wiki クライムウェイヴ(Sysop読書録 活字をめぐる冒険) 内検索 / 「ミステリガール」で検索した結果

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  • ミステリガール
    ミステリガール 題名:ミステリガール 原題:Mystery Girl (2013) 作者:デイヴィッド・ゴードン David Gordon 訳者:青木千鶴 発行:ハヤカワ・ミステリ 2013.6.15 初版 価格:\1,900  『二流小説家』はちなみに面白かったのか? とあなたはぼくに問われるかもしれない。でもぼくはあなたにきっと答えることができない。あるいはぼくはこう答えるかもしれない。ミステリとしてはどうかと思う。謎解き部分はあるけれどもそう秀逸な流れでページを繰る手が止まらないというスピード感覚があるわけでは全くない。むしろ忍耐を強いられると思うので、よほど本の好きな人、活字中毒者たちに対してしかぼくは正直なところ薦めたくないんだ。  『ミステリガール』はどうだったのか? とあなたはぼくに問われるかもしれない。ぼくはきっとこう答えるしかな...
  • ガール・ミーツ・ガール
    ガール・ミーツ・ガール 題名:ガール・ミーツ・ガール 作者:誉田哲也 発行:光文社 2009.04.25 初版 価格:\1,400  『武士道シックスティーン』とそれに続く『武士道セヴンティーン』で少女小説作家、というイメージしかきっと知らない読者をいっぱい獲得したのではないか、とぼくは密かに心配しているのだが、その心配を立証するように、ついに古い少女ミステリ小説であった『疾風ガール』の続編が、より少女小説的体裁を纏って、しかも内容までミステリのミの字すら見当たらないほどに、すっかり少女小説となって登場してしまった。  もともと最初はホラー作家であったところが、すっかりミステリ作家として定着しつつあったところ、なんにしてもまるで女流作家ででもあるが如く、ほとんどの小説が女性を主人公に据えた親しみやすい作風である。どのヒロインも魅力的で、なおかつ複数ヒ...
  • 用心棒
    ...懲りもなく、第二作『ミステリガール』も読んでしまったが、これまた苦行と言うべき読書体験であった。果てしもなく長く、くどく、脱線を繰り返す作品を、よく途中で投げ出さなかったと自分を褒めたいくらいだった。だから、6年ぶりくらいにこの忘れていた作家が戻ってきた、と知った時も、見て見ぬようにしていたのが正直なところである。  そして半年が経過して、ぼくはなぜかこの本を買っている。タイトルが『用心棒』と珍しいこと、そして300ページ程度の作品で、最近のポケミスにしては薄くて軽いということ、更に、どうやらデイヴィッド・ゴードンは悔い改めて出直したらしいぞ、ということ。我流で押し通すことをやめて、エンターテインメントに徹することにしたらしい、作風が全く変わった、新デイヴィッド・ゴードンだ、などの風評が聞こえてきたからだ。  かくして、本作の主人公ジョー・ブロディとのご対面となる。作...
  • アメリカミステリ傑作選2001
    アメリカミステリ傑作選 2001 アメリカミステリ傑作選 2001 (アメリカ文芸年間傑作選) 題名:アメリカミステリ傑作選 2001 原題:The Best American Mystery Stories 1999 (1999) 編者:オットー・ペンズラー&エド・マクベイン編 Otto Penzler 訳者:加藤郷子、他 発行:DHC 2001.06.27 初版 価格:\2,800  『ケラー最後の逃げ場』ローレンス・ブロック・田口俊樹訳/『父親の重荷』トマス・H・クック・鴻巣友季子訳/『まずいときにまずい場所に』ジェフリー・ディーヴァー・大倉貴子訳/『ルーファスを撃て』ヴィクター・ギシュラー・加藤淑子訳/『ジェイルハウス・ローヤー』フィリップ・マーゴリン・加賀山卓朗訳/他 全18作収録  アンソロジーなんて滅多に読まない。好きな作家のシリーズ短編...
  • マーダー・ミステリ・ブッククラブ
    マーダー・ミステリ・ブッククラブ 題名:マーダー・ミステリ・ブッククラブ 原題:The Murder Mystery Book Club (2014) 著者:C・A・ラーマー C.A.Larmer 訳者:高橋恭美子 発行:創元推理文庫 2022.8.10 初版 2022.10.7 2刷 価格:¥1,040  2022/12/17。読書会を舞台にしたミステリー作品をテーマにした読書会にぼくは参加していた。立体構造や無限ループのように思えてしまう現実と小説の間。こんな体験も悪くない。ましてや翻訳を担当した高橋恭美子さんは、そもそもわが翻訳ミステリー札幌読書会のレギュラーメンバーだ。なので本書の訳者あとがきでも、われらが札幌読書会のことをちらっと宣伝してくれている。読書会と作品との立体構造。下層と現実との交錯。やはり珍しいよね。  ちなみに札幌読書会には、...
  • ベスト・アメリカン・ミステリ ハーレム・ノクターン
    ベスト・アメリカン・ミステリ ハーレム・ノクターン ベスト・アメリカン・ミステリ ハーレム・ノクターン (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) 題名:ベスト・アメリカン・ミステリ ハーレム・ノクターン 原題:The Best American Mystery Stories 2002(2002) 編者:ジェイムス・エルロイ&オットー・ペンズラー編 James Ellroy, Otto Penzler 訳者:木村二郎、古沢嘉通、他 発行:ハヤカワ・ミステリ 2005.3.15 初版 価格:\1,900  アメリカの短編小説が翻訳される機会は非常に少ないと思う。もしかしたらアメリカ人は短編小説なんて書かないんじゃないか、と錯覚を起こしそうになってしまう。  ぼくがアメリカの短編小説をとても面白いと感じたのは、近年ではローレンス・ブロックの『おかしなことを聞くね』...
  • ベスト・アメリカン・ミステリ スネーク・アイズ
    ベスト・アメリカン・ミステリ スネーク・アイズ ベスト・アメリカン・ミステリスネーク・アイズ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) 題名 ベスト・アメリカン・ミステリ スネーク・アイズ 原題:The Best American Mystery Stories 2004(2004) 作者:ネルソン・デミル&オットー・ペンズラー編 Nelson DeMille, Otto Penzler 訳者:田村義進、他 発行:ハヤカワ・ミステリ 2005.12.15 初版 価格:\1,900  アンソロジーのバイブルみたいな名シリーズである。ハヤカワが二年遅れくらいのテンポで翻訳出版を続けてくれるので、短編ファンにとっては有難い。  50本の短編に絞る役割をペンズラーが行い、その内から20本を選び出す責任ある作業を、ゲスト作家に任せる。ゲスト作家の方は、最後の篩い分けという...
  • 疾風ガール
    疾風ガール 疾風ガール 題名:疾風ガール 作者:誉田哲也 発行:新潮舎 2005.9.30 初版 価格:\1,400  『下妻物語』は現代の日本の少女をとことん戦うキャラクターに変えて痛快無比だったけれど、ここに今度は小説というかたちで、少女ヒロインがまた一人誕生した。現代日本のメディアに露出される少女たちの馬鹿さ加減を毎日見せつけられていればこそ、こうしたタフガイならぬタフガールの登場が、おじさんたちの救いになっているのかもしれないけれど。  夏美はインディーズ界をメジャーめがけて駆け上りつつあるロックバンド、ペルソナ・パラノイアの天才的ギタリスト。彼女の一人称と、芸能マネージャー祐司の三人称を交互に綴りながら、物語はエネルギッシュに進行する。  この作家『アクセス』でホラーサスペンス大賞で特別賞を受賞している。その作品については、欠点も見られるも...
  • ベスト・アメリカン・ミステリ ジュークボックス・キング
    ベスト・アメリカン・ミステリ ジュークボックス・キング ベスト・アメリカン・ミステリ ジュークボックス・キング (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) 題名:ベスト・アメリカン・ミステリ ジュークボックス・キング 原題:The Best American Mystery Stories 2003(2003) 編者:マイクル・コナリー&オットー・ペンズラー編 Michael Connelly, Otto Penzler 訳者:古沢嘉通、他 発行:ハヤカワ・ミステリ 2005.4.15 初版 価格:\1.800  同じアンソロジーの名シリーズをハヤカワが立て続けに出した。確かにDHCの出版は2001年で止まっていた。でも今になっていきなり二冊というのは、不思議だ。ぼくの4月は、結局この二冊を読むのに大半を費やすことになった。それだけじっくり読める二冊だったわけだ。 ...
  • ベスト・アメリカン・ミステリ アイデンティティ・クラブ
    ベスト・アメリカン・ミステリ アイデンティティ・クラブ 題名 ベスト・アメリカン・ミステリ アイデンティティ・クラブ 原題:The Best American Mystery Stories 2005(2005) 作者:ジョイス・キャロル・オーツ&オットー・ペンズラー編 Joyce Carol Oates, Otto Penzler 訳者:横山啓明、他 発行:ハヤカワ・ミステリ 2006.12.15 初版 価格:\1,900  毎年、年鑑のように発行される、その都市のアメリカ短篇小説ベスト20選である。書店主、書評家、編集人、アンソロジストなど各種の顔を持つオットー・ペンズラーが、時の作家と組んで選び抜いた自信溢れる20作。アンソロジストというのは日本ではあまり耳にしない職業かもしれないが、多くを読み、テーマ別にアンソロジーを編む人のことだから、見えない部...
  • ガール・クレイジー
    ガール・クレイジー 題名:ガール・クレイジー 原題:Like a Hole in the Head (1998) 作者:Jen Banbury 訳者:小西未来 発行:河出書房新社 2000.7.21 初版 価格:\1,800  正直言って女性主人公の小説を読んで共感をたっぷりと覚えたという経験、あるいはその女性に感情移入をたっぷりとしたという経験は、ぼくにはあまりない。女性主人公にぐっとくるということはそれ以上に機会がない。そういうぼくでさえも、完全にまいってしまった女。それがこの物語のヒロイン、ジルだったのだ。  何しろジルは落ちこぼれである。何よりも自分をそうだと固く決めつけている。古本屋のパートタイム店員というささやかな職業のこの頃が、彼女にとってはやっと見つけた精一杯の幸せな生活であったのだ。孤独だけれど面白い本を沢山読める幸せがあったのだ。一...
  • ガン・ストリート・ガール
    ガン・ストリート・ガール 名:ガン・ストリート・ガール 原題:Gun Street Girl (2015) 著者:エイドリアン・マッキンティ Adian McKinty 訳者:武藤陽生 発行:ハヤカワ文庫HM 2020.10.25 初版 価格:¥1,300  今年初に出版された『ザ・チェーン 連鎖誘拐』には驚いた。この素晴らしい現代のハードボイルドのショーン・ダフィ・シリーズ三作を味わった後では、まるで異なる作家によって書かれたとしか思えないさサービス満点のハリウッド映画みたいなスーパー・エンターテインメントに度肝を抜かれた形だったのだ。それもそのはず、作品が売れず生活に困窮し、作家という仕事を放り出してウーパーの運転手に身を落とそうとしていたマッキンティが、新たに売れ、そして稼げるための創作に鞍替えして、完全イメチェンを図った上の作品が、当該作品であったのだ...
  • ザリガニの鳴くところ
    ザリガニの鳴くところ 題名:ザリガニの鳴くところ 原題:Where The Crawdads Sing (2018) 作者:ディーリア・オーエンス Delia Owens 訳者:友廣純 発行:早川書房 2020.03.15 初版 2020.04.25 4版 価格:¥1,900  野生の少年、オオカミ少年、ジャングルブック、といったイメージはこの本には全くわかなかった。野生の中で独りで生きる少女の物語でありながら。  人間世界と隣り合わせに生きることで、文明世界から差別と偏見で見られるといった、社会的側面を持つからだ。また彼女に文字や言葉を教える文明世界側の少年が、彼女を世界と繋げる絆となる点においても。  優しさと残酷さを併せ持つ、野生と文明の分岐点。明確な直線ではなく、水面で交じり合う絵の具のように刻々と色合いを変えてゆく。それがこの小説で...
  • ミスティック・リバー
    ミスティック・リバー 題名:ミスティック・リバー 原題:Mystic River (2001) 作者:デニス・ルヘイン Dennis Lehane 訳者:加賀山卓朗 発行:ハヤカワ文庫HM 2003.12.31 初刷 2004.2.15 4刷 価格:\980  ゴールデングローブ賞の主演・助演男優賞受賞はショーン・ペンとティム・ロビンス、どちらもかつてヤング・アダルトという名で呼ばれた若き獅子たちの世代である。この世代は、主役と脇役が、作品に応じ、年齢に応じて多様に入れ代わり、独特の癖のある演技が光るという人たちが多いように思う。T・クルーズやM・シーンの息子たちも有名であったが、T・ハットン、K・サザーランドといった性格俳優系も印象的だった。  そんな中で、とりわけショーン・ペンは、悪党、チンピラ、裏切り者といった負の役柄を演じるたびに凄味を発揮...
  • ディープサウス・ブルース
    ディープサウス・ブルース 題名:ディープサウス・ブルース 原題:Dark End Of The Street (2002) 作者:エース・アトキンス Ace Atkins 訳者:小林宏明 発行:小学館文庫 2004.04.01 初版 価格:\695  いわゆるミュージック・ミステリとでも言おうか。同じ南部の音楽ミステリシリーズとしてはカントリー・ミュージックに材を取ったリック・リオーダン『ホンキートンク・ガール』(カントリー・ミュージック)が記憶に新しいが、こちらのほうは、よりディープに南部音楽へのこだわりを見せ、ストーリーの核に黒人音楽が息づいていることを感じさせる。  何しろ主役はミシシッピの大学で南部音楽史の教鞭を取る元プロフットボーラー。このニック・トラヴァースのシリーズは第一作『クロスロード・ブルース』(1998年、角川文庫)が邦訳されて...
  • デイヴィッド・ゴードン David Gordon
    デイヴィッド・ゴードン David Gordon ジョー・ブロディ・シリーズ 用心棒 2018 青木千鶴訳 続・用心棒 2019 青木千鶴訳 長編小説 二流小説家 2010 青木千鶴訳 ミステリー・ガール 2013 青木千鶴訳 短編集 雪山の白い虎 2014 青木千鶴訳
  • 稲妻
    稲妻 稲妻 (ハヤカワ・ミステリ文庫―87分署シリーズ) 稲妻 (ハヤカワ ポケット ミステリ) 題名:稲妻 原題:Lightning (1984) 著者:エド・マクベイン Ed McBain 訳者:井上一夫 発行:ハヤカワ・ミステリ 1986.02.28 初版  女性への暴行傷害と殺人が、街を一息にモノクロに染めてしまう。季節は『カリプソ』と似た時期だが、あの年の秋ほど雨ばかり降っているわけではない。でもやはり秋雨前線がアイソラの上空を通過するという点で似たような頃の空模様なのだ、きっと。前作でも登場した囮捜査官アイリーン・バークが最も過酷な雨の一日を迎える。  殺しは非常に風変わりなかたちで刑事たちの眼を射る。街頭にロープで吊るされた、いくつもの女の死体。それぞれの犯行の描写がきわめつけで、虎視眈眈と獲物を狙うようすは読者に嫌悪をもよわせるし、...
  • パリ警視庁迷宮捜査班 魅惑の南仏殺人ツアー
    パリ警視庁迷宮捜査班 魅惑の南仏殺人ツアー 題名:パリ警視庁迷宮捜査班 魅惑の南仏殺人ツアー 原題:Rester groupés (2016) 著者:ソフィー・エナフ Sophie Hénaff 訳者:山本知子・山田文 発行:ハヤカワ・ミステリ 2020.10.10 初版 価格:¥1,800  昨年の第一作『パリ警視庁迷宮捜査班』には度肝を抜かれた。個性豊かな困りもの警察官たちがひとところに集められ、世間の眼から隠されるというパリ警視庁の目論見と、それに反して活躍し団結してしまうへんてこなメンバーたちという構図が、ある種典型的でありながら、やはり嬉しいシリーズの登場作であった。  本作は期待のシリーズ第二作。本書では前作登場のメンバー9人に加え、2人のメンバーが順次加わってゆく。さらに前作登場の犬に加えネズミ君も登場して、しっかりコミカル面を演出して...
  • 死が二人を
    死が二人を 死が二人を (ハヤカワ・ミステリ文庫 13-10) 題名:死が二人を 原題: Til Death (1959) 著者:エド・マクベイン Ed McBain 訳者:加島祥造 発行:ハヤカワ文庫HM 1977.4.15 1刷 『死が二人を分かつまであなたは夫を愛し続けますか?』教会での婚姻の席上、神父がこんなことを言うシーンに多くの映画や小説のなかで出くわすものである。ぼく自身結婚式は教会で行なったのだが、確か『死が二人を』というセリフは神父の口からは出なかったように思う。リハーサルを行なってのことだから記憶は確かだ。ともかくこの小説は『死が二人を』。原題は" Til Death" 。  物語はキャレラの妹の結婚の日。新婚の二人を快く思わない連中がいて、嫌がらせをしたり命を狙ってきたりする。そこで彼らの保護に当たるのが、キ...
  • ワニの町へ来たスパイ
    ワニの町へ来たスパイ ASINが有効ではありません。 題名:ワニの町へ来たスパイ 原題:Louidiana Longshot (2012) 著者:ジャナ・デリオン Jana Deleon 訳者:島村浩子 発行:創元推理文庫 2017.12.15 初版 価格:¥940  CIAの女スパイの一人称で描かれた少しブラックなユーモアで綴られたミステリー。明るく、タフで、ディープ・サウスのワニの町に展開するテンポの良い冒険譚が何とも味わい深いシリーズ開幕作である。  ヒロインのフォーチュンは、CIA腕利きスパイとしての職務中、中東の砂漠で、ついある大物を殺してしまったことから、敵組織のボスから手配状を出されてしまう。直ちに帰国を命じられたフォーチュンは上司の計らいでルイジアナの湿地帯にある小さな集落のようなところに身をひそめることになる。  亡くなった老女...
  • ありふれた祈り
    ありふれた祈り 題名:ありふれた祈り 原題:Ordinary Grace (2013) 作者:ウィリアム・ケント・クルーガー William Kent Krueger 訳者:宇佐川晶子 発行:ハヤカワ・ミステリ 2014.12.15 初版 価格:\1,800  アメリカには少年の冒険小説がよく似合う。トム・ソーヤーやハックルベリー・フィンに始まった少年が冒険する物語は、少年向けの小説であったとして、スティーブン・キングの『スタンド・バイ・ミー』やロバート・マッキャモンの『少年時代』などなぜかホラー作家の正統派少年小説として、かつて少年であった大人たちに読まれ、評価された名作として知られている。  時を経て、リーガル・サスペンスの巨匠、兼売れっ子作家であるジョン・グリシャムですら、『ペインテッド・ハウス』というジャンル外の傑作をものにしている...
  • 緑衣の女
    緑衣の女 題名:緑衣の女 原題:Grafarþögn (2001) 作者:アーナルデュル・インドリダソン Arnaldur Indriðason 訳者:柳沢由美子 発行:東京創元社 2013.07.12 初版 価格:\1,800  北欧ミステリを読むにつれ、どんどんその魅力にはまりつつあるのが最近の私的読書傾向。独自の気候風土が持つ異郷としての魅力に加え、警察小説として修逸である作品がこれほど多いのには驚かされる。世界的に翻訳され、海外小説にはいつも分の悪い日本であれ、最近はどんどん翻訳が進められ(数少ない北欧言語の翻訳家は大変だろうと思う)、我々の手に触れるようになったことは喜ばしい限りである。  日本の書店を賑わして最近とみに注目されるようになっているのが、北欧五ヶ国で最も優秀なミステリに贈られるという『ガラスの鍵』賞ではないだろうか。本書のアーナ...
  • アンソロジー
    アンソロジー オットー・ペンズラーのベスト・アメリカン・ミステリ アメリカミステリ傑作選 2000 スー・グラフトン編 アメリカミステリ傑作選 2001 エド・マクベイン編 アメリカミステリ傑作選 2002 ドナルド E.ウェストレイク編 アメリカミステリ傑作選 2003 ローレンス・ブロック編 ベスト・アメリカン・ミステリ  ハーレム・ノクターン ジェイムズ・エルロイ編 2002  ベスト・アメリカン・ミステリ ジュークボックス・キング 2003 マイクル・コナリー編 ベスト・アメリカン・ミステリ スネーク・アイズ 2004 ネルソン・デミル編 ベスト・アメリカン・ミステリ アイデンティティ・クラブ 2005 J・C・オーツ編 ベスト・アメリカン・ミステリ クラック・コカイン・ダイエット 2006 スコット・トゥロー編 『ジャーロ』傑作短編アンソロジー 『ジャーロ』傑作短編アンソロ...
  • 悪徳の都
    悪徳の都 悪徳の都〈上〉 (扶桑社ミステリー) 悪徳の都〈下〉 (扶桑社ミステリー) 題名:悪徳の都 上/下 原題:Hot Springs (2000) 作者:Stephen Hunter 訳者:公手成幸 発行:扶桑社ミステリ- 2001.2.28 初版 価格:各\781  『悪徳の都』……ううむなんたるタイトル……これじゃまるでパゾリーニやフェリーニの映画ではないか。原題が固有名詞なんだから、そのまま『ホット・スプリングス』でいいじゃないか、というのが最初の感想。とっても不思議な邦題だ。  ホット・スプリングスは実在の街である。そこで実際に起こった元軍人たちの蜂起という事件も、歴史的に記録された事実なのだそうである。スワガー・サーガそのものもアメリカの現代戦史に深く関わるものだとは思うけれども、この作品ほどに実名固有名詞が飛び交う作品というのは、今...
  • 時の娘
    時の娘 題名:時の娘 原題:The Daughter Of Time (1951) 著者:ジョセフィン・テイ Josepine Tey 訳者:小泉喜美子訳 発行:ハヤカワHM 1977.6.30 初版 2018.11.15 30刷 価格:\800  歴史ミステリーは、読んだ覚えがない。安部公房の『榎本武揚』は、世に知られた榎本を裏切者として見たものだったから、あれは歴史ミステリーなのかもしれない。でも他には覚えがない。ぼくには。  戦後の出版。生まれる前の本。ハヤカワ文庫の初版が出たのが、42年前か。ぼくはその頃はドストエフスキーか山岳書ばかり読んでいた頃。ミステリには何の関心も持っていなかった。ハードボイルドにも。冒険小説にも。  本書は、犯人追跡中にマンホールに落ちて怪我をした警部が、入院中の退屈さを凌ぐために歴史資料をひっくり返して、...
  • ミスコン女王が殺された
    ミスコン女王が殺された 題名:ミスコン女王が殺された 原題:Lethal Bayou Beauty (2013) 著者:ジャナ・デリオン Jana Deleon 訳者:島村浩子 発行:創元推理文庫 2018.9.21 初版 価格:¥1,000  アメリカ南部ルイジアナ州。バイユーにワニの生息する人口300のシアフルという小さな町。こんな静かで平和なはずである町に、CIAでへまをやらかした女スパイ、フォーチュンが身を潜めてからいきなり事件が連続するようになった。わけありのおばあちゃん二人アイダ・ベルとガーティとのトリオでの活躍シリーズ第二弾。  先日の翻訳ミステリー札幌支部のZOOMによるリモート読書会では、このシリーズ翻訳は三作目までなされたけれど、この後の続巻は売れ行き次第とのこと。たいていの翻訳シリーズ物は三作までの版権を得て、その売れ行き次第で...
  • 泥棒は選べない
    泥棒は選べない 泥棒は選べない (ハヤカワ・ミステリ文庫) 泥棒は選べない (ハヤカワ・ミステリ 1348) 泥棒は選べない (1980年) (世界ミステリシリーズ) 題名:泥棒は選べない 原題:Burglars Can t Be Choosers (1977) 作者:ローレンス・ブロック Lawrence Block 訳者:田口俊樹 発行:ハヤカワ・ミステリ 1980.04.15 初版 1988.10.31 3版価格:\780  まずは、私がこのシリーズに関しては、すっかり遅れてきた読者であるということから告白しなければなるまい。一方でマット・スカダーのシリーズや短編集、他のノンシリーズ長編など、この作家の作品は大好きで次から次へと手にとってきた一方で、なぜこのシリーズに食指が伸びなかったのか、我ながら不思議でならない。  スカダーものが陰であれ...
  • 分身
    分身 題名:分身 作者:東野圭吾 発行:集英社文庫 2012.02.07 80刷 集英社 1993.09 初版 価格:\695  WOWOWのドラマでは長沢まさみが二役で主演している。これを全部見終わらないうちに原作の方も楽しんでおこうと思い、いまさらながら1993年の作品を手に取った。  なるほど作者特有の理系ミステリ。医学ミステリと言ってもいいかもしれない。  ドラマとは若干設定が異なるものの、自分とそっくりのドッペルゲンガーの存在という不気味さを題材に、人間ドラマの部分を厚く切り取って見せる手法は、さすがである。ミステリというよりも、ヒューマン・サイエンス・スリラーとでも言った方がいいかもしれない。  ドラマでもそうだが函館や札幌といったぼくにとって、とても懐かしい場所が舞台となる。ドラマでは不必要にテレビ塔や大通公園が背景に...
  • 汚れた街のシンデレラ
    汚れた街のシンデレラ 汚れた街のシンデレラ (ハヤカワ・ミステリ文庫) 題名:汚れた街のシンデレラ 原題:Manhattan Is My Beat (1989) 作者:Jeffery Wilds Deaver 訳者:飛田野裕子 発行:ハヤカワ文庫HM 1994.8.31 初版 価格:¥620  いわゆるサイコ・シリーズともジョン・ぺラムのハードボイルド路線のシリーズとも若干趣きを異にしたニューヨークのパンク娘ルーンを主役にしたシリーズ第1作(残り2作は未訳)。  パンク娘といえば、ジェン・バンブリー『ガール・クレイジー』という、『このミス』でぼく以外は誰も推さなかったというポップ・ハードボイルドが思い起こされ、本書もどことなく似た雰囲気でスタートする。どちらもただの店員。あちらは本屋だったが、こちらはレンタルビデオ・ショップ。こんなポップ・ミステリをディ...
  • 消えた子供 トールオークスの秘密
    消えた子供 トールオークスの秘密 題名:消えた子供 トールオークスの秘密 原題:Tall Oaks (2016) 著者:クリス・ウィタカー Chris Whitaker 訳者:峯村利哉 発行:集英社文庫 2018.10.25 初版 価格:¥1,100  「これは凄い。おそらく今年、一押しの作品である」  ぼくが書いた『われら闇より天を見る』レビューの一行目である。「このミス」で2位作品に倍近い差をつけて、圧倒と言える年間第一位の座を獲得したのがクリス・ウィタカーであった。  この度、この作家の4年前に出版されていた翻訳作品『消えた子供』を開いてみて、クリス・ウィタカーの並々ならぬ物語力、人物造形力にふたたび圧倒される経験を味わった。この作家はやはり4年前の時点で既に凄絶である。昨秋の『このミステリーがすごい!』には、作者自らが寄稿している。その...
  • 死者の国
    死者の国 題名:死者の国 原題:La Terre Des Morts (2018) 著者:ジャン=クリストフ・グランジェ JJean-Christophe Grangé 訳者:高野優監訳・伊禮規与美訳 発行:ハヤカワ・ミステリ 2019.6.15 初版 価格:¥3,000  ポケミスの愛称で知られるハヤカワ・ポケット・ミステリだが、年々ポケットという名が似つかわしくない厚手の本が増えている。もともとポケミスは、海外のペーパーバックを真似た洒落たオトナのデザインを身に纏っている。ペーパーバックは、海外ではハードカバーよりは下に見られていて、安い原稿料でノワールやアクションを書いて糊口を凌いでいた三文作家のことはペーパーバック・ライターと呼ばれて一段下に置かれていた時代があったと言う。ところがペーパーバックから多くのエンターテインメントの巨匠や天才が生まれ育つに...
  • 生か死か
    生か死か 題名:生か死か 原題:Life Or Death (2014) 作者:マイケル・ロボサム Michael Robotham 訳者:越前敏弥 発行:ハヤカワ・ミステリ 2016.9.15 初版 価格:\2,000-  ニュージーランドの作家ベン・サンダースが地元ニュージーランドのシリーズから離れ、アメリカを舞台にした作品『アメリカン・ブラッド』でブレイクしたと同様に、オーストラリア生まれの作家マイケル・ロボサムは、永く住んだイギリスを舞台にしたシリーズから離れ、アメリカを舞台にしたこの作品で何ともはや、ゴールド・ダガー賞(英国推理作家協会賞)を勝ち得てしまった。  二冊の外国人によるアメリカの小説を立て続けに読んでしまったために、ぼくの中で混乱が起きているのは、どちらも三人の目線を主として書かれた小説であり、その一人は女性刑事、どちらも正悪...
  • 警部ヴィスティング カタリーナ・コード
    警部ヴィスティング カタリーナ・コード 題名:警部ヴィスティング カタリーナ・コード 原題:Katharina-Koden (2017) 著者:ヨルン・リーエル・ホルスト Jorn Lier Horst 訳者:中谷友妃子訳 発行:小学館文庫 2020.2.11 初版 価格:¥1,000  人間に寄り添った小説、と巻末解説でミステリ評論家杉江松恋が書いている。ミステリ―国籍では珍しいノルウェイ。人口2万3千の地方都市ラルヴィクは著者の住む町でもある。ヒーローは初老の警部ヴィスティング警部。ジャーナリストの娘リーナは、組織的に対立に近い立場でありながら、作品の一方のヒロインでもある。  この地方都市にやって来たのは、出世頭であり冷血ぎみの手段を択ばぬ実績主義者の捜査官スティレル。鑑識技術の進歩により、27年前の未解決失踪事件の新たな証拠が出たという。ヴィ...
  • 僕が死んだあの森
    僕が死んだあの森 題名:僕が死んだあの森 原題:Trois Jours Et Une Vie (2016) 著者:ピエール・ルメートル Pierre Lemaitre 訳者:橘明美 発行:文藝春秋 2021.5.25 初版 価格:¥1,900  原題は『三日間、そして一つの人生』という意味である。このスリリングで圧倒的な物語を読み終わった時点で、敢えて意訳すると『三日間が決めてしまった人生』あるいは『あの三日間から逃げられないでいる人生』『人生のすべてはあの三日間だった』などなど。  少年の物語は夢多くあれ、と思うのだが、本書は少年の物語でありながら作者がピエール・ルメートルだから、スリリングでミステリアスで皮肉に満ちた物語にしかなり得ないだろう。そんな想像力で、淡々と書き綴られるこの少年の物語を読んでゆくと、まさにスリリングでミステリアスで皮肉に満...
  • 最後の巡礼者
    最後の巡礼者 題名:最後の巡礼者 上/下 原題:Den SIste Pilegrimen (2013) 著者:ガード・スヴェン Gard Sveen 訳者:田口俊樹 発行:竹書房文庫 2020.10.8 初版 価格:各¥1,200  ノルウェイのミステリーといえばジョー・ネスポとサムエル・ビョルクくらいしか読んでいない気がするが、本書は「ガラスの鍵賞」他、北欧ミステリーで三冠を挙げた警察小説であるらしい。それも本邦初訳となる作家。それにしてもぐいぐい読める本とは、こういう作品のことを言うのだろう。  2003年の猟奇的殺人事件を捜査するオスロ警察のトミー・バークマン刑事。1945年戦後に起こるミステリアスな殺人。1939年に始まるイギリス籍ノルウェー人女性アグネス・ガーナーによるスパイ活動の物語。これらが、場面と時代を変えて語られてゆく。最初は...
  • 完全なる首長竜の日
    完全なる首長竜の日 題名:完全なる首長竜の日 作者:乾 緑郎 発行:宝島社文庫 2013.05.03 8刷 2012.01.27 初刷 2011.01初版 価格:\562  2009年に『このミステリーがすごい!』大賞を受賞したと聞いて、え? と思った。先にこの本を読んでいる妻に、確認する。----この本って、ミステリなのか? ----ミステリ? えーと何をもってミステリって言うの? ----えーと犯罪の有無かな。すくなくともアメリカのミステリを毎年選んでいる超有名なアンソロジストであるオットー・ペンズラーはそう言っている。  正確にはこうだ。「犯罪か犯罪の脅威がテーマかプロットの核をなす作品」。その唯一の条件さえクリアしていれば、どんなに広義の解釈であろうと構わない。仮に時代物だってSFだっていいんだろうな、多分。それなのに、妻はこう答えた。--...
  • 最も危険な場所
    最も危険な場所 最も危険な場所〈上〉 (扶桑社ミステリー) 最も危険な場所〈下〉 (扶桑社ミステリー) 題名:最も危険な場所 上/下 原題:Pale Horse Coming (2001) 作者:Stephen Hunter 訳者:公手茂幸 発行:扶桑社ミステリー 2002.5.30 初版 価格:各\848  もうすっかり死闘小説のゴールド・スタンダード作家となったハンターのアール・スワガー4部作の第2作目。ハンターというペンネーム(本名ではないだろう)も、あまりにもボブ・リー&アールたちにヒットしすぎる。初作である『クルドの暗殺者』の頃から、こんな物語がこの作家にあったろうかと考え込んでしまう。   しかし『真夜中のデッドリミット』以降、正直泣かず飛ばずで新作などもう和訳などされないのだろうと見限っていた作家が、『ダーティホワイトボーイズ』から...
  • アイル・ビー・ゴーン
    アイル・ビー・ゴーン 題名:アイル・ビー・ゴーン 原題:In The Morning I ll Be Gone (2014) 著者:エイドリアン・マッキンティ Adrian McKinty 訳者:武藤陽生訳 発行:ハヤカワ文庫HM 2019.3.25 初版 価格:¥1,180  ショーン・ダフィのシリーズ第三作。難事件を解決する腕は誰もが認めるものの、独断専行の行動によってお偉いさんたちの覚えが悪く、仕事も資格も取り上げられ、自らを追い込まれることが多い主人公。IRAによって荒廃した1980年代前半の北アイルランドの不穏な情勢を背景に、サバイバリストのように自分の規範で行動する故に、警察ミステリと言うよりもノワールの面が強く感じさせられる点はとても魅力である。  本書では、お偉いさんから組織を放り出されたショーンが、前作では名無しで謎の女性として登場...
  • カッコウの呼び声
    カッコウの呼び声 題名:カッコウの呼び声 私立探偵コーモラン・ストライク 上/下 原題:The Cuckoo s Calling(2013) 作者:ロバート・ガルブレイス Robert Galbraith 訳者:池田真紀子 発行:講談社 2014.6.26 初版 価格:\2,014  読者モニターに応募した作品がプルーフ本でやってきた。上下合本の分厚くて腕の鍛錬になりそうな弁当箱サイズの一冊だった。しっかりした完成本ではないので、登場人物の一覧がない。一気に読めればいいのだけれど、ぶつ切りで読むしかない生活スタイルのぼくには、これが一番困った。何とも多くの登場人物が出てくるし、名前がイギリス式で難しい。  これがアメリカで、また作者が故ロバート・B・パーカーだったなら、登場人物もスペンサーとかホークとか、とても簡単な名前だし、そもそも登場人物が片...
  • ナイチンゲールの沈黙
    ナイチンゲールの沈黙 題名:ナイチンゲールの沈黙 上/下 作者:海堂 尊 発行:宝島社文庫 2008.09.19 初刷 2006.10初版 価格:各\476  海堂尊の作品は、どの作品も同じ世界の出来事として、キャラクターと時代を共有している。さらにその中で、度々主張される作家的見解(医師的見解)も執拗に表現されるため、医師がペンを取った理由はかなり明確なものとして世界に伝えられていると思う。小説のみならず、エッセイその他のノンフィクションにおいても、メディアにおいても作家(=医師)は、同じ主張を繰り返す。  放射線科教授・島津が解剖に代わる法医学の手法として死後MRIを選択する方向を示すのは『螺鈿迷宮』で主体的に取り上げられるテーマだが、これも作家的(医師的)モチーフの重要な一つである。本書ではMRIを通して看護師・小夜の美しい歌声を聴いた子供が...
  • 白銀ジャック
    白銀ジャック 題名:白銀ジャック 作者:東野圭吾 発行:光文社 2010.10.15 初版 2010.10.25 3刷 価格:\648  東野圭吾『白銀ジャック』読了。文庫で新刊だそうな。実業之日本社文庫の創刊に伴う目玉作品なのだろう。80万部を突破する勢いだというので、わざわざハードカバーでワンステップ置かなくても、こういう売れっ子作家の本に関しては、作者にとっても読者にとっても、どんどん文庫新刊の動きが出てくれると財布の紐的には嬉しい。でも本の装丁、堅い表紙を書棚に並べたい、といういわゆる蔵書マニアにとっては文庫は安っぽくって駄目、っていう意見もあるのだろうな。  ともかく、珍しいことに、今、すっかり冬の娯楽としては廃れた感のあるスキーを使ったミステリーである。全編これスキー場が舞台。そう言えば、今年の初めにもこの作者は『カッコウの卵は誰のもの...
  • すべて灰色の猫
    すべて灰色の猫 すべて灰色の猫〈上〉 (扶桑社ミステリー) すべて灰色の猫〈下〉 (扶桑社ミステリー) 題名 すべて灰色の猫 (上/下) 原題 All the grey cats (1988) 著者 Craig Thomas 訳者 山本光伸 発行 扶桑社ミステリー 1991.6.27 初版 価格 各\560(\544) 世に「つなぎの作品」と言われる本書だから、よほどひどいのかと思ったらシリーズをずっと通して読んでいるぼくには、特につまらない本ではない。むしろ、こいつはシリーズとして読むためには絶対通過しておかなければならない物語であるではないか。『闇の奥へ』の続編であるが、これはバビントンやカプースティンという前作での敵たちの巻き返しのストーリーであり、また『ウインターホーク』のプリャービンの後日談でもある。要するにキャストはみんなつながっているの...
  • 七つの墓碑
    七つの墓碑 題名:七つの墓碑 原題:La Setima Lapide (2018) 作者:イゴール・デ・アミーチス Igor De Amicis 訳者:清水由貴子 発行:ハヤカワ文庫NV 2020.02.25 初版 価格:¥1,180  ミステリとは新人としても小学校教師である婦人との共著で何作もジュニア向け小説を出し、そこそこの評価を受けている現役の刑務部主任警察官という経歴は、気にならないではいられない。本書は、刑務所で始まり、凄惨な犯罪現場に舞台を移す。連続殺人事件の予告とも見える七つの生きている人間の墓碑。マフィアの抗争とも見られる墓碑銘のメンバーたち。  その中の一人が長い獄中生活にピリオドを打つ直前に火ぶたを切ったこの連続殺人事件。出獄者であるミケーレが語る現在と暗い過去の交錯。もう一方では連続殺人事件に臨むベテラン刑事だが孤独な中年男で...
  • 蛇の形
    蛇の形 題名:蛇の形 原題:The Shape of Snekes (2000) 作者:ミネット・ウォルターズ Minette Walters 訳者:成川裕子 発行:創元推理文庫 2004.07.30 初版 価格:\1,200  すべて当たり、これまで全く外れ無しの作家だからこそ、英国で<ミステリーの新女王>と呼ばれているらしい事実もわからないではない。でも<ミステリーの女王>がアガサ・クリスティだとすれば、彼女とミネット・ウォルターズの違いは気が遠くなるほどに果てしないものだと言える。  英国で生まれたトリック主体のミステリーに対し、人間ドラマ主体のハードボイルドはとんでもなく地味な存在であり、あまりにも人間の成熟度を問い過ぎるジャンルであるとも言えた。小学生でも楽しむことのできるトリックと、大人の哀歓とを同列のミステリーという単一ジャンルで括る...
  • 満願
    満願 題名:満願 作者:米澤穂信 発行:新潮社 2014.12.10 17版 2014.03.20 初版 価格:\1,600  今、最も話題となっているのがこの本ではないだろうか。『このミス』『週刊文春』ともに2014年の第一位に選ばれた傑作短編小説集。TVでも結構取り上げられており、「王様のブランチ」「ZIP!」などでも取り上げられ、凄い一冊とのメディアでの露出度ピカイチ、というくらいに取り上げられている。  それらマスメディアが、実はあまりにも地味である読書(しかもミステリという狭小な分野だ)という個人趣味の対象である一冊の本に集中することは、そう多くないと思う。村上春樹関連は別として。もちろんマスメディアは本の売れ行きを加速させるので作者にとって決して悪いことはないと思うが、逆にあまりに褒められると、そのこと自体は相当のハンディをぶら下げてしまう...
  • ブラック・ライト
    ブラックライト ブラックライト〈上〉 (扶桑社ミステリー) ブラックライト〈下〉 (扶桑社ミステリー) 題名:ブラックライト 上/下 原題:Black Light (1996) 作者:Stephen Hunter 訳者:公手成幸 発行:扶桑社ミステリー 1998.5.30 初版 価格:各\667  前作『ダーティホワイトボーイズ』は本シリーズの言わば「外伝」だった。前作を引き継ぐ形でその係累たちがこの物語を走り出させる。アーカンソーの荒野に時間軸を前後させながら。  骨太のドラマ、現代の西部劇、男対男の一騎討ち。それが『ダーティホワイトボーイズ』だったけれど、これは全く違った物語。よりスケールアップさせた、本来のシリーズ主人公であるスナイパーの死闘を描く巨大アクション劇である。  今どき、これほど銃弾が唸る小説というのは、エルロイくらいなもの...
  • その女アレックス
    その女アレックス 題名:その女アレックス 原題:Alex (2011) 作者:ピエール・ルメートル Pierre Letmaire 訳者:橘明美訳 発行:文春文庫 2014.09.10 初版 2014.10.20 3刷 価格:\860  パリ発のミステリを新作で読めるなんて一体何年ぶりだろうか。ジャン・ボートラン『グルーム』とか、セバンスチャン・ジャプリゾの『長い日曜日』以来だろうか。  近年北欧ミステリが欧米のそれを凌駕するくらい大量に翻訳されるようになり、ヨーロッパの娯楽小説が見直されてきているが、そういう潮流に、本来の文芸王国であり、フィルム・ノワール、ロマン・ノワールのお膝元であるフランスがこういう作品をきっかけに日本の書店にも並んでくれると有難い。一昨年、フランスを旅行したときに、あちこちの店で目に付いたのがダグラス・ケネディだったことを思...
  • 野外上映会の殺人
    野外上映会の殺人 題名:野外上映会の殺人 原題:Death Under The Stars (2021) 著者:C・A・ラーマー C.A.Larmer 訳者:高橋恭美子 発行:創元推理文庫 2023.10.20 初版 価格:¥1,360  野外上映会という言葉からは幼児の頃の記憶が沢山蘇る。ぼくは小学生の途中から開発の進みつつある埼玉の団地で暮らしていて、その団地の中には公園があった。かなり広大なイメージがあるがそれは子供の眼を通してであったから、今そこにゆくとえっと思うほど狭く感じられるだろう。そもそも昭和30年代の建物群がそのまま残っているかどうか。  そんな団地住まいでとても楽しいイベントの一つがこの野外上映会だった。無料で映画を一本楽しめる夜のイベントである。見た記憶があるのは、『大竜巻』という時代映画だが、正式名称は今調べると『士魂魔道 大...
  • 悪党パーカー/殺人遊園地
    悪党パーカー/殺人遊園地 殺人遊園地―悪党パーカー (ハヤカワ・ミステリ 1275) 殺人遊園地―悪党パーカー (1977年) (世界ミステリシリーズ) 題名:悪党パーカー/殺人遊園地 原題:Slayground (1970) 著者:リチャード・スターク Richard Stark 訳者:石田善彦 発行:ハヤカワ・ミステリ 1999.10.31 4刷 1977.1.15 初版 価格:\1,000  ハヤカワ・ミステリ復刊フェア参加作品、十作中に選ばれた唯一の<悪党パーカー・シリーズ>。一冊でも多く読みたい絶版追っかけ読者としては嬉しい一作。  この物語は、のっけから現金輸送車の強奪シーンに始まり、パーカーは奪った金を持って単身、雪の遊園地に逃げ込む。警察は彼を追うことができなかったが、何とパーカーは所轄警官と取り引きをしているマフィアに目撃され...
  • パリ警視庁迷宮捜査班
    パリ警視庁迷宮捜査班 題名:パリ警視庁迷宮捜査班 原題:Poulets grillés (2015) 著者:ソフィー・エナフ Sophie Hénaff 訳者:山本知子・川口明百美訳 発行:ハヤカワ・ミステリ 2019.05.15 初版 価格:¥1,800  まさに手作りの警察チームがパリに誕生する。セーヌ川中州シテ島の司法警察局ではなく、古びたアパルトマンの最上階に。ヒロインは、発砲事件で進退を危ぶまれた挙句、半年間の停職処分と離婚の後、警察署の掃き溜めの任命されたリーダーのアンヌ・カペスタン。パリ警察の問題児ばかりをここに集めて世界から隠したい。それがパリ警察の狙い。カペスタンは明確にそう言われる。取り組むのは迷宮入り事件のみだ、とも。未解決事件の段ボール箱が積まれた古く黴臭い部屋。  対象警官は40名だが、ほとんどの者は停職中だから、勝手に...
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