モンスターメーカー 闇の竜騎士
【もんすたーめーかー やみのりゅうきし】
ジャンル
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RPG
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対応機種
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PCエンジン スーパ-CD-ROM2
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発売元
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NECアベニュー
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開発元
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オフィスK
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発売日
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1994年3月30日
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定価
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7,800円
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判定
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クソゲー
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ポイント
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圧倒的なバグの量 打ち切りエンディング 発売二年延期 擁護不可能
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モンスターメーカーシリーズリンク
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概要
「モンスターメーカー」シリーズはカードゲームとTRPGを主体に、電源系ゲーム、非電源系ゲーム、コミック、小説と幅広く商品展開された人気コンテンツで、ゲーム機版の作品は本作以外にもソフエルからGB、FC、SFCで発売されている。
本作より少し前(1993年12月)に発売されたSFC『モンスターメーカー3 光の魔術師』が(ほぼバードバグが原因とはいえ)コンテンツの評判を揺るがしてしまっただけに、シリーズ最古の物語であり、大容量のCD-ROMを使った美麗なグラフィックと音声演出を兼ね備えた本作は「大作」として期待されていた。
しかし本作もまた、下記の要因からユーザーの期待を裏切り、暗闇に叩き落とすクソゲーとなってしまった。
問題点
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バグだらけ。
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パッケージの中に紙片が挟んである。内容は次の通り。
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『(ご注意)メモリ管理上の都合により、ソルレンド大陸の第二の塔「バッソの塔」の入口を開けた後は、最上階の水晶球のメッセージを聞くまでは塔外部に出ないように進行して下さい。ゲーム展開の妨げになる場合がございます。また、この間は「時の本」(バックアップRAM)に書き込まぬようご注意願います。』
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ゲーム後半の3つの塔を攻略するイベントの2番目の塔の事である。これに従わないと行き止まりで隠し通路を発見するイベントが発生しなくなり、完全に詰んでしまう。
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戦闘でコマンドを受け付けてくれないことがある。
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まだ敵が残っているのに戦闘が終了してしまうことがある。
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フィールドでも戦闘でも挙動不審な動作が多い。
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画面上のキャラが多いと動きが遅くなったりキャラがちらつくゲームは多いが、本作は特にひどい。
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その他フリーズは当たり前。ただし、プレイヤーによってはまったく起こらないこともある(原因は不明)。
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攻略
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レベルアップ時にステータス上昇がランダムのため、早いうちに出目操作をしないと後半がきつくなる。
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前半に下級回復魔法が買えるが、そのタイミングを逃すと二度と買えなくなる。
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装備の変更ができないキャラ専用に設定された無意味な装備が存在する。
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町移動・ダンジョン脱出の魔法やアイテムが存在しない。
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長いダンジョンの奥地で目的を果たした後、徒歩で戻らなければならないケース多数。
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パーティー編成を前衛と後衛に分けて戦うのだが、中盤以降は戦士系キャラが足りず、紙装甲のキャラを前衛に出さざるを得ない状況になる(後衛よりも前衛が多くなければならない)。
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モンスターを仲間にできる事が恐らく売りなのだろうが、極端に仲間にしにくい。
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雑誌記事によると、主人公よりレベルが低い程成功率が上がる(=仲間に出来たとしてもあまり役に立たない)。また、レベルに関わらず絶対仲間に出来ないものも多いが、プレイヤーにそれを判別する方法は無い。
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PCエンジンFAN誌には「結局最後までモンスターを仲間にできずクリアした」という読者レビューが存在した(初プレイ時は筆者も同様だった)。
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仲間にできたとしても、1戦闘毎に召喚呪文を唱えターンを消費して呼び出さなければならないため、毎回呼んでいるとすぐにMPが尽きる。結果、モンスターの活躍場面はボス戦に限られる。
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説明書に記載はあるが、存在の確認できない魔法が多数存在する。続編に登場予定のものがそのまま記載されているのだろうか。
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何度も同じ宿屋に泊まり続けていると、見かねた店主がアイテムをプレゼントしてくれるという救済要素がある…のだが、はっきり言うと救済にはなっていない。もらえる条件もいまいちよく分からない。
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ストーリー
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主人公は心優しい少女ライア。彼女は親を知らずに育ってきたが、村から出ることになる。旅立ちの理由は「村が盗賊に襲われた後、盗賊と髪や瞳の色が似ているという理由で孤児である主人公は村を追い出された」というもの。完全なる濡れ衣である。
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旅立ちの経緯をもう少し詳しく述べると、ライアはエルフという異種族であり、凶暴なモンスターと仲良くなったり話したりできるという能力があったため、村人からは忌み嫌われ、かつ畏怖の対象でもあった(ただし、旅立ちまでエルフであることは気付いていなかったらしい)。そこへきて今回のライアと特徴が似た盗賊の襲撃である。普段からくすぶっていた村人たちの感情が爆発し、長老の力をもってしても彼らの怒りを鎮めることはできなかったのである。
そして、盗賊の仲間という疑いはすぐに晴れるのだが、今度はエルフであることを理由に結局追い出されるという理不尽な展開が待つ…(盗賊と決め付け、口汚く罵ったことに対する謝罪などはもちろん無い)。
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その後も行く先々で事件が立て続けに起こり、時には明らかに主人公本人が原因ではないのに投獄される等、不幸が次から次へと押し寄せる。
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物語の途中で突然終了してエンディング。「To be continue...」
そのあまりの唐突さに思考が停止すること必至。ちなみに本作最後のボスは、物語に関わる敵でもなんでもないただのカニである。
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いちおう続編の計画はあるにはあった。後述参照のこと。
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BGM
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あまり話題にはならないが、一部の曲は同社のPCエンジン移植作品『ドラゴンナイトII』からの流用である(ちなみに曲タイトルはしっかり変えられている)。シリーズ作品ならまだしも、全く無関係な作品から流用してくるというのはさすがに…(同じ“竜騎士”だから許されるとでも思ったのだろうか?)。
評価点
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主役、端役含め声優は豪華。
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BGMは良曲揃い。前述の流用さえなければ手放しで褒められる数少ない評価点である。
総評
延期に延期を重ねた末(後述)、ようやく発売されてもバグだらけ。ゲームバランスも褒められたものではなく、あげくの果てに打ち切りエンド。
主人公が別の意味で不憫である。ストーリー以外の要因でまで不幸な目に遭わせる必要も無いだろうに…。
発売延期と続編の顛末
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本ゲームのプロデューサーは多部田俊雄氏。クオリティの高さを追求するあまり、担当したゲームの多くを発売延期もしくは中止にした前科がある(詳しくは用語集を参照)。本作も発売が遅れに遅れ、最終的には約2年延期しての発売となった。制作が発表された時期から考えれば3年近く待たされたことになる。
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当時の雑誌には九月姫のデザインを再現する為にグラフィックを描き直しているとして、顔パーツの比率の変化を掲載したこともある。
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実際に発売されたゲームのビジュアルシーンがハイレベルだったことは確かである。しかし、フィールド画面の背景やキャラクターグラフィックは同時期のゲームと比べると見劣りしており、修正した部分としていない部分の差が明確に現れてしまっていた。
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氏は「これ以上延期したら丸坊主にする」と宣言したこともあったが、結局更に延期を重ね、公約を実行するはめになった。
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ゲームが発売延期され続ける一方で、連動企画は当初の予定通り行われ、そちらが先に終了してしまう羽目になった。
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TBSラジオでやっていた販促番組も、発売前に終了。
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また本作のサウンドトラックCDは当初の予定どおり1992年9月に発売された。つまり、ゲーム発売の1年半近くも前にゲーム収録曲がほぼ全曲聞けてしまったわけである。
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さらにCDの続編「モンスターメーカーCD2」までもが本作よりも先に発売されてしまう事態に。
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本作の発売後、続編である『モンスターメーカー 神々の方舟』の制作が発表される。
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当時の新技術"HuVIDEO"(動画圧縮技術)を使ったムービーシーン(のスクリーンショット)のお披露目で若干期待に沸くも、この続編も年単位の発売延期を繰り返した挙句、発売中止になった。
余談
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主人公のライアは、作品外でも不憫なキャラとして扱われている模様。パラレルワールドでは「生徒全員が仲良く幸せに学ぶ、希望に満ちた学校生活を送る為」に設立された学校でいじめを受けて暮らしている等。
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雑誌の特設ページの公式4コマでは、人生相談で「ゲームの主人公やめたいんです」と相談したりもしている。そう言いたくなる気持ちも分かる…。
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本作には漫画版もあったが、肝心の掲載誌が廃刊となりお蔵入りになってしまった。これも何かの呪いなのか…。
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当時のPCエンジン専門誌「月刊PCエンジン」のクロスレビューにおいて、レビュアーの一人が評価を放棄するという前代未聞の事態まで引き起こす(0点や1点ではなく、文字通り「-」である)。本作の破壊力を証明するエピソードと言えるだろう。
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セガサターンで予定されていた別ゲーム『モンスターメーカー ホーリーダガー』も、やはり年単位の発売延期を繰り返して結局発売中止になった。
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延期の途中でハードがドリームキャストに変更された。ドリームキャストでも一番最後に発売日未定→発売中止となったタイトルである。
最終更新:2020年02月08日 22:22