プロローグ レイナ 「うっ…ここは?」 レイナはどこかの一室にいた。おそらく理科室だろう。 レイナは理科室に自分が倒れていたことにおどろいた。 自分は姉と一緒にあそんでたあずなのに…と。 すると、突然… 『今から君達に、この学園を舞台に10匹になるまで殺し合ってもらう。』 スピーカーから感情の感じられない声がした。 「えっ?殺し合い?なんで?」 レイナは絶望した。 「でも誰も殺し合いなんかしてないよね?するはずがないもん!」 そう自分にいいきかせて歩き始めた。 だがそんな願いは虚しかった。 歩き始めてすぐ目にとびこんできたもの。 それは… マッスグマの死体だった。 正直、驚いた。そして、確信できた。本当に殺し合っているんだと。 「き…きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 理科室にレイナの悲鳴が響きわたった… ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ プロローグ ルナ ルナは太鼓の音で目がさめた。 寝ぼけてしっぽで叩いたのだろう。 「なに…ここ…」 太鼓があることから音楽室だとわかった。 「私は確かレイナと遊んでいたはず…」 ルナが独り言を言っているとスピーカーから声がした。 『今から君達に、この学園を舞台に10匹になるまで殺し合ってもらう。』 「なっ!」 ルナは当然驚いた。 「いいなり殺し合えと言われても…」 「!!もしかしてレイナもここに?それならモタモタしてられない!」 そして、ルナが音楽室をでてすぐのことだった。 「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 悲鳴がきこえた。 「この声はレイナ?やっぱりレイナもいる!」 その声はまぎれもなく妹のレイナだ。 ずっと一緒に暮らしてきたので声をきいただけでわかる。 ルナは走った。悲鳴がした方向へ。 ---- 刻皇は走りながら、周りに気付かれないよう、心の中でそれぞれの三匹について考えていた。 まずは、最初に話しかけてきた、おそらくグループのリーダーであろう、ジバコイルのアルティカだが、この男は間違いなく使える駒である。 しかも、まさかこんなに早く、最優先で引き込もうと狙っていた、あの知識人を見つける事が出来たのは夢にも思わなかった。 こいつの存在に気付いたのは、学園内のセキュリティシステムのOSを書き換えていた時、理科準備室にある薬品庫の電子ロックが、放送直後の時間帯に、何者かに開けられていた記録を発見してからだった。 しかも、壊して強引に開けた訳ではなく、多少の細工の形跡は残っていたとはいえ、スムーズに開けていた事から、自分と同じ機械に詳しい知識人が、このゲームに参加しているのを知る事ができた。 そしてアルティカに出会った時、この男が薬品を入れていた袋を、四階にある図工室から拝借してきた、という話を聞いた瞬間もしやと思い、最初の放送が流れていた時、どこにいたのかさりげなく聞き出してみると、案の定、四階の理科準備室にいたと答えただけでなく、その後、その場所で先程使った薬品を作っていた事まで話してきた。 これだけでも、電子ロックを開けた知識人の正体が、アルティカだというのは十分理解出来た。 しかし、この男はナルシストな性格なのだろうか?別に聞いてもいないのに、これらの薬品の材料を手に入れるために、理科準備室の電子ロックを、いとも簡単に開けた事まで自慢し始めた。 『そんなことは、聞いていない』と言ってやりたかったが、今の自分は臆病で気が小さく、心優しいフーディンを演じなければならなかったので、取り敢えず笑顔でおだてる事にした。 全く・・・演技とはいえ善人面も楽じゃない・・・。 何はともあれ、知識人がこちら側に入ったのは都合が良い。 なにしろ、例のバリアシステムのセキュリティレベルは非常に高く、解析には自分一人では間違いなく厳しいだろう。だからこそ、優秀な頭脳を持った知識人は、このゲームからの脱出には、非常に欠かせない戦力なのである。 それに、『自分の研究が成功すれば、周りの事はお構いなし』的な、根っからのマッドサイエンティストは、ある程度こちらの本性を見せ易い。 まあそれは、もう少し後になってからだが・・・。 次に、フリフリワンピースとリボンを付けた、ミミロルのミミアンだが。 佳奈の死体を見た時の怯えた表情から察するに、余り場馴れしていないようだ。 精神面においては、足手まといになり易そうだが、覚えている技は捨て身タックルや冷凍ビーム等、それなりに使える技を覚えている分、佳奈よりはマシな方だろう。 問題なのは、こいつがアルティカの事を気に入っているらしく、必ずアルティカの後を付いている事だ。 もしアルティカをこちら側に引き込めば、『もれなくミミアンが、セットで付いて来ま~す』・・・などと、どこぞのファーストフード店みたいな事になる。 アルティカは兎も角、ミミアンは少なくとも、自分の本性を受け入れられるタイプではないと思うから、その時になったら、始末する方がいいだろう。・・・まあそれまでは、仲間を増やすためのサクラとして、精々利用させてもらうつもりだが。 最後は、仮面を被っており、現在先頭を走っている、キマワリのアトロポスだが。 こいつははっきり言って分からない事が多すぎる。 男か女か分からない以前に、年齢も性格も、ましてやこいつの今の目的でさえ、何一つ分からないのだ。 だが、それよりも気になる事は、アルティカとミミアンがアトロポスの事を多少知っているにも関わらず、その情報が余りにも食い違っている事だった。 アルティカが言うには、アトロポスは、少なくとも三年前はこの学園にいた十五歳の男子だと言うが。 ミミアンが言うには、一年前ここにやって来た九歳の女子だと言う。 ただ、具体的な話を、二匹に聞いてみたが、どちらとも声を合わせて――――― 「何も分からない」 ―――――と、答えるだけだった。 しかし、二匹の身の上話を信じるならば、どう考えても初対面であるアルティカとミミアンがアトロポスの事を、中途半端とはいえ知っている違和感から、ある一つの仮説が立った。 もしかしたら、アトロポスには記憶を操作する力があるのではないのか。ただ理由は分からないが自分を除いては・・・。 もしそうだとすれば、主催者は何故そんなヤツまで、このゲームに参加させたのか? いや、もしかしたらこいつは、このゲームが始まる前から既にこの学園にいて、主催者もヤツを探しており、しかも、こいつに何かさせる、あるいは何かされるかを、しようとしているのではないのだろうか? 黙々と考察を続けるが、所詮は机上の空論でしかない。しかし、刻皇は直感的に感じていた。 アトロポスが自分にとって、敵であろうが味方であろうが、主催者にとっては弱点の存在に成りえるのではないのか、と。 (アトロポスか・・・こいつの正体が、このゲームの鍵になるかもしれんな)