第459話:光が導く地へ
炎を思わせる黄昏の光は消えた。
天井に輝くは紅玉のような月。投げかけられるは血の色彩。
右手に聳え立つ山脈を臨み、
スコールと
マッシュは歩き続ける。
兄弟。仲間。脱出の手掛かり。
白魔道士に扮したかつての友。緑のバンダナを巻いた金髪の男。彼らとは別に存在しているのかもしれない緑髪の男。
探さねばならない相手は数多く、けれども、彼らは一点を目指す。
偽りの情報に導かれたまま。
(兄貴――どうか無事でいてくれ!)
ケフカの企み。それは可能性として有り得る話。
だが、ウルに向かったという男は、現実に人を殺めている存在。
しかも敬愛する兄の命が掛かっているとなれば、どちらを追うかなど決まっている。
微塵の迷いもなく、マッシュは歩き続ける。
(……殺すのか、あいつを)
倒さなくてはいけない敵。死なせるべきではない仲間。
マリベルの意志や
パパス達の言葉。スコール自身が口にした台詞。
殺された仲間達への思い。最愛の人の仇を取りたいという気持ち。
相反する感情が、スコールの足取りを重くする。
お互いが一歩を踏み出す度に、二人の距離は離れていく。
スコールがそのことに気付いたのは、マッシュが足を止めた時。
マッシュの視線の先にあったのは、天空を横切る淡い輝き――
「――流れ星?」
はるか南西から北東へ。
森と山脈を越え、ウルの村がある方角へ、誘うように光は堕ちる。
「隕石にしては、随分静かだな」
揺れ動く心を胸に仕舞い、スコールは冷静に分析する。
「カナーンの方から飛んできたけど……魔法か?」
「メテオにしては動きが不自然だし、弾道ミサイルでもなさそうだが……
……まぁ、どちらにしても、急いだ方がいいかもしれないな」
時は流星。瞬く間に流れて消える。
迷う暇も、悩む余裕も、過ぎ行く時間は与えてはくれない。
『間に合わないこと』以上に最悪なことはない。
ティナ。ラグナとエーコと
イクサス。アイラと
ティファ。
バーバラ。
今まで、嫌というほど思い知らされた。
二人は駆け出す。
誰が待ち受けていようとも、最悪の結末には辿り着かせないために。
猛烈な勢いで過ぎていく光景が、不意に止まった。
首を傾げる暇もなく、転移の魔力が霧散する。
地上数メートルの高さから放り出された
サイファーは、それでも何とか着地すると、忌々しげに空を仰いだ。
目前で殺された青年の姿を思い出す。
どこか、アリアハンで出会った少年に似ていた。
髪や瞳の色ばかりでなく――
パウロが死んだ時、表に飛び出そうとした少年の表情と。
姉を返せと叫び、女を睨みつける表情が、どうしようもなく似ていた。
青年を、そして恐らくは青年の姉をも殺した女。
殺人鬼を庇い、自分の道を阻もうとした老婆。
サイファーは二人の姿を刻み込む。
セフィロスと同じ、倒すべき悪として。
けれども、すぐさま仇を討ちに行くことは出来そうになかった。
「畜生……一体どこまで飛ばしやがったんだ」
顔を上げれば、先にあるのは森らしき影。
その奥から、茫洋とした明かりが漏れている。
他の方向に目をやれば、連なる山のシルエット。
ザックから地図を取り出し、視界にあるものと照らし合わせ――今度こそ、サイファーは叫ぶ。
「ちくしょう、ふっざけやがってェッ!!」
光の名はウル。
サイファーがいるのは、カナーンから最も離れた地域。
殺人鬼の手から仲間を護るどころではない。
夜通し歩き通しても、
ロザリーとイザの元に辿り着けるかどうか。
歯噛みしながら、彼は立ち上がる。
目指すはウル。明かりが見えるという事実が、人の存在を告げている。
運がよければ、チョコボのような移動手段や、協力者が見つかるかもしれない。
騎士は歩む。
状況を打破するために、一縷の望みを賭けて。
倒された木々は怒りの吐息に焼かれ、天を焦がす火種と変じた。
破壊を撒き散らしながら進むのは、小山にも匹敵する巨躯の魔王。
激情の炎を静めるため、生に固執するが故に、彼は生贄を求める。
けれども、町や城を襲おうと考えているわけではない。
本能と感情が命じるまま、目に映るものを手当たり次第に攻撃しながら進むだけ。
計画性も何もなく、故に、彼の歩みは遅い。
背の翼もはためく事はなく、巨大な鎌のごとく宙を薙いでは、哀れな草木を刈り取るのみ。
放っておけば、どこまでも南下を続け、森を焼き尽くしていただろう。
しかし――
ブオーンの進路は、唐突に変わった。
視界に入った『人間』の存在によって。
白いコートを羽織った男。
青の輝きに包まれた人間は、ブオーンの頭よりもなお高く、空を掠めて飛んでいく。
視線を追わせてみれば、東に広がる山並みの向こうへと消えた。
ある者は戦闘を繰り広げていた。
ある者は道を急いでいた。
ある者は自然や建物に身を潜め、傷を癒す事に集中していた。
――だから気付いたものは少なかった。
山のようなシルエットが、今までとは比較にならぬ速度で、ウルに向かって動き出したことに。
悩む理由などありはしない。
ようやく見つけた獲物を逃すはずがない。
森林も山脈も、ブオーンの歩みを止めさせるには不足すぎた。
鼠を見つけた猫のように、広大な草むらを蹂躙し、彼方にそびえる坂道に向かう。
魔物は往く。
災厄を撒き散らしながら、その先にある生命を滅ぼす為に。
【マッシュ 所持品:ナイトオブタマネギ(レベル3)、モップ(FF7)、ティナの魔石、神羅甲型防具改、バーバラの首輪、
レオの支給品袋(アルテマソード、鉄の盾、果物ナイフ、君主の聖衣、鍛冶セット、光の鎧、スタングレネード×6 )】
【スコール 所持品:天空の兜、貴族の服、オリハルコン(FF3) 、ちょこザイナ&ちょこソナー、セイブ・ザ・クイーン(FF8)
吹雪の剣、ビームライフル、エアナイフ、ガイアの剣、アイラの支給品袋(ロトの剣、炎のリング、アポロンのハープ)】
【第一行動方針:急いでウルに向かう
第二行動方針:
アーヴァインと緑髪(緑のバンダナ)の男、及び
エドガーを探す
第三行動方針:ゲームを止める】
【現在地:カズス北の草原→ウルへ】
【サイファー(右足軽傷)
所持品:破邪の剣、G.F.ケルベロス(召喚不能) 白マテリア 正宗 天使のレオタード ケフカのメモ
第一行動方針:協力者を探す/ロザリー・イザと合流
基本行動方針:マーダーの撃破(セフィロス、
アリーナ優先)
最終行動方針:ゲームからの脱出】
【現在位置:ウル北の草原→ウルへ】
【ブオーン(左目失明、重度の全身火傷)
所持品:くじけぬこころ ザックその他無し
第一行動方針:サイファーを追いかける
基本行動方針:頑張って生き延びる/生き延びるために全参加者の皆殺し】
【現在位置:カズス北西の森北部→ウルへ】
最終更新:2008年02月16日 14:24