wiki クライムウェイヴ(Sysop読書録 活字をめぐる冒険) 内検索 / 「殺しの接吻」で検索した結果

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  • 殺しの接吻
    殺しの接吻 題名:殺しの接吻 原題:No Way To Treat A Lady (1964) 作者:ウィリアム・ゴールドマン William Goldman 訳者:酒井武志 発行:ハヤカワ・ミステリ 2004.06.15 初版 価格:\1,000  【ポケミス名画座】とは未翻訳の映画原作に対する翻訳希望ランキングであるから、ここでランキング入りした作品は、映画作品そのものもそこそこ素晴らしいという想定は容易にできるのだけど、映画はさておいてこいつの原作を読みたいと言う欲求があっても不思議ではないだろう。本作品はサイコ系スリラー映画として売り出したそうだが、原作の方の展開はというと、そもそものゴールドマンが書きたいと思った作品モチーフのところから違っているらしい。  本書はちょうどマクベインの87分署シリーズスタート後8年と、ペーパーバックにおける警...
  • ウィリアム・ゴールドマン William GoldmanGaulden
    ...進訳 長編小説 殺しの接吻 1964 酒井武志訳 華麗なるヒコーキ野郎 1976 河原畑寧訳 マジック 1979 沢川進訳 ティンセル 1986 沢川進訳
  • 殺しのVTR
    殺しのVTR 殺しのVTR (扶桑社ミステリー) 殺しのVTR (サンケイ文庫―海外ノベルス・シリーズ) 題名:殺しのVTR 原題:HEAT FROM ANOTHER SUN 作者:DAVID L.LINDSEY 訳者:入江良平 発行:扶桑社ミステリー 1991年4月25日 第一刷 価格:\700(本体\680)  『噛みついた女』(COLD MIND)に続くヒューストン警察スチュアート・ヘイドン刑事シリーズの第2作。内容が非常にこってりとして食べごたえがあり、警察小説でありながら、どこか私立探偵に近い動きを見せるヘイドン刑事と、背景になるエル・サルバドルへのCIAの敷設した潜入ルートや銃撃のクライマックスは国際謀略小説のスケールに迫っている。ただの警察小説ではない。高品質なヘビードリンクを飲んだ後の眩暈すら覚えるほどの、これは優れ本である。  『悪...
  • 殺しのリスト
    殺しのリスト 題名:殺しのリスト 原題:Hit List (2000) 作者:Lawrence Block 訳者:田口俊樹 発行:二見文庫 2002.6.25 初版 価格:\952  ブロックは長編と短篇の書き方がまるで違う。新潮文庫から短編集が三作出されたときに、短篇作家ブロックとしての味わいを発見しぼくは彼の稀有なもう一つの才能に喝采を送ったものだ。シリアスな長編作家とばかり思っていたブロックは一方で非常に軽妙で悪戯好きな短篇の名手でもあったのだから。  その短篇を連作の形で積み重ねた本が同じ二見文庫から出た『殺し屋』であった。とっても普通の人であるケラーがたまたま職業的に殺し屋であるばかりに、普通ではない旅程を辿る、いわゆる奇妙な味わいの連作である。殺し屋の非情さをどこか懐深くに隠し持っていながら、その短篇ゆえの軽妙な文体と、ケラーの日常性...
  • 殺しの挽歌
    殺しの挽歌 題名:殺しの挽歌 原題:Le Petit Bleu De La Cote Ouest (1976) 作者:ジャン=パトリック・マンシェット Jean-Patrick Manchette 訳者:平岡 敦 発行:学習研究社 1997.01.30 初版 価格:\2,000  『殺戮の天使』に比べればずっと人間界寄りの作品であると思う。マンシェットと言う大陸横断鉄道に乗ったら、まずはこのあたりの駅で途中下車してから、極北を目指した方がよろしいのかもしれない。暴力の具体性は、『殺戮……』よりも遥かに強烈だが、ある意味、現代の死闘小説に慣れ親しんだ方々には、免疫性のある部分と言えるかもしれない。だからと言って、半端なものではなく、実に容赦のない暴力への傾斜を感じさせる、過激極まりない作品ではあるけれども。  政治の対立を背景にはしているが、この作品も...
  • 殺しの報酬
    殺しの報酬 [429] Client error `POST https //webservices.amazon.co.jp/paapi5/getitems` resulted in a `429 Too Many Requests` response { __type com.amazon.paapi5#TooManyRequestsException , Errors [{ Code TooManyRequests , Message The request was de (truncated...) 題名:殺しの報酬 原題:Killer s Payoff (1958) 著者:エド・マクベイン Ed McBain 訳者:井上一夫 発行:ハヤカワ文庫HM 1976.12.15 1刷  心浮き浮きさせてひさびさに<87分署>シリーズを手...
  • 男殺しのロニー
    男殺しのロニー 題名:男殺しのロニー 原題:Man Eater (2003) 作者:レイ・シャノン Ray Shannon 訳者:鈴木 恵 発行:ヴィレッジブックス 2005.9.20 初版 価格:\850  LAを舞台に、わけありの男や女が複雑に絡み合い、サバイバルを繰り広げる展開は、まさにエルモア・レナードを髣髴とさせる作品である。レナードに少し湿り気を与えて、よりバイオレンスを強調した世界と言ってもいいかもしれない。  女性映画プロデューサーのロニーは、とあるバーで、凶暴な殺し屋ニオン叩きのめしてしまった。一方で、仮釈放中のエリスは、メキシコ人ギャングのアヤラ兄弟に立ち向かい、二人を病院送りにしてしまう。復讐と殺意に燃える二組の悪漢と、わけありの過去を持て余す女と男。  さらに多くの人間たちを巻き込んで、LAに血の嵐が吹き荒れる。...
  • 殺しのパレード
    殺しのパレード 題名:殺しのパレード 原題:Hit Parade (2006) 作者:Lawrence Block 訳者:田口俊樹 発行:二見文庫 2007.12.25 初版 価格:\829  高校時代か大学時代のどこかで、アメリカの小説を読み漁ったことがある。ユダヤ人や黒人の作家ばかりで、WASPの作家はどこにも見つからなかった。70年代のことだからわからないでもない。思えば、70年代のWASPには執筆の動機がなかったのかもしれない。  中でも『ニューヨーカー短編集』を読んだことがある。今、紐解いてみると、バーナード・マラムッド、ソール・べロウ、ジョン・アップダイク、フィリップ・ロスなんて面々が並んでいて、ミステリーでもなんでもない。サリンジャーなんてとても好きだったが、ミステリアスではあってもミステリーではなかったと思う。シーモア・グラー...
  • 殺しの許可証 アンタッチャブル2
    殺しの許可証 アンタッチャブル2 題名:殺しの許可証 アンタッチャブル2 著者:馳星周 発行:毎日新聞出版 2019.11.30 初版 価格:¥1,800  馳星周も円熟期を迎えてか、奥田英朗や海堂尊のようなコメディ・ミステリも書くようになってきた。しかも内容とエンターテインメント性をたっぷりと備えて。本書は最近の馳星周の代表格ともなってきそうなアンタッチャブル・シリーズの第二作。  作家になって間もなくの頃、章立てまで含めたプロットを念入りに作ってからでないととても小説を書けないと、当人から耳にして驚いたことがある。一見、ちゃらんぽらんな兄ちゃんにしか見えないこの人が(失礼)、実は準備に時間をかけてから一気に書く、という人だったのである。思えば、彼はヴァクスやエルロイなどのノワールが好きで、中でもヴァクスの作品主人公無免許探偵バークを、「あいつはへ...
  • 殺し屋ケラーの帰郷
    殺し屋ケラーの帰郷 題名:殺し屋ケラーの帰郷 原題:Hit Me (2013) 作者:ローレンス・ブロック Lawrence Block 訳者:田口俊樹   発行:二見文庫 2014.11.20 初版 価格:\952  前作『殺し屋 最後の仕事』を読んだ途端に、ああ、これほどブラックでスラップスティックな殺し屋という特異な職業のシリーズを、ここまで上手に綺麗に纏めて完結させてゆくストーリー・テリングが世の中にはきちんと存在するんだ、さすがブロックは巧いな、と感心しきりであった。おそらく前作を脱稿したときのブロックは「書き切った」印象は少なからず持ったのではないだろうか。  でもブロックは凡百の作家では決してない。本作では、あそこまで綺麗に物語を収めておきながら、さらに「もっと書ける」匠の技を見せてくれるのである。前作のぎりぎり感、ノンストップ感などは...
  • 眠りなき狙撃者
    眠りなき狙撃者 題名:眠りなき狙撃者 原題:La Position Du Tireur Couche (1981) 作者:ジャン=パトリック・マンシェット Jean-Patrick Manchette 訳者:中条省平 発行:学習研究社 1997.03.31 初版 価格:\2,000  引退を決意した殺し屋というのは、いかにもありきたりの題材だ。冒険小説の世界では特に。しかし、本書は冒険小説として読み解くには少々危険過ぎるきらいのある、マンシェットの作品だ。いかに多くの読者を引き込む活劇と死闘のシーンに満ち溢れていようとも、殺し屋も脇役の一人一人も、そうでない堅気の日常を営む男や女も、誰もが少しだけ狂っている。狂気が物語をあらぬ方向に紡いでゆく。それがマンシェット的暗さ、だと言える。  引退を決意した殺し屋とは言え、三十を過ぎたばかりだ。のっけから殺しの...
  • ローレンス・ブロック
    ローレンス・ブロック Lawrence Block マット・スカダー・シリーズ 過去からの弔鐘 1976 田口俊樹 冬を怖れた女 1976 田口俊樹 一ドル銀貨の遺言 1977 田口俊樹 暗闇にひと突き 1981 田口俊樹 八百万の死にざま 1982 田口俊樹 聖なる酒場の挽歌 1986 田口俊樹 慈悲深い死 1989 田口俊樹 墓場への切符 1990 田口俊樹 倒錯の舞踏 1991 田口俊樹 獣たちの墓 1992 田口俊樹 死者との誓い 1993 田口俊樹 死者の長い列 1994 田口俊樹 処刑宣告 1996 田口俊樹 皆殺し 1998 田口俊樹 死への祈り 2001 田口俊樹 すべては死にゆく 2006 田口俊樹 償いの報酬 2011 田口俊樹 石を放つとき 2018 田口俊樹 泥棒バーニー・シリーズ 泥棒は選べない 1977 田口俊樹 泥棒はクロゼットの中 1978...
  • レイ・シャノン
    レイ・シャノン Ray Shannon 長編小説 男殺しのロニー 2003 鈴木 恵訳
  • 真夜中の予言者
    真夜中の予言者 題名:真夜中の予言者 原題:Random Walk (1989) 作者:Lawrence Block 訳者:田口俊樹 発行:二見書房 1998.2.25 初版 価格:\2,100  ブロックの小説ならたいていのものはたいていの人にお勧めなんだけど、これはあまりお勧めとは言えない。マット・スカダーものがいいので、と言って手に取るとまずその傾向の違いというギャップにがっくり来ると思う。  まずはハードボイルドとは縁遠い。それどころか、SFファンタジィの世界といっていいかもしれない。帯に「大人の童話」とある。あるいは「寓話」なのかもしれない。とにかくそういう風にあり得ない話であり、奇跡の話だ。宗教がかっているようにも見えるし、説教じみた会話に彩られてもいる。  ブロックがとっても力を抜いてリラックスして書いた、どちらかといえば軽めの作品だと...
  • 殺し屋
    殺し屋 殺し屋 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション) 題名:殺し屋 原題:Hitman (1998) 作者:Lawrence Block 訳者:田口俊樹 発行:二見文庫 1998.10.25 初版 価格:\790  「イージー・リスニング」という言葉があるように「イージー・リーディング」という言葉が、読書という趣味のなかにあるとしたらどうだろう。連想するのは村上春樹のエッセイや短編小説、矢作俊彦や浅田次郎の同じく短編小説、中島らもや浅田次郎のエッセイ集。そして海外ではそれはローレンス・ブロックの短編集にとどめを刺すだろう。どれをとっても、いずれ実力がなければ書けないジャンルなのだろう。  殺し屋ケラーの連作短編小説集。スタートの短編『名前はソルジャー』はハヤカワ文庫のブロック短編集『夜明けの光の中に』収録されている。  殺し屋ケラーは、まる...
  • ジャン・パトリック・マンシェット
    ジャン=パトリック・マンシェット Jean-Patrick Manchette 長編小説 狼が来た、城へ逃げろ 1972 愚者(あほ)が出てくる、城塞(おしろ)が見える 『狼が来た、城へ逃げろ』新訳 1972 地下組織ナーダ 1972 危険なささやき 1976 殺しの挽歌 1976 殺戮の天使 1979 眠りなき狙撃者 1981

  • 斧 題名:斧 原題:Ax (1997) 作者:Donald E. Westlake 訳者:木村二郎 発行:文春文庫[パルプノワール2001] 2001.03.10 初版 価格:\667  失業者としての安定感のない経済事情の下、家族との変わらぬ日常を送ってゆくことのなかには、ある種のとてもデリケートな事柄が存在する。ぼくは現在失業中であり、家族とともに日常を暮らしており、それらのうちに生じる心の問題を次々とクリアにしてゆかねばならず、また、日々そうしたことへの圧力を感じつつも、多くの問題に対処して生きているわけだ。  本作品の主人公はまさに、同じような状況を既に2年も送っている。既に失業手当の給付期間を過ぎ、生活の資金が底を尽きつつある。より切羽詰まった状況に置かれ、心のバランスを欠こうとしている。しかし、ただひたすらに仕事を求めてゆく。家族の心の...
  • ダイアルAを回せ
    ダイアルAを回せ 題名:ダイアルAを回せ 原題:Dial an Alibi (1958-1983) 作者:ジャック・リッチー Jack Ritchie 訳者:駒月雅子、他 発行:河出書房新社 2007.09.30 初版 価格:\2,000  ジャック・リッチーも三冊目の短編集となる。どれも日本オリジナルの作品集だが、向うでは雑誌中心に活躍してきた上に、短篇しか書かない作家であるため(長編は死後に一作発表しているが)、ハードカバーとしても2冊くらいしか残されていないようだ。今、日本で毎年一冊ずつ短編集が編まれ、それらがそこそこの読者に受け入れられているなんていうことは、墓の下に眠る作者自身も全く想像していなかったことに違いない。  本書でもすっかり馴染みになった、おふざけキャラであるドラキュラ探偵カーデュラのシリーズが3本、勝手な想像力でずれてゆく...
  • 雨の影
    雨の影 題名:雨の影 原題:Hard Rain (2003) 作者:バリー・アイスラー Barry Eisler 訳者:池田真紀子 発行:ヴィレッジブックス 2004.01.20 初版 価格:\800  前作『雨の牙』に続く日米ハーフの殺し屋ジョン・レインのシリーズ第二作。前作に引き続き東京を舞台にして、CIAや政治の黒幕に追われながら、新たな陰謀の火種に巻き込まれるサバイバル戦を繰り広げる。大沢在昌あたりが書いてくれると、もっときりっとしてくれると思うのだが、そこがハードボイルド作家とアイスラーの違い。アイスラーの作品は、ハードボイルドは対極にあるほどにウェットで書かれているのだ。叙情に流される一人称文体というのが、どうもナルシスティックで、嵌まり切れない部分である。  根が真面目な作者なのだろう。三年しか日本に駐在していなかった人にしては、あ...
  • デイヴィッド・リンジー
    デイヴィッド・リンジー David Lindsey スチュアート・ヘイドン・シリーズ 噛みついた女 -ヒューストン連続殺人 1983 高見浩訳 殺しのVTR 1984 入江良平訳 拷問と暗殺 ヒューストン連続殺人 1986 菊池 光訳 届けられた6枚の写真 1988 山本光伸訳 狂気の果て 1990 山本光伸訳 ノン・シリーズ長編 悪魔が目をとじるまで 1990 山本光伸訳 黒幕は闇に沈む 1994 山本光伸訳 ガラスの暗殺者 1996 山本光伸訳 夜の色 1999 鳥見真生訳 刻まれる女 2001 山本光伸訳 沈黙のルール 鳥見真生訳2003 暗殺者の顔 2004 石田善彦訳
  • 皆殺し
    皆殺し 題名:皆殺し 原題:Everybody Dies (1998) 作者:Lawrence Block 訳者:田口俊樹 発行:二見書房 1999.10.25 初版 価格:\1,900  何とも猥雑さを感じさせる非常に直裁なタイトルである。けれども、思えばスカダーのシリーズは「死」に関連したものが多かった。「弔鐘」「死にざま」「挽歌」「死」「墓場」「処刑」「死者」「墓」……こういう単語がタイトルを連ねていて、そのほとんどが原題に忠実、あるいは少しだけひねったものである。かほどにブロックはスカダーのシリーズに死の長い影を落しまくってきたのだ。  あと一杯の酒を呑めば死ぬと言われたところからアル中人生との戦いを続けているマット・スカダーは、言わば死の隣人である。だから死についての洞察、会話、その他は今までの作品でも決して少なからず取り上げられてき...
  • 警官殺し
    警官殺し 警官殺し (角川文庫 赤 520-9) 警官殺し (1983年) (角川文庫) 警官殺し (海外ベストセラー・シリーズ 84) 題名:警官殺し 原題:Cop Killer (1974) 著者:マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー Maj Sjowall and Per wahloo 訳者:高見浩 発行:角川文庫 1983.3.25 初版 1993.11.10 3刷 価格:\720(本体\699)  前作『密室』では、事件を小説の素材として生かし切れていなかったように思うし、小説背景がストーリーの前面に出てきてしまって、それがもはや背景とは言い難いほどで、ぼくはとてもアンバランスな作品だと感じたのだけど、本作『警官殺し』ではその轍を踏まずに、事件そのものをあくまで刑事たちに追跡させ、もう一方で「警官殺し」事件を添えるという具体的な方法が取ら...
  • 老いた殺し屋の祈り
    老いた殺し屋の祈り 題名:老いた殺し屋の祈り 原題:Come Un Padre (2019) 著者:マルコ・マルターニ Marco Martani 訳者:飯田亮介 発行:ハーパーBOOKS 2021.02.20 初版 価格:¥1,300  どこかかつて観た記憶のある映画のシーンが、深い水の底から浮き上がってくるような感覚。それが本作のいくつかのページで感じられたものである。語り口や物語の進め方が上手いのは、この作家が初の小説デビューにも関わらず、映画の脚本家としてならした経歴の持ち主だからだろう。  作家が自分の物語として作り上げた「老いた殺し屋」オルソのキャラクター作りだけで既に小説を成功に導いているように思えるが、やはり彼の旅程を彩る派手なバイオレンス、また、彼が救い出す母子との交情の陰と陽のようなものが、この作品に、とても奥行きを与えているよう...
  • 拷問と暗殺
    拷問と暗殺 ヒューストン連続殺人 拷問と暗殺―ヒューストン連続殺人 (新潮文庫) 題名:拷問と暗殺 --ヒューストン連続殺人-- 原題:SPIRAL (1986) 作者:DAVID L. LINDSEY 訳者:菊池 光 発行:新潮文庫 1993.6.25 初版 価格:\720(本体\699)  緻密で厚みのある描写で評価を得ている警察小説の書き手リンジーのひさびさの邦訳。恵まれた環境下ながら心には矛盾いっぱい、陰影いっぱいという生真面目な刑事ステュアート・ヘイドンのシリーズ第三作を読み終えた。  もともとは、ヘイドン・シリーズ外の唯一の作『悪魔が目をとじるまで』でこの作家を知った。『羊たちの沈黙』の影響で邦訳が急がされた思われるサイコ・サスペンスものであり、次に初訳『噛みついた女』を読んでも、やはりこの作家はサイコ・スリラーの書き手であるのだと思っていた...
  • リアルワールド
    リアルワールド 題名:リアルワールド 作者:桐野夏生 発行:集英社 2003.02.28 初版 価格:\1,400  この作家に関してぼくはあまり熱心な読者とは言えないのだが、エンターテインメントの能力はけっこう抜きんでているのに、作家としてのスタンスをけっこうふらふらさせてしまうことで損をしているのではないかという印象がどうも強い。  『柔らかな頬』はぼくの好きな作品であるが、その落とし前のつけかたに関しては、どう考えてもエンターテインメントというジャンルに背を向けたように見えたものだった。『光源』ではもうはなからエンターテインメントから距離を置いたところで書き始め、そのまま静かに進みゆく美しい人生小説、という風にぼくには受け取れてしまい落胆させられた。  神保裕一と言い、高村薫と言い、文章表現が美味くなってゆくことで、エンターテインメ...
  • 馳星周
    馳 星周 不夜城シリーズ 不夜城 1996 鎮魂歌(レクイエム) -不夜城II- 1997 長恨歌 -不夜城 完結編- 2004 アンタッチャブル・シリーズ アンタッチャブル 2015.05 殺しの許可証 アンタッチャブル2 2019.11 長編小説 夜光虫 1998 漂流街 1998 虚の王 2000 雪月夜 2000 ダーク・ムーン 2001 マンゴー・レイン 2002 生誕祭 2003 楽園の眠り 2005 トーキョー・バビロン 2006 ブルー・ローズ 2006 弥勒世(みるくゆー) 2008.02 9・11倶楽部 2008.07 煉獄の使徒 2009.05 沈黙の森 2009.10 エウスカディ 2010.09 淡雪記 2011.02 光あれ 2011.08 暗闇で踊れ 2011 帰らずの海 2014.6 復活祭 2014.9 雪炎 2015.1 美ら海、血の海 ...
  • 狼殺し
    狼殺し 題名:狼殺し 原題:Wolfsbane (1978) 作者:クレイグ・トーマス Craig Thpmas 訳者:竹内泰之 発行:河出文庫 1986.2.4 初版 定価:\700(\680)  5年前の文庫を今頃初版で買えるんだから、クレイグ・トーマスって売れていないのかな? しかもこの作品は他の作品の解説などでも代表作として扱われ、わりと絶賛されているわけです。それとも河出文庫自体を置いている書店も少ないかな? こんな心配をしても始まらないんだけど、やはり面白い本は売れて欲しい、というのが読者の正直な気持ちで、つい愚痴ってみたくなったりもする。  さてこの作品クレイグ・トーマスの第三作のため、かなり古い。でもここまでの初期作品ってどれを取っても素晴らしいので、今ぼくはすっかりこの作家が気に入っている。どの作品もストーリー展開や物語の舞台などが...
  • おれは殺し屋
    おれは殺し屋 おれは殺し屋 おれは殺し屋 (光風社文庫) 題名:おれは殺し屋 作者:森詠 発行:光風社出版 1992.3.20 初版 価格:\1,200(本体\1,165)  この本を買って読み終えたのは、単に自分が森詠のファンなもので、森詠の本は新しいものはどんどん買って読むという主義であったからに過ぎない。といって古い本を全部読破しているわけではないから、それほど思い入れのあるファンであるとも言えない。まあ、なんとなくチェックしておきたいジャンルの作家である、くらいかな?  それにしてもこの人は短編が多くて、たまにいい短編集も出すのだけど、ほとんどは雑誌掲載の細切れ作品を体裁よく纏めたものといった、しかもそれでいて値段の高いハードカバーが多い。この本は内容は大したこともないし(そろそろぼくも飽きてきてる)、わざわざハードカバーで出さんでも……と文句を...
  • 見習い警官殺し
    見習い警官殺し 題名:見習い警官殺し 上/下 原題:Linda-Som I Lindamordet (2005) 著者:レイフ・GW・ペーション Leif GW Persson 訳者:久山葉子訳 発行:創元推理文庫 2020.01.24 初版 価格:各¥1,040  ドイツの法律家フェルディナント・フォン・シーラッハは、作家自身の実務経験に基づいた現実的な素材を元にした短編小説が特徴であるが、スウェーデン作家レイフ・GW・ペーションは犯罪学の教授である。そしてシーラッハとは対極的に同じ実務経験で得たものを長編小説に加工して提示している。現実に起きる事件はこんなものであり、それはこうして小説の素材になってしまうんだ、と二人のスタイルの違う経験豊富な作家たちが別の表現でエンターテインメントの地平に提示しているかに見える。  長編小説としての本書は、...
  • 殺し屋 最後の仕事
    殺し屋 最後の仕事 題名:殺し屋 最後の仕事 原題:Hit And Run (2008) 作者:ローレンス・ブロック Lawrence Block 訳者:田口俊樹   発行:二見文庫 2011.10.20 初版 価格:\876  日頃どうも恵まれないとつくづく思い残念に思うのが、海外ミステリの書店ブースにおける取り扱いのあり方である。その中でも二見文庫の扱いなどはひどいものだ。扱っていればまだいい方と言えよう。  いや、もちろんこの作品の存在を季節外れにぼくが発見しなければならなかったことの非をもちろん書店にぶつけようというものではない。冒険小説フォーラムをNifty Serve(パソコン通信)に開設していた頃は、二見書房含め、多くの新刊情報を取り寄せてメンバーの皆様に紹介していたものだが、インターネットの時代が到来してからはそうした情報発信はあまり...
  • 姉妹殺し
    姉妹殺し [429] Client error `POST https //webservices.amazon.co.jp/paapi5/getitems` resulted in a `429 Too Many Requests` response { __type com.amazon.paapi5#TooManyRequestsException , Errors [{ Code TooManyRequests , Message The request was de (truncated...) 題名:姉妹殺し 原題:Sœurs (2018) 著者:ベルナール・ミニエ Bernard Minier 訳者:坂田雪子 発行:ハーパーBOOKS 2022.4.20 初版 価格:¥1,440  セルヴァズ警部、と呼び掛けられると、前作で降...
  • 炎の裁き
    炎の裁き 題名:炎の裁き 原題:The Burning Man (1996) 作者:フィリップ・マーゴリン Phillip Margolin 訳者:田口俊樹 発行:早川書房 1998.6.15 初版 価格 \2,300  相変わらずのジェット・コースター・サスペンス。政敵。不可解な殺害現場。謎多き家族。夫婦の葛藤。主人公である判事の試練。人間味のある刑事二人組。血痕鑑定。  この作家にしてみれば地味めなプロットでありながらこれだけの食材で料理された逸品である。どちらかと言うと本格推理じみたフーダニットである点が気になるけれども、随分とマーゴリンは人間を描くことに重心を置くようになった。  思いも寄らぬサービス満点の展開はそれでもマーゴリンのもの。二転三転する真実の正体はかなり深奥まで足を踏み入れないとあらわになることがない。 ...
  • 花嫁殺し
    花嫁殺し 題名:花嫁殺し 原題:La Novia Gitana (2018) 著者:カルメン・モラ Carmen Mola 訳者:宮崎真紀 発行:ハーパーBOOKS 2021.4.20 初版 価格:¥1,100  ある意味、完璧と言える構成の傑作だ。冒頭から読者を引きつける、あまりにも奇抜な殺人。マドリードの公園で発見された被害者女性は、頭に三つの小さな穴を開けられ、その中に入れられた蛆たちに脳みそを食われていた。ショッキングだし、その異常さにも程がある。  被害者の姉も、実は類似の手口で七年前に殺害されていた。当時の加害者は杜撰にも見える裁判を経て、現在、牢獄に収容されている。連続殺人に見えるこの事件の真実はどこにあるのか? どうして姉妹が殺されねばならなかったのか?  警察署とは別の民間ビルの一角に設けられたスペイン警察特殊分析班(BAC...
  • セメントの女
    セメントの女 題名:セメントの女 原題:The Lady In Cement (1961) 作者:マーヴィン・アルバート Marvin Albert 訳者:横山啓明 発行:ハヤカワ・ミステリ 2004.04.15 初版 価格:\1,000  博打でまきあげたクルーザーに暮らし、ダイビングを楽しむ私立探偵トニー・ローム。舞台はマイアミ、きちんと事務所も用意しているのに、とてもラフな遊び人探偵。そんな陽気な明るい雰囲気のシリーズは、現代でも通用しそうなくらい、テンポのいい軽ハードボイルドの傑作だった。  事務所で大人しくしているタイプではなく、本当にじっとしていられないたちの探偵だということがわかる。負けず嫌いで、へそ曲がりであり、へらず口を叩くよりも手が出ているタイプなのだろう。若いし、体力もあり、よく走り、よく泳ぎ、よく殴られる。満身創痍の体を引きず...
  • 葬儀屋の未亡人
    葬儀屋の未亡人 題名:葬儀屋の未亡人 原題:The Undertaker s Widow (1998) 作者:フィリップ・マーゴリン Phillip Margolin 訳者:加賀山卓朗 発行:早川書房 2000.1.15 初版 価格:\1,900  相変わらずのジェット・コースター・サスペンス。政敵。不可解な殺害現場。謎多き家族。夫婦の葛藤。主人公である判事の試練。人間味のある刑事二人組。血痕鑑定。  この作家にしてみれば地味めなプロットでありながらこれだけの食材で料理された逸品である。どちらかと言うと本格推理じみたフーダニットである点が気になるけれども、随分とマーゴリンは人間を描くことに重心を置くようになった。  思いも寄らぬサービス満点の展開はそれでもマーゴリンのもの。二転三転する真実の正体はかなり深奥まで足を踏み入れないとあらわになる...
  • 熊の皮
    熊の皮 題名:熊の皮 原題:Bearskin (2018) 著者:ジェイムズ・A・マクラフリン James A.McLaughlin 訳者:青木千鶴 発行:ハヤカワ・ミステリー 2019.11.15 初版 価格:¥1,900  圧倒的な自然描写力、とはこういう本のことを言うのだろう。作者はヴァージニア州の山の中で育ち、ヴァージニア大学で法学と美術額を修め、ネイチャー系のライターをしながらこの初の創作に取り組んだそうである。  主人公は作者の想いを乗せたワイルドな主人公。メキシコ国境の砂漠での密売人の過去を振り捨てて偽名でアパラチア山脈で自然保護管理の職につき世捨人同然の孤独な生活を送っている。発端となったのは熊の死骸だった。皮をはがされ、熊胆(くまのい)や熊の手が取り出された残虐な殺戮。甘い蜜の罠に、犬たちの首輪に仕掛けられたGPS。現代の山の中での...
  • 麻薬密売人
    麻薬密売人 麻薬密売人 (ハヤカワ・ミステリ文庫 13-5 87分署シリーズ) 題名:麻薬密売人 原題:The Pusher (1956) 著者:エド・マクベイン Ed McBain 訳者:中田耕治 発行:ハヤカワ文庫HM 1978.9.30 1刷  シリーズ三作目。キャレラの相棒は新任のバート・クリングに。季節は冬。地下室に少年の死体がひとつ。首吊り縄。ヘロイン用の注射器が添えられ……という滑りだし。  これまでの三作は、何とすべて1956年に発行された作品。1956年といえばぼくの生まれた年である。<87分署>シリーズは、ぼくと同じ年にこの世に登場したということになる。それなのに作品は既に、こんなにも独り立ちしていたのかと知ってぼくは思わずため息をついてしまう。ぼくはやっと三十四年目にしてこのシリーズを手に取ったところだというのに。  少...
  • django
    ジャンゴ 作者:花村萬月 発行:角川書店 1995.6.30 初版 価格:\1,400(本体\1,359)  例によって掴み所のないスタートを切る。カバーからすると音楽小説かとも思うが、むしろ延々ポルノ小説的な展開が続く。あっという間に読了してみると、うーん、これは変態小説だったのかあ、との印象。  花村萬月のエッセンスをいつもながらに詰め込んだプロットは、これまでの花村作品の良くも悪くも同音異曲なのだが、性と暴力の描写のボリュームがうんとアップしたってところかな。そろそろ限界だろ、これでは、とこちらが心配になるくらい変態してくれちゃっているわけだ。  と言いながら隠し味と言えるのはタイトルの「ジャンゴ」。作中ではジプシーのギタリスト、ジャンゴになぞらえているのだが、これは二重の意味が込められたタイトルだぞ、と西部劇好きのぼくは気づいてしまったのだ...
  • Mr.クイン
    Mr.クイン 題名:Mr.クイン 原題:Quinn (1999) 作者:Seamus Smyth 訳者:黒原敏行 発行:ハヤカワ・ミステリアス・プレス文庫 2000.8.31 初版 価格:\780  男が肥溜めを見下ろしているように見えるカバー絵。内容も似たようなものだったという印象。  完全犯罪のプロ、クイン。汚れ仕事は他人にやらせ、自分は表に出ることなく犯罪を立案する。こうした存在はミステリーの最後によく登場したりする口だと思うけれども、それをしっかりと悪の側から描いた視点には感服するものがある。  しかし感覚的に読んでいて感じる基本的な嫌悪感があるのはぼくも単なる小市民ということか。どういうところかと言うと、何の罪もない幸せな家庭を狙って綿密な殺しの計画を立ててゆくその冷血さ。アメリカのノワールと違って、イギリス・ミステリーらしく、犯罪...
  • 僕を殺した女
    僕を殺した女 題名:僕を殺した女 作者:北川歩実 発行:新潮ミステリー倶楽部 1995.6.20 初刷 価格:\1,400  小説にはいろいろな面白さと言うのがあるけれど、やっぱり最初から思い切り人の関心を引っ張ってしまうというのは、エンターテインメントの鉄則と言ってもいいのかもしれない。  朝起きると自分が違うなにものかになっている、と言えばカフカの『変身』、もっと遡ればガリバーの時代からの衝撃のスターティングなのだが、最近では北村薫『スキップ』などはその亜流として記憶に新しいところ。もっとも刊行時期はこちらの方が少しだけ古いか。  この小説では主人公の少年が朝起きてみると美女になっている。しかも五年という時間が経過している。謎を詰めてゆくと自分が他にいることがわかる。単純に言えばこういうとんでもない話である。確かに殺人や謀略はその陰にあ...
  • ガラスの暗殺者
    ガラスの暗殺者 題名:ガラスの暗殺者 上/下 原題:Requiem For A Glass Heart (1996) 作者:David L. Lindsey 訳者:山本光伸 発行:新潮文庫 2000.3.1 初版 価格:上\540 / 下\590  リンジーにしては外れ。ぼくの基準のリンジーに比べ、高さが足りないと言うよりは、ベクトルが違うかなといったところ。  少なくともこの作家にゴシックされてしまうと、ちょっとぼくは着いてゆけなくなる。もともと高い文学性を感じさせる作家ではあるけれど、スチュアート・ヘイドンもの以外であっても、あくまで捜査・追跡がやはりこの作家の真骨頂。  スパイもののようなデリケートなストレス下の状況では、この作家の持つ微細さ、神経質さは、正直娯楽小説としてはあまり楽しくない。他の言葉で言い替えるとつまり面白くないの...
  • 被害者の顔
    被害者の顔 被害者の顔 (ハヤカワ・ミステリ文庫 13-6 87分署シリーズ) 題名:被害者の顔 原題:Killer s Choice (1958) 著者:エド・マクベイン Ed McBain 訳者:加島祥造 発行:ハヤカワ文庫HM 1978.9.30 1刷  はっきりいって<87分署>中毒である。  むかし『幻魔大戦』中毒というものにかかったことがあるが、あれは自分にとって非常にあと味の悪い、悔恨多きものであったし、今でも平井和正と聞くと詐欺師の代名詞のようにしか思えないぼくである(ファンの方にはごめんなさい)。そのころに較べると、87分署中毒というのは実に爽快で、醍醐味のある中毒なのである。一作読んでしまった瞬間からもう全部読まずにいられない衝動に駆られてならないのだ。そういう読者をまたシリーズが決して裏切らない。そういう読者と作者の信頼関係とい...
  • 一人だけの軍隊
    一人だけの軍隊 一人だけの軍隊 ランボー (ハヤカワ文庫) 一人だけの軍隊 (1975年) (ハヤカワ・ノヴェルズ) 一人だけの軍隊 (1982年) (ハヤカワ文庫―NV) 題名:一人だけの軍隊 原題:First Blood (1972) 作者:David Morrell 訳者:沢川進 発行:ハヤカワ文庫NV 1986.1.15 12刷 1982.11.30 初刷 価格:\440  この代表作を読んでいないだけにマレル・ファンとは豪語できなかったのだけど、この20年以上も前の作品を読まなかったのは、マレルを知るずっと以前にスタローンの映画『ランボー』でメイン・ストーリーを知っていたからだろう。そして主人公ランボーが映画とは違う結末を迎えることも既に有名だったので、知っていた。これだけネタを明かされてみると原作が映画よりずっと良いと薦められていてもなかなか...
  • サイコセラピスト
    サイコセラピスト 題名:サイコセラピスト 原題:The Silent Patient (2019) 著者:アレックス・マイクリーディーズ Alex Michaelides 訳者:坂本あおい 発行:ハヤカワ・ミステリー 2019.09.15 初版 価格:¥1,900  サイコ・サスペンスであることを文字通りタイトルに掲げてのデビュー作とのこと。原題は『沈黙の患者』。読了後の感覚では、直訳タイトルでもよかった気がする。でも取っつきとしてはこのタイトルでも悪くない。ザ・グローブという名の精神科施設を舞台に展開する、まさに精神科診療そのものの物語であり、それを題材にしたミステリーなのだから。  夫殺しの容疑をかけられた画家アリシアは事件後、頑なに沈黙を続け精神科施設で薬漬けになっている。彼女の沈黙に挑戦するのは、過去、父のDVに悩まされた経験のある心理療法士の...
  • アナザヘヴン
    アナザヘヴン 題名 アナザヘヴン 上/下 作者 飯田譲治/梓河人 発行 角川ホラー文庫 1998.4.25 初刷 価格 各\648  今年はある程度有名な国内ホラーはどんどん読んでしまおうと思う。『リング』で火をつけられてから、そう思い始めた。国内でのホラーブームは、小説でも映画でも、もはや侮れない存在として脹れ上がりつつある。何よりその根底に面白いという確かな手応えがある。  本書はまるで『ハンニバル』のような食人付き連続殺人事件に始まる。その殺しの現場のえぐさに釣られて読んでしまったのだけど、事件の方は人間界を少し離れて荒唐無稽化してゆき、若干ぼくとしてはついて行けなくなりかける。やばいな、という雰囲気。でもそれを繋ぎ止めるものがこの本には十分にある。  事件そのものの面白さ、奇怪さは勿論あって基本的にはこの本の魅力の半分はそこにあるのだ...
  • キラー・オン・ザ・ロード
    キラー・オン・ザ・ロード 題名 キラー・オン・ザ・ロード 原題 Killer On The Road (1986) 著者 ジェイムズ・エルロイ James Ellroy 訳者 小林宏明 発行 扶桑社ミステリー 1998.8.30 初版 価格 \686  エルロイはサイコ・サスペンスの書き手というのではないと思う。よしんばサイコパス、シリアル・キラーが登場したところで、普通に我々が口にする<サイコもの>ではやはりない。殺人者以上に人殺しである警察官、欲や名誉や恥の感覚だけで多くの悪徳に手を染める若き公務員たちを、これでもかと描いてきたエルロイの手にかかると、凡百の連続殺人鬼などは、主人公ら(捜査官側)の抱える暗黒に比べてどうということはなかったのだ。  だから、エルロイがこうしたサイコ・キラーの方を主人公に据えて、物語を押し進めるというの...
  • 疾風ガール
    疾風ガール 疾風ガール 題名:疾風ガール 作者:誉田哲也 発行:新潮舎 2005.9.30 初版 価格:\1,400  『下妻物語』は現代の日本の少女をとことん戦うキャラクターに変えて痛快無比だったけれど、ここに今度は小説というかたちで、少女ヒロインがまた一人誕生した。現代日本のメディアに露出される少女たちの馬鹿さ加減を毎日見せつけられていればこそ、こうしたタフガイならぬタフガールの登場が、おじさんたちの救いになっているのかもしれないけれど。  夏美はインディーズ界をメジャーめがけて駆け上りつつあるロックバンド、ペルソナ・パラノイアの天才的ギタリスト。彼女の一人称と、芸能マネージャー祐司の三人称を交互に綴りながら、物語はエネルギッシュに進行する。  この作家『アクセス』でホラーサスペンス大賞で特別賞を受賞している。その作品については、欠点も見られるも...
  • 硝煙のトランザム
    硝煙のトランザム 題名:硝煙のトランザム 原題:Transam (2001) 作者:ロブ・ライアン Rob Ryan 訳者:鈴木 恵 発行:文春文庫 2003.08.10 初版 価格:\933  前作は『9ミリの挽歌』であり、<文春パルプ・ノワール>のシリーズであったが、本作は、ぐっと冒険小説の方面に傾いた。スティーヴン・ハンターに近い元兵士たちによる、ハンターほどストレートではない物語。ハンターほどヒーローに恵まれない話。元々、ロブ・ライアンという作家は、アンチ・ヒーローに傾斜しているのかもしれない。  のっけから食いつき難いほどに多種多様な物語が併走する。赤ん坊の夜泣きに苦しむ夫婦。少年野球に熱を入れた結果、地獄を見ることになる夫婦。東欧からやってきたらしい謎の隣人。トレーラーパークのシングル・マザー。ソマリアで<ブラックホーク・ダウン>を経験し...
  • 硝子の太陽 N -ノワール
    硝子の太陽 N -ノワール 題名:硝子の太陽 N -ノワール 著者:誉田哲也 発行:中央公論新社 2016.5.15 初版 価格:\1,500-  『ジウ』のシリーズ自体が、現実性に乏しい歌舞伎町封鎖という事態まで風呂敷を広げてしまったものなので、その続編がその影響を受けて軽めになってしまうのも仕方ないと思うが、事実続編として次々と作品を上梓してゆかなければならいのも、作者、あるいは版元の方向性によるものだろう。一旦完結したかに見えた『ジウ』シリーズの続編として『歌舞伎町セブン』が書かれた時点で、何もシリーズに無理やり繋げることはなかったように思うが、『歌舞伎町セブン』が、単発であるかに思えた『ハング』と、シリーズ『ジウ』のそれぞれの生き残りの主要キャラクターがメンバーにいるという点でのみ、『ジウ』でも『セブン』でもない『歌舞伎町』シリーズが継続されることにな...
  • 特捜部Q -キジ殺し-
    特捜部Q -キジ殺し- 題名:特捜部Q -キジ殺し- 原題:Fasandraeberne (2008) 著者:ユッシ・エーズラ・オールスン Jussi Adler-Olsen 訳者:吉田薫・福原美穂子訳 発行:ハヤカワ文庫HM 2013.04.15 初刷 2011.11 初版 価格:\1,040  前作は池上冬樹解説をベタ褒めしたが、本書の解説を見て首を傾げた。恩田陸という作家(ぼくは一冊も読んでいない)が、劇画のように面白い、と褒めているのだが、ぼくは劇画のようにと言われれば、けなされているかのように感じてしまった。今どきの作家は、劇画のように面白かったと言われて嬉しく思うのだろうか?   劇画をどうのこうの言うつもりはないが、荒唐無稽とか、誇張がすぎるとか、展開が派手だとか、活劇アクションが楽しい、という意味で、恩田陸氏はこの表現を使ったのだろうか...
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