wiki クライムウェイヴ(Sysop読書録 活字をめぐる冒険) 内検索 / 「降臨の群れ」で検索した結果

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  • 降臨の群れ
    降臨の群れ 降臨の群れ 題名:降臨の群れ 作者:船戸与一 発行:集英社 2004.6.30 初版 価格:\1,900  船戸与一にいよいよ飽きが来たのかな、と自問するのは、最近彼の新作が出ると、全作完読する読者であるぼくとしては、とりあえず購入までは躊躇わないのだが、すぐに読もうという気が起こらないからなのだ。  ある意味で、彼の作品は舞台装置が変わっても、その作品がある程度想像しやすいということが、そのひとつの理由にもなっていると思う。紛争のある国際舞台のどこかで、宗教や民族の長く血塗られた歴史の果てに、現代もなお、欲望と憎悪と復讐にうずく一群のキャラクターたちが、血と硝煙の宴を繰り広げるというものである。  その予測は大抵の場合、裏切られることがなく、またどれも水準以上の面白さを保っているのだから、ある意味でとても信頼に値するのが船戸ブランドな...
  • 船戸与一
    ...離譚 2004.3 降臨の群れ 2004.6 蝶舞う館 2005.10 河畔に標なく 2006.03 藪枯らし淳次 2008.01 夜来香海峡 2009.05 新・雨月 戊辰戦役朧夜話 2010.02 中・短編 祖国よ友よ 1980.10 銃撃の宴 1984.6 緑の底の底 1989.10 蝕みの果実 1996.10 新宿・夏の死 2001.5 三都物語 2003.9 エッセイ、他 硬派と宿命 はぐれ狼たちの伝説 1977.11 叛アメリカ史 1977.11 諸士乱想トーク・セッション18 1994.6 国家と犯罪 1997.5 翻訳 闇の中から来た女 1979.3 ダシール・ハメット
  • 河畔に標なく
    ...)、インドネシア(『降臨の群れ』)、ベトナム(『蝶舞う館』)と来て、そしてさらに本書『河畔に標なく』では、ミャンマーに材を取ることになる。  ミャンマーといえば、ぼくの年代ではビルマといった方が馴染みがあるのだが、日本での不法就労者関連ニュースでも、タイやフィリピンに継いで、結構登場頻度が多い印象がある。  さて、そのミャンマーにも、やはり船戸与一の求めてやまない素材であるところの少数民族はやはり存在する。カチン州という国境地帯がまさにその舞台で、しかも政府とは8年に渡って平和協定を結んでいるという。しかし、そこには複数の言語の違う民族が、ゲリラ組織を今も保っているといういつもながらの図式が、やはり存在するのだ。  しかし、そのゲリラたちも、次世代の若者たちが次第にビルマ人に同化させられてゆくなど、歴史の持つ曖昧な融解現象として、民族問題は、戦闘から停戦、妥協...
  • ジェイムズ・カルロス・ブレイク
    ジェイムズ・カルロス・ブレイク James Carlos Blake 長編小説 無頼の掟 2002 加賀山卓朗訳 荒ぶる血 2003 加賀山卓朗訳 掠奪の群れ 加賀山卓朗訳
  • オーギュスト・ル・ブルトン Auguste Le Breton
    オーギュスト・ル・ブルトン Auguste Le Breton 長編小説 男の争い 1953 野口雄司訳 シシリアン 1970 岡村孝一訳 ノンフィクション 無法の群れ -フランス暗黒街の回想 1980 長塚隆二訳
  • アウトリミット
    アウトリミット 題名:アウトリミット 作者:戸梶圭太 発行:徳間書店 2002.3.31 初版 価格:\1,600  冒険小説の王道をゆくような立派な(?)タイトルがついているのだが、カバーや装丁を含めてどこからどう見ても戸梶プロダクツの気配がする一冊。この人の真骨頂の一つであるグロいバイオレンスというのが、縦横に生きていて、まあ言わば『レイミ』のようには、同じグロでも死んでいない。  ただでさえ暑い盛りの夏の夕方、さらに暑苦しい東京下町の古く貧乏な街の一区画が舞台であり、主人公は血なまぐさい死体を抱えて逃げ始める逆走刑事。実に沢山の戸梶系キャラクターが次々とこの下町路地裏文化とでも言うべき場所に集合してくるのだが、いつにも増して爆発度がすさまじいのは、なんと隅田川花火大会の夕方、どこを向いても人や車でいっぱいというシチュエイションまでつくっちまっ...
  • 青年のための読書クラブ
    青年のための読書クラブ 題名:青年のための読書クラブ 作者:桜庭一樹 発行:新潮社 2007.06.30 初版 価格:\1,400  奇妙なタイトルのこの小説は、内容もまた奇妙である。カトリック系女学院の古今にわたるエピソードを、マイナーな部活動である読書クラブ・メンバーの各時代の記録という形で綴った連作短篇小説だ。  少しばかりトリッキーな短篇が次々と語られるが、ジャンルとしては一般娯楽小説とでもいうような、対象読者を絞りにくい曖昧な部類に属するのだろうか。読中の感覚としては、なぜだか浅田次郎を読んでいるような錯覚を覚えた。  つまり、これまでの桜庭作品ではないのである。大仰なレトリックを用いた語りすぎの感すらある文体は、ユーモアを交えながら、余裕あるリズムで優雅を意識して書かれているかに見え、それは彩り彩りの時代背景に影響を受けない、...
  • 越境捜査
    越境捜査 題名:越境捜査 作者:笹本稜平 発行:双葉社 2007.08.25 初版 価格:\1,500  笹本稜平は、とにかくプロットで勝負したがる作家である。一作目『時の渚』で抱いた印象では、情緒型ハードボイルド作家というイメージだったのだが、第二作『天空への回廊』は、フレデリック・フォーサイスのような海外型の大スケール冒険小説であったから、先の印象を一掃せざるを得なくなった。その後、どちらかと言えばハードボイルド作家というよりも、スケール型冒険小説作家として、緻密な謀略、絡み合った力関係、といった組織優先型の大型ストーリーを売り物にしているようだった。一方でキャラクターが立っていないなどの批判の声も強く、ある意味、時代のニーズに対する弱さを露呈してもいた。 同じようなことを海外リーガル・サスペンス作家、フィリップ・マーゴリンが言われている。法廷...
  • 約束された場所で
    約束された場所で underground 2 約束された場所で (underground2) 約束された場所で underground 2 題名:約束された場所で underground 2 作者:村上春樹 発行:文藝春秋 1998.11.30 初版 価格:\1,524  地下鉄サリン事件の被害者インタビューで構成した『アンダーグラウンド』の出版から約一年半が経過しての続編の本書である。形式の上でストレートな続編ではあるが、今度は反対方向、つまり加害者としてのオウム信者たちへのインタビューを構成した一冊である。  前作との最大の相違点は、自由に話をさせるだけではインタビューが主題から流れるため、作者がどうしても軌道修正を施さねばならないという点であろう。作者は矛先の流れやすいインタビュー内容を、最後には必ず地下鉄サリンという事実の方向へと修正させている。...
  • 緑の底の底
    緑の底の底 緑の底の底 (徳間文庫) (↑アマゾンで購入) 題名:緑の底の底 作者:船戸与一 発行:中央公論社 1989.10 初版 価格:\1200  長編『緑の底の底』(書き下ろし)と中編『メビウスの時の刻(とき)』の2作が併載された、ハイ・コスト・パフォーマンスの1冊である。どちらの1作だけをとっても、そのへんのスカスカ本10冊分を軽く上回る高密度・高質量の作品に仕上がっている。まあ、このことこそが船戸与一という作家の最大の魅力なのかもしれない。張り詰めた異様な緊張感の持続。計算し尽くされたプロットとトリック。1人称の語り口による巧妙な物語の生成。あらゆる意味でスケールの大きな作家だと思う。  『緑の底の底』は、ベネズエラの奥地への秘境探検に絡ませた、厚みのあるバイオレンス小説。幻の白いインディオを追って、一癖も二癖もある男女の群れがオリノコ川...
  • 夜のオデッセイア
    夜のオデッセイア 夜のオデッセイア (徳間文庫) (↑アマゾンで購入) 題名:夜のオデッセイア 著者:船戸与一 発行:徳間文庫 1985.04.15 初版 価格:\540  北アメリカ大陸を旅するリムジンの名はオデッセイア。祖国を追われた二人の日本人(ボクサーとそのマネージャー)がしがない旅芸人の一座。彼らの芸は専ら八百長ボクシングだ。彼らのリムジンに突如乗り込んでくるのはプロレスでタッグ・チームを組んでいたという二人のジョー。互いに似通った二人の巨人は好みのドリンクからウイスキー・ジョー&ブランデー・ジョーと区別される。彼らの出現と共に、白日夢のように濃密なストーリーがスタートする。  たまらなく船戸らしい物語である。人生をわずかにずれた男女たちが、パーレビの隠し財産を求めて、ブルックリンからマイアミ、ニューオーリーンズ、フェニックスへと北米大陸中...
  • 探偵くるみ嬢の事件簿
    探偵くるみ嬢の事件簿 探偵くるみ嬢の事件簿 (光文社文庫) 題名:探偵くるみ嬢の事件簿 作者:東 直己 発行:光文社文庫 2002.6.20 初版 価格:\495  これは以前廣済堂文庫から発売され、長らく絶版状態になっていた『ソープ探偵くるみ事件簿』を改題して光文社文庫より新装再版された連作短編集。時期的には、ちょうど処女作『探偵はバーにいる』の発刊された翌年の1993年『月刊小説』に連載されていたものに、1997年廣済堂文庫として纏められたときの書き下ろし二作を加えた作品集ということになる。  東直己が作家生活のスタートを切り始めた時期の、しかも大変興味深い改題前タイトルの作品集ということもあって、絶版が惜しまれていたのだが、作者が有名になれば遡って再版されても商業的には文句なしという良い例なのだろう。  すすきの探偵シリーズにおいても、あるいは...
  • 怪物の木こり
    我らが少女A 題名:怪物の木こり 著者:倉井眉介 発行:宝島社 2019.01.29 初版 価格:¥1,380  完全なる読者応募型である「このミステリーがすごい!」大賞(宝島社)はリスクは伴うが、海堂尊のような大型作家も誕生させる。新人作家としては高額な賞金を目当てで応募される若い意欲も集められ、最初は原石でも将来性を見込んで選者たちが作品の何を見るか、作家のどこを見るかという辺りにも興味を惹かれる。何よりも大賞を獲る作品とは今、どんなものなのだろうか? 毎年でなくとも、数年に一度レベルで、国産ミステリの現在の風を伺うために読んでみた。  アイディアや小道具には凄いひらめきが散らばっている。脳内チップ。洋館に閉じ込められた子供たち。野に放たれたサイコパスの群れ。トリッキー極まりない時制のずらし。さらに表題の『怪物の木こり』という童話が物語中に「幕間」...
  • 死者の日
    死者の日 死者の日 題名:死者の日 原題:Dia De Los Muertos (1997) 作者:Kent Harrington 訳者:田村義進 発行:扶桑社 2001.09.30 初版 価格:\1,524  『転落の道標』を読んだときには、エルロイとトンプスンの中間地点に立つ作家と感じていたケント・ハリントン。しかし本作を読んでみてこうも印象が違うと、まだまだこの作家の才能は出尽くしてはいないのだとの期待感が募ってくる。本書はよりエルロイに近い熱気を感じさせる作品。  舞台はメキシコのティファナ。破滅への秒読みを開始した麻薬取締官の24時間が始まる。最悪に最悪を重ねるなかで、ピュアな純愛を持ち続ける男。よりリアルで偶像にはなり切れない、弱さだらけの女。何とも距離感がありながら、情念と人生が絡まり合う関り方だ。皮肉で過酷で人生そものの男女関係だ。これ...
  • 弥勒
    弥勒 [429] Client error `POST https //webservices.amazon.co.jp/paapi5/getitems` resulted in a `429 Too Many Requests` response { __type com.amazon.paapi5#TooManyRequestsException , Errors [{ Code TooManyRequests , Message The request was de (truncated...) [429] Client error `POST https //webservices.amazon.co.jp/paapi5/getitems` resulted in a `429 Too Many Requests` response { __type...
  • 復讐の狼
    復讐の狼 復讐の狼 (ハヤカワ文庫 NV 356) 題名:復讐の狼 原題:Un Vengeur est passe (1982) 作者:Jose Giovanni 訳者:佐宗鈴夫 発行:ハヤカワ文庫NV 1984.06.30 初版 1986.10.15 2刷 価格:\300  『穴』や『おとしまえをつけろ』など、触れた途端に切れるような作品。血が迸るような鋭い感性で描かれたあれらの初期作品から、さすがに四半世紀も経ってみると、ジョバンニという作家も犯罪者であった日々から遠く離れて、いいお爺ちゃんになってしまったという風に見える。少なくともこの作品を手に取ってみると、『生き残る者の掟』に見られたような敏感極まりない感受性の群れというものがすべて脱色され干からびてきているようにしか感じられない。  ストーリーには元々そう凝るタイプではなく、どちらかと言えば...
  • 特捜部Q -知りすぎたマルコ-
    特捜部Q -知りすぎたマルコ- 題名:特捜部Q -知りすぎたマルコ- 原題:Marco Effekten (2012) 著者:ユッシ・エーズラ・オールスン Jussi Adler-Olsen 訳者:吉田薫訳 発行:ハヤカワ・ミステリ 2014.07.15 初版 価格:\2,000  のっけからカメルーンでの殺人事件が描かれる。そしてデンマークでは銀行頭取と外務官僚によるカメルーン開発援助プロジェクトに関わる不正が密やかに進行する。スケールの大きい事件ではあるのだが、いきなりステージは一転する。  イタリアから不法入国したジプシーのような犯罪一族の生態に作者のペンは向けられる。恐怖に虐げられながらスリや置き引きなどの犯罪に手を染める少年の一団が都市の中に散開している。彼らは脱出不能の悪のリンクに閉じ込められた人生を選ぶことのできない無力者立ちで...
  • ただの眠りを
    ただの眠りを 題名:ただの眠りを 原題:Only To Sleep (2018) 著者:ローレンス・オズボーン Lawrence Osborne 訳者:田口俊樹 発行:ハヤカワ・ミステリー 2020.01.15 初版 価格:¥1,700  いつまでも語り継がれ、愛される私立探偵フィリップ・マーロー。またの名をハードボイルドの代名詞。卑しき街をゆく騎士道精神。作者チャンドラー亡き後、遺構を引き継いだロバート・B・パーカーの二作『ピードル・スプリングス物語』、『夢を見るかもしれない(文庫版で『おそらくは夢を』と改題)』、ベンジャミン・ブラックによる『長いお別れ』の続編『黒い瞳のブロンド』。そこまではマーローを如何に復活させるかを意図して書かれたもの。しかし本書は少し違う。  老いたマーローの活躍をえがく本書では、マーローは72歳。足を悪くし、杖を突く。一...
  • 警官の血
    警官の血 警官の血 上巻 警官の血 下巻 題名:警官の血 上/下 作者:佐々木 譲 発行:新潮社 2007.09.25 初版 価格:各\1,600  『うたう警官』シリーズ、そして『駐在刑事』と、ここのところ警察小説に新たな才能を遺憾なく発揮している佐々木譲が、その集大成というべき大作として完成させたのがこの作品。戦後三代に渡って警察官を継承した一家の大河小説である。もちろん大きくは戦後史を背景にしたビルディングス・ロマンとしての大きなうねりを読み取れるほどに、作者の小説史のなかで大きなエポックとなる作品であることは確実である。  戦後上野の難民の群れから、朝鮮戦争特需で復興に湧く東京の姿、日米安保協定の時代と全共闘の歴史、さらに現代へと連なる大きな歴史のさなか、二つの未解決殺人事件と駐在警官の謎に満ちた死があった。その息子による真相の追究と、そのさらに...
  • ブラックバード
    ブラックバード 題名:ブラックバード 原題:Blackbird (2017) 著者:マイケル・フィーゲル Michael Fiegel 訳者:高橋恭美子訳 発行:ハーパーBOOKS 2019.8.20 初版 価格:\1,194  犯罪者と少女の物語。いくつか思い当たるその手の映画がある。『レオン』。『ペーパームーン』。本書は、それらの映画と共通した風を感じさせる。少女の心の荒野。愛情に植えた小鳥のような心象風景。そして破天荒だが愛すべき存在として自分が頼るべきオヤジ、または父親的存在。  この物語での父親役は、職業的殺人者である。否。そもそもがサイコパスの殺人鬼である。8歳の少女と、この男の出会いは乱射現場。卵アレルギーのエディソン・ノース(おそらく偽名)は、マヨネーズを入れたハンバーガーに抗議したレストランで店員の対応に腹を立て、銃を乱射しまく...
  • tabiwo
    たびを 作者:花村萬月 発行:実業之日本社 2005.12.20 初版 価格:\2,800  まるで弁当箱。1000ページの著者最大長編作品が登場した。執筆は中断を挟んで9年半、編集担当者は四人を数えるという小説作成としては相当のスケールを持つ作品である。  一言で言うならロード・ノベル。著者が小説デビューに前旅専門誌に紀行文を寄せるライターであり、かつバイク乗りであることはよく知られているが、その著者の生身の原点に迫った作品としての渾身の書きっぷりからすると、本書はある意味でこの作家の金字塔であり、なおかつ亜流でもあるのかと思われる。  著者はバイオレンスとセックスの描写でエキセントリックな人であり、それを展開する土壌としてミステリ畑やノワールな風土に、著者の本意ではなくても結果的に顔が知られた人である。そうした過激さが売りである著者が、自分の体験...
  • 武揚伝
    武揚伝 武揚伝〈上〉 武揚伝〈下〉 武揚伝〈1〉 (中公文庫) 武揚伝〈2〉 (中公文庫) 武揚伝〈3〉 (中公文庫) 題名:武揚伝 上/下 作者:佐々木譲 発行:中央公論社 2001.7.25 初版 価格:各\2,200  ジャンルは時代小説。しかし中身は海洋冒険小説+戦記小説。いろいろな魅力が満載だし、文体は時代小説調でもないし、佐々木譲だし……ということでこの会議室に書いてしまうのだ。  昔、安部公房の『榎本武揚』という風変わりな(安部公房の作品はおしなべて風変わりなんだけれども)作品を読んだが、榎本武揚は最初から幕府を降伏させるために官軍から雇われたスパイだったか、あるいは寝返った将軍だったかという、極めて疑惑に充ちた存在として描かれていた。大戦後、戦犯として捕縛された憲兵の、牢獄での日々と榎本武揚の物語が同時並行するという点でこの...
  • 輓馬
    輓馬 輓馬 (文春文庫) 輓馬 題名:輓馬 作者:鳴海 章 発行:文春文庫 2005.11.10 初版 価格:\590  航空冒険小説そのものに興味のないぼくは、鳴海章という作家が、こんなに渋い作品を書くなんてことを全然知らなかった。ぼくがこの作家を意識し出したのは、つい最近、花村萬月『たびを』を読んでからのことだ。  『たびを』は、青年がスーパーカブで全国一周するという果てもない小説なのだが、旅も終盤に近づいた帯広で、主人公は不図したことから、作家・鳴海章に出会い、彼の自宅に数日間お世話になる。フィクションであるはずの小説に実在の作家を登場させてしまうというあたり、この二人の作家の私的な距離が何となく想像されようものである。  鳴海章という作家が、航空冒険小説ばかりではなく、最近では北海道を舞台にした北海道の小説を、実は書いていると知ったの...
  • ニューヨーク地下共和国
    ニューヨーク地下共和国 題名:ニューヨーク地下共和国 上/下 作者:梁 石日 発行:講談社 2006.09.11 初版 価格:各\1,800  あの9・11当日の朝、ニューヨークに居合わせた作家・梁石日が、大仕事をやってくれた。  アメリカの大儀。真っ向からぶつかるイスラム原理主義。世界構図に翻弄される多くの国々の国民たち。そうした世界の現在を、在日作家である梁石日が偶然居合わせたことから、創り上げた大作小説である。  本書には、日本人もも朝鮮人も登場しない。そこに登場すのは、すべてアメリカ人たちだけである。舞台はすべてがニューヨークである。  そう、アメリカにはイスラム圏の人々もれっきとしたアメリカ人として居住している。9・11後に彼らがどのような肉体的・精神的な暴力に晒されたかを、ぼくはあまり知らない。いや、知らなかった。 ...
  • 後ろ傷
    後ろ傷 後ろ傷 題名:後ろ傷 作者:東 直己 発行:双葉社 2006.10.25 初版 価格:\1,700  この本を読んだ行きつけの呑み屋のマスターとカウンター越しに話したのは、とにかくいろいろなところからネタを引っ張ってきたね、というものだった。 「東君の小説は」とマスターは口癖のように言う。「ネタがないと終わりなんだわ。警察も、宗教団体も、若い子の猟奇殺人も書いちゃったんで、次もう書くことがないんだわ」  札幌だけにこだわって書くということには、事件やネタに枯渇する懸念がつきまとうということが言いたいらしい。他の作家のように、東京でも海外でもどこにでもネタを探しにゆくことができればいいのに。札幌のススキノ界隈にばかりネタを求めたって大事件なんてひとところにいくつも起きやしないよ、ということが言いたいのである。  そこに持ってきて本書は...
  • 刹那の街角
    刹那の街角 刹那の街角 (角川文庫) 刹那の街角 題名 刹那の街角 著者 香納諒一 発行 角川書店 1999.5.25 初版 価格 \1,700  どちらかと言えば犯罪者の世界を描くことのほうが多い著者としては、極めて珍しい警察小説という形での連作短編集。同じ捜査課の一人一人に焦点を当てた短編を一作一作読んでいるうちになんとなく捜査課全体の人間像や人間関係が明らかになってゆくという、不思議な魅力を持った作品。  考えてみれば『太陽に吠えろ』だって『特捜最前線』だって一話につき一人の刑事がピックアップされてドラマとなり、それが重なるうちに、刑事たちの群像が全体的によりイメージされて愛着が出てくる(その辺で一人殉職させるとかするわけだけど)。  この辺の手法は別にTVドラマだけのものではなくって『87分署シリーズ』『マルティン・ベック・シリーズ』な...
  • ジャック・ヒギンズ
    ジャック・ヒギンズ Jack Higgins リーアム・デブリン登場作 鷲は舞い降りた 1975 菊池 光訳 鷲は舞い降りた【完全版】 1975 菊池 光訳 テロリストに薔薇を 1982 菊池 光訳 黒の狙撃者 1983 菊池 光訳 鷲は飛び立った 1991 菊池 光訳 ショーン・ディロン・シリーズ 嵐の目 1992 黒原敏行訳 サンダー・ポイントの雷鳴 1993 黒原敏行訳 密約の地 1994 黒原敏行訳 悪魔と手を組め 1996 黒原敏行訳 闇の天使 1997 黒原敏行訳 大統領の娘 1997 黒原敏行訳 ホワイトハウス・コネクション 1998 黒原敏行訳 審判の日 2000 黒原敏行訳 復讐の血族 2001 黒原敏行訳 ジャック・ヒギンズ名義 復讐者の帰還 1962 槙野 香訳 地獄の群集 1962 篠原 勝訳 虎の潜む嶺 1963 伏見威蕃訳 裏切りのキロス 1963 ...
  • 消えた消防車
    消えた消防車 消えた消防車―推理小説 (角川文庫 赤 520-3) 題名:消えた消防車 原題:The Fire Engine That Disappeared (1969) 著者:マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー Maj Sjowall and Per wahloo 訳者:高見浩 発行:角川文庫 1973.12.20 初版 1993.11.10 16刷 価格:\680(本体\660)  シリーズもこのあたりまで来ると次第に登場人物が独り歩きしてくれるようになっているのだろうと思う。作者も人物造形に気を遣うより、その人物にある程度行動を委託できるのではないだろうか。ただし初期設定みたいなものをこういうシリーズの場合、どの辺りでやっているのかわからない。  この作品に限ってはグンバルト・ラーソンの個性が目立つのだが、彼は途中出場の刑事だし、前作で...
  • でぶのオリーの原稿
    でぶのオリーの原稿 でぶのオリーの原稿―87分署シリーズ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) 題名:でぶのオリーの原稿 原題:Fat Ollie s Book (2002) 作者:エド・マクベイン Ed McBain 訳者:山本 博 発行:ハヤカワ・ミステリ 2003.11.15 初版 価格:\1,200  少し前の作品ではピアノを練習していたシリーズのサブ・メンバー、88分署刑事のオリー・ウィークス。今度は彼が小説を書き上げた。内容はやはり捜査小説。何と主人公は女性刑事。次期市長を狙う有力候補が銃撃された現場に駆けつけた先で、オリーはその原稿を鞄ごと盗まれてしまう。大きな事件と小さな事件。オリーは二つの捜査に同時に乗り出す。もちろんレギュラー・メンバーである87分署刑事たちの協力を得て……。  原稿は劇中劇のかたちで二つめの物語をなしてゆく。原稿を...
  • 英雄先生
    英雄先生 英雄先生 題名:英雄先生 作者:東 直己 発行:角川書店 2005.12.20 初版 価格:\1,700  今回ばかりはススキノ便利屋シリーズよりも、こちらの作品に軍配が上がる。何よりも島根県松江市を舞台に、自棄気味な高校教師を主人公にした冒険ミステリ、というところに新鮮な興味を覚える。  導入部が、いい。転がる男の死体。少年と死体から逃げ出す少女。近づいてくるハイエース。その少女を拉致する何本もの腕。  続いて、教え子とラブホテルでベッドインするわれらが主人公教師の姿。ホテルのテレビでは、38度線を破って韓国側に雪崩れ込む北朝鮮人民の群集。  何という破天荒な展開であろうか。事態はジェットコースター気味に思わぬ展開を見せてゆく。拉致された生徒を追って、近親身分の教師は、私立探偵まがいの調査を開始し、風変わりな謎の中年男と道連れに...
  • 罪悪
    罪悪 題名:罪悪 原題:Schuld (2010) 作者:フェルディナント・フォン・シーラッハ Pheldinand von Schrach 訳者:酒寄進一 発行:創元推理文庫 2016.2.12 初刷 価格:\720-  ミネット・ウォルターズの中編『養鶏場の殺人』が、とても強く印象に残っている。ウォルターズとしては珍しく、実際に起きた事件を小説化したものであり、やはり実際に起こったことのほうがむしろ小説よりも奇という場合もあるのだな、とじわじわと背筋に迫る人間の怖さを感じたりしたものだ。ついでに言えば、当該作品は、2006年イギリスのワールドブックデイにクイックリード計画の一環として刊行されたものであり、普段本を読まない人に平易な言葉で書かれた読みやすい本として提供されたそうである。  さて、本書『罪悪』は、日本国内でも上位にノミネートされて話題...
  • gogono
    午後の磔刑 王国記V 著者:花村萬月 発行:文藝春秋 2005.01.30 初版 価格:\1,500  芥川賞を獲得した短編『ゲルマニウムの夜』からずっと、のそのそとしたペースながらも進行している萬月ワールドの核になるサーガ『王国記』も、はや6冊目になる。『王国記 V』の副題を冠しながらなぜ5冊目ではなく6冊目であるのかというと、最初の短編集『ゲルマニウムの夜』は、勘定に入っていないからだ。その頃には『王国記』という、いわばサーガ・タイトルは、どこにも記されていない。  『ゲルマニウムの夜』に続くサーガ第2冊目が『王国記』であり、これは中編二作が収録。以下、この作品集は中編二作を収録する形で目下のところ5冊が刊行されている。連作中編の形でサーガを継続する形でありながら、やはりしっかりとロング・ストーリーを軸に、個性的なキャラクターたちが、変化を繰り返している...
  • 真夜中のデッド・リミット
    真夜中のデッド・リミット 題名:真夜中のデッド・リミット(上・下) 原題:THE DAY BEFORE MIDNIGHT 作者:STEPHEN HUNTER 訳者:染田屋茂 発行:新潮文庫 1989年4月25日 初版 定価:各\480(本体\466)  『クルドの暗殺者』の出来が良かったので前作も読むことにしたのだが、これは翻訳は先んじたものの『クルド』よりずっと後の作品。実にシンプルに核ミサイル基地占領というドラマが始まり、真夜中に向けてすべての登場人物たちが熾烈な攻防を展開する。特定の主人公はなく、事件全体を通しての群像ドラマだ。感想というのは実にいろいろな書き方があるのだと思うが、この作品は一言ですべてを言い表したいところがある。「面白い」という有無を言わさぬ一言で……。  まず、なかなか寝られなくなるテンポのいい展開。決してゆるみを見せな...
  • P分署捜査班 誘拐
    P分署捜査班 誘拐 題名:P分署捜査班 誘拐 原題:Buio (2013) 著者:マウリツィオ・デ・ジョバンニ Maurizio De Giovanni 訳者:直良和美 発行:創元推理文庫 2021.05.14 初版 価格:¥1,000  21世紀の87分署。そんなシリーズが始まって二年目。最初の頃の本家87分署シリーズは、確か年間に三作ほどのハイピッチで出版もスタートしていたが、徐々に年二作となり年一作となってゆく。しかしページの厚みは時代の流れとともに増して行った。生活スタイルの推移や、世相や思想の変化などが、取り扱う事件にも徐々に変容を強いてきた感がある。  でも人間の罪業に、きっとあまり変化はないのだ。愛、嫉妬、憎悪、物欲、激情、その他。人間の愚かさも誠実さもひっくるめて、都市に営まれる悲喜こもごもの愚かな人間たちのやりとりも誠実な人間の人...
  • コリーニ事件
    コリーニ事件 題名:コリーニ事件 原題:Der Fall Collini (2011) 作者:フェルディナント・フォン・シーラッハ Ferdinand von Schirach 訳者:酒寄進一 発行:東京創元社 2013.4.15 初版 2013.6.20 3刷 価格:\1,800  ドイツの小説を読むときに注意しておかねばならないポイントをうかつにも忘れてしまうと、作品のどこかで足元を掬われることになる。ぼくが事実そうであった。ベルンハルト・シュリンクの『朗読者』のときにも感じた同じ暗闇にいきなり出くわしてしまったときの大いなる恐れもその類(たぐい)だ。  本書はイタリア系移民のコリーニという67歳の人物が、高齢の大物起業主ハンス・マイヤーを殺害し自首するというあまりにも疑惑の余地なき事件を扱う。若き国選弁護人カスパー・ライネンを主人公に真摯で厳...
  • ハリウッド警察25時
    ハリウッド警察25時 題名:ハリウッド警察25時 原題:Cases (1999) 作者:ジョゼフ・ウォンボー Joseph Wambaugh 訳者:小林宏明 発行:ハヤカワ・ミステリ 2007.08.10 初版 価格:\1,500  この作家をこれまで読んでいなかったことを激しく後悔! マクベインを初め警察小説に眼がない、と豪語していた自分が恥ずかしい。警察小説という小さなジャンルに、よもやこんな巨匠がいたとは。  いや、全然知らなかったというわけではないんだ。冒険小説&ハードボイルドの書評の中ではたまに鉄人読者のような方からの渋い感想が上がっていた。でも書評は単発で、読んでいるという人は、他の人気作家に比べ、圧倒的に少なかったろうと思う。2007年『このミステリがすごい!』では、久々の邦訳というばかりではなく、この作品が凄まじく充実しているせい...
  • 悪党パーカー/犯罪組織
    悪党パーカー/犯罪組織 悪党パーカーノ犯罪組織 (ハヤカワ・ミステリ文庫 23-2) 犯罪組織―悪党パーカー (1968年) (世界ミステリシリーズ) 題名:悪党パーカー/犯罪組織 原題:The Outfit (1963) 著者:リチャード・スターク Richard Stark 訳者:片岡義男 発行:ハヤカワ文庫HM 1976.7.31 初刷 価格:\280  現在入手するのがかなり困難と言えるこのシリーズを、いろいろな方策を講じて一冊でも多く手に入れようと日頃から努めている。たまにいい当たりがあっても、問い合わせた途端に売り切れてしまうということが多い。その中でもポケミス版よりは、ミステリ文庫に収録されたものについては版数が出まわっているらしく、ネット古書店などでもけっこう手に入れやすい状況になっている。この『犯罪組織』『弔いの像』『襲撃』はそうした...
  • われら闇より天を見る
    われら闇より天を見る 題名:われら闇より天を見る 原題:We Begin At The End (2020) 著者:クリス・ウィタカー Chris Whitaker 訳者:鈴木恵 発行:早川書房 2022.8.25 初版 価格:¥2,300  これは凄い。おそらく今年、一押しの作品である。  ミステリーではあるけれど、それ以上に重厚な人間ドラマだ。二人の主人公が凄い。どちらも個性がしっかりとしている。少女ダッチェス13歳。ウォーク警察署長、難病との闘病中&勤務中。どちらも惑星のように独立し、人を惹きつける個性と魅力を持っている。  物語は、30年前のショッキングなシーンで幕を開ける。若きウォークがシシーを発見する。陰惨な姿で路傍に転がるシシーの死体を。このプロローグのシーンでは未だ後のヒロイン少女ダッチェは生まれてもいないが、発見された少女シシ...
  • 蒼ざめた眠り/「虚国」改題
    蒼ざめた眠り/「虚国」改題 題名:「虚国」改題 → 蒼ざめた眠り 著者:香納諒一 発行:小学館 2010.03.03 初版 → 小学館文庫 2012.12.11 初版 価格:¥1,800 → ¥733 題名:虚国 → 改題:蒼ざめた眠り 著者:香納諒一 発行:小学館 2010.03.03 初版→小学館文庫 2012.12.11 初版 価格:¥1,800 →¥733  2010~2012年の頃は、人生の一大転機という諸事情により、新刊本を多く読み残してしまっている。買っていながら何度もの引っ越しによって新旧の棲家を転々とする運命となったこの時期の<積ん読本>を、今になって書棚から取り出して読んでいるのは、現在のぼくを取り巻く新たな諸事情が、その頃の読書ブランクを取り戻す機会を与えてくれているのだ、と思うことにしている。  本書はハードカバ...
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