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プリンセスナイトメア - (2006/11/27 (月) 22:11:40) の1つ前との変更点

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**序章  コリンがフィーリアと出会ったのは、村の禁忌とされる洞窟の中であった。  暗く、じめついたその内部に恐る恐る入った彼が見出したのは、ボロボロの布を纏った一人の少女…それがフィーリアであった。  彼女には感情が無かった。初対面だというのにその手を掴んでしまったときも、彼女は声を上げることも、眉をぴくりと動かすことすらなかった。コリンはとりあ えず、彼が身を寄せている村の宿屋に彼女を連れて行き、日ごろ世話になっている姉妹、サリアンとポーニィに事情を説明していると。彼はこの少女の心を取り戻し てあげたいと、心の底から思うようになっていった。  それまでは彼は、自身が何かの力を持っているなどと考えたこともなかった。むしろ、臆病者としか思っていなかった。村の男たちにも、優しくはあるがそれほど 気合のある男だとは見受けられてもいなかったし、その評価に別段腹を立てたことはない、むしろ満足していたと言える。そんな『無力』と思っていた自分が、初め て自身の意志で、力で、この少女をなんとかしたいと思ったのだ。  それから彼の冒険が始まった。少女の彷徨っていた洞窟の奥へと進んでゆくことにしたのだ。彼女の記憶や心を取り戻すような何かがあるかも知れない。そんなこ とをサリアンやポーニィと話し合った結果であった。彼は今は村から去った、尊敬する冒険家から譲り受けた剣と盾を手にし、闇から生まれし凶暴なる怪物が蠢く洞 窟の奥へと歩を進めてゆくのであった。  その過程で彼は発見する。怪物との戦いを幾度も繰り返しながら…自分にも、力はあったのだ、ということを。初めはおっかなびっくり、引け腰気味で剣を闇雲に 振り回していた彼だが、戦いの中で呼吸と間を見出し、今では自身の中で剣への自信がついたのを感じた。  しかし、それよりも何よりも彼が力を実感したのは、初めてフィーリアに反応を呼び覚ましたときのことだ。  「…綺麗な、音…」  コリンが洞窟からみつけた、澄んだ音を小さくも美しく奏でる鈴を見つけてきた時のことだ。彼女の目の前でちりんちりん、と鳴らしてみせた時のこと。その温か みのある金属光沢が、鈍い光を湛えるだけの彼女の目に空ろに映っていたかと思うと…音を繰り返すうちに、鈴の光が飛び移ったように、フィーリアの瞳の中に宿っ たのだ。  自分も何かが出来る。それを達成感と共に確認したコリンは、更に彼女の心を呼び覚まさんと、より強い足取りで以って洞窟へと向かい出した。辛く苦しい怪物達 との戦いなど、少女の次第に宿り行く美しい感情に比べれば、刺さったとげ程の苦痛も感じない。  洞窟で見つけた些細なものですらフィーリアに見せては預け、彼女の感情を促す日々が続く。するといつしかフィーリアは、自分のことを「お兄ちゃん」と呼んで くれるようになり、外見とは合わぬ幼い、しかし純粋で可憐な笑みを向けてくれるようになっていた。  日々積み重なってゆく、確かな手ごたえ。だが、手ごたえだけがコリンの今の目標ではない。彼女の心を完全に取り戻すまで…そのことをしっかりと心に刻んだ彼 は、今日もいつものように、洞窟へと足を運ぶ。  そしていつものように湿気と暗黒が支配する冷たい土の中を走り回り、怪物と剣を交え、フィーリアへの贈り物を見出さんと探索するのだろう。それが終わった彼 は、疲れた身体を引きずりながら宿に戻れば、顔見知りの二人の姉妹の暖かい笑顔に迎えられ、そしてフィーリアの童心の笑みに心を洗われることになるのだ。  …そう、それがいつものことであったのに。  それなのに。 以後、執筆中。 #comment
**序章  コリンがフィーリアと出会ったのは、村の禁忌とされる洞窟の中であった。  暗く、じめついたその内部に恐る恐る入った彼が見出したのは、ボロボロの布を纏った一人の少女…それがフィーリアであった。  彼女には感情が無かった。初対面だというのにその手を掴んでしまったときも、彼女は声を上げることも、眉をぴくりと動かすことすらなかった。コリンはとりあえず、彼が身を寄せている村の宿屋に彼女を連れて行き、日ごろ世話になっている姉妹、サリアンとポーニィに事情を説明していると。彼はこの少女の心を取り戻してあげたいと、心の底から思うようになっていった。  それまでは彼は、自身が何かの力を持っているなどと考えたこともなかった。むしろ、臆病者としか思っていなかった。村の男たちにも、優しくはあるがそれほど気合のある男だとは見受けられてもいなかったし、その評価に別段腹を立てたことはない、むしろ満足していたと言える。そんな『無力』と思っていた自分が、初めて自身の意志で、力で、この少女をなんとかしたいと思ったのだ。  それから彼の冒険が始まった。少女の彷徨っていた洞窟の奥へと進んでゆくことにしたのだ。彼女の記憶や心を取り戻すような何かがあるかも知れない。そんなことをサリアンやポーニィと話し合った結果であった。彼は今は村から去った、尊敬する冒険家から譲り受けた剣と盾を手にし、闇から生まれし凶暴なる怪物が蠢く洞窟の奥へと歩を進めてゆくのであった。  その過程で彼は発見する。怪物との戦いを幾度も繰り返しながら…自分にも、力はあったのだ、ということを。初めはおっかなびっくり、引け腰気味で剣を闇雲に振り回していた彼だが、戦いの中で呼吸と間を見出し、今では自身の中で剣への自信がついたのを感じた。  しかし、それよりも何よりも彼が力を実感したのは、初めてフィーリアに反応を呼び覚ましたときのことだ。  「…綺麗な、音…」  コリンが洞窟からみつけた、澄んだ音を小さくも美しく奏でる鈴を見つけてきた時のことだ。彼女の目の前でちりんちりん、と鳴らしてみせた時のこと。その温かみのある金属光沢が、鈍い光を湛えるだけの彼女の目に空ろに映っていたかと思うと…音を繰り返すうちに、鈴の光が飛び移ったように、フィーリアの瞳の中に宿ったのだ。  自分も何かが出来る。それを達成感と共に確認したコリンは、更に彼女の心を呼び覚まさんと、より強い足取りで以って洞窟へと向かい出した。辛く苦しい怪物達との戦いなど、少女の次第に宿り行く美しい感情に比べれば、刺さったとげ程の苦痛も感じない。  洞窟で見つけた些細なものですらフィーリアに見せては預け、彼女の感情を促す日々が続く。するといつしかフィーリアは、自分のことを「お兄ちゃん」と呼んでくれるようになり、外見とは合わぬ幼い、しかし純粋で可憐な笑みを向けてくれるようになっていた。  日々積み重なってゆく、確かな手ごたえ。だが、手ごたえだけがコリンの今の目標ではない。彼女の心を完全に取り戻すまで…そのことをしっかりと心に刻んだ彼は、今日もいつものように、洞窟へと足を運ぶ。  そしていつものように湿気と暗黒が支配する冷たい土の中を走り回り、怪物と剣を交え、フィーリアへの贈り物を見出さんと探索するのだろう。それが終わった彼は、疲れた身体を引きずりながら宿に戻れば、顔見知りの二人の姉妹の暖かい笑顔に迎えられ、そしてフィーリアの童心の笑みに心を洗われることになるのだ。  …そう、それがいつものことであったのに。  それなのに。  以後、執筆中。 #comment

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