wiki クライムウェイヴ(Sysop読書録 活字をめぐる冒険) 内検索 / 「贄の夜会」で検索した結果

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  • 贄の夜会
    贄の夜会 贄の夜会 題名:贄の夜会 作者:香納諒一 発行:文芸春秋 2006.05.30 初版 価格:\2,857  香納諒一が、がらっと変わった。文章を読み出しても、あるいは本書を読み終えても、どこにも過去の香納諒一がいない感覚がある。一人の作家の大きな変化があるとすれば、それは香納諒一の場合、この作品となるだろう。今、それに立ち合っているのだとの実感を感じながら、本書を丹念に読むこととした。  まず、殺人事件。推理小説に近い構成。両手首を切り落とされた死体と、目撃者として殺された死体。残虐な骸。フーダニット。三人称による複数主人公の物語。いつも主観を移動させることのなかった作家が、神の視点で書き綴る客観的な事件の俯瞰に、どうしても戸惑いを禁じ得ない。  今は多くの作家が警察小説を書くようになった。犯罪を通して警察官の人間模様を書く例が増えている...
  • 記念日
    ...テップ』、あるいは『贄の夜会』、『第四の闇』を。きっとその読者は、香納諒一という作家は、プロットが複雑で錯綜していて、アイディアが豊富で、奇想と仕掛け満ちた作風の持ち主だと。  『贄の夜会』以降、香納諒一の作風はがらりと変わった。 しかしそれに先んじて数年間の沈黙があった。何しろ2,000年に『炎の影』を上梓して以来、2004年に『夜空の、向こう』という連作短編集、『あの夏、風の街に消えた』という長篇を書いたっきり、2006年まで、香納諒一という作家はその後の変身を全く予期させなかった。少なくとも、ぼくは予期しなかった。  『贄の夜会』と『冬の砦』は、作家として新しいフェーズに入った第二期香納諒一の宣言であったかのかもしれない。しかしその後の香納作品は、凝りに凝ったプロットやネタ重視の徹底した謎解き娯楽小説か、そうではない昔の作風を残したものとに二分したかに見...
  • 冬の砦
    ...  香納諒一が『贄の夜会』に続いて、またもミステリらしいミステリを書いた。推理小説のサイドに立っての物語をあまりしなかった作家だけに、興味深く思っている。はっきりとしたハードボイルド作家というイメージから、もっと広い読者層に向けて作品を作る作家に変わったのは、一連の短編小説を書いてからのことだと思う。  短編小説は腕を磨く。短編小説には、長さがもたらすキャラクターへの共感や愛着が生まれにくい。だからこそ、短い文章によって読者を引きずりこむ文章の質の力は、高いレベルが要求される。そうした土俵で相撲を取ってきた作家は、ぼくの知る限り信頼し得る作家となる。あるいは信頼のおける作家が短編を書いたときには、やはりきちんと納得のゆくものを生み出してくれることが多い。  オットー・ペンズラーのようなアンソロジストがそう多くはない日本の作家は多くは月刊文芸誌で短編の腕を磨いている...
  • 血の冠
    ...ことが知れ、おっと『贄の夜会』みたいに、錯綜した謎解きストーリーなのかと想像してしまう。  終章まで読み終えた印象はもっとよくなかった。何よりも屈折しすぎている物語であるからだ。東野圭吾の謎解き小説のように、人間の体温の感じられる読後感、情緒のようなものがあるわけでもない。ひたすら病んだクロージングはやはり『贄の夜会』であり、『第四の闇』であり、生理的には気持ちが悪い小説なのだと言える。  こうした方面の読者を求めて作者が書いているとは思えない。作者はとても生真面目な作風で人間の心を掘り下げるタイプの作家だからだ。人間の描写をすれば、描写される側は、リアルであればあるほど複雑化するというのはわかる。だが、ここまで複雑化してしまうと、もはや奇怪な怪物である。  人と人との対決で終る小説に拘っているのだろうか。それにしては、あまり胸のすくような対決とは言えない。複...
  • 香納諒一
    ...角 1999/05 贄の夜会 2006/05 無縁旅人 2014/03 刑事群像 2015/02 砂時計 警視庁強行犯係捜査日誌 2023/10 辰巳翔一シリーズ 無限遠/「春になれば君は」改題1993/12 蒼ざめた眠り/「虚国」改題  2010/03 さすらいのキャンパー探偵 降らなきゃ晴れ 2019/08 さすらいのキャンパー探偵 水平線がきらっきらっ 2019-09 さすらいのキャンパー探偵 見知らぬ町で 2019-10 鬼束啓一郎シリーズ 熱愛 2010/09 絵里奈の消滅 2018/09 刑事花房京子シリーズ 完全犯罪の死角 2018/06 逆転のアリバイ 2022/04 絶対聖域 2023/07 新宿花園裏交番シリーズ 新宿花園裏交番 坂下巡査 2019/03 新宿花園裏交番 ナイトシフト 2022/06 長編小説 夜の海に瞑れ/「時よ夜の海に瞑れ」...
  • 無縁旅人
    ...に思われる。本書は『贄の夜会』のシリーズということで、またサイコ・スリラーかなと思ったので、その意味では当てが外れた。刑事のシリーズというと二作目三作目は必ずしも一作目を引きずらないというものが多いように思われるが、この作者のKSPシリーズなどは、完全にキャラも分署も街も個性に溢れた魅力的なシリーズであるから、人情系はどちら、サイコ系はどちらと住み分けしてゆくのかな、と勝手な予想が先走った。  その意味ではこちらの作品はシリーズでなくてもいいのかな、というほど警察側の個性が目立たない。その分、事件の殺伐さの中に世界が囚われてしまったイメージで、ぼくはこの一冊を読み続けることになった。  ネットカフェで寝泊りする孤独な少女が、見知らぬ男の部屋で孤独に死んだ。彼女は消えた弟の生存を信じて行方を追っていたらしい節がある。シンプルなメインストーリーはそれだけである。しかしそこ...
  • 刑事群像
    ...合う。  『贄の夜会』『無縁旅人』の大河内デカ長、『刹那の街角』の庄野デカ長の二班合同捜査。どれも過去の作品につながるわけではなく、本書は完全に独立した一つの作品である。それでいながら様々な要素がペアになって二重になっている世界である。  本書で凄いなと思わせられたのは、多くの人物の行動を追跡捜査することにより、それぞれの人物がそれぞれの理由を持って行動していることである。捜査が解明されたかに見えた時にも、勘のはたらく刑事たちは、違和感を感じ、しっかり人物それぞれの行動が納得ゆくまで妥協せず確認行動を取ってゆく。際立って特別な才能をもって捜査するのではなくて、納得がゆくように理解する。彼らの理解とは推理することではなく、人に当たり確認してゆくこと、なのである。この地道さ。この丹念さ。そこに刑事小説としてのリアリズムがあるように思う。  それぞれの人物が理由を持...
  • 生贄の木
    生贄の木 題名:生贄の木 原題:The Chalk Girl (2011) 著者:キャロル・オコンネル Carol O Connell 訳者:務台夏子 発行:創元推理文庫 2018.03.16 初版 価格:\1,400  劇画的なまでのけれん味たっぷりな誇張により、常に超越的な存在として彫刻のように描写されてきたこの世で最も美しく冷たい女刑事キャシー・マロリーのシリーズ最新作。と言っても10ヶ月前に邦訳された作品。さらに言えば原作は2011年にUSA出版済み。  創元推理文庫の翻訳作品が原作出版から10年単位の遅れというのは今に始まったことではないのだが、そういった長い長い時差を経てもなお良作と呼べる物語(もう完結してしまったがR.D.ウィングフィールドのフロスト・シリーズや、新ミステリの女王ミネット・ウォルターズの作品群等含め)をしっかりと日本...
  • 禿鷹の夜
    禿鷹の夜 禿鷹の夜 (文春文庫) 禿鷹の夜 題名 禿鷹の夜 作者 逢坂剛 発行 文藝春秋 2000.5.10 初版 価格 \1524  逢坂剛の笑いのセンスは古臭くてぼくはどうも好きになれない。岡坂神策の歯切れの悪い冗談にも、毎度毎度調子の狂う思いをしている。できるなら冗談はほどほどにしていただきたい。親父はギャグを言ってはいけない。何を言っても親父ギャグなのだ。自分が思っているほど他人には岡坂ギャグは受けない。ただただ主人公のデリカシーのなさが浮き上がるばかりだ。ほのぼのさせるのに会話を使うのは常套手段かもしれないが、キャラクターにギャグを言わせるなら、それなりのセンスは磨いていただきたく思う。  なのでこの作家にはできるだけスペインものや公安シリーズのように、おとなしく真面目な会社員らしく(今はもう籍を置いていないのかな)、ひたすら地道に冗談貫きで書...
  • キャロル・オコンネル
    キャロル・オコンネル Carol O Connell キャッシー・マロリー・シリーズ 氷の天使(『マロリーの信託』改題) 務台夏子訳 1994 アマンダの影(『二つの影』改題) 務台夏子訳 1995 死のオブジェ 務台夏子訳 1996 天使の帰郷 務台夏子訳 1997 魔術師の夜 務台夏子訳 1999 吊るされた女 務台夏子訳 2002 陪審員に死を 務台夏子訳 2003 ウィンター家の少女 務台夏子訳 2004 ルート66 務台夏子訳 2007 生贄の木 務台夏子訳 2011 ゴーストライター 務台夏子訳 2013 修道女の薔薇 務台夏子訳 2016 ノン・シリーズ長編 クリスマスに少女は還る 1998 愛おしい骨 2008
  • イヴの夜
    イヴの夜 題名:イヴの夜 作者:小川勝己 発行:光文社 2006.10.25 初版 価格:\1,600  小川勝己は寡作家である。長編作品も、ここのところ数年に一編というペースだ。しかし一つ一つの長編作品は、凝りに凝っており、大衆性よりも、よりマニアックな趣向を大事にした作風で、その個性と奇才ぶりを発揮し続けてくれている。若手作家という年齢から次第に抜け出ようとしている時期でもあり、私は彼のこれからの創作方向にはとても希望を持っており、本書もまたその願いにしっかりと応えてくれている。  そもそも日本でノワールを書き込むのは難しい。下手をするとただのウェットでじくじくした垂れ流し的破滅小説になり兼ねないし、そうした作風の作家たちが多いことにも正直食傷気味である。小川勝己がノワールの書き手として素晴らしいところは、どろどろした情念に流される作風ではな...
  • 魔術師の夜
    魔術師の夜 題名:魔術師の夜 上/下 原題:Shell Game (1999) 作者:キャロル・オコンネル Carol O Connell 訳者:務台夏子 発行:創元推理文庫 2005.12.28 初刷 価格:各\800  キャロル・オコンネルの作風はリアリティとはおよそ縁がない。むしろ現実世界から、どこまで遠くに飛ぶことができるかを、いつも実験しているように見えるところがある。  二作前でいきなり姿をくらました現職刑事のマロリーは、前作では故郷で一つの町を文字通り壊滅に追い込み、今また本作で都市の元の部署に帰ってきている。公務員とは思えぬ自由奔放振りが羨ましいが、元ストリート・チルドレンであり、善悪の彼岸に立つというヒロインの魅力は、そもそもそこにある。  これまでのどの作品も多くの点で、魔術・奇術・トリック・仕掛け・装置といったもの...
  • ホプキンズの夜
    ホプキンズの夜 ホプキンズの夜 (扶桑社ミステリー) ホプキンズの夜 (サンケイ文庫―海外ノベルス・シリーズ) 題名 ホプキンズの夜 原題 Because The Night (1984) 著者 ジェイムズ・エルロイ James Ellroy 訳者 小林宏明 発行 扶桑社ミステリー 1990.07.25 1刷 1990.10.1 2刷 価格 \600(本体\583)  凄いなと思うのは、この作品がシリーズ前作『血まみれの月』とほとんど間髪を置かずに発表されていること。作者が続け様に仕上げたのだとすると、よほどこのロイド・ホプキンズという特異なキャラクターが、作者の中でざわめいていたに違いない。  まともな学校教育をほとんど受けていないエルロイというこれまた特異なキャラクターにペンを執らせるものは何なのだろうと考えると、なにかしら背筋の...
  • 人体模型の夜
    人体模型の夜 題名:人体模型の夜 作者:中島らも 発行:集英社 1991.11.10 初版 価格:\1,200  中島らもってこんな不思議な短編小説集を出してたのね。タイトルから想像されるような、人の身体のあちこちの器官 ---- 眼とか耳とか鼻とか胃袋とか、そういったものを用いて作り出された、異常幻想小説集みたいなものであった。  長篇『今夜すべてのバーで』自体が、アル中と言う現象とその入院を通して、人の身体のとある断面を大きな題材にした小説であることを思えば、そのわずか前にこのような小説集が同作者によって書かれたことは不思議ではないはずなんだが・・・・。独特の幻想性、グロテスク、超常現象への興味みたいなものは、後の『ガダラの豚』に通じるものを感じられて興味深い。  そして何よりもこの人の言葉の能力というのは並みではないなあ、という感心。エッセイ...
  • ばらばら死体の夜
    ばらばら死体の夜 題名:ばらばら死体の夜 著者:桜庭一樹 発行:集英社 2011.5.10 初版 価格:¥1,500  桜庭一樹の、ひさびさシリアスものである。この人がシリアスものを書くと、半分ホラーみたいに思える。人間の心が砂漠みたいに読み取りにくく、一夜の風で様相を変え、粒子も分子もばらばらになって、また奇妙な結合を呼び起こす、というような、予測のつかなさは、本書でも相変わらず健在である。およそ健全とは言い難い不健康な小説に対し、健在という言葉がフィットしているかどうかはともかくとして。  そしてこの人のシリアスものは得てして恋愛ものではなく、家族ものである気がする。セックスはあってもラヴはない。この作家を通じて全編に流れるハードボイルドの気質というようなものが、シリアスな小説ではことさらに強く感じられるのだ。  本書では、壊れた家族を持つ...
  • セラフィムの夜
    セラフィムの夜 [429] Client error `POST https //webservices.amazon.co.jp/paapi5/getitems` resulted in a `429 Too Many Requests` response { __type com.amazon.paapi5#TooManyRequestsException , Errors [{ Code TooManyRequests , Message The request was de (truncated...) [429] Client error `POST https //webservices.amazon.co.jp/paapi5/getitems` resulted in a `429 Too Many Requests` response { _...
  • 神無き月十番目の夜
    神無き月十番目の夜 題名:神無き月十番目の夜 作者:飯嶋和一 発行:河出書房新社 1997.6.25 初版 価格:\1,800  独自の小説作法でありテーマであり題材であるのだ、と思うが、特定の個人を主人公に据えた小説でないところは、船戸の一連の迫害史小説群と違って、ぼくには親しみ難いものを感じさせられてしまった。  徳川の支配体制のスタート時点における歴史的リアリズムを、個人の物語的なもの以上に前面に据えている作者の志はわかる気がするけれど、やはりぼくは歴史の検証を俯瞰的に読むというよりは、エンターテインメントとしての小説を内側からのめりこんで愉しむという方を、優先してしまうためか、残念ながら本書はそれほど好みとは言えませんでした。  例えば船戸の『蝦夷地別件』は、同じように大量虐殺を描いたものであっても、より物語性とか神話性の高い...
  • 事変の夜 満州国演義 II
    事変の夜 満州国演義 II 題名:事変の夜 満州国演義 II 作者:船戸与一 発行:新潮社 2007.04.20 初版 価格:\1,800  『風の払暁』では、張作霖爆死事件を描き、本書では、歴史を大きく屈曲させた二つの事変を軸に物語を進めてゆく。一つは満州事変であり、さらにもう一つは上海事変である。徐々に事件は大味で、露骨になり、関東軍の謀略という文字を超えて、暴走という意味を持ち始める。事変の都度、日本人、支那人、朝鮮人たちの屍の数は増してゆき、より残虐に、より畜生道に陥ってゆく、人の愚かさばかりが目立ち始める。  交差し合う火線からは少し離れたところで、敷島四兄弟はより主役であることから身を引き始め、狂言語りとしての役割を自覚してゆく。無力と非力に押し潰されそうになりながら、彼らの葛藤は、歴史の黒々とした悪意の元で荒み、虚ろとなってゆく。物...
  • 降臨の群れ
    降臨の群れ 降臨の群れ 題名:降臨の群れ 作者:船戸与一 発行:集英社 2004.6.30 初版 価格:\1,900  船戸与一にいよいよ飽きが来たのかな、と自問するのは、最近彼の新作が出ると、全作完読する読者であるぼくとしては、とりあえず購入までは躊躇わないのだが、すぐに読もうという気が起こらないからなのだ。  ある意味で、彼の作品は舞台装置が変わっても、その作品がある程度想像しやすいということが、そのひとつの理由にもなっていると思う。紛争のある国際舞台のどこかで、宗教や民族の長く血塗られた歴史の果てに、現代もなお、欲望と憎悪と復讐にうずく一群のキャラクターたちが、血と硝煙の宴を繰り広げるというものである。  その予測は大抵の場合、裏切られることがなく、またどれも水準以上の面白さを保っているのだから、ある意味でとても信頼に値するのが船戸ブランドな...
  • gelmanium
    ゲルマニウムの夜 作者:花村萬月 発行:文藝春秋 1998.9.20 初版 価格:\1,238  れっきとした芥川賞受賞作。何せ発表誌が『文學界』。狙ったな、萬月さん。  これまで萬月作品にジャンル分けなんて無意味だとは感じていながら、彼の作品は天性のハードボイルドだ、などとほざいていた。彼の生き様が、たとえようのないほど「悪」であり、尋常でない道程を経ているから、花村萬月という作家自体にハードボイルドという言葉を当てはめていた。  かつてドラッグをやっていたのに、ある年齢で突然それをやめた。酒、煙草もやめると決断しては、それを実行している意思力。ブルース・ギターはそれで金を取れる腕を持ち、大型バイクで旅をする。そして何と言っても天才的に文章の優れた男。高く細い声、やわらかな言葉遣い、耐えない笑顔……本当に迫力のある人というのは、外観はソフトな人な...
  • 長い長い殺人
    長い長い殺人 題名:長い長い殺人 作者:宮部みゆき 発行:光文社 1992.09.15 初版 価格:\1,400  ある時期に買った本なのだが、しまい込んでしまったまま忘れ去り、それを15年も経ってから取り出して突然読み始める、というようなことをあなたはするだろうか。ぼくは滅多にそんなことはしないで、そのまま読まずに終わってしまうか、そのまま忘れ続けるままか、ということが多いように思う。いずれにせよ、我が家には読まずに置かれている本が山のように眠っている。もしかしたらもう一生本を買わなくても、これらの本だけで足りてしまうのかもしれない。年金生活に備えて、これはこれで持っていても悪いことではないのかもしれない。  さて、そんな眠れる本の一冊が、珍しいことに書棚の奥から取り出されることになった。きっかけは、WOWOWが自社製作で作るドラマWでこの作品...
  • gogono
    午後の磔刑 王国記V 著者:花村萬月 発行:文藝春秋 2005.01.30 初版 価格:\1,500  芥川賞を獲得した短編『ゲルマニウムの夜』からずっと、のそのそとしたペースながらも進行している萬月ワールドの核になるサーガ『王国記』も、はや6冊目になる。『王国記 V』の副題を冠しながらなぜ5冊目ではなく6冊目であるのかというと、最初の短編集『ゲルマニウムの夜』は、勘定に入っていないからだ。その頃には『王国記』という、いわばサーガ・タイトルは、どこにも記されていない。  『ゲルマニウムの夜』に続くサーガ第2冊目が『王国記』であり、これは中編二作が収録。以下、この作品集は中編二作を収録する形で目下のところ5冊が刊行されている。連作中編の形でサーガを継続する形でありながら、やはりしっかりとロング・ストーリーを軸に、個性的なキャラクターたちが、変化を繰り返している...
  • aoihane
    青い翅の夜 王国記IV 作者:花村萬月 発行:文藝春秋 2004.01.30 初版 価格:\1,429  『むしろ揺り籠の幼児を』と表題作『青い翅の夜』と中編二篇を収めた一冊。前作『雲の影』からそのままダイレクトに引き継いだ『むしろ揺り籠の幼児を』では五島列島を離れ、東京へ戻る朧と教子を朧の一人称で、『青い翅の夜』は赤羽神父とともに朧の子<無>を育てている百合香との経緯をジャンの視点で描いている。  本書だけ読んでもこの作品世界の全体像は見え難いと思うが、基本的には『王国記』は連作中短編で構成された一大叙事詩である。元は芥川賞受賞作品『ゲルマニウムの夜』でスタートするが、萬月作品としては相当に力の入った大作であるように思う。最近の萬月作品は大作狙いが多く、ただでさえワーカホリックぶりが目立つが、その中でも本シリーズは取り分け永いおつきあいそうになりそうな気配...
  • 花村萬月
    花村萬月 <性と暴力の極北に立つ文学>  血と暴力。発情と性交。男と女。国家を越え、法を越え、表現の極北に迫る作家。唯一無二。今、日本で最もやっかいなものごとを表現し尽くしている作家が、花村萬月である。一度、ファンとして氏と話す機会を得たことがある。北海道のこと。旅のこと。ブルース・ギターのこと。そしてそれらを題材にした作品のこと。誰の胸にもある混沌を、惜しげもなく表情に出してしまう人だなとの印象がある。作家に見えない。それでいて、最高の文章を駆使する人である。現代日本の頂点に立っている作家だと、ぼくは確信しているのだが。 王国記シリーズ ゲルマニウムの夜 1998 王国記 1999 汀にて 2001 雲の影 2003 青い翅の夜 2004 午後の磔刑 2005 象の墓場 2006 神の名前 2008 風の篠 2010 百万遍シリーズ 百万遍 青の時代 20...
  • 飯嶋和一
    飯嶋和一 長編小説 神無き月十番目の夜 1997.06
  • 逢坂剛
    リンク名 逢坂 剛 公安警察シリーズ 裏切りの日日 1981 百舌の叫ぶ夜 1986 幻の翼 1988 砕かれた鍵 1992 よみがえる百舌 1996 鵟の巣 2002 岡坂神策シリーズ クリヴィツキー症候群 1987 十字路に立つ女 1989 ハポン追跡 1992 あでやかな落日 1997 カプグラの悪夢 2001 墓石の伝説 2004 牙をむく都会 2006 イベリア・シリーズ イベリアの雷鳴 1999 遠ざかる祖国 2001 燃える蜃気楼 2003 暗い国境線 2005 鎖された海峡 2008 ウエスタン アリゾナ無宿 2002 逆襲の地平線 2005 禿鷹シリーズ 禿鷹の夜 2000 無防備都市(禿鷹の夜 2) 2005 禿鷹狩り 2006 ノンシリーズ長編 スペイン灼熱の午後 1984 カディスの赤い星 1986 さまよえる脳髄 1988 斜影はるかな...
  • マーヴィン・H・アルバート Marvin Hubert Albert
    マーヴィン・H・アルバートMarvin Hubert Albert/ニック・クォリイ Nick Quarry 長編小説 セメントの女 1961 横山啓明訳 マフィア殺戮 1973 平尾圭吾訳(ニック・クォリイ Nick Quarry名義) 標的 1978 井坂清訳 リラ作戦の夜 1983 井坂清訳
  • 浅倉卓弥
    浅倉卓弥 長編小説 四日間の奇蹟 2003 君の名残りを 2004 雪の夜話 2005 北緯四十三度(よんじゅうさんど)の神話 2005 短編集 ビザ-ル・ラヴ・トライアングル 2007 エッセイ、その他 ライティングデスクの向こう側文章から小説にいたる技術 2006
  • ジャック・ケッチャム
    ジャック・ケッチャム Jack Kecthum 長篇小説 オフシーズン 金子 浩訳 1980 隣の家の少女 金子 浩訳 1989 襲撃者の夜 金子 浩訳 1991 ロード・キル 有沢義樹訳 1994 老人と犬 金子 浩訳 1995 オンリー・チャイルド 有沢芳樹訳 1995 地下室の箱 金子 浩訳 2001 黒い夏 金子 浩訳 2001 中編小説集 閉店時間 金子 浩訳 2001-2007
  • 小川勝己
    小川勝己 長編小説 葬列 2000 彼岸の奴隷 2001 眩暈を愛して夢を見よ 2001 まどろむベイビ-キッス 2002 撓田村事件 ―iの遠近法的倒錯― 2002 ロマンティスト狂い咲き 2005 イヴの夜 2006 この指とまれ GONBEN 2007 純情期 2008 短編集 ぼくらはみんな閉じている 2003 あなたまにあ 2004 狗 2004
  • スリープウォーカー
    スリープウォーカー 題名:スリープウォーカー マンチェスター市警エイダン・ウェイツ 原題:The Sleepwalker (2019) 著者:ジョセフ・ノックス Joseph Knox 訳者:池田真紀子 発行:新潮文庫 2021.09.01 初版 価格:¥1,050  警察小説でありながら組織臭を全く感じさせない一匹狼の刑事エイダン・ウェイツ三部作の掉尾を飾る作品である。一作目を書くのに八年を費やして作家デビューとなったジョセフ・ノックスは英国作家でありながら、相当にパルプ・フィクションのサイドに位置する作家であるように思う。ノワールの系列。  交代制ではない夜間勤務刑事というエイダンの所属する警察の職制にも驚かされる。ずっと、ずっと夜勤なの? という設定が英国では普通なのだろうか? 待てよ、そういえば、マイクル・コナリーのボッシュの最近のシリーズ・ヒ...
  • migiwa
    汀にて 王国記 II 著者:花村萬月 発行:文藝春秋 2001.2.20 初版 価格:\1,286  『ゲルマニウムの夜』に始まったこの中短編による連作大河<朧(ろう)>のシリーズも三作目。芥川賞を射止めただけあって、非常に濃度の高い空気を感じさせる点では他の萬月作品を圧倒する迫力を持っていたシリーズ、のはずであった。文体も意識して変えている節があり、あくまで純文学分野で通用する日本文学の頂点を目差すべく、萬月がかなりの意欲を注いだシリーズ、のはずであった。そう確信していた。しかし……。  ところが、この本では落ちた。ではなく「墜ちた」、いや、「堕ちた」であるな、間違いなく。  作品を支配する空気の濃度が歴然として薄まった。言葉遊を好む傾向が萬月にあるのは今さら言うまでもないことだが、この本に収録されている二作に関しては、中弛み時代の萬月がまたまた...
  • 永井するみ
    永井するみ 長編 枯れ蔵 1997 樹縛 1998 ミレニアム 1999 大いなる聴衆 2000 防風林 2002 唇のあとに続くすべてのこと 2003 希望 2003 俯いていたつもりはない 2004 ビネツ―美熱 2005 さくら草 2006 ダブル 2006 欲しい 2006 カカオ80%の夏 2007 義弟 2008.04 グラニテ 2008.07 連作中短編集 ランチタイム・ブルー 1999 歪んだ匣 2000 ボランティア・スピリット 2002 年に一度、の二人 2007 ドロップス 2007 グラデーション 2007 中・短編集 天使などいない 2001 隣人 2001 ソナタの夜 2004
  • 東野圭吾
    東野圭吾 加賀恭一郎シリーズ 卒業 雪月花殺人ゲーム 1986 眠りの森 1989 どちらかが彼女を殺した 1996 悪意 1996 私が彼を殺した 1999 嘘をもうひとつだけ(連作短編集)  2000 赤い指 2006 新参者 2009 麒麟の翼 2011 祈りの幕が下りる時 2013 探偵ガリレオ・シリーズ 探偵ガリレオ(連作短編集) 1998 予知夢(連作短編集) 2000 容疑者Xの献身 2005 ガリレオの苦悩(連作短編集) 2009 聖女の救済 2009 真夏の方程式 2011 虚像の道化師 ガリレオ7(連作短編集) 2012.08 禁断の魔術 ガリレオ8(連作短編集) 2012.10 沈黙のパレード 2018 透明な螺旋 2021 長編小説 放課後 1985 白馬山荘殺人事件 1986 学生街の殺人 1987 11文字の殺人 1987 魔球 1988 香子の夢 ...
  • yamori
    守宮薄緑(やもりうすみどり) 作者:花村萬月 発行:新潮社 1998.3.25 初版 価格:\1,400  第3短編集だって、ほんとうなのか? 本をいっぱい出している作家であるのに、短編集は三冊目? 『ヘビイ・ゲージ』と何だっけ。『わたしの鎖骨』か。『ゲルマニウムの夜』『笑う山崎』『渋谷ルシファー』などの連作短編集は別勘定というわけか。思えば300ページ足らずの軽長篇小説(失礼な言い方かもしれないが)がほとんどであったのかもしれない。あの長いトンネルの時代にそのほとんどの軽長篇(やはり失礼か)を書きなぐり続けてきて(これも失礼かもしれないんだが)、ぼくはずいぶんその間我慢してともかくも萬月という作家だけは追いかけてきたんだ。  その頃には萬月も多作を批判されていたのだが、その渦中にある彼は、あとがきの中で多作で質を落としているわけじゃない、と吠えたことがあ...
  • 桜庭一樹
    桜庭一樹 赤朽葉家シリーズ 赤朽葉家の伝説 2006.12 製鉄天使 2009.10 長編小説 君の歌は僕の歌 2002.02 赤×ピンク 2003.02 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet 2004.11 推定少女 2004.09 少女には向かない職業 2005.09 ブルースカイ 2005.10 少女七竈と七人の可愛そうな大人 2006.06 青年のための読書クラブ 2007.06 私の男  荒野 2008.05 ファミリー・ポートレイト 2008.11 伏 贋作・里見八犬伝 2010.11 ばらばら死体の夜 2010 傷痕 2011.01 エッセイなど 桜庭一樹日記 BLACK AND WHITE 2006.03 桜庭一樹読書日記 少年になり、本を買うのだ。 2007.07
  • らせん階段
    らせん階段 題名:らせん階段 原題:Some Must Watch (The Spiral Staircase) (1933) 作者:エセル・リナ・ホワイト Ethel Lina White 訳者:山本俊子 発行:ハヤカワ・ミステリ 2003.9.30 初版 価格:\1,200  1946年に公開されたアメリカ映画『らせん階段』(ロバート・シオドマク監督、ドロシー・マクガイア主演)の原作だそうだが、本よりも映画の方が人気が高かったのかもしれない。ポケミス名画座でも、翻訳要望の強さでは『ハイ・シエラ』に続いて第二位という強力さである。しかもその後TVドラマを含めれば三度もリメイクされている。個人的には1975年の劇場版リメイク作品を見てみたい気がしている。ジャクリーン・ビゼット主演だから。  なぜさほどに人気が高いかという理由の一つに、当時ヒッチコック...
  • ブルーマーダー
    ブルーマーダー 題名:ブルーマーダー 作者:誉田哲也 発行:光文社 2012.11.20 初版 価格:\1,600  姫川玲子のシリーズが『ストロベリーナイト』のタイトルでドラマ化され、さらに今年は『インビジブルレイン』が映画化された。映画にもなった『インビジブルレイン』は、姫川の許されぬ恋と、彼女の抱える闇というテーマが大写しになった作品であったが、ほぼ原作に忠実に描かれた中で唯一、組対課の刑事・下井の存在は映画化にあたって無視されてしまっている。  しかし映画であれ、原作であれ、そのラストシーンで解散を余儀なくされる姫川班のその後については、シリーズ追っかけ読者としては極めて興味深い。  その後のことはテレビドラマでは短編集のようなドラマを組んで、特別番組として、奇しくも映画封切りの本年1月26日の夜に放映された。内容は『感染遊戯』を原作...
  • ダウンタウン
    ダウンタウン ダウンタウン (ハヤカワ・ミステリ文庫) ダウンタウン (Hayakawa novels) 題名:ダウンタウン 原題:DOWNTOWN 著者:エド・マクベイン Ed McBain 訳者:羽田詩津子 発行:早川書房 1990年10月 初版 価格:2000  クリスマスにぜひ読んで欲しいマクベインの取っておきの冒険譚。数年前に村上春樹が『ノルウェイの森』を出して以来、なんとなくクリスマスに装丁の奇麗な本をプレゼントするなんて気のきいた風習が流行り始めたみたいだけれども、この本もそれらしき狙いを窺わせる、和田誠の手によるメルヘンチックなカバーを身に纏っている。ぼくはこういう策略には手もなく乗ってしまってかまわないと思っている。ストーリーは、クリスマス・イブの夜に始まる三十数時間の物語。舞台はもちろんニューヨーク。物語中に溢れる赤と緑の色彩。これはま...
  • ダーク・アワーズ
    ダーク・アワーズ 題名:ダーク・アワーズ 上/下 原題:The Dark Hours (2021) 著者:マイケル・コナリー Michael Connelly 訳者:古沢嘉通 発行:講談社文庫 2022.12.15 初版 価格:各¥900  ジャック・マカボイ、ミッキー・ハラーと続いていたコナリー・ワールドだが、久々にハリーボッシュ&レネイ・バラードの登場でぼくは新年を美味い酒とともに迎えさせて頂いた。美味い酒というのは銘柄とか酒の種類のことではなく、良い物語が美味しくさせてくれる酒のこと。  今回はタイトルの通り、夜の事件なので主人公役はほぼレネイ・バラードと見て良い作品であった。そもそもハワイからやって来たバラードは、その後の展開で愛犬を失い、ビーチのテント生活から現在は普通のマンションに居を移している。いろいろ初期設定から変化を遂げている。...
  • 田口ランディ
    田口ランディ 長編小説 コンセント 2000 アンテナ 2000 モザイク 2001 7 days in BALI (『オクターブ』2007に改題改稿) 2002  木霊 2003 ひかりのメリーゴーラウンド 2005 短篇集 ミッドナイト・コール 2000 縁切り神社 2001 オカルト 2001 昨晩お会いしましょう 2001 その夜、ぼくは奇跡を祈った 2001 富士山 2004 ドリームタイム 2005 被爆のマリア 2006 ソウルズ 2006 エッセイ スカ-トの中の秘密の生活 1999 もう消費すら快楽じゃない彼女へ 1999 馬鹿な男ほど愛おしい 2000 できればムカつかずに生きたい 2000 からだのひみつ 2000 ぐるぐる日記 2000 根をもつこと、翼をもつこと 2001 こころのひみつ 2002 くねくね日記 2002 ハーモニーの幸せ 2002 田...
  • 戸梶圭太
    戸梶圭太 長編小説 闇の楽園 1999 溺れる魚 1999 レイミ 聖女再臨 2000 ギャングスタードライブ 2000 赤い雨 2000 The twelve forces 2000 なぎらツイスター 2001 湾岸リベンジャー 2001 未確認家族 2001 牛乳アンタッチャブル 2002 アウトリミット 2002 燃えよ!刑務所 2003 ドクター・ハンナ 2003 CHEAP TRIBE―ベイビー、日本の戦後は安かった 2003 あの橋の向こうに 2003 天才パイレーツ 2004 自殺自由法 2004 クールトラッシュ―裏切られた男 2004 ビーストシェイク―畜生どもの夜 2005 グルーヴ17(セヴンティーン)  2005 嘘は止まらない 2005 東京ライオット 2005 ちぇりあい 2006 宇宙で一番優しい惑星 2006 もっとも虚しい仕事―ブラッディースクランブル...
  • james ellroy
    ジェイムズ・エルロイ James Ellroy <ノワールの核>  自ら母が殺害され、その犯人は今もって不明。悪の獣道を歩んできたエルロイは、天才的で破壊的な文体を駆使して、世界に暗黒のクロニクルをつきつけてみせた。今も、母の死を見つめ、闇に潜む暴力を捜し求めるエルロイの、魂の悲鳴が綴ってきたその作品群は、エルロイの生そのものであるように見える。唯一無比の圧倒。現代のドストエフスキー。これまでに出逢った世界最高峰の作家、エルロイは間違いなくその一人である、と豪語しよう。 ホプキンズ三部作 血まみれの月 1984 小林宏明 ホプキンズの夜 1984 小林宏明 自殺の丘 1986 小林宏明 1950年代、ロス暗黒史四部作 ブラック・ダリア 1987 吉野美恵子 ビッグ・ノーウェア 1988 二宮 馨 LAコンフィデンシャル 1990 小林宏明 ホワイト・ジャズ 1...
  • 梁 石日
    梁 石日 長編小説 族譜の果て 1989/01 夜を賭けて 1987/04 夜の河を渡れ 1990/11 子宮の中の子守歌 1992/05 断層海流 1993/10 雷鳴 1995/10 Z 1996/06 血と骨 1998/02 死は炎のごとく(「夏の炎」へ改題) 2001/01 睡魔 2001/04 裏と表 2002/02 終りなき始まり 2002/08 闇の子供たち 2002/11 異邦人の夜 2004/10 海に沈む太陽 2005/06 カオス 2005/09 ニューヨーク地下共和国 2006/09 エッセイ・評論 タクシ-ドライバ-日誌 1984/09 タクシー狂躁曲 1987/09 ドライバー・最後の叛逆―タクシードライバーならではの知恵袋 1987/10 アジア的身体 1990/04 男の性解放 なぜ男は女を愛せないのか 1992/12 タクシードライバーほろにが日記...
  • 天切り松 闇がたり
    天切り松闇がたり  第一巻 闇の花道 題名:天切り松 闇がたり 作者:浅田次郎 発行:徳間書店 1996.7.31 初版 価格:\1,500  留置場の味が懐かしくなって、わざわざここの夜を過ごしに来たかつての大泥棒が、語る5夜の悪漢連作物語。もはや悪漢小説では定評があるこの作者だが、これはどちらかと言えばドタバタ喜劇の乗りではなく、『地下鉄(メトロ)に乗って』のような、これまた作者特有のノスタルジィの方を前面に押し出した佳品。  今の世間に対比して語る大泥棒の少年時代、時は大正デモクラシィ。花の東京の風物が素晴らしい描写力で読者を異次元の旅に連れ出してくれ、そこで展開される作者十八番の浪花節感動篇の数々。しみじみ楽しい作品集だなあと感じさせてくれる。  三人称による大正の物語と、留置場での現代の大泥棒の江戸弁のリズミカルな語り口とが、フラッ...
  • ジャック・ヒギンズ
    ジャック・ヒギンズ Jack Higgins リーアム・デブリン登場作 鷲は舞い降りた 1975 菊池 光訳 鷲は舞い降りた【完全版】 1975 菊池 光訳 テロリストに薔薇を 1982 菊池 光訳 黒の狙撃者 1983 菊池 光訳 鷲は飛び立った 1991 菊池 光訳 ショーン・ディロン・シリーズ 嵐の目 1992 黒原敏行訳 サンダー・ポイントの雷鳴 1993 黒原敏行訳 密約の地 1994 黒原敏行訳 悪魔と手を組め 1996 黒原敏行訳 闇の天使 1997 黒原敏行訳 大統領の娘 1997 黒原敏行訳 ホワイトハウス・コネクション 1998 黒原敏行訳 審判の日 2000 黒原敏行訳 復讐の血族 2001 黒原敏行訳 ジャック・ヒギンズ名義 復讐者の帰還 1962 槙野 香訳 地獄の群集 1962 篠原 勝訳 虎の潜む嶺 1963 伏見威蕃訳 裏切りのキロス 1963 ...
  • 愛をひっかけるための釘
    愛をひっかけるための釘 題名:愛をひっかけるための釘 作者:中島らも 発行:集英社文庫 1995.7.25 初版 価格:\380(本体\369)  中島らもはテレビで見るとただの関西人なんで、めちゃくちゃ面白い人だけど、やはりこの人の中には底知れぬ闇があると思うのである。底知れぬ闇は時には『人体模型の夜』『白いメリーさん』のような恐怖小説のかたちを取って、時には『ガダラの豚』のような悪魔的な破壊小説のかたちを取って、そしてときには『今夜すべてのバーで』のごときリアルな肉体的恐怖を伴って、常に死に近いところに彼を立たせているみたいだ。  その常闇の力が、あるときはひきつるような笑いを生み、あるときは虚しいほどに笑いを掘削して行ったりもする。でもこの人の根底にあるのは、おごりや皮肉を知らぬ、底知れぬ誠意なのであるとぼくは思う。  その誠意の一部が...
  • okokuki
    王国記 作者 花村萬月 発行 文藝春秋 1999.12.15 初版 価格 \1,238  『ゲルマニウムの夜』の続編。中編二つ。本来前作も『王国記』のタイトルでと作者は言っていた。そしてこれら連作中短編小説集は、長大なるサーガの開始であることも。なのに、いきなりこのタイトルでいいのか? と版元に問いただしたくなる。  前作の続編とは言っても物語が閉じてしまったわけではない。ただの続編。そして次が期待される中編小説二つっきり……。いいのか? ほんと。  次回作は『王国記 II』とでも付けるつもりなのか? 出版社の刹那主義というか現実主義というか、ぼくはわからん。読者を心配させるな。ずーっと長い間待ったうえで『王国記』と題を付して、超分厚い本を出版してくれてもぼくは良かったのだ。  こんな風に分散して世に出て行って、そのうち誰も読まなくなる、っ...
  • カジノ・ムーン
    カジノ・ムーン カジノ・ムーン (扶桑社ミステリー) 題名:カジノ・ムーン 原題:Casino Moon (1994) 作者:Peter Blauner 訳者:岡田葉子 発行:扶桑社ミステリー 1997.9.30 初版 価格:\686  アトランティック・シティ、燦然たるカジノの夜、シチリア出のけちなマフィアたちとバイオレンス……そんな中であがきにあがき、アメリカン・ドリームと堅気の生活を夢見る若者が、ボクシングのマネージメントという一大事業に身を乗り出す。  地味ながらもこれだけの素材の良さと、純文学的とも言えそうな凝った文体、描写の魅力等で、引っ張らってゆく力技の一作。マフィアが大物でなくどこか「一家」を匂わせる雰囲気で、ボスよりもその右腕たちの義理人情の世界が日本の侠客を思わせたりもするが、やはり暗黒街は「非情」の二文字で綴られている。いいムードの...
  • 風の王国
    風の王国 風の王国 第一巻 翔ぶ女 風の王国 第二巻 幻の族 風の王国 第三巻 浪の魂 題名:風の王国 第一巻 翔ぶ女 第二巻 幻の族 第三巻 浪の魂 作者:五木寛之 発行:アメーバブックス 2006.12.20 初刷 価格:各\1,000  クリスマス・プレゼントなどに似合いそうな赤・青・緑というスタイリッシュな装丁の3巻セットだ。横組での製本は「若い世代にも読みやすい」ためだそうだ。若い世代ではない私には、教科書を読んでいるようで、正直、かえって読みにくいくらいだった。しかし、作品の内容はとりわけクリスマス・プレゼント向きでもなければ、特別若い世代向きというわけでもない。  テーマは、むしろ大きく、重い。一言で言うなら、サンカ、あるいは山窩と呼ばれる漂泊の民にフォーカスした物語である。映画では萩原健一・藤田弓子主演の『瀬降り物語』で取り上げられ...
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