*第61話:道を踏み外した赤魔道士 (…自分と同い年ぐらいの男の人…こっちに来る?) 呑気にあくびをしていたフィンだが、ふと数十メートル先の人影に気がついた。 (…あの人の剣、赤い!まさか血の色…!?) 「…アルカート、誰か来る!」 「えっ?」 丁度ギルダーに背を向ける状態になっていたアルカートは、フィンの言葉でようやくその存在に気付き振り向いた。 そして目を見開く。…あの赤魔道士、魔力を高めて…!いけない、完全にこちらに仕掛ける気になってる! 「フィンさん、あの人…!」 アルカートが魔石をローブのポケットに入れながら叫ぶ。 フィンもそこでようやく明らかな殺気を感じ、一瞬で立ち上がり陸奥守を抜いたがしかし、遅かった。 「ブライン!」 「ッ!?うわッ」「きゃあっ!」 ブライン。二人の視界が暗闇に飲まれた。ギルダーはライトブリンガーを握り、一気にフィンとの間合いを詰める。 フィンは気配と殺気で相手の位置を察し、その一撃を何とか受け止めるがしかし、受け止めることしか出来ない。 間髪いれずに再び振るわれた剣を、今度はギリギリのところで受ける。…危ない、今にも弾かれそうだ。 (この状況、反撃は無理だ…どうしよう?何とか追い払う方法を―――) 剣の重なる音が何度も響く。そんなフィンの後ろでアルカートは目を閉じて集中していた。 (大丈夫…落ち着いて。回復すれば対処できない相手じゃない…こっちには気がついてない…!) アルカートは、エスナの魔法を詠唱していのだ。大丈夫、落ち着いて、落ち着いて。 しかし、この状況で落ち着くというのも難しいものだ。アルカートの魔力は必要以上に増幅し…完成する直前だろうか、 ギルダーがその魔力に気がついた。 ギルダーは舌打ちし、フィンの横をすり抜けアルカートに向かっていった。 (しまった、アルカート!) フィンが気がついた時にはすでに遅い。既にギルダーはアルカートとの間合いを詰めていた。 ライトブリンガーがアルカートに向かって勢いよく振り下ろされる――― ガッ! その刃は、鈍い音と共に直前で何かに阻まれた。 「何をしておる、ギルダー!道を踏み外したか!」 (なっ…ドーガ!?) 間一髪。ドーガがギルダーの前に立ちふさがりライトブリンガーを素手で受け止めたのだ。 紫色の血、人間の物ではないそれがぽたぽたと落ちる。 (…! 俺がドーガに勝てる訳が無い…!くそっ!) ギルダーは一瞬の判断で、マントの下から手榴弾を取り出し器用に片手でピンを抜く。 それにドーガが目を見開いた時には―――既にお互いの至近距離で爆発が起こり、同時にギルダーが魔法を完成させていた。 「サイレス!」 「!くっ…!」 ドーガが呻く。魔法を封じられた…迂闊だった、爆風で前が見えない…!どこだ!? 視界の悪い中でもギルダーの気配が遠ざかるのが解る。…逃がすわけにはいかない…! しかし丁度視界が開け始めたころか。数十メートルほど離れた辺りから大きな水音が聞こえ 完全に視界が開けた時には既にギルダーの姿は無くなっていた。 【アルカート 所持品:ナッツンスーツ グラディウス 白マテリア(ホーリー) 第一行動方針:?(強烈な力の込められた石を研究する) 第二行動方針:ジオを探す 第三行動方針:白い球体について研究する】 【フィン 所持品:陸奥守 魔石ミドガルズオルム(召還不可) 第一行動方針:?(アルカートの石の研究の結果を待つ) 第二行動方針:アルカートを守りつつ、仲間を探す】 【ドーガ{負傷} 所持品:不明 第一行動方針:?】 【現在位置:アリアハン北の橋からすこし東の平原】 【ギルダー{負傷}所持品:ライトブリンガー・雷の指輪・手榴弾×3・ミスリルボウ 第一行動方針:逃げる→傷の治療 最終行動方針:生き残りサラの元へ帰る】 【現在位置:大陸中央の川→?】