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ハリー・ポッターとアズカバンの囚人

【はりー・ぽったーとあずかばんのしゅうじん】

ジャンル RPG
対応機種 ゲームボーイアドバンス
メディア 128MbitROMカートリッジ
発売元 エレクトロニック・アーツ
開発元 Amaze Entertainment
Griptonite Games
発売日 2004年6月26日
定価 5,040円
判定 クソゲー
ポイント ストーリー端折りすぎ
ボリュームなさすぎ
システム自体は悪くない
ハリー・ポッターシリーズ


概要

全世界で人気を博したハリー・ポッターシリーズの第三章、『アズカバンの囚人』のゲーム化作品。ジャンルはRPG。
洋ゲー界の雄、エレクトロニック・アーツの発売であることからもわかるとおり、元は洋ゲーである。
日本ではGC版、PS2版、Windows版も発売されているが*1、ジャンルも内容も全く異なる。GC版は本作との連動要素がある。

システム

  • パーティーメンバーは、ハリー、ロン、ハーマイオニーの3人という原作既読者からは納得しやすいもの。ほぼこの3名のみで進めていき、組み合わせは進行度や途中の選択肢により変動する。
  • 各ダンジョンには様々な仕掛けがあり、各メンバーが得意とする魔法を駆使して仕掛けを解除していくことになる。なお、物体を押したり破壊したりする魔法、「フリペンド」は全員使用可能。
    • ハリーが使えるのは、周囲を明るくして隠された通路を探し出す「ルーモス」と、クモの巣などを切ることができる「ディフィンド」。
    • ロンが得意とするのは鍵を開けることができる「アロホモラ」と、物体を柔らかくしてジャンプ台を作る「スポンジファイ」。
    • ハーマイオニーの固有魔法は壊れた物を修理できる「レパロ」と、水を凍らせて通路を作る「グレイシアス」。
  • シンボルエンカウント式。敵シンボルに触れると戦闘に突入する。ちなみに敵の情報を知る「インフォーマス」という魔法で調べたことのない敵は、固有のシンボルで表示されない。
    • メンバーごとに使える魔法には若干差異がある。一応パラメーターにも差があるが、ほぼ気にならないレベル。
      • 魔法は使い込めばより上位のレベルのものが使えるようになる。その分消費MPも増えるので、下位のものとの使い分けが必要。
    • キャラクターはそれぞれ「スペシャルムーブ*2」を持つ。なお、ロンとハーマイオニーのスペシャルムーブは一回の戦闘で一回しか使えない。
      • ハリーはゲーム中でコレクションしたカードを特定の組み合わせで消費することで、様々な効果を得られる「カードコンボ」を持つ。
      • ロンは主に敵を邪魔したり、アイテムを奪ったりする技を持つ。
      • ハーマイオニーはロンとは逆に味方の援護を得意とする。
  • 特筆すべき点としては、宿などの回復施設が一切存在しないことが挙げられる。
    • 回復はアイテムか、レベルアップ時の全回復のみに頼ることになる。その代りレベルアップのペースはかなり早めで、能力値上昇が緩やかという形でバランスがとられている。

問題点

  • 端折りすぎて意味不明なストーリー。
    • 原作における重要な要素、「忍びの地図、クイディッチ、ルーピンの正体に関する伏線、ホグズミート、占い学…」といったもの諸々を、情け容赦なく全てカット
      • ストーリーは、まず「ダーズリー家を飛び出して夜の騎士バスに拾われて…」といった辺りが、固定絵+文章で語られたあと、いきなり漏れ鍋から始まる。おそらくハリーの私服姿を用意する手間を惜しんだと思われる。
      • その後、オリジナルイベントが挟まれるが、ダイアゴン横丁に行く場面はない。オリジナルイベント入れるぐらいならそっち行かせてくれと…。
      • 汽車の場面は概ね原作通り。しかし眠っているルーピンの顔を見ただけで、職業と名前を言い当てられるハーマイオニーって何者だろうか*3
      • ホグワーツについた後は、いくつか授業を受けた後、いきなり「太った婦人」襲撃事件が起きて、その後突然ファイアボルトをクリスマスプレゼントとして受け取るイベントが入る。この間日数が経過するような描写は見られず、全部のイベントが同じ日に起きたようにしか見えない
      • ちなみにクイディッチのイベントは一応存在するが、スキップされるため、このファイアボルトを使う場面を見ることはない
      • その後、ハグリッドの小屋に行った後、大きな犬にロンがさらわれて叫びの館へ行くことになる。が、前述の通りホグズミートへ行くこともないため、いきなり叫びの館と言われても訳が分からない。
      • 叫びの館でシリウス・ブラックの話と、スキャバーズの正体について聞くことになる。しかし、スキャバーズの正体に関する伏線となる「忍びの地図」がカットされているため、唐突にもほどがある。
      • そして全員でホグワーツに戻った後、いきなりルーピンが襲ってくる。もちろんルーピンの正体に関する伏線が語られていないため、突然「あの薬を飲んでいないからだわ!」と言われても何の薬だかさっぱりである。
      • この後の展開はほぼ原作に沿って進む…かと思いきや、ブラックの元にたどり着く目前で、なぜかマルフォイが立ちはだかる。何故お前がここにいる。というより戦闘中の表示名がドラコなのは突っ込むべきなのだろうか。
      • そしてマルフォイを撃退すると、ブラックを逃がすことに成功し、スタッフロールへ…どうやら、マルフォイ、ラスボスだったようである。
    • 大体の流れは合っているものの、細かい部分での説明が不足しすぎて原作既読者でなければ、とてもではないが理解できない。キャラゲーを原作を知らない人間が遊ぶことはあまりないと思うが…
  • 世界観がカオス。
    • なぜか校内は謎のクリーチャーが大量に跋扈している。
      • 皆の憩いの場であるはずの大広間や、静かな学びの場である図書室まで。ちなみに大広間にホグワーツ到着直後に行くと、ほぼ確実に手も足も出ない
    • 授業でも教師たちは、クリーチャーだらけの迷路を突破するような課題を与えてくる。この技術は本当に将来役に立つのだろうか。
      • ちなみにスネイプの授業で使われる迷路の一番奥にいるのは川トロール。しかし原作一巻にあるように校内にトロールが侵入したら、大騒ぎになるはずである。知らずに送り込んだらそれはそれで問題だし、その存在を知った上でハリーたちを送り込んだのだとしたら…このスネイプ、原作や映画以上の外道のようである。
  • キャラクターの切り替えや、シンボルエンカウントの意味がほぼない。
    • この手のゲームで必須のはずの「新しい魔法を覚えることで行ける場所が増える」ということはない。序盤で全ての魔法がそろってしまい、ほとんどのダンジョンは一回クリアしたら二度と入れないからである。
      • フィールド上の魔法についても使用制限がなく、先頭のキャラクターにより、エンカウント時の戦局が変わるということもないため、状況に応じて切り替えるだけ。ほとんど意味がない。
    • 敵シンボルは、探知能力や追跡能力を持たない。このため誘導したりすることができず、狭い通路に入られるとほぼ確実にエンカウント。しかし、それ以外の状況ではだいたい逃げ切れてしまう。やはりシンボルエンカウントの意味がない。
  • ボリュームが非常に少ない。
    • さくさく進めて一周クリアに6~7時間ほど。いくら携帯機とはいえ短すぎである。
      • 一応2周目もあるのだが、内容は全く同じ。レベルが高いままなので、下手すれば2時間以内にクリアできる。
      • ちなみに周回するほどファイアボルトが増えていく*4。このため所持数を見れば、現在の周回数がわかるというメリットが存在する…のか?
  • ダンジョンの構造が単純。
    • 基本的にほぼ一本道で、謎解きも簡単。宝箱もあるにはあるが、ちょっと道を外れるだけで手に入る。
  • 台詞が異常に少ない。
    • 例えば序盤のマクゴガナル先生の変身術の授業。オリジナルイベントで、流れとしては「先生が動物もどきについて説明する→ハリーとハーマイオニーを指名して迷路の中に変身して隠れた自分を見つけるという課題を与える→何故か迷路の奥にいるクラッブとゴイルを倒す→先生発見→授業終了」というものだが、なんとこの間先生以外は一言も喋らない。指名されたことに関するハリーとハーマイオニーの反応はもちろん、説明が必須のはずのクラッブとゴイルの存在についても語られない。
      • 流石にこれほど台詞が少ない場面は稀だが、他のシーンも全体的に喋らない。
      • ちなみにフレッドとジョージはショップ担当なのだが、汽車の中と初回のあいさつを除き一度もセリフなし。原作では忍びの地図をハリーに渡すという重要な役目があるのに…。
    • またローカライズの問題なのか台詞がこのように明
      らかに不自然な部分で途切れて、次のメッセージウィンドウになることがある。
  • ダッシュできない。
    • 全体的にマップが広めなので結構イライラする。
  • 使える魔法のほとんどがオリジナル。
    • 原作には攻撃魔法と言えるものが少ないので仕方がないと言えばそうなのだが。でもエクスペリアームス(武装解除呪文)とかエクスペクト・パトローナム(守護霊呪文)ぐらい使えても良かったのではないだろうか。もちろんゲームオリジナル呪文というのは悪くないのだが...*5
      • ちなみに数少ない原作の呪文は「ウィンガーディアム・レビオーサ*6」(物体浮遊呪文)。しかし原作では一年生で覚える簡単な魔法のはずなのに、消費MPが20もある。大体ゲームクリア時点での最大MPは150~200ぐらいなのでドラクエで例えるなら、イオナズン級である。
  • セーブデータが3つ用意されているくせに、データのコピー機能がない。
    • もっとも本作は非常に薄い内容だし、周回プレイも可能なのであまり困らないのだが…
  • ロンとダンブルドアの扱いが悪い。
    • ロンは終盤、完全にパーティーから抜けた状態になる。なんとラスボス戦すら参加できない。
      • 確かに原作からしてそういう話ではあるのだが、ここまで設定無視しておいてそんなところだけ原作再現されても…。
    • ダンブルドアの登場回数は二回しかない。そのうち一回はクリスマスパーティーのあいさつであるため、ストーリーに関わるのは終盤の一回のみ。
      • コレクションカードの解説文も「現ホグワーツ校長」の一言のみで、生年すら記されていない。バーナバス・フィンクリー優秀呪文賞やカイロ国際錬金術会議特別功労賞、マーリン勲章勲一等、大魔法使い、魔法戦士隊長、最上級独立魔法使い、国際魔法使い連盟議長、ウィゼンガモット最高裁主席魔法戦士などの功績があるはずなのだが。
  • これは日本と欧米のセンスの違いといったところだが、全体的にキャラクターデザインが濃い
    • 特にハーマイオニー。フィールド上のモデルは結構可愛らしく描かれているのだが、顔デザがかなり老けてみえる。少なくともエマ・ワトソンを期待するのはやめた方がいい。
    • それなのに、たまに出てくるネビルのドット絵は両方めちゃくちゃ似ている。どうやら老化の被害者はハーマイオニーだけのようである。
      • あとハーマイオニーの被ダメージ時のボイスがやたら色っぽい。13歳…だよね?

評価点

  • RPGとして根幹部分が崩壊しているということはない。(雑魚敵がシンボルエンカウントで戦闘をカットできるところも含めて)
    • 難易度はやや簡単寄りだが、バランスは取れている。
    • 使い込めば使い込むほど威力の増す魔法システムなど、戦闘自体はそこそこ面白い。
      • 最大MPに対する消費MPの割合はなかなかシビア。前述の通り回復できる機会がかなり少ないので、あまり強力な魔法を連打しているとあっという間に息切れする。
    • 移動中は回復アイテムを複数個同時に使用できるなど、インターフェイスもぼちぼち。戦闘時は1ターンに一個しか使えないので特にバランスが崩れているわけでもない。
  • デザインはやや受け入れがたい面もあるが、グラフィックそのものは良質。アニメーションも非常に滑らか。
    • 魔法の演出も結構派手。スキップできないのがたまにキズだが。
  • BGMはよい。映画版のものが使われたりはしていないが、ホグワーツの幻想的な雰囲気を再現できている。
    • そこ、「お約束」とか言わない。
    • なお作曲は海外ではSNES「Secret of Evermore」などで有名なコンポーザー、Jeremy Soule氏が担当している。
  • 世界観を広げるコレクションカード。
    • 原作に名前が挙がった人物もいれば、おそらく本作オリジナルであろう人物まで。しかし世界観を崩さないように設定もイラストも作りこまれている。
    • 原作の登場人物がごくわずかなのは残念だが、魔法界の偉人を集めたカードだという設定を考えれば納得できる。
      • ちなみに、「ハリー・ポッター」のカードが存在するのだが…なぜかラスボス(つまりマルフォイ)がドロップする。実はファンだったのか?
  • 4種類のミニゲームがあり、3段階の難易度が用意されているなど、いずれもそこそこ遊べる出来(紅茶の葉占い除く)。
    • 「ウィザードクラッカー ポップイート」は要するに「さめがめ」。元の出来がいいため、結構楽しめる。
      • だが、本編ではダンブルドアが「わしが新しく考え付いた」と語っている。…いや、このゲーム1985年には既に存在するんだが…*7
    • 「バックビークのヒッポグリフライド」はヒッポグリフのバックビークにまたがり、空を駆けてコウモリを集めるゲーム。Aボタンで上昇し、十字キーで横移動。
      • コウモリを集めるたびにタイムが増えるが、一回ミスするだけで結構致命的なロスになるなど欠点もあるものの、頑張ってるグラフィックもあり空を飛んでいる感はそれなりにある。
      • しかしストーリーにおける扱いがおかしい。このゲームは第3巻の重要なシーンの一つ、「ハグリッドの授業でバックビークを怒らせたマルフォイが怪我をする」という場面でプレイすることになる。映画版でも颯爽と飛行し、非常に爽快感のある名シーンなのだが…。
      • なぜかマルフォイが怪我をして、ハグリッドがマルフォイを連れて消えた後にハリーたちが勝手にバックビークに乗る、という流れでこのゲームをプレイすることになる。なぜ順番をひっくり返した。
      • というか本編未読の方でも常識で考えればわかるだろうが、生徒にとって初めての生き物に乗る体験を、教師なしでやらせたら間違いなくハグリッドの管理責任が問われる。ハリーたちはこれ以上ハグリッドの罪を重くしたいのだろうか?
    • 「リディクラス ボガートチャレンジ」は四方に配置された生徒が中央から迫るボガートを「リディクラス」の呪文で撃退する反射神経勝負のゲーム。だんだん要求される速度が上がっていき、地味な中毒性がある。
      • なお、「本番」ということなのか終盤に今度は「吸魂鬼」相手にハリーが同様のミニゲームをプレイする場面がある。しかし速攻でミスしても特にペナルティはない。
    • 「紅茶の葉占い」は葉が浮いた紅茶を飲み干すことで占いのメッセージが現れる、というもの。というかゲームなのか、これは?
      • 前述の通り「占い学」の授業のシーンがないため、ストーリーでプレイすることはない。とある条件を満たすとトップメニューに表示される。
      • メッセージも「いつか有名になれます」「今月、最後の日に秘密の願いがかなうかも」など(比較的)まともなものもあるが、「想像力は色々な扉へのカギです」「親切は美徳なり」などむしろ一般的なアドバイスの類、「木曜日まで秘密にしておいて」「掘り進んで、宝を見つけましょう」のようにどうにも解釈しにくいもの、「ドラゴンに言い訳は通用しない」といった魔法界の人間以外にはまず役に立たないであろう助言までやたら幅が広い。
  • 地味な部分で原作再現がされている。
    • 校内のショートカット移動には、肖像画に隠された階段を用いる。
    • 装備箇所が6か所と多めだが、杖の変更はできない。これも原作同様である*8
      • こんなところを頑張るぐらいなら、もっと基本的なところをしっかり作ってもらいたいが…。

総評

RPGとしての土台は悪くなかったのだから、あとはそこに原作のストーリーをそのまま乗せるだけで良質なキャラゲーになったはずである。
しかし妙な原作改変により、既読者には突っ込みどころが多すぎで、未読者には理解することが困難になってしまっている。
「つまらない」というよりも「理解できない」という欠点が強く、ボリューム不足を除けばゲームとして遊べないということはない。
GBAで軽く遊べるRPGをやりたいならプレイする価値はあるかもしれないが、その場合でもストーリーに期待してはならない。

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  • ハリー・ポッター
  • 2004年
  • RPG

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最終更新:2023年12月08日 08:16

*1 更に海外ではXbox版も発売されている

*2 必殺技と訳されることが多いが、本作では原語のまま。

*3 この時点では、新任教師の名前はわからないはずである。なお、原作では所持していた鞄に「R・J・ルーピン教授」と型押しされていたため判明している。

*4 特に重要アイテム扱いされているわけでもないため。

*5 オリジナル呪文の例として、USJのハリー・ポッターの世界観を再現したエリアウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッターでは、ワントマジックと言うアトラクションが存在しており大半の呪文がオリジナル。例(メテオロジンクス(雪よ、振れ)雪を降らすオリジナル呪文

*6 長すぎるためか、ゲーム中では「W・レビオーサ」表記。

*7 ちなみに第三巻の舞台は1993年。

*8 正確に言うと、原作では他人の杖も使用できないわけではないが、自分用の杖でないと本来の魔力を発揮できない。