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*機動戦士ガンダム 戦士達の軌跡 【きどうせんしがんだむ せんしたちのきせき】 |ジャンル|戦術アクションゲーム|&amazon(B00011D1VI)| |対応機種|ニンテンドーゲームキューブ|~| |発売元|バンダイ|~| |開発元|ベック(チームアカネコ)|~| |発売日|2004年3月18日|~| |定価|7,140円(税5%込)|~| |判定|BGCOLOR(lightsteelblue):''スルメゲー''|~| |~|BGCOLOR(khaki):''ゲームバランスが不安定''|~| |ポイント|リアル過ぎて難しいRTSアクション&br()エースの強さも超リアル&br()しっかりやりこみ抜けば楽しめる&br()古谷徹ナレーションのMSグラフィックスが話題に&br()セイラ役の井上瑤氏の遺作&br()赤くてツノの無いシャアザク(黒歴史)|~| |>|>|CENTER:''[[ガンダムゲームリンク>ガンダムシリーズ]]''| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 GC用に発売された、『一年戦争』を題材とした作品を主軸としたアクションゲームの一つ。~ 「戦士達の軌跡」のタイトル通り、各エースパイロットを操作する形で彼らの一年戦争における軌跡を辿っていく。 参戦しているのはいわゆる『1stガンダム』だけでなく、同じ一年戦争を題材にしたOVA『ポケットの中の戦争』『08MS小隊』にもスポットが当たっている。~ このほか『STARDUST MEMORY』のガトーや『MSV』のライデン、本作と製作チームが同じ『ジオニックフロント』のキャラクターなども登場する。 プレイアブルキャラは連邦、ジオン双方に存在する。連邦サイドは基本的に原作再現だが、ジオンサイドは「もしこの戦闘でジオン軍が勝っていたら」というIFシナリオになっている。~ そのためジオンが勝つとWB隊が壊滅したり、アプサラスによる侵攻に成功するなどの結果となり、ジオン公国は晴れて独立を果たす…などといった『ギレンの野望』さながらのIFエンディングが見られる。~ また、IFだけでなく、設定上でしか存在しない戦いも本作ではミッションとして楽しむことが出来る。 **特徴 -アクション面について --アクションとしてのシステムは当時としてはやや独特。ガンダムの3Dアクションゲームとしての要素を主軸にしつつ、僚機や戦艦に指示や要請を行うリアルタイムストラテジー要素(後述)も存在する。 --出撃前には手持ちの主武装を2種類選択して持ち込める。また、機体によっては頭部バルカンなどの副武装が別枠で用意されていることもある。 ---副武装は主武装と併用して撃つこともできる。例えば頭部バルカンを持つガンダムやジムならば、「バルカンと同時にライフルを撃つ」「ビームサーベルでダウンさせつつそのままバルカンで追撃」などといったガンダムゲーでも珍しい戦い方が可能。 ---ズゴックやジオングなどの機体は主武装が固定されている。その代わり、メガ粒子砲などの一部武装はリロード回数に制限がなく、補給を気にせずに使えるといった利点を持つ。 --盾は自動的には発動せず、盾構えをしなくてはならない。一方で一部武装には、手持ち武器を両手で構える「両手持ち」もあり、動作中は集弾性能が上がるため、必ずしも盾を構えていれば有利というものではない。 ---各機体には装備の重量制限があり、主武装と盾の組み合わせ次第で「重量オーバー」となって機動力が低下するデメリットが発生する。そのため、あえて盾を装備しないorマシンガンなどの軽量な武装を用意して重量オーバーを回避、あるいは重量オーバーを無視してでも強力な装備を持ち込む…といった判断が求められる。 --プレイヤーは戦闘中に「アビリティ」を発動することができ、一時的に後述の直撃率を上げたり、被弾率を下げるといった特殊効果を得られる。パイロットごとに習得するアビリティは決まっているが、発動や使用回数には制限がある。 --本作特有の要素として「プレッシャーゲージ」というものがあり、被弾したり敵に囲まれるとプレッシャーを受けてゲージが上昇していく。これが最大値まで溜まってしまうと、「パニック状態」となりプレイヤーは操作逆転・CPU機は動きが止まるといったデメリット効果が起きる。 ---この一方で、強力なアビリティはプレッシャーゲージが一定値まで溜まらないと使用できないという制約がある。このため、あえてゲージを溜めにいってアビリティ発動を狙うといった駆け引きも可能。 ---プレッシャーゲージは味方だけの要素ではなく、敵に対してもプレッシャーをかけることが可能である。アビリティの使用が基本だが、味方を集めて囲んでプレッシャーを与えるという戦法も。 ---セイラ編などの一部のミッションでは、原作の状況を再現するために意図的にプレッシャーゲージが貯まりやすく調整されている場面もある。 --ガンダムシリーズではお馴染みの「直撃」という要素が本作ではシステムとして採用され、背後から当てるなどしてダメージを倍加させる「クリティカルヒット」扱いとなっている。 ---命中させるとパイロットも「直撃?!」と声をあげるので、これまでのシリーズとは違いしっかりこの台詞には意味がある。 --各パイロットにはレベルの概念があり、戦闘を重ねるごとに経験値が貯まってレベルアップする。レベルが上がるとパイロットの能力が強化されるほか、アビリティやスキルを習得していく。 ---パイロットの能力は機体の挙動に大きく影響するため、同じ機体でもパイロットの違いで動きが劇的に変わる。セイラ編やクリス編では、自機が高性能なために特に能力差を実感しやすい。 ---「スキル」は出撃前に攻撃・防御などの各項目に1つだけセットできるもので、リロード時間を短縮したり、ビーム射撃のダメージを軽減したり、重力下での機動性を高めたりと効果は様々。これらの併用や活用によって戦局を有利に進めることが可能となる。 -シミュレーション面について --RTSらしく、友軍機はプレイヤーの指示によって動く。指示可能なユニットには、マップ上に描いたルートに沿って進軍させる「移動」、指定した敵機体を狙う「攻撃」、指定した友軍機に追従する「援護」などの各指示が可能。先の通り、上手く指示すれば敵のエースを囲んでプレッシャーを与えることも出来る。 --このほか、戦艦や補給艦は近くにいる友軍機に対し、HPを少量回復させる「修理」、残弾を全回復させる「補給」を行なうことも出来る。どちらのコマンドも3回しか使えない。 ---ホバートラックなど、補給のみ行える機体も存在する。 **問題点 -非常に厳しい難易度 --独特の操作感から、ゴリ押しが一切通用しない。基本的な操作技術だけでなく、弾数管理、シールド構え、臨機応変かつ的確な行動指示など、プレイヤーの技量だけでなく頭を使うことも求められる。 ---弾数管理は特に重要。一部武装を除いて弾数には限りがあるため、確実に敵に当てていかないと最終的には格闘一本で殴り込む羽目になる。 ---弾数は補給コマンドで回復するが、使用できるのは味方に戦艦やホバートラックなどが存在するマップのみで、回数も限られている。 --味方にはステージ開始時点から指示が設定されていることも多く、特に変更しなければこのデフォルト設定通りに動いていく。 ---しかし普通はこのデフォルト設定では勝ちが臨めないようになっており、即戦艦が狙われて撃沈して終了などといったことがこのゲームではよくある。自身も死にやすいが味方も極端に脆い。 ---シナリオによっては1面から「直撃=即死」ということもザラ、一方ネームド敵機は直撃にもかなり耐える。 --僚機のMSは思ったより頼りにならず、思うように戦艦などを守ってくれないことも。 ---それを防ぐためにプレイヤーが細かく指示を下したりしなくてはいけないが、RTSのシステム上、必ず毎回敵が同じ挙動をとるわけではないため臨機応変さも求められる。 --ジオン編の一部シナリオ終盤に登場するG-3ガンダム搭乗時のアムロ・レイは正にチートレベルの強さを持ち、最大レベルである30まであげていても手こずる相手。 ---この時のアムロは、母艦であるホワイトベースを落とされて自暴自棄になっており、鬼神のような強さで僚機を屠っていく。 ---プレイヤーキャラが中途半端なレベルだと、轢き潰されるようにG-3ガンダムの超スピードと異常な火力で文字通り瞬殺される。逆にこれを倒せた時の達成感は並々ならぬものがあるが。 -一部機体が登場しない・操作できない --『1stガンダム』の劇中で登場した機体はおおむね参戦しているが、『ポケットの中の戦争』は最終決戦のみ再現しているためわずか2機しか参戦していない。ハイゴッグやケンプファー、ジム・スナイパーIIなどといった人気のある機体が揃って未収録なのは惜しいところ。 ---逆に『08MS小隊』は原作でいう「震える山(前半)」までで最終決戦が再現されておらず、アプサラスIIIやグフ・フライトタイプなどが未登場になっている((シロー編は上記の「震える山(前編)」までしか収録されておらず、IFシナリオが展開されるアイナ及びノリス編でも登場しない))。 --また一部を除いた戦闘機・戦車やMAのほか、「一般機仕様の高機動型ゲルググ」などのMSもNPC専用機であり、プレイヤーが操作できない機体が複数存在している。 --パイロットに関しても、プレイアブルキャラは各作品のメインキャラに限られており、サブキャラは全てNPC専用で彼らを操作することはできない。『ジオニックフロント』のマドロックなど、原作の組み合わせで操作できない機体もある。 -レベルをあげないとまともなプレイが出来ない --前述のパイロットレベルが低い場合、操縦技術が未熟ということで機体の動きが鈍くなるほか、照準を合わせても弾の集弾率や射撃精度が悪く、格闘もろくに直撃(クリティカル)しないと思ったような攻撃すらできなくなる。 ---特にエース級の敵は誇張なしで恐ろしく強い調整がなされており、最初のうちは何をされたかわからないうちに死亡ということもしばしば。 --肝心のレベル上げは既存のミッションを繰り返し行なうしかなく、せっかく次のミッションが出ても難しすぎて前のミッションを繰り返しプレイするということになりがち。 ---獲得経験値は撃破数や自機の性能に依存しており、アレックスなどの高性能機だと取得経験値も少なくなる。逆にボールやザクIなどの低性能機を使用すればかなりの経験値を得られたりする。 ---レベルを上げればアビリティ追加などもあって上記の悩みは解消されるが、一部パイロットは初期能力が絶望的に低く、そのレベル上げすら覚束ないということも。 -異常に操作が難しい宇宙戦 --SFノベルなどを読んでいる人ならばわかるが、本作の宇宙空間における操作感は他のガンダムゲーと比較してリアルさにこだわっており、360度を意識して行動しなくてはならない。 --動いている内に機体の上下が反転したり、東西南北の方角を見失ったりすることもしばしば。宇宙空間ならではのリアルなアクシデントではあるが、実際のプレイにおいては状況把握が困難となることに他ならない。 -ロードの長さとその対策 --基本的にこのゲーム、ミッションに入るまでのロードが長い。そのロードの長さを少しでも軽減しようと導入されたのがブリーフィングである。 ---これはその名の通りキャラクターがブリーフィングと称して作戦を口頭で指揮官から伝えられたり、自分で確認したりするパートで、声はないが台詞とともにマップで推移が表示される。 ---これによりミッション内容がわかりやすくなるなどのメリットはあるが、ロード中の画面であるため一切飛ばせない。 --本作はゲームオーバー後のリスタートが出来ない。このため再スタート時は毎回このブリーフィングを見せられるため、ストレスとなる。 -収録シナリオの難点 --『1stガンダム』におけるガルマ戦は「戦場は荒野」のみ収録されており、特攻シーンなどは再現されていない。また、ラル戦もグフを撃破した所までしか再現されていない((ただし、これ以降は生身での銃撃戦やカーゴの特攻阻止といった、アクションゲームに落とし込みにくい状況ばかりではある))。 ---アムロ編はラル戦を3ステージに分けて再現しているが、シャア編もジャブロー戦を探索・潜入・脱出で3ステージかけていたりと、良くも悪くも独特なステージ配分となっている。 --セイラ編はガンダムに乗って無断出撃した場面の再現のみ。以降はコア・ブースターでの戦闘になるのでやむを得なかったのかもしれないが。 --『ポケットの中の戦争』は前述のように最終決戦の一騎打ちしか再現されていないため、バーニィ編・クリス編共に1ステージのみ。登場パイロットもこの2名しかいない。 ---クリアまでは自機の変更ができず他ステージに挑戦できない仕様もあり、そもそも初回クリアが難しい・自機が屈指の高性能機であるクリスは特に育てづらい。 //--後に機体の自由選択が解禁されるのだが、成長させたアムロを搭乗させたアレックスは非常に使いやすく、その強さを実感出来る。 ---なお、クリス編においては、クリスのパイロット能力が極めて低い+武装に大きな制限がかかっているおかげで、本来高性能機体であるアレックスが非常に使いにくくなっている。バーニィ側は地雷やダミーバルーンといったトラップがあるが、こちらにはそうした搦め手も存在しない。 //---「本来の搭乗者であるアムロが乗るとこんなに強くなる」というのを体感出来るのは良いかもしれないが。 --『08MS小隊』は上記のように最終決戦が収録されておらず、原作再現となっているのはノリス戦まで。シロー編はIFシナリオも存在しないので、やや画竜点睛を欠いた構成になっている。 **賛否両論点 -リアルさへのこだわり --先にあげた明らかな問題点を含めて、本作はSF的なリアルさを「それっぽく」程度ではあるが、ゲームとして見ればわりと本格的に追求しており、その点を評価する声もある。 --基本的にはプレイヤーのやりこみに答えてくれるゲームシステムであり、レベルさえあげればプレイが非常に楽になっていくため、成長を実感出来る。 --先の通りレベル上げは骨が折れるうえ、作業的な感は否めないが、目に見えて成長していく感じにはワクワク感もあり、そこが本作の魅力ともなっている。 --RTSであるため、状況はリアルタイムに常に動いていく。この臨場感もまた本作特有のものである。 ---一方で、これらの要素が難易度を上げていることは間違いないため、これらを全て無駄なこだわりとして否定する声も多い。 **評価点 -良く作りこまれたOPムービー --なんと3分近い長さを誇る非常に濃密な内容。演出なども非常に良く、見ていてワクワクする。 --人間までCGで描かれているため、ともすればシュールに見えるシーンもあるが、モデリングが致命的に悪いわけではない。 -オリジナルのBGMの出来が良い --『[[めぐりあい宇宙>機動戦士ガンダム めぐりあい宇宙]]』から引き継いでいるBGMも多く、BGMそのものが各作品の雰囲気と合っているかは微妙なところだが、ロボットゲームとしては大変雰囲気が出ている。また、一部BGMはガンダムバトルシリーズなどの他作品にも流用されている。 ---PS2『[[ガンダム戦記>機動戦士ガンダム戦記 Lost War Chronicles]]』からの流用ながら「長い眠り」や「架空の空」「VII(第08MS小隊)」といった劇中BGMも収録しているため、原作の雰囲気を崩しすぎることもない。 -リアルな操作感で味わえる無双感 --エースなどは鬼のように強いが、リアルなだけあってドップなどの戦闘機や戦車などはプレイヤーの攻撃が直撃すればあっさり沈んでいく。 ---まともにやり合えば強敵となり得るMSも、気づかれない内に背後からの狙い撃ちが「直撃」すればあっさりと撃墜できたりする。こうした点もまたリアルと言える。 --出撃前のセッティングに始まり、RTSでは臨機応変な采配を常に下していき、戦闘においては僚機やアビリティなどを活用していかに消耗を抑えるかを意識するなどと、1ミッション内におけるプレイヤー側の自由度は高い。やることは非常に多いが、逆に言えばそれだけ「やれることが多い」とも捉えられる。 ---こうした要素を抑えた上で、根気良く成長させる+操作に慣れればエース級の活躍も夢ではない。刺客達から味方を守って孤軍奮闘し活躍するという感覚は、高難易度な本作だからこそ味わえるものであり、本作を楽しんだプレイヤーはこういった点を高く評価している。 -宇宙空間におけるリアルな世界観 --360度を把握する管理は大変な反面、宇宙空間で戦っているという感覚に関しては、他のガンダムゲームでは味わえないほどこだわって作り上げられている。 --操作性は地上戦に対してやや複雑かつ仕様も独特だが、それ故に慣れれば宇宙空間を自由自在に動き回ることが可能。後退移動など、宇宙戦専用の操作も用意されている。 ---先に述べたアクシデントにも度々悩まされるが、これも繰り返しプレイする内に何とかなるレベルではある。 --照準や移動などが大変な反面、宇宙戦艦を次々に落としていく爽快感は素晴らしく、同時に他のガンダムゲーにはない達成感も存在する。 ---本作は黒い三連星が戦果をあげたルウム戦役での無双っぷりも、プレイヤー次第では気持ちが良いくらいに再現することが可能。 -細かな原作再現 --本作の『1stガンダム』はコア・ブースターの存在などから劇場版ベースだが、その一方でTV版限定であったガンダムハンマーやギャンなども登場しており、良いとこ取りとも言える構成である。 --ルウム戦役中のザクII(C型)の主兵装は「N.C.バズーカ」。つまり核バズーカである。原作設定ではこの後に条約で使用が禁じられたため、以降のシナリオ中に装備してくることはなく、ザクIIもF型やJ型が主流となっている。 ---また、本作の''ルウム戦役中のシャア専用ザクIIは赤いがツノが無い''。「赤い彗星」として名を挙げる前の戦闘なので、これも当時としては正しい解釈であった。 --本作の陸戦型ジムや陸戦型ガンダムは量産機としてはHPがかなり高め。これはガンダムと同じ装甲材で開発されているという設定に基づいており、立派な原作再現である。 --前述のクリス編でのアレックスで苦戦を強いられるゲームバランスも、原作の描写や設定に基づいているので原作再現としては評価点ではある。 --また、一部キャラクターと機体の組み合わせによっては、Lトリガー+Bボタン入力(もしくはL+Z入力)で専用の「スペシャルアタック」が発生する。 ---例として、アムロ&ガンダムでライフル装備であれば上述した「両手持ち」となり、射撃戦で有利に働く。盾を装備していれば、背中に背負う姿もしっかり再現されている。~ この他、シロー&Ez-8で100mmマシンガン装備なら「倍返し」としてマシンガンとバルカンによる一斉射撃が可能。ガイア編でのガイア・マッシュ・オルテガのトリオでは3機編隊で行動する「ジェット・ストリーム・アタック」を発動できるなど、細かい原作ネタも拾っている点は好評である。 -マニアックな参戦機体 --上記のように収録機体には惜しい所もあるが、マドロックにキャスバル専用ガンダムやパーフェクトガンダムなどと、マニアックなチョイスそのものは多い。 --ジオン側は各エースパイロットの専用機体が充実しており、特に黒い三連星専用機はザクI、ドム、リック・ドム、高機動型ゲルググと豊富に収録されている。 ---また、これらを地上・宇宙空間の双方で自在に操作できるガンダムのアクションゲームは、当時としても貴重な存在であった。 -ユニークなハードコアミッション --全シナリオクリア後には「ハードコアミッション」として、各パイロット毎に専用の高難度ミッションに挑戦可能となり、クリアすると隠し機体や装備が解禁される。 --ミッションの内容は様々で、普通に敵部隊を殲滅するものもあるが、大半はかなりネタに走ったものになり、ここでしか操作できない機体も存在する。 ---例を挙げると、シャア編の「専用ザクの''キックのみでボールを倒す''」、カイ編の「''残弾ゼロのガンキャノン(補給不可)''でエースの乗ったザク部隊を全滅させる」など。コンセプトは見ての通りだが、総じて難易度は高い。 ---極めつきはバーニィ編の''戦闘ヘリ部隊VS61式戦車隊''の決戦と、シロー編の''61式戦車VSマゼラ・アタック''による戦車大戦。これらのミッションにはゲーム中に登場するほとんどのパイロットが参加しており、それぞれに指示も可能。原作パイロットが搭乗する大量のヘリや戦車がうじゃうじゃと動き回る姿はシュールそのものであり、最早別ゲーである。 -ナレーション・永井一郎 --各キャラクターのエンディングは、永井一郎氏が当時のナレーションよろしく朗読する。作品の違う『ポケットの中の戦争』や『08MS小隊』なども同じテンションで読み上げる。 -MSグラフィックスの存在 --アムロ役の古谷徹氏の代表的な仕事である『カーグラフィックTV』を模したもので、MSのスペック、開発経緯などを古谷氏が淡々と読み上げる。 --感情は一切籠っていないが、アムロが搭乗したガンダムを過剰にまで賛辞したり、失敗機に対しては酷い評価が並んだり、シュールさも内包している。 ---かつては公式サイトでも公開されており、ゲームを知らなくてもこれだけは知っているというプレイヤーも。 **総評 操作は難しく、RTS的な指示要素があるなど、かなり難易度の高いゲーム。リアル過ぎてMSの脆さや敵エースの強さもガチ、一撃で自機が落ちることもザラである。~ 理不尽な難易度と切り捨ててしまうのは簡単だが、やりこむと本作のそのリアルさが魅力であることに気づくプレイヤーも多くおり、評価がやや分かれがちな作品。~ ただ本作の意図的なゲームバランスの異常さはファンをもってしても認めるところであり、やりこみが必要な点は共通認識である。~ しかしそのやりこみの先にある達成感には素晴らしいものがあり、本作のファンが決して少なくない理由となっている。 **余談 -本作の説明書と外箱には表記ミスが存在する。 --ユニットセッティングの項目において、あたかも僚機を自由に変更できるかのように書かれている箇所があるが、実際には不可能である((僚機の武装の変更は可能であり、その旨も別箇所で明記されている))。 ---下記の角川バージョンでは可能なため、当初は変更可能な仕様であったのかもしれない。 --外箱の裏面には誤植があり、アムロを指して「卓越した知力」などと表現し、シャアには「連邦軍を勝利に導け!」と書かれている。''文章が入れ替わっている''のが丸分かりである。 ---こちらも角川バージョンの外箱では修正されている。 -セイラ・マス役の井上瑤氏は本作の発売前に死去、本作が遺作となった。 --収録中はスタッフから見ても録音に難儀していたようで、エンディングでは「謝辞~苦しい中最後まで戦い、「セイラさん」の声を与えてくれた、天国の”井上瑶”様」と追悼コメントが残されている。 --しかしゲーム中の井上氏は、病気に苦しんでいる人間とは思えないほどの熱演で、声が衰えた様子もなく、遺作と聞いて購入したプレイヤーを驚かせた。 -本作には予約特典として、「FW アルティメットオペレーション シャア専用ザク(ルウム戦役時)」が付属していた。 --前述のルウム戦役時の機体で、赤いがツノが無いザクIIを固定フィギュアとして立体化している。しかし、後の映像作品『MS IGLOO』にて''ルウム戦役時点で既に赤くてツノ付きのザクIIに搭乗している''姿が描写され、以降の他作品でもこの設定を踏襲しているため、現在は黒歴史となっている。 -どういうわけか、本作のビームスプレーガンは「小粒のビームをマシンガンのように連射する」仕様となっている。 --また、本作のジムは『ジオニックフロント』の流用のため、ビームサーベルがバックパックの左側ではなく右側に配置されていたりする((原作では左側が基本だが、実際には右腕での抜刀が困難な配置でもある。なお、設定上は右側に装備していても問題はない))。 -本作に同封されているクラブニンテンドーのシリアルナンバーを登録すると、抽選でファミコンミニ版『[[機動戦士Ζガンダム ホットスクランブル]]』がもらえる発売キャンペーンが開催されていた。 -角川バージョン --抽選の景品として極少数生産された。当初は通常版との違いがわからず格安で出回っていたのだが、専用のコマンドが発見されたことで状況は変わる。 --コマンド使用によりかなり自由度が上がり遊びの幅が広がることがわかり、一気にプレミアアイテムと化していった。そのせいで「製品版もこの仕様で出せば評価が変わっただろうに」と惜しむ声や批判も挙がるようになった。 --一方で問題も存在する。自由に作りすぎたからなのか通常版には無い動作不良が発生する。しかもご丁寧に起動前にそれについての注意書きが表示される。
*機動戦士ガンダム 戦士達の軌跡 【きどうせんしがんだむ せんしたちのきせき】 |ジャンル|戦術アクションゲーム|&amazon(B00011D1VI)| |対応機種|ニンテンドーゲームキューブ|~| |発売元|バンダイ|~| |開発元|ベック(チームアカネコ)|~| |発売日|2004年3月18日|~| |定価|7,140円(税5%込)|~| |判定|BGCOLOR(lightsteelblue):''スルメゲー''|~| |~|BGCOLOR(khaki):''ゲームバランスが不安定''|~| |ポイント|リアル過ぎて難しいRTSアクション&br()エースの強さも超リアル&br()しっかりやりこみ抜けば楽しめる&br()古谷徹ナレーションのMSグラフィックスが話題に&br()セイラ役の井上瑤氏の遺作&br()赤くてツノの無いシャアザク(黒歴史)|~| |>|>|CENTER:''[[ガンダムゲームリンク>ガンダムシリーズ]]''| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 GC用に発売された、『一年戦争』を題材とした作品を主軸としたアクションゲームの一つ。~ 「戦士達の軌跡」のタイトル通り、各エースパイロットを操作する形で彼らの一年戦争における軌跡を辿っていく。 参戦しているのはいわゆる『1stガンダム』だけでなく、同じ一年戦争を題材にしたOVA『ポケットの中の戦争』『08MS小隊』にもスポットが当たっている。~ このほか『STARDUST MEMORY』のガトーや『MSV』のライデン、本作と製作チームが同じ『ジオニックフロント』のキャラクターなども登場する。 プレイアブルキャラは連邦、ジオン双方に存在する。連邦サイドは基本的に原作再現だが、ジオンサイドは「もしこの戦闘でジオン軍が勝っていたら」というIFシナリオになっている。~ そのためジオンが勝つとWB隊が壊滅したり、アプサラスによる侵攻に成功するなどの結果となり、ジオン公国は晴れて独立を果たす…などといった『ギレンの野望』さながらのIFエンディングが見られる。~ また、IFだけでなく、設定上でしか存在しない戦いも本作ではミッションとして楽しむことが出来る。 **特徴 -アクション面について --アクションとしてのシステムは当時としてはやや独特。ガンダムの3Dアクションゲームとしての要素を主軸にしつつ、僚機や戦艦に指示や要請を行うリアルタイムストラテジー要素(後述)も存在する。 --出撃前には手持ちの主武装を2種類選択して持ち込める。また、機体によっては頭部バルカンなどの副武装が別枠で用意されていることもある。 ---副武装は主武装と併用して撃つこともできる。例えば頭部バルカンを持つガンダムやジムならば、「バルカンと同時にライフルを撃つ」「ビームサーベルでダウンさせつつそのままバルカンで追撃」などといったガンダムゲーでも珍しい戦い方が可能。 ---ズゴックやジオングなどの機体は主武装が固定されている。その代わり、メガ粒子砲などの一部武装はリロード回数に制限がなく、補給を気にせずに使えるといった利点を持つ。 --盾は自動的には発動せず、盾構えをしなくてはならない。一方で一部武装には、手持ち武器を両手で構える「両手持ち」もあり、動作中は集弾性能が上がるため、必ずしも盾を構えていれば有利というものではない。 ---各機体には装備の重量制限があり、主武装と盾の組み合わせ次第で「重量オーバー」となって機動力が低下するデメリットが発生する。そのため、あえて盾を装備しないorマシンガンなどの軽量な武装を用意して重量オーバーを回避、あるいは重量オーバーを無視してでも強力な装備を持ち込む…といった判断が求められる。 --プレイヤーは戦闘中に「アビリティ」を発動することができ、一時的に後述の直撃率を上げたり、被弾率を下げるといった特殊効果を得られる。パイロットごとに習得するアビリティは決まっているが、発動や使用回数には制限がある。 --本作特有の要素として「プレッシャーゲージ」というものがあり、被弾したり敵に囲まれるとプレッシャーを受けてゲージが上昇していく。これが最大値まで溜まってしまうと、「パニック状態」となりプレイヤーは操作逆転・CPU機は動きが止まるといったデメリット効果が起きる。 ---この一方で、強力なアビリティはプレッシャーゲージが一定値まで溜まらないと使用できないという制約がある。このため、あえてゲージを溜めにいってアビリティ発動を狙うといった駆け引きも可能。 ---プレッシャーゲージは味方だけの要素ではなく、敵に対してもプレッシャーをかけることが可能である。アビリティの使用が基本だが、味方を集めて囲んでプレッシャーを与えるという戦法も。 ---セイラ編などの一部のミッションでは、原作の状況を再現するために意図的にプレッシャーゲージが貯まりやすく調整されている場面もある。 --ガンダムシリーズではお馴染みの「直撃」という要素が本作ではシステムとして採用され、背後から当てるなどしてダメージを倍加させる「クリティカルヒット」扱いとなっている。 ---命中させるとパイロットも「直撃?!」と声をあげるので、これまでのシリーズとは違いしっかりこの台詞には意味がある。 --各パイロットにはレベルの概念があり、戦闘を重ねるごとに経験値が貯まってレベルアップする。レベルが上がるとパイロットの能力が強化されるほか、アビリティやスキルを習得していく。 ---パイロットの能力は機体の挙動に大きく影響するため、同じ機体でもパイロットの違いで動きが劇的に変わる。セイラ編やクリス編では、自機が高性能なために特に能力差を実感しやすい。 ---「スキル」は出撃前に攻撃・防御などの各項目に1つだけセットできるもので、リロード時間を短縮したり、ビーム射撃のダメージを軽減したり、重力下での機動性を高めたりと効果は様々。これらの併用や活用によって戦局を有利に進めることが可能となる。 -シミュレーション面について --RTSらしく、友軍機はプレイヤーの指示によって動く。指示可能なユニットには、マップ上に描いたルートに沿って進軍させる「移動」、指定した敵機体を狙う「攻撃」、指定した友軍機に追従する「援護」などの各指示が可能。先の通り、上手く指示すれば敵のエースを囲んでプレッシャーを与えることも出来る。 --このほか、戦艦や補給艦は近くにいる友軍機に対し、HPを少量回復させる「修理」、残弾を全回復させる「補給」を行なうことも出来る。どちらのコマンドも3回しか使えない。 ---ホバートラックなど、補給のみ行える機体も存在する。 **問題点 -非常に厳しい難易度 --独特の操作感から、ゴリ押しが一切通用しない。基本的な操作技術だけでなく、弾数管理、シールド構え、臨機応変かつ的確な行動指示など、プレイヤーの技量だけでなく頭を使うことも求められる。 ---弾数管理は特に重要。一部武装を除いて弾数には限りがあるため、確実に敵に当てていかないと最終的には格闘一本で殴り込む羽目になる。 ---弾数は補給コマンドで回復するが、使用できるのは味方に戦艦やホバートラックなどが存在するマップのみで、回数も限られている。 --味方にはステージ開始時点から指示が設定されていることも多く、特に変更しなければこのデフォルト設定通りに動いていく。 ---しかし普通はこのデフォルト設定では勝ちが臨めないようになっており、即戦艦が狙われて撃沈して終了などといったことがこのゲームではよくある。自身も死にやすいが味方も極端に脆い。 ---シナリオによっては1面から「直撃=即死」ということもザラ、一方ネームド敵機は直撃にもかなり耐える。 --僚機のMSは思ったより頼りにならず、思うように戦艦などを守ってくれないことも。 ---それを防ぐためにプレイヤーが細かく指示を下したりしなくてはいけないが、RTSのシステム上、必ず毎回敵が同じ挙動をとるわけではないため臨機応変さも求められる。 --ジオン編の一部シナリオ終盤に登場するG-3ガンダム搭乗時のアムロ・レイは正にチートレベルの強さを持ち、最大レベルである30まであげていても手こずる相手。 ---この時のアムロは、母艦であるホワイトベースを落とされて自暴自棄になっており、鬼神のような強さで僚機を屠っていく。 ---プレイヤーキャラが中途半端なレベルだと、轢き潰されるようにG-3ガンダムの超スピードと異常な火力で文字通り瞬殺される。逆にこれを倒せた時の達成感は並々ならぬものがあるが。 -一部機体が登場しない・操作できない --『1stガンダム』の劇中で登場した機体はおおむね参戦しているが、『ポケットの中の戦争』は最終決戦のみ再現しているためわずか2機しか参戦していない。ハイゴッグやケンプファー、ジム・スナイパーIIなどといった人気のある機体が揃って未収録なのは惜しいところ。 ---逆に『08MS小隊』は原作でいう「震える山(前半)」までで最終決戦が再現されておらず、アプサラスIIIやグフ・フライトタイプなどが未登場になっている((シロー編は上記の「震える山(前編)」までしか収録されておらず、IFシナリオが展開されるアイナ及びノリス編でも登場しない))。 --また一部を除いた戦闘機・戦車やMAのほか、「一般機仕様の高機動型ゲルググ」などのMSもNPC専用機であり、プレイヤーが操作できない機体が複数存在している。 --パイロットに関しても、プレイアブルキャラは各作品のメインキャラに限られており、サブキャラは全てNPC専用で彼らを操作することはできない。『ジオニックフロント』のマドロックなど、原作の組み合わせで操作できない機体もある。 -レベルをあげないとまともなプレイが出来ない --前述のパイロットレベルが低い場合、操縦技術が未熟ということで機体の動きが鈍くなるほか、照準を合わせても弾の集弾率や射撃精度が悪く、格闘もろくに直撃(クリティカル)しないと思ったような攻撃すらできなくなる。 ---特にエース級の敵は誇張なしで恐ろしく強い調整がなされており、最初のうちは何をされたかわからないうちに死亡ということもしばしば。 --肝心のレベル上げは既存のミッションを繰り返し行なうしかなく、せっかく次のミッションが出ても難しすぎて前のミッションを繰り返しプレイするということになりがち。 ---獲得経験値は撃破数や自機の性能に依存しており、アレックスなどの高性能機だと取得経験値も少なくなる。逆にボールやザクIなどの低性能機を使用すればかなりの経験値を得られたりする。 ---レベルを上げればアビリティ追加などもあって上記の悩みは解消されるが、一部パイロットは初期能力が絶望的に低く、そのレベル上げすら覚束ないということも。 -異常に操作が難しい宇宙戦 --SFノベルなどを読んでいる人ならばわかるが、本作の宇宙空間における操作感は他のガンダムゲーと比較してリアルさにこだわっており、360度を意識して行動しなくてはならない。 --動いている内に機体の上下が反転したり、東西南北の方角を見失ったりすることもしばしば。宇宙空間ならではのリアルなアクシデントではあるが、実際のプレイにおいては状況把握が困難となることに他ならない。 -ロードの長さとその対策 --基本的にこのゲーム、ミッションに入るまでのロードが長い。そのロードの長さを少しでも軽減しようと導入されたのがブリーフィングである。 ---これはその名の通りキャラクターがブリーフィングと称して作戦を口頭で指揮官から伝えられたり、自分で確認したりするパートで、声はないが台詞とともにマップで推移が表示される。 ---これによりミッション内容がわかりやすくなるなどのメリットはあるが、ロード中の画面であるため一切飛ばせない。 --本作はゲームオーバー後のリスタートが出来ない。このため再スタート時は毎回このブリーフィングを見せられるため、ストレスとなる。 -収録シナリオの難点 --『1stガンダム』におけるガルマ戦は「戦場は荒野」のみ収録されており、特攻シーンなどは再現されていない。また、ラル戦もグフを撃破した所までしか再現されていない((ただし、これ以降は生身での銃撃戦やカーゴの特攻阻止といった、アクションゲームに落とし込みにくい状況ばかりではある))。 ---アムロ編はラル戦を3ステージに分けて再現しているが、シャア編もジャブロー戦を探索・潜入・脱出で3ステージかけていたりと、良くも悪くも独特なステージ配分となっている。 --セイラ編はガンダムに乗って無断出撃した場面の再現のみ。以降はコア・ブースターでの戦闘になるのでやむを得なかったのかもしれないが。 --『ポケットの中の戦争』は前述のように最終決戦の一騎打ちしか再現されていないため、バーニィ編・クリス編共に1ステージのみ。登場パイロットもこの2名しかいない。 ---クリアまでは自機の変更ができず他ステージに挑戦できない仕様もあり、そもそも初回クリアが難しい・自機が屈指の高性能機であるクリスは特に育てづらい。 //--後に機体の自由選択が解禁されるのだが、成長させたアムロを搭乗させたアレックスは非常に使いやすく、その強さを実感出来る。 ---なお、クリス編においては、クリスのパイロット能力が極めて低い+武装に大きな制限がかかっているおかげで、本来高性能機体であるアレックスが非常に使いにくくなっている。バーニィ側は地雷やダミーバルーンといったトラップがあるが、こちらにはそうした搦め手も存在しない。 //---「本来の搭乗者であるアムロが乗るとこんなに強くなる」というのを体感出来るのは良いかもしれないが。 --『08MS小隊』は上記のように最終決戦が収録されておらず、原作再現となっているのはノリス戦まで。シロー編はIFシナリオも存在しないので、やや画竜点睛を欠いた構成になっている。 **賛否両論点 -リアルさへのこだわり --先にあげた明らかな問題点を含めて、本作はSF的なリアルさを「それっぽく」程度ではあるが、ゲームとして見ればわりと本格的に追求しており、その点を評価する声もある。 --基本的にはプレイヤーのやりこみに答えてくれるゲームシステムであり、レベルさえあげればプレイが非常に楽になっていくため、成長を実感出来る。 --先の通りレベル上げは骨が折れるうえ、作業的な感は否めないが、目に見えて成長していく感じにはワクワク感もあり、そこが本作の魅力ともなっている。 --RTSであるため、状況はリアルタイムに常に動いていく。この臨場感もまた本作特有のものである。 ---一方で、これらの要素が難易度を上げていることは間違いないため、これらを全て無駄なこだわりとして否定する声も多い。 **評価点 -良く作りこまれたOPムービー --なんと3分近い長さを誇る非常に濃密な内容。演出なども非常に良く、見ていてワクワクする。 --人間までCGで描かれているため、ともすればシュールに見えるシーンもあるが、モデリングが致命的に悪いわけではない。 -オリジナルのBGMの出来が良い --『[[めぐりあい宇宙>機動戦士ガンダム めぐりあい宇宙]]』から引き継いでいるBGMも多く、BGMそのものが各作品の雰囲気と合っているかは微妙なところだが、ロボットゲームとしては大変雰囲気が出ている。また、一部BGMはガンダムバトルシリーズなどの他作品にも流用されている。 ---PS2『[[ガンダム戦記>機動戦士ガンダム戦記 Lost War Chronicles]]』からの流用ながら「長い眠り」や「架空の空」「VII(第08MS小隊)」といった劇中BGMも収録しているため、原作の雰囲気を崩しすぎることもない。 -リアルな操作感で味わえる無双感 --エースなどは鬼のように強いが、リアルなだけあってドップなどの戦闘機や戦車などはプレイヤーの攻撃が直撃すればあっさり沈んでいく。 ---まともにやり合えば強敵となり得るMSも、気づかれない内に背後からの狙い撃ちが「直撃」すればあっさりと撃墜できたりする。こうした点もまたリアルと言える。 --出撃前のセッティングに始まり、RTSでは臨機応変な采配を常に下していき、戦闘においては僚機やアビリティなどを活用していかに消耗を抑えるかを意識するなどと、1ミッション内におけるプレイヤー側の自由度は高い。やることは非常に多いが、逆に言えばそれだけ「やれることが多い」とも捉えられる。 ---こうした要素を抑えた上で、根気良く成長させる+操作に慣れればエース級の活躍も夢ではない。刺客達から味方を守って孤軍奮闘し活躍するという感覚は、高難易度な本作だからこそ味わえるものであり、本作を楽しんだプレイヤーはこういった点を高く評価している。 -宇宙空間におけるリアルな世界観 --360度を把握する管理は大変な反面、宇宙空間で戦っているという感覚に関しては、他のガンダムゲームでは味わえないほどこだわって作り上げられている。 --操作性は地上戦に対してやや複雑かつ仕様も独特だが、それ故に慣れれば宇宙空間を自由自在に動き回ることが可能。後退移動など、宇宙戦専用の操作も用意されている。 ---先に述べたアクシデントにも度々悩まされるが、これも繰り返しプレイする内に何とかなるレベルではある。 --照準や移動などが大変な反面、宇宙戦艦を次々に落としていく爽快感は素晴らしく、同時に他のガンダムゲーにはない達成感も存在する。 ---本作は黒い三連星が戦果をあげたルウム戦役での無双っぷりも、プレイヤー次第では気持ちが良いくらいに再現することが可能。 -細かな原作再現 --本作の『1stガンダム』はコア・ブースターの存在などから劇場版ベースだが、その一方でTV版限定であったガンダムハンマーやギャンなども登場しており、良いとこ取りとも言える構成である。 --ルウム戦役中のザクII(C型)の主兵装は「N.C.バズーカ」。つまり核バズーカである。原作設定ではこの後に条約で使用が禁じられたため、以降のシナリオ中に装備してくることはなく、ザクIIもF型やJ型が主流となっている。 ---また、本作の''ルウム戦役中のシャア専用ザクIIは赤いがツノが無い''。「赤い彗星」として名を挙げる前の戦闘なので、これも当時としては正しい解釈であった。 --本作の陸戦型ジムや陸戦型ガンダムは量産機としてはHPがかなり高め。これはガンダムと同じ装甲材で開発されているという設定に基づいており、立派な原作再現である。 --前述のクリス編でのアレックスで苦戦を強いられるゲームバランスも、原作の描写や設定に基づいているので原作再現としては評価点ではある。 --また、一部キャラクターと機体の組み合わせによっては、Lトリガー+Bボタン入力(もしくはL+Z入力)で専用の「スペシャルアタック」が発生する。 ---例として、アムロ&ガンダムでライフル装備であれば上述した「両手持ち」となり、射撃戦で有利に働く。盾を装備していれば、背中に背負う姿もしっかり再現されている。~ この他、シロー&Ez-8で100mmマシンガン装備なら「倍返し」としてマシンガンとバルカンによる一斉射撃が可能。ガイア編でのガイア・マッシュ・オルテガのトリオでは3機編隊で行動する「ジェット・ストリーム・アタック」を発動できるなど、細かい原作ネタも拾っている点は好評である。 -マニアックな参戦機体 --上記のように収録機体には惜しい所もあるが、マドロックにキャスバル専用ガンダムやパーフェクトガンダムなどと、マニアックなチョイスそのものは多い。 --ジオン側は各エースパイロットの専用機体が充実しており、特に黒い三連星専用機はザクI、ドム、リック・ドム、高機動型ゲルググと豊富に収録されている。 ---また、これらを地上・宇宙空間の双方で自在に操作できるガンダムのアクションゲームは、当時としても貴重な存在であった。 -ユニークなハードコアミッション --全シナリオクリア後には「ハードコアミッション」として、各パイロット毎に専用の高難度ミッションに挑戦可能となり、クリアすると隠し機体や装備が解禁される。 --ミッションの内容は様々で、普通に敵部隊を殲滅するものもあるが、大半はかなりネタに走ったものになり、ここでしか操作できない機体も存在する。 ---例を挙げると、シャア編の「専用ザクの''キックのみでボールを倒す''」、カイ編の「''残弾ゼロのガンキャノン(補給不可)''でエースの乗ったザク部隊を全滅させる」など。コンセプトは見ての通りだが、総じて難易度は高い。 ---極めつきはバーニィ編の''戦闘ヘリ部隊VS61式戦車隊''の決戦と、シロー編の''61式戦車VSマゼラ・アタック''による戦車大戦。これらのミッションにはゲーム中に登場するほとんどのパイロットが参加しており、それぞれに指示も可能。原作パイロットが搭乗する大量のヘリや戦車がうじゃうじゃと動き回る姿はシュールそのものであり、最早別ゲーである。 -ナレーション・永井一郎 --各キャラクターのエンディングは、永井一郎氏が当時のナレーションよろしく朗読する。作品の違う『ポケットの中の戦争』や『08MS小隊』なども同じテンションで読み上げる。 -MSグラフィックスの存在 --アムロ役の古谷徹氏の代表的な仕事である『カーグラフィックTV』を模したもので、MSのスペック、開発経緯などを古谷氏が淡々と読み上げる。 --感情は一切籠っていないが、アムロが搭乗したガンダムを過剰にまで賛辞したり、失敗機に対しては酷い評価が並んだり、シュールさも内包している。 ---かつては公式サイトでも公開されており、ゲームを知らなくてもこれだけは知っているというプレイヤーも。 **総評 操作は難しく、RTS的な指示要素があるなど、かなり難易度の高いゲーム。リアル過ぎてMSの脆さや敵エースの強さもガチ、一撃で自機が落ちることもザラである。~ 理不尽な難易度と切り捨ててしまうのは簡単だが、やりこむと本作のそのリアルさが魅力であることに気づくプレイヤーも多くおり、評価がやや分かれがちな作品。~ ただ本作の意図的なゲームバランスの異常さはファンをもってしても認めるところであり、やりこみが必要な点は共通認識である。~ しかしそのやりこみの先にある達成感には素晴らしいものがあり、本作のファンが決して少なくない理由となっている。 **余談 -本作の説明書と外箱には表記ミスが存在する。 --ユニットセッティングの項目において、あたかも僚機を自由に変更できるかのように書かれている箇所があるが、実際には不可能である((僚機の武装の変更は可能であり、その旨も別箇所で明記されている))。 ---下記の角川バージョンでは可能なため、当初は変更可能な仕様であったのかもしれない。 --外箱の裏面には誤植があり、アムロを指して「卓越した知力」などと表現し、シャアには「連邦軍を勝利に導け!」と書かれている。''文章が入れ替わっている''のが丸分かりである。 ---こちらも角川バージョンの外箱では修正されている。 -セイラ・マス役の井上瑤氏は本作の発売前に死去、本作が遺作となった。 --収録中はスタッフから見ても録音に難儀していたようで、エンディングでは「謝辞~苦しい中最後まで戦い、「セイラさん」の声を与えてくれた、天国の”井上瑶”様」と追悼コメントが残されている。 --しかしゲーム中の井上氏は、病気に苦しんでいる人間とは思えないほどの熱演で、声が衰えた様子もなく、遺作と聞いて購入したプレイヤーを驚かせた。 -本作には予約特典として、「FW アルティメットオペレーション シャア専用ザク(ルウム戦役時)」が付属していた。 --前述のルウム戦役時の機体で、赤いがツノが無いザクIIを固定フィギュアとして立体化している。しかし、後の映像作品『MS IGLOO』にて''ルウム戦役時点で既に赤くてツノ付きのザクIIに搭乗している''姿が描写され、以降の他作品でもこの設定を踏襲しているため、現在は黒歴史となっている。 -どういうわけか、本作のビームスプレーガンは「小粒のビームをマシンガンのように連射する」仕様となっている。 --また、本作のジムは『ジオニックフロント』の流用のため、ビームサーベルがバックパックの左側ではなく右側に配置されていたりする((原作では左側が基本だが、実際には右腕での抜刀が困難な配置でもある。なお、設定上は右側に装備していても問題はない))。 -本作に同封されているクラブニンテンドーのシリアルナンバーを登録すると、抽選でファミコンミニ版『[[機動戦士Ζガンダム ホットスクランブル]]』がもらえる発売キャンペーンが開催されていた。 -角川バージョン --抽選の景品として極少数生産された。当初は通常版との違いがわからず格安で出回っていたのだが、専用のコマンドが発見されたことで状況は変わる。 --コマンド使用によりかなり自由度が上がり遊びの幅が広がることがわかり、一気にプレミアアイテムと化していった。そのせいで「製品版もこの仕様で出せば評価が変わっただろうに」と惜しむ声や批判も挙がるようになった。 --一方で問題も存在する。自由に作りすぎたからなのか通常版には無い動作不良が発生する。しかもご丁寧に起動前にそれについての注意書きが表示される。

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