wiki クライムウェイヴ(Sysop読書録 活字をめぐる冒険) 内検索 / 「フォックスストーン」で検索した結果

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  • フォックスストーン
    フォックス・ストーン フォックス・ストーン (文春文庫) 題名:フォックス・ストーン 作者:笹本稜平 発行:文藝春秋 2003.05.15 初版 価格:\1,905  年間一作というペースがいい。雑なところがまったく見られない、練りに練られた文章だけで構成された小説作りがもののみごとに結果として反映されている。実力を見せつけるがごとき文章力によって鎧われたプロットがこれまた凝りに凝っている。一ページあたりの密度がそこらの小説に見習って欲しいほどで、どこもかしこも濃厚である。  主人公が日本人でありながらフランス外人部隊上がりの元傭兵、現セキュリティ・コンサルタントが、傭兵時代のパートナーの不審な死の謎を追って、アフリカ小国の虐殺の落とし物を拾って歩く物語。傭兵と聞いただけで、柘植久義あたりを思い出してぼくはうんざりする口なのだが、作品ごとに毛色を変えてくる...
  • ファイアフォックス
    ファイアフォックス 題名:ファイアフォックス 原題:Firefox (1977) 著者:クレイグ・トーマス Craig Thomas 訳者:広瀬順弘 発行:ハヤカワ文庫NV 1986.12.31 初版 1991.2.28 7刷 価格:\600(本体\583)  年内のクレイグ・トーマス全読破を内心決意し、ちょうどまた『ファイアフォックス・ダウン』の文庫化がなされたばかりということもあり、『ラット・トラップ』に続く二作目に取りかかった。ちなみにぼくは文芸座で『ブレード・ランナー』との二本立てで映画化作品を先に観ているので、大方のあらすじは前もって知っている。要するにネタバレ状態で、読み始めたというハンディつきの本なのである。しかし大方の名作と呼ばれる本がそうであるようにこの作品もネタバレとは関係なく小説そのものが楽しめたことは言うまでもない。  最初...
  • ファイアフォックス・ダウン
    ファイアフォックス・ダウン 題名:ファイアフォックス・ダウン (上/下) 原題:Firefox Down (1983) 著者:クレイグ・トーマスCraig Thomas 訳者:山本光伸 発行:ハヤカワ文庫NV 1991.6.30 初版 1991.7.15 2刷 価格:各\520(本体\505)  前作の爽快感を全否定してしまうかのような書き出しで本書で始まる。無理のない続編で、しかも驚いたことに前作の面白さがそのまま繋がってゆく。トーマス作品を作品発表順に読んでゆこうかと思ったが、どうしてもファイアフォックス事件はまだ終わってはいなかった、というフレーズに載せられて続けて読んでしまった。続けて読むと不思議なことに前作との切れ目がなくなってしまう。ストーリーそのものが長くなり、主人公ミッチェル・ガントの冒険行がさらに奥深いものになってしまうということ...
  • 笹本稜平
    笹本稜平 長編小説 時の渚 2001 天空への回廊 2002 フォックス・ストーン 2003 太平洋の薔薇 2003 ビッグブラザーを撃て 2003 グリズリー 2004 極点飛行 2005 マングースの尻尾 2006 不正侵入 2006 許さざる者 2007 サハラ 2008 還るべき場所 2008 素行調査官 2008.10 越境捜査シリーズ 越境捜査 2007 挑発 越境捜査2 2010 破断 越境捜査3 2011 逆流 越境捜査 2014 偽装 越境捜査 2015 孤軍 越境捜査 2017 転生 越境捜査 2019 相剋 越境捜査 2020 流転 越境捜査 2022 連作短編集 駐在刑事 2006 恋する組長 2007
  • ストーン・シティ
    ストーン・シティ 題名:ストーン・シティ (上・下) 原題:Stone City (1989) 作者:ミッチェル・スミス Mitchell Smith 訳者:東江一紀 発行:新潮文庫 1993.8.25 初版 価格:上/\560(本体\544) 下/\600(本体\583)  全編、巨大な重警備刑務所を舞台にしている、っていうだけで何となく飛びつきたくなる本だった。何とまあ、こんなところに大学教授が抛り込まれていて、彼が刑務所内の連続殺人を捜査する羽目になる、というまあ途方もないエンターテインメントなのである。  アメリカの刑務所というのが、現在どんなものなのかは知らない。サンフランシスコ・ベイに浮かぶアルカトラズやサンクエンティンはそれぞれ『アルカトラズの脱出』『大脱獄』などで囓ったことはあるけれど、悪名高い『パピヨン』のフランス領悪魔島と同...
  • 闇の奥へ
    闇の奥へ [429] Client error `POST https //webservices.amazon.co.jp/paapi5/getitems` resulted in a `429 Too Many Requests` response { __type com.amazon.paapi5#TooManyRequestsException , Errors [{ Code TooManyRequests , Message The request was de (truncated...) 題名:闇の奥へ(上・下) 原題:The Bear s Tears (1985) 作者:クレイグ・トーマス Craig Thomas 訳者:田村源二 発行:扶桑社ミステリー 1989.7.25 初版 1991.4.25 第6刷 価格:上\680...
  • ウインター・ホーク
    ウインター・ホーク 題名:ウインター・ホーク (上・下) 原題:Winter hawk (1987) 作者:クレイグ・トーマス Craig Thomas 訳者:矢島京子 発行 扶桑社ミステリー 1990.2.23 初版 1991.4.25 上/第5刷 下/第4刷 価格 上\660(\641)下\600(\583)  さてこの作品の方はすごく口込みの評価は低いのだが、 果たしてこの主人公が 『ファイアフォックス』シリーズのミッチェル・ガントでなかったら、どうであったろうか? ぼく個人としてはこの小説だって文句無しに優れものだと思う。中でもソ連の中でガントと同じ目的に向かう運命にあるドミトリー・プリャービンという男のこの小説での活躍ぶりは素晴らしかった。ミサイル・サイロでのラスト・シーンはぼくには忘れられなくなりそうな名シーンでもある。なぜこういう名シーン...
  • クレイグ・トーマス Craig Thomas
    クレイグ・トーマス Craig Thomas/デイヴィッド・グラント David Grant パトリック・ハイド・シリーズ 闇の奥へ 1985 田村源二訳 闇にとけこめ 1999 田村源二訳 すべて灰色の猫 1988 山本光伸訳 救出 1993 1993 田村源二訳 ミッチェル・ガント・シリーズ ファイアフォックス 1977 広瀬順弘訳 ファイアフォックス・ダウン 1983 山本光伸訳 ウィンター・ホーク 1987 矢島京子訳 ディファレント・ウォー 1997 小林宏明訳 長編小説 ラット・トラップ 1976 広瀬順弘訳 狼殺し 1978 竹内泰之訳 モスクワを占領せよ 1979 井上一夫訳 モスクワ5000 1979 小菅正夫訳 デイヴィッド・グラント名義 レパードを取り戻せ 1981 菊池光訳 ジェイド・タイガーの影 1982 田中昌太郎訳 高空の標的 1990 田村源二訳...
  • ブリムストーンの激突
    ブリムストーンの激突 題名:ブリムストーンの激突 原題:Brimstone (2009) 著者:ロバート・B・パーカー Robert B. Parker 訳者:山本博訳 発行:早川書房 2009.10.15 初版 価格:¥2,000  「ウエスタン」「西部劇」は、今や死後になりつつある。そんなウエスタンを小説で読むぼくは化石のような存在なのかもしれない。そもそも西部劇とは映画のジャンルであって小説ではあり得ないとさえ認識されているかもしれない。でもアメリカではその昔ペーパーバックで西部劇作家が沢山いたのである。最近では、村上春樹がエルモア・レナードの西部劇『オンブレ』を訳したので、ウエスタン・ノヴェルも少しだけ市民権を示すことができたかな? それにしてもエルモア・レナードが西部劇を書いていたなんて、とぼく自身驚いたのは事実。アメリカには、やはりアメリカ文...
  • 寝た犬を起こすな
    地中の記憶 題名:寝た犬を起こすな 原題:Saints Of The Shadow Bible (2013) 著者:イアン・ランキン Ian Rankin 訳者:延原泰子 発行:ハヤカワ・ミステリ 2017.5.15 初版 価格:\2,300-  スコットランドを舞台にしたこのシリーズは四半世紀前から書き継がれたものとなるが、ぼくがジョン・リーバス警部シリーズに出会ったのはここ一二年である。最近はハヤカワ・ポケミスを軸に、海外の小説を読むようにしている。何より翻訳が早いのと、受賞作や話題作や鉄板シリーズ作を中心に出版してくれる、実に安心できる版元だからだ。  ちなみに、ぼくがパソコン通信NIFty Serveの冒険小説フォーラムに入る少し前、早川書房ではロバート・B・パーカーを招き、その社屋にてぼくの前々SYSOP小城則子さん中心にフォーラムの有志が...
  • レパードを取り戻せ
    レパードを取り戻せ 題名:レパードを取り戻せ 原題:Sea Leopard (1981) 作者:クレイグ・トーマス Craig Thomas 訳者:菊池光 発行:早川書房 1983.10.15 再版 価格:\1,600  80年代初頭の作品。しかもクレイグ・トーマス作品は一年ぶり。立て続けに読もうと思っていたのが、案外読みにくいコッテリ味の本格冒険小説なので、そう簡単には手が伸びず、ハードボイルド系の読みやすい小説に浮気ばっかりしてしまっていた。そうこうしているうちに上下二巻に分かれた文庫本なども出版されてしまったが、ここにはけっこう長大な、C・トーマス・ファンなら必見の関口苑生氏による基本的な解説が掲載されている。あいにくぼくはこれを書店で立ち読みしかしていないが、今回これを読んでみて案外に楽しめたことなどもあるから、ぜひとも解説だけでも買って取っておこう...
  • イアン・ランキン Ian Rankin
    イアン・ランキン Ian Rankin ジョン・リーバス警部シリーズ 紐と十字架 1987 延原康子訳 影と陰 1991 延原康子訳 血の流れるままに 1996 延原康子訳 黒と青 1997 延原康子訳 首吊りの庭 1998 延原康子訳 死せる魂 1999 延原康子訳 蹲る骨 2000 延原康子訳 滝 2001 延原康子訳 蘇る男 2002 延原康子訳 貧者の晩餐会(短編集) 2002 延原康子訳 血に問えば 2003 延原康子訳 獣と肉 2004 延原康子訳 死者の名を読み上げよ 2006 延原康子訳 最後の音楽 2007 延原康子訳 他人の墓の中に立ち 2012 延原康子訳 寝た犬を起こすな 2013 延原康子訳 警部補マルコム・フォックス 監視対象 2010 熊谷千寿訳  偽りの果実 2011 熊谷千寿訳
  • アックスマンのジャズ
    アックスマンのジャズ 題名:アックスマンのジャズ 原題:The Axeman s Jazz (2014) 作者:レイ・セレスティン Ray Celestin 訳者:北野寿美枝 発行:ハヤカワ・ミステリ 2016.3.15 初版 価格:\1,800-  世界レベルの新人作家というのは凄いものである。本書はCWA(英国推理作家協会)賞の最優秀新人賞受賞作であるが、ここまで凝りに凝った力作を書けるかと思うと、そのレベルの高さ、スケールの大きさに気が遠くなる。  舞台は1919年、第一次大戦後のニューオーリンズであるが、この南部にあってプチ・フランスでもある奇妙なジャズの街は、同時にこの作品の本当の主人公でもある。それほどまでに当時よりジャズが鳴り響いていたこの街の活気は、人間臭く、そしてその裏にある時代の闇は深くどす黒い。  しかもここで取り上げ...
  • シャドウ・ストーカー
    シャドウ・ストーカー 題名:シャドウ・ストーカー 上/下 原題:XO (2012) 著者:ジェフリー・ディーヴァー Jeffery Deaver 訳者:池田真紀子 発行:文春文庫 2016.11.10 初刷 2013/10 初版 価格:各¥760  リンカーン・ライム・シリーズはニューヨーク。一方、このキャサリン・ダンス・シリーズはカリフォルニア。遠く離れた2つのシリーズなのに、それぞれのシリーズにそれぞれのシリーズ主人公がゲスト出演してくれる。このサービス精神がディーヴァーという作家の真骨頂だろう。本作でも、おそらく作家持ち前のサービス精神は、様々な意味で発揮されている。  今回は、若き女性カントリー・シンガーとそのファンのEメールのやり取りで幕を開ける。ファンと言っても度を超えればストーカーとなる。そのラインはおそらく場合により様々だが、無...
  • ジェイド・タイガーの影
    ジェイド・タイガーの影 題名:ジェイド・タイガーの影 原題:Jade Tiger (1982) 作者:クレイグ・トーマス Craig Thomas 訳者 田中昌太郎 発行 早川書房 1987.5.31 初版 価格 \1,800  前作ではレパードというハードウェアが登場し、これがほとんどファイア・フォックスと同じ発想であったにも関わらず、それらハードウェア類が大自然を舞台に縦横に活躍してくれたことで、ぼくらはなかなかクレイグ・トーマス作品ならではの大がかりなハード・スパイ戦の醍醐味というものを味わうことができたと思う。ところが本書はソフトウェアのスパイ戦。スパイ戦と言えば、これもC・トーマスはワン・パターンになるのか、いわゆる《もぐら》ものである。  とは言え本作は従来の《もぐら》ものに大きな一捻りが銜えられており、なおかつ英ソ対決という単純な図式...
  • その女アレックス
    その女アレックス 題名:その女アレックス 原題:Alex (2011) 作者:ピエール・ルメートル Pierre Letmaire 訳者:橘明美訳 発行:文春文庫 2014.09.10 初版 2014.10.20 3刷 価格:\860  パリ発のミステリを新作で読めるなんて一体何年ぶりだろうか。ジャン・ボートラン『グルーム』とか、セバンスチャン・ジャプリゾの『長い日曜日』以来だろうか。  近年北欧ミステリが欧米のそれを凌駕するくらい大量に翻訳されるようになり、ヨーロッパの娯楽小説が見直されてきているが、そういう潮流に、本来の文芸王国であり、フィルム・ノワール、ロマン・ノワールのお膝元であるフランスがこういう作品をきっかけに日本の書店にも並んでくれると有難い。一昨年、フランスを旅行したときに、あちこちの店で目に付いたのがダグラス・ケネディだったことを思...
  • トゥルー・クライム・ストーリー
    トゥルー・クライム・ストーリー 題名:トゥルー・クライム・ストーリー 原題:True Crime Story (2021) 著者:ジョセフ・ノックス Josepf Knox 訳者:池田真紀子 発行:新潮文庫 2023.9.1 初版 価格:¥1,150  驚愕の結末でシリーズ三部作を終えたJ・ノックスの次なる弾(たま)が楽しみだったが、その要求にしっかり応えてくれたようなノックスらしい一作。何と、驚愕の結末の次は、驚愕の構成と来たのである。何しろすべてがインタビューとメール往還のみで成り立ったアンチ小説とでも言いたくなるくらいの奇妙な体験を、読者は体感することになる。ノックス弾、またやってくれたな、という苦笑と共に、少し慣れない読書時間がのろのろと始まる。  最初に本書を手に取った読者はその分厚さに気圧されるかもしれないが、じつは口語体で多くの人物に事...
  • インターセックス
    インターセックス 題名:インターセックス 作者:帚木蓬生 発行:集英社 2008.8.10 初版 価格:¥1,900  帚木蓬生という人の経歴は面白い。大江健三郎と同じ東大仏文を出た後、生まれ故郷の福岡に戻り、九大医学部を卒業して精神科医になっている。  医学部卒の作家というのは最早珍しくもなんともないが、とりわけ精神科といえば、これまた北杜夫、加賀乙彦など小説の大家で知られる分野でもある。精神科のように人間の心の探求を行うという作業から、小説という表現の世界に至るルート・ファインディングはそう不自然ではないのかもしれない。  本書では、突然変異として扱われることの多い両性具有、いわゆる半陰陽の実情から、問題とされるべき点を浮き彫りにし、現在の医療や差別に対する社会モラルを問いつつ、対象者やその家族、に向けても、人間らしい心の持ち方、あり方...
  • ジョセフ・ノックス Joseph Knox
    ジョセフ・ノックス Joseph Knox エイダン・ウェイツ・シリーズ 堕落刑事 2017 池田真紀子訳 笑う死体 2018 池田真紀子訳 スリープウォーカー 2019 池田真紀子訳 ノン・シリーズ トゥルー・クライム・ストーリー 2021 池田真紀子訳
  • 武士道シックスティーン
    武士道シックスティーン 題名:武士道シックスティーン 作者:誉田哲也 発行:文芸春秋 2007.07.25 初版 価格:\1,476  ミステリー畑と思われる作家が、ジャンル外作品に挑むことは、最近では全然珍しくない。でも、なぜ、よりによって、16歳の女子高校生を主人公にした、剣道スポコン青春小説なの? とあまりにもその距離の遠さに眼が眩んでくる。  著者、初の、人間が一人も死なない作品なんだそうだ。そう言えば、この人の作品と言えば、グロが少し鼻につくくらい過激な殺人シーンが多い。  でも、よく考えてみたら、ほとんどの作品の主人公が若く美しい女性なのである。しかも、何故か二人の女性を対比させることが多い。特に、ジウ三部作では、過激な暴力に走る暴走娘と、あまりにも人のいい庶民的なギャル、といった二人の若い女性が対照的な刑事として印象的である。...
  • バッドラック・ムーン
    バッドラック・ムーン 題名:バッドラック・ムーン 上/下 原題:Void Moon (2000) 作者:Michael Connelly 訳者:木村二郎 発行:講談社文庫 2001.8.15 初版 価格:上\876/下\857  コナリーというと重い作品というイメージがまずある。物語運びが巧いのでその重さが気にならないのだが、その緻密な展開はストーリーを必ずしもスピーディには展開しない。ピンを抜いてすぐに爆発する手榴弾ではなく、長い導火線を辿った末に発火点の存在がわかるダイナマイトのような物語。  そのイメージを初めて破壊したのがこの作品ではないだろうか? 女泥棒はキャッツアイみたいだし、カジノでの化かし合いも、復讐も、ラブ・ロマンスも、どちらかと言えば、導火線なしの派手な手投げ弾のように見える。舞台はゴージャス、色彩はカラフル。物語はシンプル。...
  • 日本のセックス
    日本のセックス 題名:日本のセックス 著者:樋口毅宏 発行:双葉社 2010.4.25 初版 2010.7.13 2版 価格:¥1,800  どうしようかなあ、というのがこの本に対する最初の直截な思いである。まず、こんなタイトルの本を買うのか、という自分への問いかけ。さらに、ブック・カバーを極端に嫌うぼくにとって、この本をちゃんと携帯し、人々に怪しまれずに済むのか、という心配。そう、いかなる時であれ、自分の読んでいる本を恥ずかしむことなく、カバーをつけぬ主義主張もさすがにこの本のタイトルには少々なよなよと挫けそうになる。  読み始めると、いきなり雑誌主催の濡れ場のシーンが連続する。いきなりの濡れ場連続で本書は始まる。その先が心配になるくらい。  人妻である容子は、旦那の佐藤からは他人とのセックスを奨励されているらしい。これまで300人ほどの男たちと...
  • 嘘に抱かれた女
    嘘に抱かれた女 題名:嘘に抱かれた女 原題:Little Grey Mice (1992) 作者:ブライアン・フリーマントル Brian Freemantle 訳者:染田屋茂 発行:新潮文庫 1995.11.1 初版 価格:\800  極秘情報に接近できるいわゆるオールドミスでとっても気弱な女性秘書に、彼女の昔の恋人に似ているというだけで選ばれたロシアからのスパイが近づき情報を得ようと努力する。筋立てはこんなものなのだけど、フリーマントルは、ぼくは常々言っているように、その語りの巧さで引っ張ってゆく作家だと思う。こういうシンプルなストーリーがなぜこんなに分厚い本になるんだろうか、というむしろ即物的なミステリアスな心境もぼくの読書的好奇心をいつも満たしてくれている。  その好奇心に見合うだけの内容と作品世界の深み、リアリティ、同時代性など様々な点で優れて...
  • スキン・コレクター
    スキン・コレクター 題名:スキン・コレクター 原題:The Skin Collector (2014) 著者:ジェフリー・ディーヴァー Jeffery Deaver 訳者:池田真紀子 発行:文藝春秋 2015.10.15 初版 価格:¥2,350  リンカーン・ライム・シリーズもこれで11作。『ボーン・コレクター』に続く<コレクター>というタイトルなので、気になっていたのだが、やはり初代リンカーン・ライム登場篇となった『ボーン・コレクター』に誘拐され救出された少女パム・ウィロビーが成長して再登場するという点で、やはり関連付けはあった。そればかりか『ウォッチメイカー』の悪役を務めたリチャード・ローガンもまたこの作品のメインストーリーを縫うようにして存在感を見せてくれるので、シリーズ作品のサービスも充実した十字路的作品に仕上がっているように思う。  本書...
  • 病める狐
    病める狐 題名:病める狐 上/下 原題:Fox Evil (2002) 作者:ミネット・ウォルターズ Minette Walters 訳者:成川裕子 発行:創元推理文庫 2007.07.22 初版 価格:各\860  3年ぶりの翻訳。私が待ち詫びているこの作家は一、二年に一作というペースで、継続的に作品を書いているが、シリーズものではなく毎作ごとに趣向を変え、全く新しい世界を展開する、つまり次の作品の傾向が読めない、という点に於いてとても優秀である。凝った丁寧な作風は、そうした作者ならではのペースがもたらすところが大きいのだと思う。  本書もまた、これまでのすべてのミネット・ウォルターズ観を引っ繰り返すようなつくりとなっている。それは、いつもお馴染みの探偵役の女性主人公らしい人が、登場してこない、ということでもある。いわゆる主人公が定まらない群...
  • 夜明けのフロスト クリスマス・ストーリー
    夜明けのフロスト クリスマス・ストーリー 『ジャーロ』傑作短編アンソロジー3 題名:夜明けのフロスト クリスマス・ストーリー    『ジャーロ』傑作短編アンソロジー3 編者:木村仁良 作者:R・D・ウィングフィールド、他 訳者:芹澤 恵、他 発行:光文社文庫 2005.12.20 初版 価格:\571  『クリスマスのフロスト』とは別のクリスマスを過ごす、あの警部フロストの新しい中篇ストーリーを収録したアンソロジー。クリスマスのたった一日にいきなり沢山の事件が押し寄せて、窒息しそうになりながらも、次々と解決に導いてゆくフロストの八面六臂の活躍ぶりが、とても懐かしいし、こうした物語を、別のすべてのクリスマス作品集と一緒に読めるアンソロジーなんて、とても気のきいた本であると思う。  短編の名手エドワード・D・ホックの引退刑事レオポルドのシリーズ『ク...
  • ティム・ウィロックス
    ティム・ウィロックス Tim Willocks 長編小説 グリーンリバー・ライジング 1994 東江一紀訳 ブラッド・キング 1995 峯村利哉訳
  • フリーファイア
    フリーファイア 題名:フリーファイア 原題:Free Fire (2007) 作者:C・J・ボックス C.J.Box 訳者:野口百合子 発行:講談社文庫 2013.6.14 初版 価格:\1,000  一作で二作分くらい楽しめる内容のツイストぶり、かつエンターテインメント性、練度を増してきたストーリーテリングの極み、それらを支える初期からのオリジナルな発想としての猟区管理官という職業。すべてにおいて、ますます重量感を増してくる様相を呈し、読者を驚かせてやまないのがC・J・ボックスという作家である。  そもそも人があまり住んでもいない、大自然ばかりのワイオミングという土地で、探偵でもない稼業の、派手でもない主人公とその一家族が、シリーズに値するほどの物語やプロットを紡ぎ出せるものなのかさえ疑問であったはず。第一作からディック・フランシスばりの小説...
  • ダックスフントのワープ
    ダックスフントのワープ 題名:ダックスフントのワープ 作者:藤原伊織 発行:文春文庫 2000.11.10 1刷 価格:\457  花村萬月が『眠り猫』以前に『ゴッドブレイス物語』で小説すばる新人賞を獲得していたように、藤原伊織も『テロリストのパラソル』以前に、実はすばる文学賞という、より純文学度の高いこの賞を獲得していた。そんなことはぼくは全く知らなかった。表題作の中篇作品『ダックスフントのワープ』がそれだ。  自閉症で辞書を読むのが趣味だと言う少女に毎日家庭教師に通って、勉強ではなく物語を語る主人公の青年。乾いてドライな「引力の外側」にいる両者の関係の中で、劇中激とも言うべきダックスフントのファンタジックな世界が広がる。邪悪の意志の地獄の砂漠に現れる邪鳥(よこしまどり)や、背中にネジのついたアンゴラウサギ、「語る木」とてっぺんにとぐろを巻いている...
  • 虚栄
    虚栄 題名:虚栄 原題:Blue Screen (2006) 作者:ロバート・B・パーカー Robert B. Parker 訳者:奥村章子 発行:ハヤカワミステリ文庫 2007.04.25 初版価格:\840  本シリーズのヒロインサニーは、スペンサーの恋人スーザンの治療を受け続けている。スペンサーによくモーションをかけてくるリタ・フィオーレは、ジェッシイ・ストーンにも誘いをかける。こんな風に三つのシリーズを脇役たちは行き来するし、時にはスペンサーとジェッシイの捜査が絡み合うこともある。最近のパーカーのお遊びの傾向である。  そのうちどれがどのシリーズなのか、区別がつかなくなってしまうのかもしれない。その思いを強くしたのは、本書ではジェッシイが、脇役どころではなく主役なみの登場をするからだ。しかもサニーと二人三脚で同じ事件を追う。完全に共演であ...
  • レックス・ミラー
    レックス・ミラー Rex Miller 壊人 1987 田中一江訳
  • ベスト・アメリカン・ミステリ ジュークボックス・キング
    ベスト・アメリカン・ミステリ ジュークボックス・キング ベスト・アメリカン・ミステリ ジュークボックス・キング (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) 題名:ベスト・アメリカン・ミステリ ジュークボックス・キング 原題:The Best American Mystery Stories 2003(2003) 編者:マイクル・コナリー&オットー・ペンズラー編 Michael Connelly, Otto Penzler 訳者:古沢嘉通、他 発行:ハヤカワ・ミステリ 2005.4.15 初版 価格:\1.800  同じアンソロジーの名シリーズをハヤカワが立て続けに出した。確かにDHCの出版は2001年で止まっていた。でも今になっていきなり二冊というのは、不思議だ。ぼくの4月は、結局この二冊を読むのに大半を費やすことになった。それだけじっくり読める二冊だったわけだ。 ...
  • C・J・ボックス
    C・J・ボックス C.J.Box 森林管理官ジョー・ビケット・シリーズ 沈黙の森 2001 野口百合子訳 逃亡者の峡谷  2002 野口百合子訳 凍れる森 2003 野口百合子訳 神の獲物 2004 野口百合子訳 震える山 2005 野口百合子訳 裁きの曠野 2006 野口百合子訳 フリーファイア 2007 野口百合子訳 復讐のトレイル 2008 野口百合子訳 ゼロ以下の死 2009 野口百合子訳 狼の領域 2010 野口百合子訳 冷酷な丘 2011 野口百合子訳 鷹の王 2012 野口百合子訳 発火点 2013 野口百合子訳 越境者 2014 野口百合子訳 嵐の地平 2015 野口百合子訳 熱砂の果て 2016 野口百合子訳 長篇小説 ブルー・ヘヴン 2006 真崎義博訳 さよならまでの三週間 2008 真崎義博訳
  • パラドックス13
    パラドックス13 題名:パラドックス13 作者:東野圭吾 発行:毎日新聞社 2009.4.15 初版 2009.4.20 2刷 価格:\1,700  理科系出身のミステリ作家として『ガリレオ』シリーズで物理学教授・湯川学を名探偵役に据えたシリーズが小説にテレビに映画にとヒットしているのだが、かくいうぼくもガリレオは大好きなシリーズである。福山という俳優はどちらかと言えば苦手な方なのだが、ガチガチの理系で白衣の似合った喜劇的な役柄はなかなか見ごたえがあって楽しい。  文科系の読者はけっこう理系のミステリが好きなのかもしれない。例えばぼくはCSIにはまったきり、未だにその世界から抜け出せない。科学捜査のシリーズはどちらかと言えば、リアル感があって好きなのだ。 しかし東野圭吾の場合、一見解けそうにないトリックを解決してみせる湯川学のシリーズであっても単...
  • 炎流れる彼方
    炎 流れる彼方 炎 流れる彼方 (集英社文庫) 題名:炎 流れる彼方 著者:船戸与一 発行:集英社 1990.7 初版 価格:\1,400(本体\1,359)  新会議室における記念すべき読書感想の第一作は、やっぱり大好きな船戸の新作で行ってしまう。というわけでもないのだ、本当は単に昨日読み終わったから今日アップすることになったというのに過ぎないのだ。  この本を読む前にある方から「最悪」という感想を受け取っていた。だからページをめくるたびに、脳裏に最悪という言葉がひるがえってぼくを脅迫しつづけていた。期待しないほうがいいのだ、きっと最悪の本なのだ、何度自分にそう言い聞かせたことかわからない。しかしそのわりにストーリーは盛り上がり、ぼくはのめりこんでゆく。いや、いけない、この本は最悪なはずなのだ。そう言い聞かせるのだが、ぼくの感性はどんどんのめり込んで作品...
  • 訣別の海
    訣別の海 訣別の海 (ハヤカワ・ノヴェルズ) 題名:訣別の海 原題:Sea Change (2005) 作者:ロバート・B・パーカー Robert B. Parker 訳者:山本 博 発行:早川書房 2007.02.28 初版 価格:\1,900  ジェッシイ・ストーン・シリーズは『影に潜む』だけが『ストーン・コールド』の名前でTV用に映画化されており、その中で、ジェッシイをトム・セレックが、スペンサー・シリーズと掛け持ちで忙しい女弁護士リタ・フィオーレ役をミミ・ロジャースが演じている。その映画を最近見たせいか、自分の中ではクラーク・ゲーブルであったはずのジェシイが、何とも親しみやすいトム・セレックの口ひげ顔になってしまったのは、映画を見てしまうことの弊害であるかもしれない。  おまけにミミ・ロジャースのリタは、映画作品の中でジェッシイにとても大胆に迫っ...
  • ブルー・ヘヴン
    ブルー・ヘヴン 題名:ブルー・ヘヴン 原題:Blue Heaven (2007) 作者:C・J・ボックス C.J.Box 訳者:真崎義博 発行:ハヤカワ・ミステリ文庫 2008.08.25 初版 価格:\1,000  ワイオミングの高地を舞台にした猟区管理官ジョー・ピケットのシリーズで売り出したC・J・ボックスは、最初から気に入って追いかけている作家である。ネイチャー派のミステリというのはあまりないと思うが、この作家に限ってはあくまでもアメリカ北西部の大自然を舞台にした物語が似合う。元牧場職員、釣りガイド、編集者などを経ているだけに、作者の顔が作中に見え隠れするような作風でもある。  ジョーのシリーズは講談社文庫で継続中だが、ハヤカワはノン・シリーズである本作の翻訳権を獲得したのだろう。シリーズの翻訳の遅さを嘲笑う勢いで、翻訳小説をメインとするハヤ...
  • 武士道エイティーン
    武士道エイティーン 題名:武士道エイティーン 作者:誉田哲也 発行:文芸春秋 2009.07.30 初版 価格:\1,476  何故か女心を描くのがとても巧い作家、誉田哲也。しかも若い女性の心理を描くのが巧い。もともと、ぼくがこの作家に注目したのはロック少女をヒロインに据えたミステリー仕立ての青春小説『疾風ガール』だった。その後、『ジウ』や『ストロベリーナイト』などで女刑事を軸にしたシリーズを書いているのに、この作家が女性ばかりを主人公に書いているということに気づいたのが、けっこう遅かった。  男性作家が女性を描いているのに読者の側が(ぼくがトロいだけだったのかもしれないけれど)気づかないほど、誉田哲也は女性を自然に描き切っているのだろう、とぼくは勝手に解釈することにした。しかしそれも『武士道シックスティーン』に出くわしてからは、ぼくの主張が決してブラフで...
  • フェリックス・フランシス
    フェリックス・フランシス <競馬シリーズ>の巨匠ディック・フランシスの子。ディック・フランシスの晩年に共著という形でデビューし、『強襲』で新・競馬シリーズを父から書き継いだ。『競馬』シリーズのファンには涙が出るような奇跡の遺伝子リレーとなる。 フェリックス・フランシス共著 祝宴 2007 北野寿美枝 審判 2008 北野寿美枝 拮抗 2010 北野寿美枝 矜持 2011 北野寿美枝 新・競馬シリーズ 強襲 2011 北野寿美枝
  • 訣別
    訣別 題名:訣別 上/下 原題:Tre Wrong Side of Goodbye (2016) 著者:マイクル・コナリー Michael Connelly 訳者:古沢嘉通訳 発行:講談社文庫 2019.7.12 初版 価格:上¥880/下¥900  『ナイトホークス』で始まったハリー・ボッシュ・シリーズも、主人公が60代後半に差し掛かった今、終盤を迎えつつある感がある。LA警察を退職し、サンフェルナンド市警の非常勤職員として細々と警官業を続ける一方、私立探偵の免許を再取得し、警察の事件と探偵の事件の二つを抱え込む。警察の事件は連続レイプ事件、探偵の事件は遺産相続のための古い血縁者の捜査依頼。  探偵の一件では、長らく追想されることのなかったヴェトナムでのトンネルネズミ時代が、事件とのかかわりによってボッシュの心に帰ってくる。ヴェトナムで心身共...
  • アレックス・リーヴ Alex Reeve
    アレックス・リーヴ Alex Reeve レオ・スタンホープ・シリーズ ハーフムーン街の殺人 2018 満園真木訳
  • 赤いキャデラック
    赤いキャデラック 赤いキャデラック―DKA探偵事務所ファイル (角川文庫 赤 530-2 DKA探偵事務所ファイル 2) 赤いキャデラック―DKA探偵事務所ファイル (1978年) (角川文庫) 題名:赤いキャデラック DKA探偵事務所ファイル2 原題:Final Notice (1973) 作者:ジョー・ゴアズ Joe Gores 訳者:村田靖子 発行:角川文庫 1978.1.10 初刷 1985.4.10 4版 価格:\380  日本では、DKAファイル1である『死の蒸発』に先駆けてこちらが出版されている。どの作家でもそうだが、一作目よりも二作目の方が、面白いものが多く、日本では面白い順に紹介され、これが売れれば遡って一作目も翻訳というケースが多い。二作目が面白くなる傾向の理由としては、作家が書き慣れるということもあるだろうし、デビュー後の力が抜けてリラ...
  • ダーク・ムーン
    ダーク・ムーン 題名:ダーク・ムーン 作者:馳星周 発行:集英社 2001.11.10 初版 価格:\1900  正直、最初に『不夜城』で登場したときは、血沸き胸躍ったものだった。でも今、これを読んでいて、ぼくはどうも醒めている。映像化して映画にしたらけっこう面白いバイオレンスものになるかもしれない。少なくともサム・ペキンパあたりが映像化したら、それをきちんとした役者がやってくれるなら、いい映画になるだろう。  日活無国籍アクションという言葉を思い出す。銃をぶっ放し放題、国籍不明。ストーリーのためなら何でもあり。さすがに小説では無国籍アクションというわけにはゆかないので、バンクーバーとかリッチモンドとか、ぼくにはちんぷんかんぷんな土地の名前を世界地図のどこかから引っ張り出してきた馳星周。刑事と黒社会であれば銃はぶっ放し放題。そしてまずは...
  • 夜も昼も
    夜も昼も 題名:夜も昼も 原題:Night And Day (2009) 作者:ロバート・B・パーカー Robert B. Parker 訳者:山本 博 発行:早川書房 2010.07.15 初版 価格:\2,000  パーカーの訃報を聞いて以来、一冊もパーカー作品が読めなくなっていた。死後に翻訳された新刊が続々書店に顔を見せるたびに必ず手に取り買い込んで来たのだが、もうこれで終わりなのかと思うと、それらを読んでしまい、終わりにする気になれなかった。  でもいつまでもくよくよ嘆いている場合ではない。一期一会だ。今、ここにある本を読まねば。今日は、躊躇う手を書棚に泳がせた結果、ついに一年も経ってようやくパーカーの作品に再会したのである。  本書はジェッシー・ストーンのシリーズ。パラダイスという田舎の警察署長というシリーズでありながら、本書は...
  • 真夜中の遠い彼方
    真夜中の遠い彼方/「新宿のありふれた夜」へ改題 真夜中の遠い彼方 (集英社文庫) 真夜中の遠い彼方 (ヤングアダルトブックス) 真夜中の遠い彼方 (扶桑社エクセレント・コミックス) 新宿のありふれた夜 (角川文庫) 新宿のありふれた夜 (スコラ・ノベルズ) 題名:真夜中の遠い彼方 作者:佐々木譲 発行:天山文庫 1992.3.5 初刷 価格:\460(本体\447)  バンディーダ(坂東齢人、つまり現・馳星周)のオススメの上にきゃれらが絶賛書評とあっては読まずば死ねぬな、との思い故に紐解いた一冊なのだが、それほど大作ではなくって、ストーリーがわずか一晩の、舞台は新宿歌舞伎町と限定されているためか「小品」「佳品」などという言葉を一応つけ加えておきたくなる本でありました。  この本の瞠目すべき点は、1984年の作品であるにも関わらず、現在ほぼ...
  • 死影
    死影 死影 (ヴィレッジブックス) 題名:死影 原題:the Straw Men (2002) 作者:マイケル・マーシャル Michael Marshall 訳者:嶋田洋一 発行:ヴィレッジブックス 2005.5.20 初版 価格:\880  渇いた暴力描写を、人間はどこまで、内なる拒絶反応に負けずに読んでゆけるだろうか? あるいは目撃、体験できるのだろうか? あまりに実感の伴わない暴力描写の最たるものとして、最近連日NHKで放送されていたドキュメンタリー『アウシュビッツ』は、やはりどう捉えていいのかわからないほど、非現実的に思えた。規模にしても動悸にしても人間が下し得る暴力に限度がないという、あまり知りたくもない真実を腹に埋め込まれるような気がして、存在の軸までぶれそうになったものだ。P  本書の導入部は、もちろんナチスの規模ではないのだけれど、...
  • 歌舞伎町セブン
    歌舞伎町セブン 題名:歌舞伎町セブン 作者:誉田哲也 発行:中央公論新社 2010.11.25 初版 価格:\1,600  必殺シリーズは影響力を持っているなあと、つくづく思う。必殺シリーズを現代に持ってきたコミックとして平松伸二の『ブラック・エンジェル』は直系のストーリーだと思うし、盗作だと訴えられる可能性だって皆無ではなかったと思う。  そんな必殺シリーズの子孫の一つと言ってもいい作品、誉田哲也の『歌舞伎町セブン』を読了した。  主人公を定めず、多重視点で紡ぐストーリーなので、真相を一番目撃するのは作中人物ではなく読者だ。隠れた闇の中で何が進行しているのかを目撃するのも読者。こういうストーリーテリングを<読者の知>、演劇では<観者の知>と呼んで多用されているのも事実だが、誉田哲也作品では、この書き方は珍しい。  必殺シリーズでも時...
  • 悪い弁護士は死んだ
    悪い弁護士は死んだ 題名:悪い弁護士は死んだ 上/下 原題:Den Sanna Historien Om Pinocchios Näsa (2013) 著者:レイフ・GW・ペーション Leif GW Persson 訳者:久山葉子 発行:創元推理文庫 2022.3.11 初版 価格:各¥1,100  この作家を読み始めたきっかけは『許されざる者』だったが、その作品はヨハンソンという警察長官のシリーズ主人公であり、しかもシリーズ最終作だった。物凄くシリアスで読み応えのある感動作だったのでかなり気になる作家となって記憶に刻まれた。  同じ作家の別シリーズである本書ベックストレーム警部シリーズが今や、次々と翻訳されているので、期待して読んでいるのだが、このシリーズは、実はユーモア・ミステリー。誰が見てもアンチヒーローな助平ジジイイなベックストレーム警...
  • 探偵の鑑定 II
    探偵の鑑定 II 題名:探偵の鑑定 II 著者:松岡圭祐 発行:講談社文庫 2016.4.15 初版 価格:\680-  松岡圭祐の作品を読みやめてしまったのは、確か千里眼シリーズの途中。  最初は『催眠』から始まって人間の心理を読んだり操ったりすることの面白さに重心があったはずが、国際レベルの陰謀ものといった題材の巨大化と活劇がメインになってしまったことと、いくら何でも風呂敷を大きく広げすぎだろうという、やり過ぎ感が鼻に着くようになったから。  その後、『水鏡推理』の水鏡瑞希シリーズが、専門職でもなく事務職という立場にありながら、裏を暴く勘の良さで、なんだか初心に戻ったのかなとの思いがして、ここのところTVドラマでブームにもなった『探偵の探偵』にも興味を覚える。  本書は、そんな個人単位での物語に帰って行った松岡ワールドが、それぞれ...
  • 容赦なき牙
    容赦なき牙 題名:容赦なき牙 原題:Stranger_in_Paradise (2007) 作者:ロバート・B・パーカー Robert B. Parker 訳者:山本 博 発行:早川書房 2008.09.15 初版 価格:\1,900  最近パーカーが書いているウエスタン小説との最短距離にいるシリーズは、ジェッシイ・ストーンの本シリーズだろう。スペンサー・シリーズとの相似点を常に感じながら、やはり、事件に対する捜査官としてよりも、ガンマンとしての空気を身に纏っているのがジェッシイという名のパラダイス署警察署長であるのだ。寡黙性、マッチョそうしたものが伺わせる気配のようなものも含めて、すべて。  そんなジェッシイですら、カウンセリングを受けているのだから、根本的に情け容赦のないウエスタンとはやはり根本的に時代が違う、ということか。悩みの大部分が、離婚し...
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