平訳 2010
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