幕末降臨伝ONI

【ばくまつこうりんでんおに】

ジャンル RPG
対応機種 スーパーファミコン
メディア 32MbitROMカートリッジ
発売元 バンプレスト
開発元 パンドラボックス
発売日 1996年2月2日
定価 12,800円
判定 なし
ポイント 成長する武器「天下五剣」の導入
グラフィックや音楽の質が向上
転身の有限化やエンディング等は賛否両論
ONIシリーズリンク


概要

SFC版ONIシリーズ第2作。
舞台は幕末。日本のみならず大陸(アメリカ)まで広がり、西洋妖怪達も登場。
また、前作『鬼神降臨伝ONI』の主人公達も物語の節々に登場するというファンには嬉しい展開も。

ストーリー

妖怪に捕まった子供を助けに単身で向かう大和丸。何とか子供は救いだせたものの、倒した妖怪の仲間に襲われてしまう。
そんな彼の窮地を救ったのは壬生 十郎太と名乗る侍の青年だった。
彼は大和丸の素質を見抜き、「影の新撰組」へと誘う。
妖怪退治を生業とする彼らの一員となった大和丸は様々な事件に巻き込まれていく……。

特徴

SFC第2作であることもあり、グラフィックや音楽の質が向上。
和風RPGらしく、会話は縦書きで行われキャラクターの表情もコロコロと変わる。
終盤では日本を飛び出し、大陸へと向かう展開は当時のユーザー達を驚かせた。
そこに向かうまでには自分たちの持つ船を成長させなければならないが(最初はイカダだが、船の段を上げ改造する事によって軍艦になっていく)、それも幕末の太平洋の緊迫した状況を再現していると言える。

評価点

  • 前作以上に強化されたNPCや神降ろし
    • 西洋の仲間や神も加わったことで和風一辺倒のみであった今までとは違う空気が味わえる。
    • 前作ではNPCを8人しか連れ歩けなかったが、今作ではストック機能によりいつでも入れ替えができるようになった。
  • 前述の通り、グラフィックや音楽の質が向上。
    • 特に最終盤、アルヴァ・テスラ・ライヒの三博士戦BGMの力の入れようは相当なもの。
    • ちなみに三博士最後のライヒ戦BGMはイントロだけ異なる。後はアルヴァ・テスラ戦と同じBGMだが、ラスボスはまだ先である(もちろん専用BGMあり)事を考えると芸が細かい。
      • これにより、ゲーム実況動画ではライヒがラスボスだと勘違いするプレイヤーが続出した。
  • 回復アイテムの値段が非常に安い。またザコ敵からのドロップ確率も高く、大量にストックしやすい。
    • 魔力をケチることなく神降ろしや大技を連発できる。
  • 業(ごう)システムの導入。
    • 依頼を快く引き受ける・困っている人を助けるなどの良い行いをすると業が良くなり、窃盗やイベントで間違った対応をするなどの悪い行いをすると業が悪くなっていく*1
      • 主人公が聖者であるため悪い行いができないという後期ウルティマにも似たシステム。
      • 普通のRPGのつもりで他人の家のタンスを開けるなどの行動をすると業が悪くなる*2。というか普通のRPGのほうがおかしいのだが。
        とはいえ、このシステムを導入したおかげでRPG特有の『探索の楽しみ』がオミットされてしまっており、後述の問題点も鑑みればこのシステムが作品としての爽快感&達成感を削いでしまっているのも事実なので一長一短だろう。
      • しかしそもそもの話を言えば、落ちてる物であろうとも勝手に私物化すればただの横領なのだが、そこは悪行カウントされないらしい。法を遵守してるかどうかではなく、他人が主人公達にどういう感情を抱くのかだけが重要ということだろうか。
    • 業がある程度良くないと手に入らない要素もある。
      • 業を良くする行動は有限なので、悪さばかりしていると業を最高値にできなくなるという罰が下る*3

賛否両論点

  • 成長する武器『天下五剣』の導入。
    • 前作では単なるキーアイテムだったのだが今作では実際に装備することが可能であり、キャラクターとは別に経験値も貯まる。
      • 最終的には最強武器すらも超える攻撃力となる。また特定の攻撃力まで成長すると、新たに剣技を覚える。
      • これが逆に災いして、他の武器の存在意義がほとんどなくなっている。人によっては手に入れた段階で店売り武器を買わなくなるということも。
    • 例外的にラスボスに有効な属性の付いている風林火山という天下五剣以上の武器も存在する。
    • 余談だが前作の主人公・北斗丸が使っていた「鬼丸」は、何故か主人公・大和丸ではなく異国の勇者・スクワントを選ぶ。これも北斗丸の父に関する俗説(生き延びて後にチンギス=ハーンとなったという、俗に言う「トンデモ説」だが*4)を知っていると色々な意味で納得できる。
      • そもそも作品自体がありえないファンタジー要素満載なのに、ここだけ現実通りにしなくてはいけない理由はないだろう。*5
  • 海戦の導入。
    • 船での移動中、ランダムエンカウントで海戦が始まる。その他にも普通の戦闘と海中での戦闘もあり、やたらと凝っている。
    • しかし敵の船が強すぎるので、船の改造とレベリングが必要になる。ただの通り道にすぎない海でかなりの足止めを食らう。
      • 砲弾の購入や船の改造には大金が必要。今まで稼いできた金をほぼ全て放出する必要があり、せっかく海を渡って新たな町に着いても装備品が買えずにまた稼がなければならなくなる。船の改造段階に合わせて敵を選べば、ある程度は稼げる。最終段階まで改造が終わると、新たな町付近の強い船からお金を稼ぐこともできる。新たな町で弾薬や耐久回復の道具を購入可能。
  • 豊富なサブクエスト。
    • 隠れているNPC、降ろせる神様、人間に化けた妖怪を探し出して村を作るといったサブクエストが各所で発生する。
      • 誰がどこにいるかなどは当然教えてもらえない。意地悪なことに木陰や屋根の裏側など見つけづらい場所にいたり、特定のアイテムを渡さなければならなかったりすることも多い*6
      • いかにも仲間になりそうなのに本編をある程度進めないと仲間にならなかったり、時期を逃すと勧誘できなくなったり、勧誘できても弱くて役に立たないレベルになっていたりもする。
      • スルーしてしまうと便利な神降ろしや優良アイテムが手に入らなくなるなどの障害が発生する。
      • また妖怪を勧誘する順序というのがある程度決まっているので、順序を間違えると村に全員勧誘できなくなってしまう。もちろんノーヒントである。
  • 夏芽が覚える術「いのちのひかり」について。
    • 「現在のHP分のダメージを敵に与え、同時に自身も瀕死状態になる」という術なのだが、本作のゲームバランスの関係上非常に強力な術となっている。
    • 本作の敵はボス含めてHPの上りは緩やか*7で防御力を上げる事でバランスを調整している節があり、防御力関係なく固定ダメージを与えるこの術との相性がすこぶる良い。この術を習得した時点で夏芽のHPは余裕で4桁に届いており、終盤における多数のボスも開幕でこの術を使えばレベル次第では一撃で倒せてしまう。
    • さらにこの術を無効化するボスはラスボスを含めてもごく僅かである。手ごたえのある戦闘を求める人は自制した方が良いだろう。

問題点

  • 先述した海戦での項目に関連するが、全体的に金策に難儀する。
    • 本作は金を持っていない敵が多く*8なかなか金が溜まらない。
  • 隠忍への転身が無限ではなく有限になった。
    • 「霊力」と呼ばれるステータスがあり、戦闘中に転身しているとこれが徐々に減っていく。空になれば転身が解除される。
      • アイテムや特定の神降ろしで霊力の回復は可能だが、そのぶん行動を攻撃に回すのが難しくなる。
    • 今作は剣技の追加により転身しなくてもそれなりに戦えるので、転身攻撃しか通用しない敵を除いてほぼ転身の必要性がない。
  • 頻繁に挿入される回想シーンでテンポが崩れる。
    • 主人公や仲間の回想ならまだしも、敵側や全く関係ない人物の話などもあったりする。
      • しかも何の脈絡もなく回想シーンが始まり、終わってから「今のは一体?」と驚くということも多くて話がこんがらがる。
    • ザコ敵が出現する長いダンジョンを攻略させられたりするものもある。
      • 戦闘では何故か攻撃かアイテム回復しかできず、転身や神降ろしが使えない。結果として攻撃しかしない、何の面白みもない戦闘を繰り返すことになる。
  • 報われないストーリー
    • 主人公達は道中でのあるイベントにより、お尋ね者となってしまう。これが最後まで解消されることはなく、エンディングも明るいものとは言えない。
      • お尋ね者になった時点で日本国内のほぼ全ての店が使用不可能になり*9、宿にも泊まれない(幸い無料回復の宿は多い)。
      • 主人公達が人々に「悪」と見なされ報われない、という展開は後の『ONI零 ~復活~』でより顕著となる。
    • 本編中では明言されていないが、攻略本などでは前作の主人公達の悲劇的な末路が語られている。
      • 元々、旧シリーズから隠忍(おに)の力を持つ者は人から隠れて生きることを余儀なくされる存在だが、どんなに善人プレイを心掛けていても結局はこの結末に行き着くため徒労感が強くなってしまうのも否めない。せめて業システムと絡めてエンディングが変わるくらいの変化は欲しかった所。
  • 前作から劣化してるUI
    • 本作は和風ゲーらしくメッセージ欄を縦書きにして画面右側に出すという演出がされている。これ自体はとても和風らしい雰囲気が出ているので良点だろう。*10
      しかし、ステータス画面などの他の部分は普通に横書きで左から読む(たまに出る縦書きの文字も左側から流れてくる)ため、視覚の導線が真逆に散ってしまうという、地味に疲れる構成になってしまっている。
      • 画面が明滅するようなイベントが発生するとメッセージ欄ごと明滅して文字が読み難くなるというダメな仕様がある。前作ではちゃんと出来ていたのに何故?
      • ステータス画面の背景が「藍色と黒色の波」と表現するような画像を使用しており、表示される数字は細いフォルムに黒い影を付けているフォントなので背景に紛れてしまう。特に魔力は青文字で表示されるため見辛いことこのうえない。

総評

世界観が広がったことで絡ませ辛かった西洋人物も登場し、冒険感がより深まった。
しかし、転身の有限化やエンディングなど人によっては賛否両論点もあるなど意見は様々。

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最終更新:2022年03月16日 19:38

*1 業は11段階に分かれており、「かみさまみたい」→「せんにんさま」→「おでえかんさま」→「おえらいさん」→「ぜんにん」→「ふつうのひと」→「ふりょう」→「あくにん」→「おたずねもの」→「ぬしもわるのよう」→「ごくあくにん」となっている。

*2 序盤のイベント中にとある人物の持つ刀を取ることができるがすぐに強い武器などが買えてしまうので盗み損になる。

*3 一応の救済措置として、とある場所にある賽銭箱にお金を入れることで業がデフォルトの「ふつうのひと」に戻してもらえる。

*4 現在ではこの説は完全否定されているが、ゲーム開発当時には俗説として人気が高かったので採用しても違和感はなかったのだろう。

*5 前作の主人公である北斗丸からして、源義経の遺児というトンデモ設定である。

*6 特に特定のアイテム関連では戦闘中に使える有限入手アイテムが全状態異常無効アクセサリの条件になっているなど前作以上に気を使わなければならないことになった。

*7 中盤に差し掛かる前でボスのHPは1000に届くが、終盤のボスでもHPは3000~4000止まり

*8 持っている敵と持っていない敵の割合が大体半々くらい

*9 ただし一部の店とアメリカ大陸の店は普通に使える

*10 テレビ画面は時代と共に段々と横長になっていったので、この点をしっかり有効活用しており、先見の明があったと言えるだろう