遺作

【いさく】

ジャンル アイテム使用/思考型AVG
対応機種 PC-9801 MS-DOS
PC-9801
Windows 95/98(初版)、95/98/Me/XP(リニューアル版)
Macintosh
発売・開発元 エルフ
発売日 【PC98 MS-DOS】1995年8月25日
定価 【PC98 MS-DOS】9,240円
レーティング アダルトゲーム
配信 FANZA:2017年10月10日/4,104円
【Windows 10に対応済み】
判定 なし


概要

『伊頭家シリーズ(○作シリーズ)』の第1作に当たる脱出アドベンチャーゲームである。
タイトルの『遺作』であるが、開発元のエルフとしての最後の作品という意味ではなく、登場人物の一人である『伊頭遺作』から取られている。

1997年にはWindows版が、1999年にはWindowsリニューアル版が発売され2008年にはDL版がFANZAで廉価版が配信されている。


ストーリー

主人公の小暮健太が在籍している桜蘭学園が夏休みを迎えた8月のある日、
健太の所に差出人不明のラブレターが届いた。ラブレターの文面で指定されていた待ち合わせ場所の旧校舎5階の音楽室に向かうが、
そこには誰もおらず、健太は音楽室で待つことにした。
やがて音楽室に健太の学校のクラスメイトや学級担任等がやってきた。皆何らかの手紙をもらってやってきたと言い、
中には差出人は健太と明記されている上に卑猥な内容を連想させる手紙まであった。
健太は自分は送っていないと否定するが中々信用してもらえない。

そのやりとりの間に何者かに音楽室の扉や旧校舎の出入口を施錠され、健太達は旧校舎に閉じ込められてしまう。
窓からの脱出を試みようとするが、旧校舎は以前から窓に頑丈に板が貼られているため、
出入口を施錠されてしまっては外部へと出る方法はなかった。

暫くすると閉ざされていた音楽室の扉が開いた。
中に閉じ込められている人間以外にも誰か人がいると皆が判断し、健太は学級担任である高島久美と一緒に旧校舎5階の様子をうかがった。
その捜索中に二人は移動する黒い物体に遭遇する。その物体は健太は顔は見えなかったか、
ぶつかった久美は桜蘭学園で用務員をしている伊頭遺作であると驚きながら言ったのだ。
遺作は評判が非常に芳しくない用務員で何をするのか分からない。健太達は遺作が何かする前に脱出しようと決意した。


基本システム

  • 仲間達との会話や校舎内での捜索中に入手したアイテムを使用することで行動範囲を広げ、閉ざされた桜蘭学園の旧校舎からの脱出を目指す。
    • 移動中、一度に狭い場所の状況しか見られないので方向を変えてフロアを歩き回りながら移動することになる。気になるアイテムや人物の表情などは対象をクリックすることにより手に取ったり様子をうかがえる。
    • 途中の会話の内容や行動によっては遺作が登場人物を拉致して行方不明になることがあり、その場合は通常発見するアイテムの他に遺作が行方不明になった登場人物を陵辱しているシーンを収めたビデオテープが落ちていることがある。
      • 全員揃っての脱出を目指す他に、あえて遺作に女の子を誘拐させるフラグを立ててテープ回収を楽しみというゲームスタイルも確立できる。

評価点

ストーリー面

  • ただ脱出するのではなく、過去の出来事や遺作を取り巻く黒い噂などを中心とした物語構成である
    • 旧校舎から脱出するために行動していくと今回の出来事の背景に様々な原因がある事が判明していく。
    • 過去の出来事は個人間でのいざこざから刑事事件まで大小とは異なるがそれらが関わっている。

キャラクター面

  • 女性キャラクターが豊富である
    • 優等生、学園のアイドル、眼鏡っ子、女教師、不良少女など一定のバリエーションがある。
  • 敵役である『遺作』の印象的なキャラクター性
    • プレイヤーからみて敵役である遺作は完全な悪役ではあるが、悪役なりの独特の美学を持っている。
    • ビジュアルはあまり清潔そうではない上に女性に対する卑劣な言動から評判は悪いが、頭の回転は速く口もよく動き狡猾な性格である。
    • その頭の良さや狡猾さで健太達を何度も精神的に追い詰め苦しませる。

音楽面

  • 名曲こそないが、ある程度の緊迫感は生みだしている。

ゲームシステム面

  • 脱出ゲームのシステムをメインとしたゲーム性は、他のアダルトゲームにはあまり見られない新鮮なもの。
    • 脱出するために試行錯誤する楽しさが評価されている。
    • 選択を誤ると仲間が敵(遺作)に攫われ居なくなるという展開も適度な緊張感として作用している。

ビジュアル面

  • グラフィックが美しい。
    • 横田守による原画とともに、塗りの技術の高さが評価されている。

アダルトシーン

  • 遺作による凌辱シーンは高く評価されている。

賛否両論点

ストーリー面

  • 女性キャラクターとのハッピーエンドが2人分しかない
    • キャラクターを全員遺作の魔の手から防ぎ、脱出に成功することでハッピーエンドが見られるのだが女性キャラ2人分しかない。
      • 女性キャラの中には以前から主人公に片思いをしていたキャラも居るのだが、そのキャラのエンディングは無い。
    • 一応、後にユーザー向けに作られたファンディスク『盗作』に簡素だが残りの女性キャラ分が収録されている。
    • 『盗作』はリニューアル版以降は本編ソフトに付属している。
  • 遺作から守りきり無事脱出させても、幸せとは言い難い結末を迎えるキャラクターが居る。
    • 事件の内容を考えると何の悪影響も無く済む方が不自然であり、リアルな幕引きではあるのだが、そのキャラクターを気に入っていたプレイヤーにはやるせない思いが残るだろう。

グラフィック面

  • 一部グロテスクなグラフィックが存在する
    • 本編での一例をあげると首が本来曲がらない方向に曲がっていたり、流血シーンなどが存在する。
      • 誇張抜きでガチな表現なので、ある程度の耐性が必要である。

システム面

  • 女性キャラクターが遺作に拉致されなければHシーンが全く見られない
    • 本作のHシーンは全て「拉致されたキャラが遺作に凌辱される」というもので、基本的に遺作の隠した*1ビデオテープを介して見る事になる。
    • ハッピーエンドに到達するためには一人も拉致されてはいけないため、その際にはHシーンが全く見られない。
    • 遺作に誘拐させなくても登場人物のサービスシーンはあるのだが、直接的な行為は全くない。上のハッピーエンドですらトップレスかつ乳首まで。
      • この点は、ハッピーエンドが見たければアダルトゲームとしての要素を捨てる必要、逆にアダルトの需要を満たしたければヒロインを犠牲にする必要をそれぞれ迫ってくる。

アダルトシーン

  • 凌辱シーンに男性キャラへの凌辱シーンがある。
    • 遺作に誘拐されて餌食となるのは主に女性キャラクターであるが、男性キャラクターも1名存在する。
    • 彼の凌辱シーンは主に特定の女性キャラクターと無理矢理性行為をさせるというものなのだが、対象となる女性が誘拐されていない場合は 遺作自らが相手をする という誰得シーンとなる。
      • 彼の凌辱シーンのみこのような条件分岐があるため、CGコンプの妨げにもなっている*2
    • HPの製品紹介にはそれを連想させるようなビジュアルが掲載されていないので、苦手なプレイヤーは要注意。
  • 非凌辱的なエロがほぼ絶無
    • 脱出ゲームを主体とした作風上仕方ないとも言えるが、主人公とヒロインとのシーンが欲しかった声もある。

問題点

  • 入手しづらいアイテムがある
    • バケツ入りの塗料なのだが、取っ手の部分を正確に掴まなければ手に入れる事ができず、入手しづらい。
    • これ以外のアイテムはクリック判定がそれなりに大きいのだが、バケツだけは中々掴みにくい。

総評

アダルトゲームには珍しい脱出ゲームを根底に置いたゲーム性をベースに凌辱ものアダルト作品の作風を乗せた独特な作品。
今現在では古さこそ多々見られるが、鬼畜系アドベンチャーゲームのパイオニア的な作品として一定の評価は下せる作品である。
まだ携帯電話が普及していない頃に発売された作品ということもあり、孤立無援の状況で犯罪者の仕掛けるゲームに付き合わされる理不尽さと恐怖をたっぷりと味わえるだろう。


その後の展開

  • 概要にあるように『伊頭家シリーズ』と銘打って2作目『臭作(しゅうさく)』、3作目『鬼作(きさく)』とシリーズ展開していった。
  • オリジナル版の遺作の製品パッケージに封入されている申込用紙を通じてメーカー通販で入手できた『盗作』という本作のファンディスクがある。
    • 本編ではハッピーエンドが存在しないヒロイン達のハッピーエンドが追加された他、パロディなどが収録されている。
    • Winリニューアル版とMacintosh版には、コンテンツの1つとして収録されている。
    • この『盗作』のコンテンツの1つに遺作が旧校舎にて皆を閉じ込める為の準備をしている話がある。本編とは大きく作風が異なり遺作の弟達が主人公である『臭作』や『鬼作』の作風に近い。
  • エルフ解散後にFANZA GAMESが版権を管理しており、Windows 10対応版がダウンロード販売されている。定額でエロゲー遊び放題の「GAMES 遊び放題」の対応作品でもある。
    • 2019年より、4作目『卑作(ひさく)』が配信されている。
  • 2020年11月27日にFANZAGAMES PLAYカードが1,980円で販売された。

余談

  • 伊頭遺作は本編では明かされていないが三兄弟の長男である。
    • ただ弟達臭作、鬼作の名字の読み方が (いとう) であるが遺作は (いず) である。
    • 伊頭兄弟はその「鬼畜であるが妙に憎めない」・「独特の美学を持っている」キャラクター性から、作品をプレイした人達の一部にコアなファンを生み出した(特に主人公を務めた臭作と鬼作に顕著)。
  • 原画の横田守はこの作品を最後にエルフを退社し、スタジオラインを設立した。
  • 2011年にブランドCYCLETが『駄作』というエロゲーを発売している。
    • 「○作」というタイトルだが、伊頭家シリーズおよびエルフとの関連性はなし。
  • 開発元のエルフとしての最後の作品(遺作)は、2015年10月15日に発売された『麻呂の患者はガテン系3 完結編』である。

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最終更新:2021年05月03日 23:46

*1 主人公たちに見せ付ける為にわざと置いて行っているので、隠したという表現は語弊があるかもしれない

*2 彼の絡む凌辱シーン3種が排他で、ハッピーエンドに到達するには彼も守り切らなくてはいけないので最低4周のプレイが必要になる。セーブ&ロードでシーンだけ回収しようにも、分岐地点が結構前なのでやはり手間が掛かる