wiki クライムウェイヴ(Sysop読書録 活字をめぐる冒険) 内検索 / 「裂けて海峡」で検索した結果

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  • 裂けて海峡
    裂けて海峡 裂けて海峡 (新潮文庫) 裂けて海峡 (講談社文庫) 題名:裂けて海峡 作者:志水辰夫 発行:講談社文庫 価格:\460  まず気付いたのは主人公の「わたし」が『飢えて狼』とはかなり対極的な位置にあるということ。まず中年である。40を過ぎているから前回の『狼』の主人公よりは10歳ほど、年長なのだろう。その上、登山やクルージングの経験もなさそうだ。それどころか他のどのような分野でもこれといったエキスパートではなさそうだ。それでいながら『狼』の「わたし」と違って巻き込まれ型ではなく、謎を執拗に追求して意地になっている部分まである。『狼』の「わたし」は一種のエキスパートであり、巻き込まれることを徹底して嫌っていた。タフで、したたかなものがあって、体力はまだ充実していた。『海峡』の『わたし』は、尾行を巻くこともできなければ、仲間を守ることもできない(これは『...
  • 志水辰夫
    志水辰夫 長編小説 飢えて狼 1981 裂けて海峡 1983 あっちが上海 1984 散る花もあり 1984 尋ねて雪か 1984 背いて故郷 1985 狼でもなく 1986 オンリィ・イエスタデイ 1987 こっちは渤海 1988 深夜ふたたび 1989 帰りなん、いざ 1990 行きずりの街 1990 花ならアザミ 1991 夜の分水嶺 1991 滅びし者へ 1992 冬の巡礼 1994 あした蜻蛉の旅 1996 情事 1997 暗夜 2000 ラスト ドリーム 2004 約束の地 2004 負けくらべ 2023 時代小説 青に候 2007 みのたけの春 2008.11 つばくろ越え 2009 引かれ者でござい 蓬莱屋帳外控 2010.8 夜去り川 2011 待ち伏せ街道 蓬莱屋帳外控 2011 疾れ、新蔵 2016 新蔵唐行き(とうゆき)2019 短編集 カサブランカ物...
  • 散る花もあり
    ...したことであった。『裂けて海峡』がイマイチぼくの中で評価低いのも、老人との会話が逆に古い冗談に満ちていて感性がついて行ってくれないからであった(逆にそれがいいという人も多いんでしょうけど)。むしろ初老の女性(志水作品には付き物と言えますね)の決めつけるような一方的な会話の方が(当然この作品にも出てくる場面だ)女性らしさ・母らしさに満ちていてぼくは納得が行ったりする。概して言えるのは、人物がすべて似通い、類型化された傾向にある点で(例えばほとんどの人がまじめで真摯な会話を好むみたいだ)、この辺は志水辰夫作品の中で最も改良の余地があるのかもしれないと改めて思ったりしたのである。  ところで、ぼくのここまでの散々なすが目にも関わらず、この作品は実はぼくの心をすっかり捉えてしまったのです(^^;) 作品というのは読み終わってナンボだと思う。関口さんも書いているけどこの本には素晴らしい...
  • 冬の巡礼
    ...たのは『飢えて狼』『裂けて海峡』そして『尋ねて雪か』『背いて故郷』と本当につくづく日本冒険小説の金字塔ではないかと未だに思われるような作品群ですっかり虜になってしまったものだ。その頃の志水作品の主人公たちは、『尋ねて雪か』のヤクザ者は除いて、いわゆる巻き込まれ型の一般市民であることがほとんどでありながら、ディック・フランシス系統の、誇りを持った「男」たちだった。  そしてそういう「男」の矜持を描くことが少なくなって来た最近の流れの中で、どうしても志水節を忘れることのできない読者たちは、うめき続けてきたような気がする。そういう意味ではひさびさに巻き込まれ型だが、ある種頑固な、矜持を持った男が現われたのがこの本だと言っていいだろう。  だからストーリーがいかに陳腐であろうが、ミステリー要素が皆無に近かろうが、ぼくはひさびさに志水節に浸ることができたのを今回は素直に喜んでお...
  • ラストラン
    ...部作(『餓えて狼』『裂けて海峡』『背いて故郷』)を成し遂げ、ある意味作家が書き慣れ、次に何を書くかという最も難しい時期、それは熟成期とも言われつつ非常に危うい一時期であるようにも思われるのだが、そうした時期、彼はこの本にある作品たちを集約した短編集にせず、自らお蔵入りとし、これまで封印してきたそうである。  作家は帯でこう言う。 「いまの自分がうしなってしまったもの、若さや情熱、ほとばしる情感や熱気が全編に立ち込めていて、老いの淋しさを逆に確認させられもした」  どの作家にも共通した思いのようなものがあるのかもしれない。あらゆる人間があらゆる自分の仕事に対し思うことであるのかもしれない。その無常観が作品や仕事に深みを与えてゆくと見ることはできるのだが、やはり喪失の感覚というのは、若き頃に予感していて、その予感が青春に影を落とし、ストレートに若さを喜びきれない...
  • あした蜉蝣の旅
    ...つての『飢えて狼』『裂けて海峡』『背いて故郷』の頃の志水節が懐かしくって懐かしくってたまらない、というのは、ぼく一人に限った話ではあるまい。おそらく多くのかつて志水節に酔った読者たちが、こういう読み応えのある志水版冒険小説の再来を待ち望んでいたのではないか。  列挙した三作ほどのパワーは正直言って今の志水辰夫にはないみたいだし、それだけの若さをもった主人公はもう書きにくくなっているのかもしれないが、志水ワールド本来の日本を舞台にして、なおかつ怒れる自然……という本来の国産冒険小説の色彩は、この作品の場合しっかり生きている。そしてなによりものっけから「宝探し」という冒険小説の王道を狙う作者のふんばりが、ぼくには嬉しく、こうなると志水ファンというのは、とことん志水節を味わい、食らいつくしてやろうと覚悟するのだ。  そんなわけでひさびさにじっくりと何日も何日もかけて文章を反...
  • 尋ねて雪か
    ...夫に出会いたい方、『裂けて海峡』が手にはいらない方は、本書が書店に積まれている今、ぜひこれを手に取ってみてください。かなり心のこもった力作です! (1990.02.03)
  • 背いて故郷
    ...のだ。『飢えて狼』『裂けて海峡』『尋ねて雪か』と並んで、本書は確実に読んだ者の心に愛着を残す逸品になると思う。 (1991.01.24)
  • 飢えて狼
    ...雪か』の三作です。『裂けて海峡』『行きずりの街』がなぜ自分の中でイマイチなのかは、自分ではよくわかっているつもりですが、これは過ぎた感情描写がハードボイルドと相反する方向にあるように思えたからです。前にもどこかで言ったかもしれないけれど、饒舌な会話ストーリーを紡いでゆく類の志水作品はあまり好きではないということです。 (1992.08.19) 『植えて狼』の重み  要するに『飢えて狼』はすごい下調べのもとに書かれているという事実が、ぼくにはわかるわけです。志水辰夫の作家的姿勢がまず最初にぼくの中に飛び込んだ。  でももちろんそれだけではない。  『飢えて狼』の第二部はダグラス・ターマンの『シェル・ゲーム』に似ていると思った方はいらっしゃいませんか? とにかく孤島での微細な描写は感動し、ハラハラし、緊張しました。そして後日、何とこの第二部が出版段階で編...
  • 三たびの海峡
    三たびの海峡 三たびの海峡 (新潮文庫) 三たびの海峡 題名:三たびの海峡 作者:帚木蓬生 発行:新潮社 1992.4.15 初版 価格:\1,500(本体\1,456)  『アフリカの蹄』で南アフリカの人種差別事情を描いた作者の新作。病原菌による黒人幼児の大量抹殺という、問答無用の人非人たちが今もなお件の国にはいたりするのだよ、というような本で、なにか社会正義派の小説であったのだが、なにせ遠い国のできごとをルポルタージュ風にしか描いていない感じで、主人公たる日本人医師の問題意識がお仕着せがましく、作品としての魅力そのものに欠けていた。日本人読者に訴えかけるにはなにせ迫力にも欠けたいた。淡々としすぎていた。その作者が、今度は隣国朝鮮の悲劇の一端を書いた。作家として<書かねばならぬ>的モチーフを感じつつ書かれたのであろう同じ社会正義、同じ題材でも、朝鮮半島と日本と...
  • 反撃の海峡
    反撃の海峡 反撃の海峡 (Hayakawa novels) 反撃の海峡 (ハヤカワ文庫NV) 題名:反撃の海峡 原題:COLD HARBOUR (1990) 作者:JACK HIGGINS 訳者:後藤安彦 発行:早川書房 1992.1.15 初版 価格:\1,700(本体1,650)  本の価値、作家の価値は、人によって千差万別だと思うのだが、例えばヒギンズ最近の作品となると、異様に周囲の誰もが口を揃えて「ヒギンズはもう駄目だ」と言っているのである。まあそれに同調してしまえば風当たりも弱くて大変居心地もいいのだが、ぼくはどうもそういう読み手とは、ヒギンズへ向ける視線も、自分の立つ視点も異なるらしいのだ。まあ、違うのは当たり前なのだが、仮にグループ分けをすれば、ぼくは最近のヒギンズ作品をも、敢えて讃えたい側の読み手なのである。  そのせいか本書は、ぼく...
  • 夜来香海峡
    夜来香海峡 題名:夜来香(イエライシャン)海峡 作者:船戸与一 発行:講談社 2009.05.28 初版 価格:\1,800  船戸にしては世紀の凡作といったところの作品。作者名を伏せられて読んでいたら、船戸の文体を模倣した新人かと思えるような愚作ではないか。  東北の寒村にアジアの花嫁を斡旋する仕事についている蔵田雄介が、花嫁の失踪事件を追いかける。おまけに花嫁は、曰くつきの金二億円を持って遁走した。山形から北へ北へと追跡劇が始まり、物語は津軽海峡を渡って夕張に立ち寄り、稚内で終結を迎える。  その間、暴力団、中国黒社会、ロシアン・マフィアと次々に魑魅魍魎が現われて、一方で死体が増えてゆく。大体こういう設定に出現しがちな陰惨な印象のあるナイフ使いが、最後の最後までしつこく血の印象をもたらす。神話の果ての殺し屋は凄かったな、とピーク時の船戸と較べ...
  • 約束の地
    約束の地 約束の地 題名:約束の地 作者:志水辰夫 発行:双葉社 2004.11.25 初版 価格:\1,700  志水辰夫はどこへ行くのか?   『ラストドリーム』では、男の夢の在りかと孤独をじっくりと描いたが、これもまた<あの>志水辰夫ではなかった。本書といえばそれ以上ではないかと思う。エンターテインメント性はこちらのほうが高いとは思うが、一言で言えば国際冒険小説というべきジャンル。志水辰夫が決して書こうとしなかった海外を舞台に多くのドラマを繰り広げる。  描かれるのはバルカンの民族紛争。トルコとユーゴスラビアの国境地帯に火花を散らすあまりにも長い屍の歴史が日本の情報機関にまで及び、主人公はこれに出生当時より巻き込まれ、そしてまるでモンテ・クリスト伯のような復讐を挑んでゆく。  こうしてダイジェストするだけでも、<あの>志水辰夫でも...
  • 夜を賭けて
    夜を賭けて 夜を賭けて (幻冬舎文庫) 夜を賭けて 題名:夜を賭けて 作者:梁石日 発行:幻冬舎文庫 1997.4.25 初刷 価格:\724  凄い本だと思う以上に凄い話だとまず感じた。こんな話が実際に日本のまだ遠からぬ歴史の上にあったのかと、驚くばかりの話であった。実際に大阪を舞台にしたこのアパッチ族対警察隊の攻防、それから『パピヨン』や『ミッドナイト・エキスプレス』を思い起こさせるような大村収容所。この辺のノンフィクショナルな話をあなたはご存じだろうか?   ぼくは全然知らなかった。  だから大変な話であると思って読んでいるのに、作家のほうはさりげなく軽妙なまでに物語を滑り出させてしまう。人を食ったようなこの小説作法こそがいつもの梁石日なのだと言えばそれまでだが、それにしたって書く人が書けばただの告発もので終わってしまう。梁石日にしてみれば...
  • 旧友は春に帰る
    旧友は春に帰る 題名:旧友は春に帰る 作者:東 直己 発行:ハヤカワ・ミステリワールド 2009.11.25 初版 価格:\2,000  東直己『旧友は春に帰る』読了。旧友と言っても相手は女性。それもススキノ時代の一世を風靡した「美麗女(はくいすけ)」。「美女」とか「美人」というより、一癖も二癖もある飛び切りの女に関しては、はくいすけ、と呼ぶのじゃなかったか。その名もモンロー。  初期長篇のヒロインらしいのだが、あまりよくは覚えていない。初期長篇は回想により書かれているので、70年代頃の話のはずである。そこから一足飛びに40年くらい飛び越えた現在となると、さすがに年齢の残した変化はどうしようもない。それでも旧友だからという理由で便利屋のオレは、彼女を救い出しに行く。  夕張のスキー場マウントレイスイにあるホテルから北海道外のどこかに連れ出して欲しいとい...
  • 私の庭 蝦夷地篇
    私の庭 蝦夷地篇 題名:私の庭 蝦夷地篇 作者:花村萬月 発行:光文社 2007.01.25 初版 価格:\2,400  浅草篇を読んだのが随分昔なので、多くの詳細は忘れてしまった。覚えているのは、権介が士農工商のヒエラルキーから外れた存在の記録されない無宿人であるということ。そんな権助が幕末の浅草で、刀の修行だけを研ぎ澄まし、人斬りになって、縄張りを後にしたところで浅草篇が終わったということだけである。  なのでいきなり蝦夷地篇を開いたものの、過去の人物、十郎だとか爺だとか夢路だとかが、誰だったのかを確認する為に、何度か浅草篇のページをぱらぱら繰り直さねばならなかった。  しかし、本書は浅草篇という過去を引きずりはするものの、権介以外の登場人物は一新している。舞台だって津軽から海峡を渡り、渡島半島のどこかの浜に漂着するところから始まる、い...
  • 双生の荒鷲
    双生の荒鷲 題名:双生の荒鷲 原題:Flight Of Eagles (1998) 作者:Jack Higgins 訳者:黒原敏行 発行:角川文庫 1999.5.25 初版 価格:\1,000  ヒギンズひさびさの力作に出会った。70年代のヒギンズはこのレベルの物語を次々に物にしていたのだが、90年代のヒギンズはヒーローものに堕していた。冒険小説の書き手がシリーズものにのめりこむと、えてしてロクでもないことが起こる。量産。惰性。質の低下。新しい見当違いのファン(ミーハー)。  だからひさびさにヒギンズ自らが登場してプロローグとエピローグを受け持ち、本筋は第二次大戦のあのヨーロッパの飛行士たちに委ねる、というこの構成、筋書きは、ヒギンズの年齢のイギリス冒険作家たちに読者が求めている本質的な部分ではないだろうか。  英独空軍に別れた双子の兄弟が英...
  • 帚木蓬生
    帚木蓬生 長編小説 白い夏の墓標 1979 十二年目の映像 1981 カシスの舞い 1983 空の色紙 1985 賞の柩 1990 三たびの海峡 1995 アフリカの蹄 1996 臓器農場 1993 閉鎖病棟 1994 空夜 1995 総統の防具(「ヒトラーの防具」へ改題) 1996 逃亡 1997 受精 1998 安楽病棟 1999 空山 2000 薔薇窓 2001 エンブリオ 2002 国銅 2003 アフリカの瞳 2004 百日紅の恋人 2005 受命 2006 聖灰の暗号 2007 インターセックス 2008 水神 2009 ソルハ 2010 蠅の帝国―軍医たちの黙示録 2011 蛍の航跡―軍医たちの黙示録 2011 日御子 2012 天に星 地に花 2014 悲素 2015 受難 2016 守教 2017 沙林 偽りの王国 2021 短編集 風花病棟 2009年 ノン...
  • 出口のない農場
    出口のない農場 題名:出口のない農場 原題:Stone Bruises (2014) 作者:サイモン・ベケット Simon Beckett 訳者:坂本あおい 発行:ハヤカワ・ミステリ 2015/7/15 初版 価格:\1700  イギリス人著者によるフランスの農場を舞台にしたミステリ。しかも、主人公は、ロンドンからやってきたいわくありげな青年。シートベルトは血だらけで、トランクには死体という、極めて不穏な状況での登場。物語の出だしとしては極度に不安で緊張を強いられるが、その緊張は留まることを知らない。  獣用のトラップに脚を噛まれ重傷を負ってしまった主人公は、得体の知れない農場に運び込まれ、敵意むき出しの農場主と、彼を介護する二人の娘たちと出会い、逃避行の唐突な展開を、利用すべきと思いつつもその農場の不可解な緊張状態に疑惑を抱き始める。  フラ...
  • 鳳凰の船
    鳳凰の船 題名:鳳凰の船 作者:浮穴みみ 発行:双葉社 2017.8 初版    双葉文庫 2020.1.19 文庫化初版 価格:¥640  『楡の墓』で、すっかりこの作家のファンになってしまった。何よりも美しく正しい文章による正統派の小説作品であること。読んでいて心地よい日本語なのである。言葉とはかくも素敵なものなのか。改めてそう思わせてくれる作家は、実はそう多くないので貴重である。  さらに素敵なのが、北海道開拓をテーマに、多くの魅力ある歴史上人物に焦点を絞り、彼らを生き生きと作品世界の中で蘇らせてくれる希少な作家であるということ。北海道生活に身を置くものとしては、この世界の未だ短い歴史はとても身近であり、とても心惹かれるテーマなのである。  実はこの短編シリーズは、三冊完結となっているらしく、まさに今月、第三冊目の新作単行本『小さい予言...
  • ジャック・ヒギンズ
    ジャック・ヒギンズ Jack Higgins リーアム・デブリン登場作 鷲は舞い降りた 1975 菊池 光訳 鷲は舞い降りた【完全版】 1975 菊池 光訳 テロリストに薔薇を 1982 菊池 光訳 黒の狙撃者 1983 菊池 光訳 鷲は飛び立った 1991 菊池 光訳 ショーン・ディロン・シリーズ 嵐の目 1992 黒原敏行訳 サンダー・ポイントの雷鳴 1993 黒原敏行訳 密約の地 1994 黒原敏行訳 悪魔と手を組め 1996 黒原敏行訳 闇の天使 1997 黒原敏行訳 大統領の娘 1997 黒原敏行訳 ホワイトハウス・コネクション 1998 黒原敏行訳 審判の日 2000 黒原敏行訳 復讐の血族 2001 黒原敏行訳 ジャック・ヒギンズ名義 復讐者の帰還 1962 槙野 香訳 地獄の群集 1962 篠原 勝訳 虎の潜む嶺 1963 伏見威蕃訳 裏切りのキロス 1963 ...
  • 逢坂剛
    リンク名 逢坂 剛 公安警察シリーズ 裏切りの日日 1981 百舌の叫ぶ夜 1986 幻の翼 1988 砕かれた鍵 1992 よみがえる百舌 1996 鵟の巣 2002 岡坂神策シリーズ クリヴィツキー症候群 1987 十字路に立つ女 1989 ハポン追跡 1992 あでやかな落日 1997 カプグラの悪夢 2001 墓石の伝説 2004 牙をむく都会 2006 イベリア・シリーズ イベリアの雷鳴 1999 遠ざかる祖国 2001 燃える蜃気楼 2003 暗い国境線 2005 鎖された海峡 2008 ウエスタン アリゾナ無宿 2002 逆襲の地平線 2005 禿鷹シリーズ 禿鷹の夜 2000 無防備都市(禿鷹の夜 2) 2005 禿鷹狩り 2006 ノンシリーズ長編 スペイン灼熱の午後 1984 カディスの赤い星 1986 さまよえる脳髄 1988 斜影はるかな...
  • 殺しの接吻
    殺しの接吻 題名:殺しの接吻 原題:No Way To Treat A Lady (1964) 作者:ウィリアム・ゴールドマン William Goldman 訳者:酒井武志 発行:ハヤカワ・ミステリ 2004.06.15 初版 価格:\1,000  【ポケミス名画座】とは未翻訳の映画原作に対する翻訳希望ランキングであるから、ここでランキング入りした作品は、映画作品そのものもそこそこ素晴らしいという想定は容易にできるのだけど、映画はさておいてこいつの原作を読みたいと言う欲求があっても不思議ではないだろう。本作品はサイコ系スリラー映画として売り出したそうだが、原作の方の展開はというと、そもそものゴールドマンが書きたいと思った作品モチーフのところから違っているらしい。  本書はちょうどマクベインの87分署シリーズスタート後8年と、ペーパーバックにおける警...
  • 北帰行
    北帰行 題名:北帰行 作者:佐々木 譲 発行:角川書店 2010.01.31 初版 価格:\1,800  何だかかぶる話である。船戸与一の『夜来香海峡』とかぶるのだ。あちらは秋田から夕張、稚内へと北へ向う話。物語の軸は逃走中の謎の女。こちらは、東京、新潟、稚内へとやはり北へ向う展開。物語の軸は妹の仇を狙うロシア人のヒットウーマン。そしてどちらも最後は稚内フェリー埠頭近辺での激しい決闘。やっぱり、かぶりすぎる。  しかももう一作、舞台やストーリー展開は異なるが、少し似たような話が佐々木譲の作品にはあったような気がする。思い出した。『真夜中の遠い彼方』だ。ベトナム難民の少女をある新宿の一夜を舞台に救い出してやろうと逃走させる一連の庶民たちの活躍を描いた作品であった。ちなみに同じ時期に読んだ梁石日の『断層海流』はフィリピン人女性が日本の闇の中で自由を求めて足掻く...
  • 国境事変
    国境事変 題名:国境事変 作者:誉田哲也 発行:中央公論新社 2007.11.25 初版 価格:\1,600  つい先だって車検工場のロビーにて、愛車を点検してもらっている間、置いてある雑誌を何気なく開くと、そこには国境の写真が載せられてあった。 国境、と言われても、日本人にはあまりぴんと来ないものだ。 北海道であれば、国後島を眼前に望む羅臼漁港を思い浮かべたりする。あるいは、歯舞諸島への国境の海を、ロシア軍警備艇が、不穏に動き回る根室海峡を、思い浮かべることもできる。 いずれにせよ隣国が見えなければ国境のイメージはない。稚内の高台にある氷雪の門から遥かサハリンが見えるときには、ああ、ここは国境の海なのだなと実感することができる。でも、サハリンが見えないことのほうが多いここは、やはり国境と呼ぶには広漠とし過ぎている。 逆に...
  • 楡の墓
    楡の墓 題名:楡の墓 作者:浮穴みみ 発行:双葉社 2020.2.23 初版 価格:¥1,500  自分のすぐ近くにある物語との出会いは、嬉しく、また有難い。これをお貸し頂いたのは仕事の古く永い先輩であると共に、ぼくの中に北海道愛を最初にインジェクトしてくれた方である。本書の作家・浮穴みみも千葉大仏文科卒だが北海道生まれの作家である。本書は北海開拓に纏わる人たちを絡めた美しくも逞しい短編集である。  『楡の墓』タイトルにもなっている最初の短編は、札幌市に堀を引いた初期開拓の責任者である大友亀次郎。札幌市東区に彼を記念する郷土資料館があり、それを偶然にも先月だったかぼくは訪れている。また大友がトウベツの開拓に関わろうとした経緯など実に興味深い。  『雪女郎』続いて北海道神宮にゆくとガイドさんが必ず紹介する大きな銅像で印象的な島義武の開拓と挫折。...
  • セラフィムの夜
    セラフィムの夜 [429] Client error `POST https //webservices.amazon.co.jp/paapi5/getitems` resulted in a `429 Too Many Requests` response { __type com.amazon.paapi5#TooManyRequestsException , Errors [{ Code TooManyRequests , Message The request was de (truncated...) [429] Client error `POST https //webservices.amazon.co.jp/paapi5/getitems` resulted in a `429 Too Many Requests` response { _...
  • 逃亡
    逃亡 題名:逃亡 作者:帚木蓬生 発行:新潮社 1997.8.15 第4版 1997.5.30 初版 価格:\2,300  ----後半のみ【ネタバレ警報】  重い題材というのは、簡単に言ってしまうとドストエフスキィ的なものとトルストイ的なものとに大別される。ぼくの一つの判別法である。そして帚木蓬生という作家のめざすものは常にトルストイ的なヒューマニズムであるように見える。ぼくの趣味から言えば、この作者の作家的感性に少し古臭さを感じる。またぼくには、正義感というものに対するある種の反抗的な精神があって、いつも素直には肯定できない類いの重さを感じるのである。  この本で書かれていることは、教科書や一般書ではなかなか見つけられない歴史の襞の奥の真実であると思う。この一時代への興味と関心というすべてでもって、この本をぼくは手に取る。五味川純平...
  • 船戸与一
    船戸与一 <血と硝煙の世界……国境の向うの叙事詩>  船戸与一は、異色だ。早稲田大学探検部出身の彼が、モスクワ経由でソ連入りして国後島のチャチャヌプリを登ったという記事を読んで、彼は小説を書くために、現地踏査を厭わない人だと実感した。未だソ連邦崩壊前夜のことである。彼はその探検行を元に後に『蝦夷地別件』を創り上げた。  豊浦志朗の名義で『叛アメリカ史』を書いた彼は、先住民族とそれを虐げてきた略奪者たちの構図、その上に成り立った現代史の上に皺ぶく闘争と不条理の歴史に、小説という弾薬をもって風穴をあけようと試みてやまない。恩讐と欲望の果てに沸き起こる血と硝煙の宴を、彼のペンは日本冒険小説の名の下になぞってゆく。他の誰もが決してやろうとはしない世界の果てを自ら旅し、取材し、調査し、彼なりの咀嚼を施す。  われわれが目撃するのは小説作品というかたちに昇華された彼なりの叙...
  • 幕末・維新 シリーズ日本近現代史 1
    幕末・維新 シリーズ日本近現代史 1 題名:幕末・維新 シリーズ日本近現代史① 著者:井上勝生 発行:岩波新書 2006/11/21 初版 2006/12/20 5刷 価格:¥780  自分のすぐ近くにある物語との出会いは、嬉しく、また有難い。これをお貸し頂いたのは仕事の古く永い先輩であると共に、ぼくの中に北海道愛を最初にインジェクトしてくれた方である。本書の作家・浮穴みみも千葉大仏文科卒だが北海道生まれの作家である。本書は北海開拓に纏わる人たちを絡めた美しくも逞しい短編集である。  『楡の墓』タイトルにもなっている最初の短編は、札幌市に堀を引いた初期開拓の責任者である大友亀次郎。札幌市東区に彼を記念する郷土資料館があり、それを偶然にも先月だったかぼくは訪れている。また大友がトウベツの開拓に関わろうとした経緯など実に興味深い。  『雪女郎』続い...
  • 私の庭 北海無頼篇
    私の庭 北海無頼篇 題名:私の庭 北海無頼篇 作者:花村萬月 発行:光文社 2009.09.25 初版 価格:\2,700  『王国記』もそうなのだが、花村萬月作品の最近の傾向は、物語が進むにつれどんどん現実離れして神話化してゆくように変化してゆくように見える。娯楽要素の強い戦後のヤクザ小説である(と言い切るのも失礼な気がするが)『ワルツ』なども、戦後の雑踏という地面からの目線で書かれた小説としてスタートする中で、徐々に主人公が超人となってゆき、とても透き通った純な存在として生死を超越してゆく様が描かれていたような気がする。  この『私の庭』では暴力の象徴としての刃を手にした名もなき浅草の浮浪児が、人を斬り、強くなってゆく中で徐々にその野生を研ぎ澄まして、ついには津軽海峡を渡り、蝦夷地に辿り着くや否や、アイヌの生活に身を任せ、漂白と言ってもいいような人生を...
  • 殺し屋
    殺し屋 殺し屋 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション) 題名:殺し屋 原題:Hitman (1998) 作者:Lawrence Block 訳者:田口俊樹 発行:二見文庫 1998.10.25 初版 価格:\790  「イージー・リスニング」という言葉があるように「イージー・リーディング」という言葉が、読書という趣味のなかにあるとしたらどうだろう。連想するのは村上春樹のエッセイや短編小説、矢作俊彦や浅田次郎の同じく短編小説、中島らもや浅田次郎のエッセイ集。そして海外ではそれはローレンス・ブロックの短編集にとどめを刺すだろう。どれをとっても、いずれ実力がなければ書けないジャンルなのだろう。  殺し屋ケラーの連作短編小説集。スタートの短編『名前はソルジャー』はハヤカワ文庫のブロック短編集『夜明けの光の中に』収録されている。  殺し屋ケラーは、まる...
  • 出口のない海
    出口のない海 題名:出口のない海 作者:横山秀夫 発行:講談社 2004.08.09 初版 価格:\1,700  スローカーブ、シュート、あるいはナックルボール。いや、それ以上に魔球と言ってしまいたいくらいの小説を数知れず世に送り出している横山秀夫という作家が、たまにこれでもかというほどのストレートの速球を投げてくる。こちらは、空振りというよりは、バットが迷う感じでそのまま振ってゆく。きれいにキャッチャーミットに収まったボールの快音を心地よく耳に残して。  本書は魔球ではない。これ以上ないほどに、けれん味のない真っ向からの反戦小説である。太平洋戦争突入から始まって、終戦直前まで続いた日本の短いが過酷であった戦後への道程に、人間魚雷<回天>という特攻武器があった。魚雷そのものに人間を搭載して敵艦に体当たりするという蛮勇以外のなにものでもない、ある意味...
  • 森 詠
    森 詠 燃える波濤 燃える波濤 第一部 1982 燃える波濤 第二部 1982 燃える波濤 第三部 1982 燃える波涛 明日のパルチザン 第4部 1988 燃える波涛 冬の烈日 第5部 1989 燃える波涛 烈日の朝 第6部 1990 キャサリン・シリーズ さらばアフリカの女王 1979 風の伝説 1987 陽炎の国 1989 横浜狼犬(ハウンドドッグ)シリーズ 青龍、哭く 1998 横浜狼犬(ハウンドドッグ) 1999 死神鴉 1999 警官嫌い 横浜狼犬エピソード〈1〉 2000 砂の時刻 横浜狼犬エピソード〈2〉 2001 オサム・シリーズ オサムの朝(あした) 1994 少年記―オサム14歳 2005 革命警察軍ゾル 革命警察軍ゾル〈1〉分断された日本 2006 続 七人の弁慶 七人の弁慶 2005 続 七人の弁慶 2006 長編小説 黒い龍 小説...
  • まほろ駅前番外地
    まほろ駅前番外地 題名:まほろ駅前番外地 作者:三浦しをん 発行:文春文庫 2012.10.10 初刷 2012.12.20 2刷 2009.10 初版 価格:\505  「番外地」というだけあって、本書は「まほろ駅前多田便利軒」の外伝を集めた短編集となっている。  「まほろ…」の主役は、便利屋・多田と居候・行天である。語り手は多田だが、二人主人公による両輪馬車、バンドで言えばドゥービーやクリエイションみたいなツインドラムの重さを軸に据えながら、実に庶民的な事件を扱う軽ハードボイルドの趣きが味わい深い。この二人のキャラクター造形だけで、直木賞賞受賞作の出来栄えは既に決定してしまった、と言っていいほどであった。  さてその前作で扱われる様々な事件(というか出来事)に登場したキャラクターのそれぞれに再登場願って、それぞれに物語をまたひとつひとつ作...
  • 柔らかな頬
    柔らかな頬 題名:柔らかな頬 作者:桐野夏生 発行:講談社 1999.4.15 初版 価格:\1,800  要するにこれも『OUT』なのである。ただし裁かれるOUTとでも言おうか。OUTのつけをどう支払ってゆくかの物語とでも言おうか。前作が「動」であるなら、本作は紛れもなく「静」である。さらに深く深くOUTのその後、その行方にまで光を当てた作品とでも言うべきかもしれない。  静は静なりに仕掛けもまた多い作品でもある。  主人公のカスミの思いの対象が、物語の中で変遷する。いかにも女にもてそうな石山という言わば俗物に近い人物(彼自身その後変遷を遂げるのだが)から、「イエスの方舟」の教祖を思わせる緒方という老人を経て、ガンで死につつある刑事・内海へと移ろってゆく。肉体的な欲望の対象である石山から、その肉体性を極力排したような緒方、そして肉...
  • 陪審評決
    陪審評決 題名:陪審評決 原題:The Runaway Jury (1996) 作者:John Grisham 訳者:白石朗 発行:新潮社 1997.10.30 初版 価格:\2,300  ただでさえ裁判ごとに疎い一般の人間が、こうした専門家による小説を手に取って、しかも馴染みのない「陪審」という概念に出くわし、さまざまな法的手続きを順次踏まされる……とこうして考えただけで世にも恐ろしい退屈本のように思われる世界。しかもサイコキラーや殺人事件や刑事捜査ともほとんど縁のない法廷のみを舞台にした、地味で現実的なタバコ訴訟という題材。こう書いただけで実につまらなそうな本なのだが、なぜかこれがグリシャムの小説となると……例によって海の向こうではバカ受け、映画化は既に決定事項、版元も訳者も既にお墨付きという申し分なさ……とくると、この様相は一変する。 ...
  • 雷鳴
    雷鳴 雷鳴 (幻冬舎文庫 や 3-15) 雷鳴 雷鳴 (徳間文庫 や 18-4) 題名:雷鳴 作者:梁石日 発行:徳間文庫 1998.10.15 初刷 価格:\495  『血と骨』が梁石日の父の生涯の物語だとすると、本書『雷鳴』は母の物語である。梁石日の両者に向けられる愛情の激しい差というものが、この二作品を読むことでよく理解できると思う。  『血と骨』と同じ時代というのではなく、日本へ渡る前、済州島で青春を迎える母の娘の時代の物語。奇麗な海と、神話的な生活。ここを荒らし始める日本人の跳梁。島特有の不合理な慣習の犠牲になる母と、陸地からの差別。日本人の手先となって同胞を裏切る者。島の貧弱な農業。不穏な時代。自然の猛威。まさに雷鳴が轟く空に向けてひたむきにどこまでも生きようとする少女の、読みごたえのある梁石日らしい力作。  『夜を賭けて』『血と...
  • 群狼の舞 満州国演義 III
    群狼の舞 満州国演義 III 題名:群狼の舞 満州国演義 III 作者:船戸与一 発行:新潮社 2007.04.20 初版 価格:\1,800  前作、上海事変を受けて、ラスト・エンペラー溥儀の擁立と傀儡化、満州国建設と国際連盟脱退、熱河侵攻までを描く本シリーズ第三弾である。  時代が早足で駈けて行く足音を、スーパー・ウーハーの低音で響かせる船戸の文章リズムは、相変わらず圧巻だ。それは時には遠い砲声であり、時には地吹雪の吼え声であり、時には馬群が蹄を踏み鳴らす音である。  そんな抗いようのない時代の重低音の上で、敷島四兄弟は、懊悩し、彷徨い、闘い、足掻いてゆく。それぞれの運命が均一でないばかりか、運命により変調してゆくところこそ、船戸の叙事詩作家たる所以である。  前作では試練を受けての変貌が目立ったのは馬賊の次郎だったが、...
  • 世界でいちばん長い写真
    世界でいちばん長い写真 題名:世界でいちばん長い写真 著者:誉田哲也 発行:光文社 2010.8.25 初版 価格:1,300  タイトルそのままの「世界でいちばん長い写真」を作るだけの小説なんだが、この本のいいところは、ずばり、主人公が中学生の男の子であるというところだ。もちろん「世界でいちばん長い写真」のギネス認定を受けている人はいるんだそうだ。その事実をもとに、作者は、中学生を主人公にした青春小説を書こうと決めたみたいだ。そうして、『武士道シックスティーン』に始まる武士道三部作という女子小説とは一味違った男子の方の物語も書こうとトライしたのだと思う。  そのトライはいい意味でとても成功していて、やっぱり想像力に長けている、小説家という職業は、女の子であれ男の子であれ、その世代、その時代の、ヒューマンな心の機微というところにかけては、やっぱり優れ...
  • 死のドレスを花婿に 
    死のドレスを花婿に 題名:死のドレスを花婿に 原題:Robe de marié (2009) 作者:ピエール・ルメートル Pierre Lemaitre 訳者:吉田恒雄 発行:文春文庫 2015/4/10 初刷 2015/4/20 3刷 価格:\790  今年は昨年の『その女アレックス』の大ヒットを受けて、フランス小説としては異例の翻訳化の嵐が吹き荒れている。年間3作品も翻訳出版されるスピードは、海外小説ということからしても奇異な現象である。何かの受賞作品一作だけで翻訳を見切られる作家も、海外小説という不況市場では珍しくない状況下、このような空前のヒットは歓迎すべきことである。これを機に北欧ミステリに続いてのフランスのミステリ、ひいては海外ミステリの翻訳に順風が吹いてくれることを期待したい。  そのためには一発屋的ヒットではなく、次々と翻訳紹介される作品...
  • ミレニアム
    ミレニアム ミレニアム ミレニアム (双葉文庫) 題名 ミレニアム 著者 永井するみ 発行 双葉社 1999.3.10 初版 価格 \1,800  Y2K問題を中心に据えたミステリーなので、今日が読書期限ぎりぎりかなと思い、スケジュール通り今さっき読み終えたのだけど、Y2K対策で自宅待機扱いのぼくとしてはなかなかそれなりにスリリングな一冊であった。  携帯の電源を21:00でOnし、明日の14:00までは回線を空けておく。何もなければ。  しかし何かあった場合、問い合わせ電話に答えたり、用件を他の待機者に回したりと落ち着いて酒を飲んでいるわけにもいかない、というのが今年の今日、大晦日の特別事情なのである。もっともオフィスに泊まり込んでいるスタッフを思えば、自宅待機はまだいい。出かけていってどうにかになるというものでもないので、最低限の回答を顧客に...
  • 催眠 特別篇
    催眠 特別篇 題名 催眠 特別篇 著者 松岡圭祐 発行 小学館 2000.8.1 初版 価格 \1,200  今年になって今さらTVドラマ化? と思っていた日曜劇場『催眠』。その直前に公開されていた映画『千里眼』人気も手伝ってか、松岡圭祐は『催眠』に手を入れてシリーズに繋げるという作業をこの本にやらせたくなったらしい。元の『催眠』ではなく、接続プラグ付バージョンアップ版『催眠』と言った意味合いを持たせて。  恒星天球教、メフィスト・コンサルティングと言った『千里眼』シリーズでの敵手たちが何とこの『催眠』で既に登場してしまったり、『千里眼』のヒロインである岬美由紀との接点もシーンとして登場させるなど、TV版や映画版に向けての接続プラグまできちんと用意されているあたり、この作者独特のメディアミックス志向も極まりないという旺盛なサービス精神が感じ...
  • 夏の災厄
    夏の災厄 夏の災厄 (文春文庫) 夏の災厄 題名:夏の災厄 作者:篠田節子 発行:毎日新聞社 1995.3.25 初版 価格:\2,000(本体\1,942)  不思議な作家なので、続けて読んでいますが・・・・。これはあまり奇をてらわない正攻法の作品であるような第一印象。今まで感染ものといえば和洋問わずにけっこう傑作が出ていると思っていたから、敢えて書店で買おうという気にはならないでいたのだけど、世の中が篠田節子、篠田節子とあまり話題にするようだから、図書館で見つけたのを期に、読んでしまったもの。そしたら、まあ、リアリズム溢れる正統派感染サスペンスでありながら、これだけ面白いとは・・・・。  『聖域』よりはぼくはこちらですね。何と言っても主人公不在という離れた視点から描いた埼玉県昭川市の物語である点に注目したい。川田弥一郎の『白い狂気の島』は狂犬病が猛威...
  • 変!!
    変!! 題名:変!! 作者:中島らも 発行:双葉文庫 1993.5.15 1刷 価格:\500(本体\485)  中島らもの「変」なものエッセイ。ぼくも変なものにしか興味が沸かない。変じゃない人とはあまり喋りたくない。変過ぎる人とも関わりたくない。ぼくの学生時代はとっても変でいっぱいの環境だったのに、社会に出ると、変はひどく少なくなってしまった。  変じゃないものが日常を領し、変はいつのまにかブラウン管や本の世界に引っ込んでしまう。このような一冊の本の世界に。  それはそれで寂しいことなんだけど、自分だけはずっと変なものを持ち続けていたい、と思うのはぼくだけじゃないだろう。パソ通の世界では変な人たちがいっぱいいるし、ぼくも気軽に変を持ち続けていられるみたいだ。  そういうわけで変が好きな人たちが変な話をし続けること、ぼくはとっても好き...
  • ウォッチメイカー
    ウォッチメイカー 題名:ウォッチメイカー 原題:The Cold Moon (2006) 作者:ジェフリー・ディーヴァー Jeffery Deaver 訳者:池田真紀子 発行:文藝春秋 2007.10.30 初版 価格:\2,095  ディーヴァーに関しては、ここ数年書き続けているように、ぼくは食傷気味である。物語がもう何年もの間パターン化しているために、ぼくは既に飽きが来てしまっているのだ。シリーズ外の作品もそうなのだが、ここのところのディーヴァーの作品は、読者サービスのための、イリュージョンめいたシーンを創出することを何よりも作品の核として優先させ、その点での面白さだけを幅狭く追及しているところがある。  例えば、犠牲者と思われる人が襲われかかるシーンの頻出である。誰しもが息を呑むところで、ブラックアウト。遅いかかったのは犯人だとばかり思って恐...
  • 海辺のカフカ
    海辺のカフカ 海辺のカフカ (上) (新潮文庫) 海辺のカフカ (下) (新潮文庫) 海辺のカフカ〈上〉 海辺のカフカ〈下〉 題名:海辺のカフカ 上/下 作者:村上春樹 発行:新潮社 2002.9.10 初版 価格:各\1,600  妻が先に読んでいいかと乞うので渡していたらいつまでも読み進まない。集中力がないというが、専業主婦である妻は子供も育つにつれそう手がかからないようになると時間をあり余せて、テレビ体操をしたりディジタルハイビジョンの双方向ゲームをやったりして遊ぶこともある。それなのにこの本を読み進まない。ある意味では村上春樹の小説を何ヶ月もかけて読むというのは相当に贅沢なことのような気がする。たまらなくなったぼくは上下二冊を妻から取り上げて読み始める。  ちょうどまる四日間でぼくはこれを読み終える。何ヶ月もかけてこれを読もうと言う妻に...
  • 愛される資格
    愛される資格 題名:愛される資格 作者:樋口毅宏 発行:小学館 2014.12.13 初版 価格:\1,400  樋口毅宏という鬼才の、とても普通でストレートな小説。恋愛小説でもあり青春小説でもある。どちらもこの作家とは一見縁遠そうなジャンル、そしてあまりにも普通すぎる庶民的な作品であるところに、かえって面食らう。  最初は普通の会社勤めをしている主人公であるが、最も嫌いな直属上司の奥さんとの不倫を続けるうちに、行き詰った人生への突破口のようなものを見つけてゆく。日常生活のディテールの中に、不倫という冒険を見出したことにより、緊張感や心の葛藤をこれまで以上に覚えるようになる。そしてさらに多くの周辺登場人物との桎梏を経て、様々な人間模様、その陰と陽、内面の真実といったものに踏み入ってゆくことで、彼自体の青春が徐々に新しい局面へと脱皮してゆく。 ...
  • caffe
    ハルビン・カフェ 作者:打海文三 発行:角川書店 2002.04.25 初版 価格:\1,800  打海文三はいろいろな意味でジャンプすることが好きな作家だ。シリーズのように見せかけておいて、登場人物には共通性を持たせているくせに、作品間の繋がりはまるでない。作品から作品への異次元ワープといった印象を持たされてこちらは面食らうことこの上ない。それが狙いという作風でもあるのだと思う。  しかし打海文三の際だったジャンプは『Rの家』。ジャンルのジャンプとも言える、ある意味とても打海らしい好き勝手なジャンプ。常に外に向かっていた攻撃的精神が内なるところに向けられて行って、極度までに閉ざされてゆくといった趣の作品であり、まるで読者を拒絶しているかのような表現であるようにも見える。少なくとも読者の側からの媚びは受け付けてくれそうにないのが、この打海文三という作家である...
  • 恋は底ぢから
    恋は底ぢから 題名:恋は底ぢから 作者:中島らも 発行:集英社文庫 1992.7.25 初刷 1992.8.20 第2刷 価格:\420(本体\408)  作者若かりし頃の意外とまじめな部類のエッセイ集であるから、作者は本編でもあとがきでも大いに照れまくっている。  恋のまじめな話が沢山聞けて面白いのは、この本が女性雑誌に連載されたものをまとめたせいであるらしい。男というものは女性に対しては少しばかりまじめに語りたくなってしまうものなのである。男同士だと照れ臭くて言えないような心のデリケートな移ろいなどを、女性になら -- それがまた特にちょっぴり気のある女性だったりすればなおのこと -- なんとなく打ち明けてしまえたりするものなのである。  そんなわけで、かく言うぼくも、若かりし頃は女性を相手に馬鹿を言う機会が多かった。中島らものように女性...
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