wiki クライムウェイヴ(Sysop読書録 活字をめぐる冒険) 内検索 / 「ニューヨーク地下共和国」で検索した結果

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  • ニューヨーク地下共和国
    ニューヨーク地下共和国 題名:ニューヨーク地下共和国 上/下 作者:梁 石日 発行:講談社 2006.09.11 初版 価格:各\1,800  あの9・11当日の朝、ニューヨークに居合わせた作家・梁石日が、大仕事をやってくれた。  アメリカの大儀。真っ向からぶつかるイスラム原理主義。世界構図に翻弄される多くの国々の国民たち。そうした世界の現在を、在日作家である梁石日が偶然居合わせたことから、創り上げた大作小説である。  本書には、日本人もも朝鮮人も登場しない。そこに登場すのは、すべてアメリカ人たちだけである。舞台はすべてがニューヨークである。  そう、アメリカにはイスラム圏の人々もれっきとしたアメリカ人として居住している。9・11後に彼らがどのような肉体的・精神的な暴力に晒されたかを、ぼくはあまり知らない。いや、知らなかった。 ...
  • 梁 石日
    ...ス 2005/09 ニューヨーク地下共和国 2006/09 エッセイ・評論 タクシ-ドライバ-日誌 1984/09 タクシー狂躁曲 1987/09 ドライバー・最後の叛逆―タクシードライバーならではの知恵袋 1987/10 アジア的身体 1990/04 男の性解放 なぜ男は女を愛せないのか 1992/12 タクシードライバーほろにが日記 1993/03 修羅を生きる 「恨」をのりこえて 1995/02 闇の想像力 1995/05 タクシードライバー―一匹狼の歌 1997/10 タクシードライバー―最後の叛逆 1998/12 異端は未来の扉を開く 1999/03 路地裏 1999/06 男の性 1999/08 アウトローを生きる 青木 雄二・梁 石日 2001/06 魂の流れゆく果て 2001/08 一回性の人生 2004/02 未来への記憶 2006/03 シネマ・シネマ・シネ...
  • ニューヨーク1954
    ニューヨーク1954 題名:ニューヨーク1954 原題:Night Life (2015) 著者:デイヴィッド・C・テイラー David C. Taylor 訳者:鈴木恵訳 発行:ハヤカワ文庫NV 2017.12.20 初版 価格:¥1,260  これは昨年末に読んだ本。先日読了したダグラス・ケネディ『幸福と報復』で、全米を襲ったマッカーシーによるレッド・パージ旋風と、その渦中で赤狩りの犠牲となる人々の細微に渡って綴られる悲劇に接し、過剰なまでの弾圧の実態を覗くことになった。本書はその同じ時代を警察小説という形で描いている。よりエンターテイメント性が強く、よりバイオレントな、いわゆる今どき映画風な小説として描かれている。著者デイヴィッド・C・テイラーは20年以上に渡って映画やTVの脚本家として活躍してきた人なのだそうだ。納得。テイラーの父親は名作『麗しのサブリ...
  • 砕かれた街
    砕かれた街 題名:砕かれた街 上・下 原題:Small Town (2003) 作者:ローレンス・ブロック Lawrence Block 訳者:田口俊樹 発行:二見文庫 2004.08.25 初版 価格:各\790  9・11ニューヨーク同時多発テロを経験したニューヨークという街に捧げられた作家のオマージュとも言うべき長編ミステリー作品である。『砕かれた街』に副題をつけるとしたら『砕かれた心』だろうか。  同時多発テロで失われた命もあれば、残された命もある。昨夜のニュース番組でも流れた9・11の爪あとは、今朝の朝刊でも、ずっと一生ここに来るだろうという残された家族たちの言葉で締め括られる。  この作品は、ミステリーという形で世界に発信されたものである。当然ミステリーの骨子を備えながら、同時にニューヨークを物語るために多弁であり、多くの...
  • 殺しのパレード
    殺しのパレード 題名:殺しのパレード 原題:Hit Parade (2006) 作者:Lawrence Block 訳者:田口俊樹 発行:二見文庫 2007.12.25 初版 価格:\829  高校時代か大学時代のどこかで、アメリカの小説を読み漁ったことがある。ユダヤ人や黒人の作家ばかりで、WASPの作家はどこにも見つからなかった。70年代のことだからわからないでもない。思えば、70年代のWASPには執筆の動機がなかったのかもしれない。  中でも『ニューヨーカー短編集』を読んだことがある。今、紐解いてみると、バーナード・マラムッド、ソール・べロウ、ジョン・アップダイク、フィリップ・ロスなんて面々が並んでいて、ミステリーでもなんでもない。サリンジャーなんてとても好きだったが、ミステリアスではあってもミステリーではなかったと思う。シーモア・グラー...
  • 一瞬の英雄
    一瞬の英雄 題名:一瞬の英雄 原題:Man Of The Hour (1999) 作者:Peter Blauner 訳者:服部清美 発行:徳間文庫 2001.10.15 初版 価格:\838  よくぞ、この時代に書いた……そう思える本。  ニューヨークの問題校の教師でありながら、英雄的行為を生徒に解き、自らも憧れる主人公。対照的に、彼がついに救うことのできなかった中東出身の青年。テロから生徒を守ろうとする行動に対し、爆弾を仕掛ける側のイスラムの論理。アメリカに住みながらアメリカのすべてを憎むパレスチナ出身者たちの組織。  そうした対立の構図を、さらに泡立てる存在であるマスコミという悪。真実を遠ざける役割に一役買い、多くの弱者を傷つけるマスコミは、本来の目的や存在意義を失って強力な悪魔と化すこともできる。  作者ブローナーは、いつも大...
  • 石を放つとき
    石を放つとき 題名:石を放つとき 原題:The Night And The Music (2011)  A Time To Scatter Stones (2018) 著者:ローレンス・ブロック Lawrence Block 訳者:田口俊樹 発行:二見書房 2020.12.25 初版 価格:¥2,500  マット・スカダーはその後どうしているんだろう、と思ったことは一度や二度ではない。本書はそうした古いハードボイルド・シリーズのファンに応える今のマットと今に至るニューヨークを描いた、アフター・ザ・ハードボイルドといった趣の洒落た作品集である。  最初の数作は、ブロックの短編集などでお目にかかった再録作品であるが、この際想い出すためにもすべてを読み返した。『窓から外へ』『夜明けの光の中に』『バックレディの死』今更ながら秀逸だ。美味なカクテルのようにパン...
  • ハード・キャンディ
    ハード・キャンディ ハード・キャンディ (ハヤカワ・ミステリ文庫) ハード・キャンディ (Hayakawa Novels) 題名:ハード・キャンディ 原題:Hard Candy (1989) 著者:アンドリュー・ヴァクス Andrew Vachss 訳者:佐々田雅子 発行:早川書房 1991.4.30 初版 価格:\1,700(本体\1,650)  さてヴァクスの第四作『ハード・キャンディ』。続けて読めて何という幸せ者! というのは、この本は基本的に新しい物語ではなく、これまでのバークの取り残してきたさまざまな事件を総ざらいしてしまうという内容だからだ。なんとなく『赤毛のストレーガ』で感じたマフィアの老依頼主ジュリオの獣的な悪をバークたちが見捨てていたのが心残りだったし、ストレーガの病からもバークは恐怖と寒気の中で逃避していた。『ブルー・ベル』の方は一旦...
  • 暗幕のゲルニカ
    暗幕のゲルニカ 題名:暗幕のゲルニカ 著者:原田マハ 発行:新潮文庫 2022/3/5 12刷 2016/3 初版  価格:¥800 『楽園のカンヴァス』と『暗幕のゲルニカ』。お揃いのカバーと言い、両作をまたぐ馴染み深い人物や、ニューヨーク美術館MoMAと言い、二作はまるで姉妹のようにセットとして見える。  前作の題材である画家アンリ・ルソーに比べると、知名度も個性も段違いに際立つパブロ・ピカソという美の怪物を軸として回る物語が本作である。しかも空爆という名の無差別攻撃に対し、強烈な抵抗を示したあまりに有名な作品『ゲルニカ』を前面に扱う本書。ピカソがゲルニカ製作に全力をあげていた日々。一方では、9・11後のアメリカによるイラクへの報復めいた攻撃が始まろうと言う時期。こうして20世紀のパリ/21世紀のニューヨークが、交互に描かれてゆくダブル・ストーリー...
  • デイヴィッド・C・テイラー David C. Taylor
    デイヴィッド・C・テイラー David C. Taylor 刑事マイケル・キャシディ・シリーズ ニューヨーク1954 鈴木恵訳 2015
  • すべては死にゆく
    すべては死にゆく [429] Client error `POST https //webservices.amazon.co.jp/paapi5/getitems` resulted in a `429 Too Many Requests` response { __type com.amazon.paapi5#TooManyRequestsException , Errors [{ Code TooManyRequests , Message The request was de (truncated...) 題名:すべては死にゆく 原題:All The Flowers Are Dying (2005) 作者:Lawrence Block 訳者:田口俊樹 発行:二見書房 2006.12.25 初版 価格:\2,100  三人称でシリ...
  • ブロッサム
    ブロッサム ブロッサム (ハヤカワ・ミステリ文庫―アウトロー探偵バーク・シリーズ) ブロッサム (Hayakawa Novels) 題名:ブロッサム 原題:BLOSSOM (1990) 作者:ANDREW VACHSS 訳者:佐々田雅子 発行:早川書房 1992.5.31 初版 価格:\1,900(本体\1,845)  『ミステリ・マガジン』(1992年7月号)のブック・レビューで関口苑生氏が散々にこき下ろしているのがこの作品なので、それほど望みのない作品なのかと疑心暗鬼でこの本を手に取ったのだが、なんとまあ、大変重要な、バーク・シリーズの転機になる作品じゃあございませんか?  というのはバークがニューヨークから離れて独りでタフ・ガイみたいに事件にわりあい積極的に挑んだりするってこともあるかもしれない。お偉いさんや写真の売人を手玉に取って世のために...
  • 泥棒はスプーンを数える
    泥棒はスプーンを数える 題名:泥棒はスプーンを数える 原題:The Burglar who Counted The Spoos (2013) 作者:ローレンス・ブロック Lawrence Block 訳者:田口俊樹   発行:集英社文庫 2018.9.25 初版 価格:¥1,100  物凄く久しぶりのブロック。マット・スカダーのシリーズでハードボイルドの真髄を描き、殺し屋ケラーのシリーズではブラックユーモアの味を存分に出し、短編集ではニューヨーカーならではのお洒落な短編やスラップスティックで遊んだり、そして小説の書き方を出版したり、真の意味での巨匠。  そしてマットとケラーの中間地点(少しケラー寄り?)に位置しそうなのが、この泥棒バーニーのシリーズ。ユーモア・ミステリというと良いだろう。そしてお洒落なニューヨーカー・ノヴェルとしての味わいもたっぷり...
  • ゼロの誘い
    ゼロの誘い 題名:ゼロの誘い 原題:Down In The Zero (1994) 作者:Andrew Vachss 訳者:佐々田雅子 発行:早川書房 1996.4.30 初版 価格:\1,900  バークにもう一度会いたい読者でありながら、こういう形ではバークに再会したくなかった人って、実はけっこういっぱいいるんじゃないだろうか? そういう感じの、本当は終わって欲しかったシリーズの続編である。  もっとも本当に終わって欲しかったのはシリーズの終止符と当時言われた『サクリファイス』ではなく、だれもがバークのエピローグと感じていた『ハード・キャンディ』であったろう。あれをもってバーク・シリーズの「ニューヨーク死闘編」は終了したとされている。だから『ブロッサム』と『サクリファイス』は、言わば外伝であったはずなのだ。  作者はおそらく外伝だけに...
  • 神の街の殺人
    神の街の殺人 題名:神の街の殺人 原題:Tabernacle (1983) 作者:Thomas H. Cook 訳者:村松 潔 発行:文春文庫 2002.4.10 初版 価格:\638  トマス・H・クックと言えば、最近ではすっかり<あの記憶シリーズの作家>として定着している観がある。ぼくはこの人の比較的旧い作品も好きなので、三作目にあたる本書はデビュー作『鹿の死んだ夜』に続いての今になって翻訳された作品であり、クック・ファンとしてはそれなりに垂涎ものといったところに位置する作品でもある。  ユタ州ソルトレイクシティと言えば、まず想起するのがモルモン教の街である。死刑囚ゲイリー・ギルモアの恐るべきあのドキュメント『心臓を貫かれて』の街でもある。多くの戒律に縛られた街で生じる連続殺人事件。  主人公であるトム・ジャクソンは、フランク・クレモン...
  • スクイズ・プレー
    スクイズ・プレー 題名:スクイズ・プレー 原題:Squeeze Play (1982) 著者:ポール・ベンジャミン Paul Benjamin 訳者:田口俊樹 発行:新潮文庫 2022.9.1 初版 価格:¥800  ポール・オースターが、デビュー前に書いていた、しかもハードボイルドという、いわくつきの珍品。しかも、1978年に脱稿したが、6年後の1984年にペーパーバックで刊行という執念の一作である。ポール・オースターをぼくは読んでいないが、彼の書いたものとは思えないくらい作風が異なる正統派ハードボイルド作品が本作であり、彼の手になるハードボイルドはこれ一作きりである。  そうしたハードボイルド書きではない作家による渾身のハードボイルド小説という舞台裏を思うと、もったいないほどの秀作が本書である。主人公のマックス・クラインは、もちろん私立探偵。キャ...
  • ジェイムズ・ディッキー
    ジェイムズ・ディッキー James Dickey  ジョン・ブアマン監督が新南部に展開した渓谷バイオレンス映画『脱出』は、このジェイムズ・ディッキーの原作だった。『白の海へ』も、ブラッド・ピット主演で日本ロケを施すという話題があったが掻き消えになった気配。第二の『ファーゴ』になったかもしれないコーエン兄弟の企画だっただけにとても残念だ。  凄まじい暴力をサバイバル小説を主軸に展開する、現代版「もっとも危険なゲーム」の書き手である。翻訳がほとんど存在しないのが寂しい。 長編小説 わが心の川 1971 酒本雅之訳 白の海へ 1993 高山 恵訳 ノンフィクション ニューヨーク・シティ・マラソンを走るために 常盤新平訳
  • ダウンタウン
    ダウンタウン ダウンタウン (ハヤカワ・ミステリ文庫) ダウンタウン (Hayakawa novels) 題名:ダウンタウン 原題:DOWNTOWN 著者:エド・マクベイン Ed McBain 訳者:羽田詩津子 発行:早川書房 1990年10月 初版 価格:2000  クリスマスにぜひ読んで欲しいマクベインの取っておきの冒険譚。数年前に村上春樹が『ノルウェイの森』を出して以来、なんとなくクリスマスに装丁の奇麗な本をプレゼントするなんて気のきいた風習が流行り始めたみたいだけれども、この本もそれらしき狙いを窺わせる、和田誠の手によるメルヘンチックなカバーを身に纏っている。ぼくはこういう策略には手もなく乗ってしまってかまわないと思っている。ストーリーは、クリスマス・イブの夜に始まる三十数時間の物語。舞台はもちろんニューヨーク。物語中に溢れる赤と緑の色彩。これはま...
  • westlake
    ドナルド・E・ウェストレイク Donald E. Westlake ドートマンダー・シリーズ ホット・ロック 1970 平井イサク 強盗プロフェッショナル 1972 渡辺栄一郎 ジミー・ザ・キッド 1974 小菅正夫 悪党たちのジャムセッション 1977 沢川 進 逃げ出した秘宝 1983 木村仁良 天から降ってきた泥棒 1985 木村仁良 Drowned Hopes (1990) 未訳 骨まで盗んで 1993 木村仁良 最高の悪運 1996 木村仁良 バッド・ニュース 2001 木村二郎 Thieves' Dozen 2004 短編集 The Road To Run 2004 Watch Your Back! 2005 What's So Funny? 2007 長編小説 やとわれた男 1960 丸本聰明 殺しあい 1961 永井 淳 361─復讐する男─ 1...
  • 償いの報酬
    償いの報酬 作品:償いの報酬 作者:ローレンス・ブロック 訳者:田口俊樹 発行:二見文庫 2012.10.20 初版 価格:\933  ハードボイルドの系譜が多岐に渡るなか、しっかりと野太い直列のラインで引かれた直系のシリーズが、このマシュー(マット)・スカダーのシリーズであろう。免許を持たないホテル住まいであっても、元刑事で今は探偵というアメリカン・スタンダードをしっかりと抑えつつ、卑しき街をゆく誇り高き男、という構図を崩さない。しかしながら、このシリーズは跳弾による少女の死と刺し違える格好で警察を辞め、離婚し、アル中に陥る探偵という贖罪の重さを一方で売りにしている。  名作『八百万の死にざま』は、禁酒の前後を切り分ける重要な作品となったが、マットが事件と向かい合いながらも己と闘ってゆく凄まじい姿は、今も深く読書体験の記憶に残って消えないものである。  本...
  • 汚れた街のシンデレラ
    汚れた街のシンデレラ 汚れた街のシンデレラ (ハヤカワ・ミステリ文庫) 題名:汚れた街のシンデレラ 原題:Manhattan Is My Beat (1989) 作者:Jeffery Wilds Deaver 訳者:飛田野裕子 発行:ハヤカワ文庫HM 1994.8.31 初版 価格:¥620  いわゆるサイコ・シリーズともジョン・ぺラムのハードボイルド路線のシリーズとも若干趣きを異にしたニューヨークのパンク娘ルーンを主役にしたシリーズ第1作(残り2作は未訳)。  パンク娘といえば、ジェン・バンブリー『ガール・クレイジー』という、『このミス』でぼく以外は誰も推さなかったというポップ・ハードボイルドが思い起こされ、本書もどことなく似た雰囲気でスタートする。どちらもただの店員。あちらは本屋だったが、こちらはレンタルビデオ・ショップ。こんなポップ・ミステリをディ...
  • 流れは、いつか海へと
    流れは、いつか海へと 題名:流れは、いつか海へと 原題:Down The Riveer Unto The See (2018) 著者:ウォルター・モズリイ Walter Mosley 訳者:田村義進 発行:ハヤカワ・ミステリー 2019.12.15 初版 価格:¥1,900  国産ミステリーの犯罪のほとんどが、極めて個人的な犯罪を扱うのに比して、世界の賞を獲るような作品は必ずと言っていいほど、国家レベルの犯罪、あるいは政府機関の犯罪、もしくは制度の生み出す社会悪が生み出す犯罪を描くものが多い。単なる謎解き小説にとどまらず、犯罪を小説の題材として描くことで、何らかの社会的メッセージを描くもの、そうではなくても高位なレベルで行われる犯罪に、個人として立ち向かわねばならない状況を小説の背骨に据えているものが多いと思う。  国産小説にそれが皆無とは言えないけ...
  • ノー・セカンドチャンス
    唇を閉ざせ 題名:唇を閉ざせ 原題:Tell No One (2001) 著者:ハーラン・コーベン Harlan Coben 訳者:佐藤耕士 発行:講談社文庫 2002.10.15 初版 価格:上下各¥990 コーベンのノン・シリーズ翻訳作品第一作は、軽ハードボイルド・タッチのマイロン・ボライター・シリーズとは趣きを変えた、重厚なノンストップ・バイオレンス・スリラー。  山と湖の自然とギャングの横行するストリートのどちらもが舞台となる、ニューヨークの隣町ニュージャージーは、作者の生まれ育った土地らしく、生き生きと活写されている。人も街も生命感たっぷりで、お洒落だったり猥雑だったりの変化に富んでいる辺りは物語を豊かにしているように思われる。  本書は8年前の殺人事件で犠牲なっていたはずの愛妻が、主人公である小児科医師の周辺に現れるという奇妙...
  • 祖国よ友よ
    祖国よ友よ 祖国よ友よ (角川文庫) (↑アマゾンで購入) 題名:祖国よ友よ 作者:船戸与一 発行:徳間文庫 1986.5.25 初版 価格:\500  中短編集。例によってすべてが過激な作品群。短編集では『銃撃の宴』が北アメリカ、『カルナヴァル戦記』が南米と舞台を纏めるている作品集が目立ったが、本書はヨーロッパ各地が舞台になっている。中編が2作あるが船戸作品は中編と言えども一気に読ませるものばかりなので、短編のようにしか感じなかったことを付け加えておこう。  中編『祖国よ友よ(レジオ・パトリア・ノストラ)』は興味深い作品。主人公が何と名こそ明かされていないが『蛮賊ども』の傭兵の一人、佐伯夏彦なのである。『蛮賊ども』の中で語られる彼のエピソードをそのまま中編化した作品である。(どちらが早く書かれたのか、ちょっとわからないが)本書ではこれがやはり一...
  • 蒼ざめた街
    蒼ざめた街 題名:蒼ざめた街 作者:藤田宜永 発行:朝日新聞社 1996.7.1 初版 価格:\1,900  うーん、ぼくはこういう本好きである。戦前の帝都を舞台にした探偵小説。主人公の名刺に擦ってある肩書きは「私立探偵」ではなく「秘密探偵」。帝都東京の香気の中をアメリカ帰りのモダンボーイ探偵がゆく。モボやモガが徘徊する帝都の描写、なんていうだけで、もう読者はこの時代、この世界に引きずり込まれてしまう。  ニューヨークの馬車時代を背景にした『エイリアニスト』、ナチの台頭するベルリンを舞台にしたP・カーのギュンター・シリーズなど、すっごく歴史的に古くとんでもない時代に探偵という職業を配置し、事件を追わせる物語は、海外では多いけど、日本ではどうしても目明かしモノくらいに古いものしかなかなか見当たらない。  江戸川乱歩があるじゃないかと言われて...
  • 唇を閉ざせ
    唇を閉ざせ 題名:唇を閉ざせ 上/下 原題:Tell No One (2001) 著者:ハーラン・コーベン Harlan Coben 訳者:加藤耕士 発行:講談社文庫 2002.10.15 初版 価格:各¥990  コーベンのノン・シリーズ翻訳作品第一作は、軽ハードボイルド・タッチのマイロン・ボライター・シリーズとは趣きを変えた、重厚なノンストップ・バイオレンス・スリラー。  山と湖の自然とギャングの横行するストリートのどちらもが舞台となる、ニューヨークの隣町ニュージャージーは、作者の生まれ育った土地らしく、生き生きと活写されている。人も街も生命感たっぷりで、お洒落だったり猥雑だったりの変化に富んでいる辺りは物語を豊かにしているように思われる。  本書は8年前の殺人事件で犠牲なっていたはずの愛妻が、主人公である小児科医師の周辺に現れるとい...
  • 夜 訪ねてきた女
    夜 訪ねてきた女 夜 訪ねてきた女 (文春文庫) 題名:夜 訪ねてきた女 原題:NIGHT SECRETS (1990) 作者:THOMAS H. COOK 訳者:染田屋茂 発行:文春文庫 1993.7.10 初版 価格:\600(本体\583)  この本も当然前作と繋がっている。ファルークはファルークであり、クレモンズは相変わらず誠意に溢れている。事務所前の階段に陣取る老女に対するクレモンズの態度を見るだけで、ぼくはこの私立探偵が好きになれる。  昼に、正式な依頼で人妻の素行調査を行ない、残った夜の時間を、ジプシー女性殺人事件の捜査に当てる。不眠症で眠れない中年男が二人、ニューヨークの昼と夜をクルージングする物語だ。  この手の構成は『87分署』を想起させ、独特の読書リズムというようなものを生み出してくれるのだが、もちろん手が合わないという人...
  • サイコセラピスト
    サイコセラピスト 題名:サイコセラピスト 原題:The Silent Patient (2019) 著者:アレックス・マイクリーディーズ Alex Michaelides 訳者:坂本あおい 発行:ハヤカワ・ミステリー 2019.09.15 初版 価格:¥1,900  サイコ・サスペンスであることを文字通りタイトルに掲げてのデビュー作とのこと。原題は『沈黙の患者』。読了後の感覚では、直訳タイトルでもよかった気がする。でも取っつきとしてはこのタイトルでも悪くない。ザ・グローブという名の精神科施設を舞台に展開する、まさに精神科診療そのものの物語であり、それを題材にしたミステリーなのだから。  夫殺しの容疑をかけられた画家アリシアは事件後、頑なに沈黙を続け精神科施設で薬漬けになっている。彼女の沈黙に挑戦するのは、過去、父のDVに悩まされた経験のある心理療法士の...
  • 歓喜の島
    歓喜の島 題名: 歓喜の島 原題: Isle of Joy (1997) 作者: Don Winslow 訳者: 後藤由季子 発行: 角川文庫 1999.9.25 初版 価格: \952  クリスマスは過ぎ去ってしまったけれども、クリスマスに読みたい本というのが確かにある。たとえばこの作品。クリスマスを軸にストーリーが展開する話でありながら、クリスマス前後の描写がひたすら美しいこと。それがぼくのクリスマス小説の条件。こういうのを満たすのは、ぼくは今まではエド・マクベインの『ダウンタウン』だったのだけれどこれを機会に、宗旨替えをしようと思ったくらいだ。 (ちなみに装丁にごまかされて村上春樹の『ノルウェイの森』を読んではいけない、あれは暗い小説なのだ)、  でも、『87分署』でバート・クリングがクレアとデートしたシーンのように、街中でウォルター...
  • 偽りの目撃者
    偽りの目撃者 題名:偽りの目撃者 原題:Dropshot (1996) 著者:ハーラン・コーベン Harlan Coben 訳者:中津悠 発行:ハヤカワ文庫HM 1998.1.15 初版 価格:¥820  札幌読書会で取り上げて頂いて以来ハーラン・コーベンは全作読むに値するという強迫観念を抱いてしまったぼくは、最近の独立作品はもちろん、日本でコーベンとう作家が翻訳され始めた20年以上前の本シリーズにも今、中毒となりつつある。本作はマイロン・ボライター・シリーズのその第二作目。  シリーズ第一作『沈黙のメッセージ』でスポーツ・エージェントというあまり聞き覚えのない商売をしている主人公設定に驚いたのだが、読んでみるとロバート・クレイスばりの私立探偵型ハードボイルドであることに驚愕。  しかもシリーズ・キャラクターたちの個性も既に完成度が高く、第二...
  • 鹿の死んだ夜
    鹿の死んだ夜 鹿の死んだ夜 (文春文庫) 題名:鹿の死んだ夜 原題:BLOOD INNOCENTS (1980) 作者:THOMAS H. COOK 訳者:染田屋茂 発行:文春文庫 1994.6.10 初版 価格:\500(本体5485)  この作家、クレモンズと言い、年配の主人公、年配の脇役を書くことが多いので、かなり年齢が行っているのかと思いきや、まだ 47 歳なのである。本編の主人公にしたって 50 を過ぎ、息子夫婦の中流的な新しい生き方を何故か受け入れることができず、質素でつつましやかな一人暮らしを送っていたりする。我が子への願望、死別した妻への哀悼と現在の孤独……事件もさながら、まずはこうして主人公の深い人間の心の方へ沈潜してゆくやり方は、処女作からしてやはりクックのものだった。  暗い、とか辛気臭いとか、くそ真面目すぎる……とかいう印象はクッ...
  • インコは戻ってきたか
    インコは戻ってきたか インコは戻ってきたか (集英社文庫) インコは戻ってきたか 題名:インコは戻ってきたか 作者:篠田節子 発行:集英社 2001.6.30 初版 価格:\1800  キプロスで小さな紛争に巻き込まれる日本人中年男女の6日間。篠田節子には文化・宗教・政治などの民族対立を描く作品があるけれど、これはそのカテゴリー。イスラムとキリスト教の対立の構図は、この時点ではキプロスという地中海上の小さな島を舞台にしており、今世界を震撼させているマンハッタン島のテロなんてことは、さすがにスケールの大きな作家・篠田節子でも思いついていなかっただろう。  日常を背負った日本人女性が、生命の危険を感じつつもとことん企業の一員で在り続ける姿は、ワールド・トレーディング・ビルで今なお安否不明の企業重役たちとダブってくる。普通の日常の重さが、事件現場付近で、家族た...
  • 失踪
    失踪 題名:失踪 原題:Missing New York (2014) 作者:ドン・ウィンズロウ Don Winslow 訳者:中山 宥 発行:角川文庫 2015/12/25 初版 価格:\1,320  さて、異例の『報復』と同時発行、しかもUS本国での出版をさておいてドイツと日本で先行発売という作品のこちらは片割れだ。『報復』が、『犬の力』に似た活劇用のリズミカル文体で綴られた戦闘アクション復讐劇という大スケール作品であったのに比して、こちらはハードボイルドの一人称形式によってどちらかと言えば地道に描かれた失踪人捜査のドラマ。  通常の警察小説と異なるのは何よりも主人公だろう。失踪事件が起こったネブラスカ州警察署のフランク・デッカーの異常なまでの責任感と捜査への執念が何よりも、他の類似小説群の追随を許さない。何しろ警察が匙を投げかけたと見るや、警察を辞...
  • 修道女の薔薇
    修道女の薔薇 題名:修道女の薔薇 原題:Blind Sight (2016) 著者:キャロル・オコンネル Carol O Connell 訳者:務台夏子 発行:創元推理文庫 2020.03.13 初版 価格:¥1,480  550頁。いつもなら二日ほどあれば読めるペースなのだが、6日かかった。これがキャロル・オコンネルに取り組むときのきっとぼくの平均的ペースである。スピーディに読み進めない。きっと作者もスピーディには書いていない。すごく丹念に凝りに凝ったレトリックを駆使して、本シリーズのヒロイン、キャシー・マロリーを描こうとする。木彫りに入れられる丹念な彫刻刀のような筆致で、肌理細かく。  それほどこだわりぬいた作風。この作家の個性。マロリーのさらにスーパーな個性。拾い親である亡き刑事ルイ・マーコヴィッツに育てられた孤独な孤児。天性のハッカーで、目的...
  • 糧(かて)
    糧(かて) 糧(かて) (ハヤカワ・ミステリ文庫―87分署シリーズ) 糧 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ―87分署シリーズ (1289)) 題名:糧(かて) 原題:Bread (1974) 著者:エド・マクベイン Ed McBain 訳者:井上一夫 発行:ハヤカワ文庫HM 1987.07.15 1刷 価格:\460  <87分署>も最初のうちは一年に3冊位のペースで快調に出版されていたものの、ここのところペースダウンしてきて年に一冊ペースでじっくり書いているようである。冬・夏・冬・夏と季節も交互に書き分けられている。アイソラの街は砂漠のようみ厳しい気候条件の下にあり、暑さも寒さもきわめて激しいようだ。そうした住みにくい地帯に、なぜこれほど雑多な人種が世界中から集まってきてしまったのかということを考えると、大変不思議な気もするのだが、モデルになったニューヨ...
  • フォックスストーン
    フォックス・ストーン フォックス・ストーン (文春文庫) 題名:フォックス・ストーン 作者:笹本稜平 発行:文藝春秋 2003.05.15 初版 価格:\1,905  年間一作というペースがいい。雑なところがまったく見られない、練りに練られた文章だけで構成された小説作りがもののみごとに結果として反映されている。実力を見せつけるがごとき文章力によって鎧われたプロットがこれまた凝りに凝っている。一ページあたりの密度がそこらの小説に見習って欲しいほどで、どこもかしこも濃厚である。  主人公が日本人でありながらフランス外人部隊上がりの元傭兵、現セキュリティ・コンサルタントが、傭兵時代のパートナーの不審な死の謎を追って、アフリカ小国の虐殺の落とし物を拾って歩く物語。傭兵と聞いただけで、柘植久義あたりを思い出してぼくはうんざりする口なのだが、作品ごとに毛色を変えてくる...
  • ギャンブラーが多すぎる
    ギャンブラーが多すぎる 題名:ギャンブラーが多すぎる 原題:Somebody Owes Me Money (1969) 作者:ドナルド・E・ウェストレイク Donald E.Westlake 訳者:木村二郎 発行:新潮文庫 2022.8.1 初版 価格:¥800  最後にウェストレイクを読んだのは2007年。別名義のリチャード・スタークにしたって2005年が最後である。記憶の底から浮上してきた腐乱死体のような古い作品が、現代の水面にいきなり浮上してきたといった有様なのだが、実際に読んでみると、ネットやディジタルでいっぱいのこんな時代であるからこそ、むしろあの時代のアナログ的なものが詰まった本書は、新鮮さいっぱいであるように痛烈に感じさせられる。  この明るさ。このスリル。この謎多さ。それでいて場面展開とストーリーテリングの見事さ。ああ、ウェストレイク...
  • 地獄じゃどいつもタバコを喫う
    地獄じゃどいつもタバコを喫う 題名:地獄じゃどいつもタバコを喫う 原題:Everybody Smokes In Hell (1999) 作者:ジョン・リドリー John Ridley 訳者:山田 蘭 発行:角川文庫 2003.05.25 初版 価格:\819  読み出した途端に、この作品が描く地獄から本当に抜け出せなくなった。何だか、どこかで見たような地獄だった。巻末の解説を先に読んでしまうことにした。結末についてまではまさか書いてあるまい。なるほど。得心した。この作家はあの『Uターン』のシナリオ・ライターだったのだ。オリバー・ストーンの唯一の怪作。何度もこいつのDVDを買おうかどうか迷っているが、一向に安くならず(はっきり言って高い!)、人気商品でもないので、仕方なくビデオで再生するしかない作品だ。もちろん主演は地獄にお似合いの男、ショーン・ペン。あの...
  • ゴルディオスの結び目
    ゴルディオスの結び目 題名:ゴルディオスの結び目 原題:Die Gordische Schleife (1988) 作者:ベルンハルト・シュリンク Bernhard Schlink 訳者:岩淵達治、他 発行:小学館 2003.08.20 初版 価格:\1,714  ワールド・カップやその他の国際試合でドイツ代表の試合を見ると、とにかく細かいテクニックではなく、気力と体力で闘志を剥き出しにした勝負強さというのが目立つ。ブラジルあたりと対戦すると、片や人間離れした技術力で魅せに魅せるというブラジルに対して、ドイツは常に無骨な力業で勝負を挑み、それでいて結構な戦績を挙げている。  ベルンハルト・シュリンクがゼルプ・シリーズのようなハードボイルドや本書のような冒険小説に挑むとき、ぼくはやはり、ははあドイツ人だなあ、って微笑んでしまいたくなることが多い。 ...
  • P分署捜査班 集結
    P分署捜査班 集結 題名:P分署捜査班 集結 原題:I Bastardi Di Pizzifalcone (2013) 作者:マウリツィオ・デ・ジョバンニ Maurizio De Giovanni 訳者:直良和美 発行:東京創元社 2020.05.29 初版 価格:¥1,000  刑事小説の金字塔として今も燦然と輝き続けるエド・マクベインの87分署シリーズは、後世の作家に影響を与えるものと想像しているが、本書により日本デビューしたイタリア人作家マウリツィオ・デ・ジョバンニはシリーズの開始にあたって、最初にマクベインへの謝辞を捧げている。  本書はイタリアはナポリを舞台にして現代の87分署とも言うべきものを意図した新しい作家による新しい警察シリーズである。実は87分署シリーズは、1956年でぼく自身と同じ誕生年となる。マクベインと直にお会いできた幸運...
  • rasha1
    裸者と裸者 上 孤児部隊の世界永久戦争 作者:打海文三 発行:角川書店 2004.09.30 初版 価格:\1,500  昨年末に作者が言っている。『裸者と裸者』という全十巻くらいの大作を書いてゆくつもりだということ。第一作は「無学で粗野な孤児兵の視点で北関東の戦場を」と。  しかし予想と違ってこの『裸者と裸者』は上下巻という二作だけで上梓された。しかしながら、二作は時間軸と地平は同一線上のものであって、登場人物らもかぶるものでありながら、実は別の主人公による別々の独立した物語である点、最初の構想と同じものである。  作者がインスピレーションを受けたのはニューヨーク9・11の同時多発テロであると言う。日本が内戦と暴力の国家になったことを仮定して書かれたこの近未来の物語は、俗に言う戦争シミュレーションというものとは一歩かけ離れたところにある。残酷な世...
  • 生贄の木
    生贄の木 題名:生贄の木 原題:The Chalk Girl (2011) 著者:キャロル・オコンネル Carol O Connell 訳者:務台夏子 発行:創元推理文庫 2018.03.16 初版 価格:\1,400  劇画的なまでのけれん味たっぷりな誇張により、常に超越的な存在として彫刻のように描写されてきたこの世で最も美しく冷たい女刑事キャシー・マロリーのシリーズ最新作。と言っても10ヶ月前に邦訳された作品。さらに言えば原作は2011年にUSA出版済み。  創元推理文庫の翻訳作品が原作出版から10年単位の遅れというのは今に始まったことではないのだが、そういった長い長い時差を経てもなお良作と呼べる物語(もう完結してしまったがR.D.ウィングフィールドのフロスト・シリーズや、新ミステリの女王ミネット・ウォルターズの作品群等含め)をしっかりと日本...
  • 歌姫
    歌姫 歌姫 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) 題名:歌姫 原題:The Frumious Bandersnatch (2004) 作者:エド・マクベイン Ed McBain 訳者:山本 博 発行:ハヤカワ・ミステリ 2004.12.31 初版 価格:\1,300  なんとシリーズ屈指の傑作『キングの身代金』以来の誘拐事件がアイソラの街に勃発する。キャレラにとっても誘拐事件はわずかに二度目の経験。誘拐は殺人や強盗に比べると、刑事たちが遭遇する確率が遥かに少ない事件であるみたいだ。ましてやこの事件は、船上で行われる新人歌手の新曲発表パーティのさなか、派手派手しく、メディアを巻き込んで行われる。それにしても誘拐モノとは、なぜこうも傑作揃いなのだろうか。  アイソラ島は、あくまでマンハッタン島ではない架空の大都市だが、物語においてもニューヨークと同じく同じ...
  • 夜も昼も
    夜も昼も 題名:夜も昼も 原題:Night And Day (2009) 作者:ロバート・B・パーカー Robert B. Parker 訳者:山本 博 発行:早川書房 2010.07.15 初版 価格:\2,000  パーカーの訃報を聞いて以来、一冊もパーカー作品が読めなくなっていた。死後に翻訳された新刊が続々書店に顔を見せるたびに必ず手に取り買い込んで来たのだが、もうこれで終わりなのかと思うと、それらを読んでしまい、終わりにする気になれなかった。  でもいつまでもくよくよ嘆いている場合ではない。一期一会だ。今、ここにある本を読まねば。今日は、躊躇う手を書棚に泳がせた結果、ついに一年も経ってようやくパーカーの作品に再会したのである。  本書はジェッシー・ストーンのシリーズ。パラダイスという田舎の警察署長というシリーズでありながら、本書は...
  • シャドウ・ストーカー
    シャドウ・ストーカー 題名:シャドウ・ストーカー 上/下 原題:XO (2012) 著者:ジェフリー・ディーヴァー Jeffery Deaver 訳者:池田真紀子 発行:文春文庫 2016.11.10 初刷 2013/10 初版 価格:各¥760  リンカーン・ライム・シリーズはニューヨーク。一方、このキャサリン・ダンス・シリーズはカリフォルニア。遠く離れた2つのシリーズなのに、それぞれのシリーズにそれぞれのシリーズ主人公がゲスト出演してくれる。このサービス精神がディーヴァーという作家の真骨頂だろう。本作でも、おそらく作家持ち前のサービス精神は、様々な意味で発揮されている。  今回は、若き女性カントリー・シンガーとそのファンのEメールのやり取りで幕を開ける。ファンと言っても度を超えればストーカーとなる。そのラインはおそらく場合により様々だが、無...
  • 沈黙のメッセージ
    沈黙のメッセージ 題名:沈黙のメッセージ 原題:Deal Braker (1995) 著者:ハーラン・コーベン Harlan Coben 訳者:中津悠 発行:ハヤカワ文庫HM 1997.5.15 初版 価格:¥840  ハーラン・コーベンという作家には、様々な新しい試みをやってやろうという独創性への渇望と、意気込みがとても強く見受けられるが、四半世紀前のデビュー作である本書には、その思いのたけがたっぷり過ぎるくらいにぎっしりと詰まっているように見える。  文体としては、軽妙で読みやすく、三人称なのだが、もしこれが一人称であれば、ロバート・クレイスのエルヴィス・コール・シリーズにすごく似てそうだ。メタファー、体言止め、ユーモア。  しかし、主人公は私立探偵ではなく、スポーツエージェント。FBIに一時在籍した経験を活かしての探偵もどき、といった少し...
  • 汚染訴訟
    汚染訴訟 題名:汚染訴訟 / 上・下 原題:Gray Mountain (2014) 作者:ジョン・グリシャム John Grisham 訳者:白石 朗 発行:新潮文庫 2017.2.1 初版 価格:上¥750 下¥670  地道に作品を書き続けるグリャシャム。シドニー・シェルダン張りの超訳という暴挙に曝された初期の何作か以外は全部読むことにしているので、少し溜まってしまった読み残しに手を付ける。 本書は、リーマンショックを受けてアソシエイトの整理に大わらわとなったマンハッタンの巨大法律事務所の朝で幕を開ける。  主人公は珍しく『依頼人』(スーザン・サランドン主演の映画も名作『グロリア』ばりに良かった)以来となる女性である。しかもキャリア3年。訴訟経験なしだが、家庭環境はまるで法曹界サラブレッド。  多くの弁護士が職を失う中で我が...
  • わらの女
    わらの女 題名:わらの女 原題:La Femme De Paille (1954) 著者:カトリーヌ・アルレイ Catherine Arley 訳者:橘明美訳 発行:創元推理文庫 2019.07.30 新訳初版 価格:\1,000  偶然にも生まれる前の小説を続けざまに読んでいる。こちらはピエール・ルメートルの訳者・橘明美による新訳がこのたび登場。古い作品ほど、新鮮に見えてくるこの感覚は何なのだろう?  1960年代にフレンチ・ノワールが日本の劇場を席巻したのも、下地としてこのように優れた原作があったからなのだろう。少年の頃に劇場や白黒テレビで触れたそれらの映画を、大人になって改めて映画、小説などでノワール三昧の一時期を送ったものだ。本書はノワールでありながら、それだけではない。言わばノワール・プラス・アルファな作品なのである。ノワールの特徴である...
  • まほろ駅前番外地
    まほろ駅前番外地 題名:まほろ駅前番外地 作者:三浦しをん 発行:文春文庫 2012.10.10 初刷 2012.12.20 2刷 2009.10 初版 価格:\505  「番外地」というだけあって、本書は「まほろ駅前多田便利軒」の外伝を集めた短編集となっている。  「まほろ…」の主役は、便利屋・多田と居候・行天である。語り手は多田だが、二人主人公による両輪馬車、バンドで言えばドゥービーやクリエイションみたいなツインドラムの重さを軸に据えながら、実に庶民的な事件を扱う軽ハードボイルドの趣きが味わい深い。この二人のキャラクター造形だけで、直木賞賞受賞作の出来栄えは既に決定してしまった、と言っていいほどであった。  さてその前作で扱われる様々な事件(というか出来事)に登場したキャラクターのそれぞれに再登場願って、それぞれに物語をまたひとつひとつ作...
  • 冬を怖れた女
    冬を怖れた女 冬を怖れた女 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション) 題名:冬を怖れた女 原題:IN THE MIDST OF DEATH ,1976 作者:LAWRENCE BLOCK 訳者:田口俊樹 発行:二見文庫 1987.12.25 初版 定価:\410(本体\398)  残念ながらこっちが二作目。前に挙げた二作に較べればストーリーの面白さ(不眠度)はワンランク下かなと思われる。この作品でやっと気づいたのは、スカダーが拳銃を持たないということ。このこと自体彼のトラウマと関連するのだろうが、けっこうコワモテらしい彼の風貌から、拳銃の存在自体を、読者としてあまり意識に昇らせることがなかったのだ。しかし、本作ではアル中はけっこう描かれていると思う。四六時中バーにばかり入って、酒ばかり飲んでいる様子がよく出ている。つられてショットバーを探してバーボンを生で何杯...
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