本記事では国内PS3版『NieR RepliCant』と、国内360版『NieR Gestalt』及び海外両ハード版『NIER』に加え、PS4/One/Win版『NieR Replicant ver.1.22474487139...』について記述しています(判定はいずれも「良作」です)。



NieR RepliCant / NieR Gestalt

【にーあ れぷりかんと / にーあ げしゅたると】

ジャンル アクションRPG

対応機種 RepliCant プレイステーション3
Gestalt Xbox 360
発売元 スクウェア・エニックス
開発元 キャビア
発売日 2010年4月22日
定価 7,800円
レーティング CERO:D(17才以上対象)
廉価版 RepliCant アルティメットヒッツ
2011年4月21日/3,990円
Gestalt プラチナコレクション
2011年4月21日/3,990円
判定 良作
ポイント 『DOD』の世界観を継承
だが『DOD』と比べればかなり素直
切ない作風と雰囲気構成で話題に
ドラッグ オン ドラグーンシリーズ


一人のために、全てを滅ぼせ。



ストーリー

遠い未来。滅びゆく世界。
死をもたらす黒き病。兄と妹。壊れし日常。消える日常。
封印されし書物。蠢魔の力。
呪われし存在「マモノ」

犠牲。差別。抱擁。別離。破戒。記憶。
狂気。光。救済。崩壊。巨人。黒き力。

翻弄される運命と、最後の代償


概要

キャビア(現:マーベラス)の、『ドラッグ オン ドラグーン』の製作陣によって開発されたアクションRPG(販売は『DOD』と変わらずスクエニ)。
『DOD』のEエンド(通称新宿エンド)から千数百年後の世界が舞台という裏設定があるが、ストーリー上の関係はほとんどない。
Eエンド後からゲーム開始までの経緯や『DOD』との繋がりは、設定資料で明らかとなっている。

あの『DOD』を開発したキャビア製作の作品、しかもそのEエンド後の世界観が舞台ということで、「またとんでもないシロモノになるのか」と多くのユーザーは肝を冷やし、同時に期待していた。
そして、発売後はいい意味でユーザーの心配と期待を木っ端微塵に△○※□することとなった。

なお、当初は『RepliCant』の内容で制作されていたものの、上層部や海外スタッフの意向によってデザインを変更した『Gestalt』も制作されることになった。
本記事ではPS3版『RepliCant』の情報を基準として書き、360版『Gestalt』及び海外版『NIER』の相違点は後述する。

特徴

  • 世界観こそ『DOD』と同じだが、ストーリーは繋がっていないので『DOD』未プレイでも問題なく楽しめる。
    • その上で、『DOD』をプレイした上で設定資料集を読んでいればゲーム内に散りばめられた『DOD』要素を楽しめる形になっている。
  • 『DOD』と同様に本作はマルチエンディングであり、周回または特定の条件を満たす事で異なるエンディングを見ることができる。
  • 登場人物・武器等にも『DOD』シリーズと共通するものがあるほか、他ゲームのパロディもある。
    • ゲーム内に随所に存在する独特の記号は【天使文字】というもので、『DOD』シリーズにも登場した実在言語である。
    • ボスの1体である【シャハリヤール】は、初代『DOD』の雑魚であるガーゴイルキューブとデザインが同じ。
    • また、シリーズお馴染みのウェポンストーリーも、ゲーム内での閲覧こそ不可能だが設定資料集ではしっかりと語られている。
    • ちなみに、ほとんどのウェポンストーリーは『DOD』シリーズのそれと繋がりはないが、草原の竜騎槍のみ繋がっている様な内容となっている。
      • とは言っても、『DOD』に毒されている人以外は期待してはいけない。
  • ストーリーは黒文病(こくもんびょう)という不治の病の治療への糸口を探して、鎮痛薬の材料や【封印されし言葉】というものを探るというもの。
    • なお、ストーリーは前編の「少年期」とその五年後の「青年期」に分かれている。2周目以降は青年期からのスタートであり、周回が苦にならないよう配慮されている。
      • 反面、少年期にしか発生しないクエストなどもあるのでこれらのコンプリートを狙う場合は注意が必要。

ゲーム性

  • ゲームシステムは『DOD』同様のオーソドックスなアクションRPGであり、「1.5倍速にした3Dゼルダ」と言われる事もある。
    • セーブポイントはポストであり、手紙を出すことでセーブすることになるが、ボス手前フロアにも常設されている。恐らく、多くのユーザーはボス戦前にセーブできると思ってなかっただろう。
    • 武器によるコンボ・二段ジャンプ・回避・受け身・防御・魔法など、3Dアクション恒例のシステムは全て備わっており、癖がなく取っ付きやすい。
      • 基本は3DアクションRPGだが、ステージによっては上や真横からの視点の2Dアクションになるほか、魔法使用時にはターゲットサイトで狙いを付けるTPSになる。
      • アクション以外でも、とある場面にはサウンドノベル*1が始まるなど、様々なゲームシステムを取り込んでプレイヤーを飽きさせない工夫が施されている。
  • 戦闘は片手剣・両手剣・槍の3種類の武器を活用して戦ってゆく(このうち少年期は片手剣のみ)。
    • それぞれ、攻撃力は低いが使いやすい(片手剣)・圧倒的な攻撃力と攻撃範囲を持つが隙が多い(両手剣)・攻撃力が高く隙も少ないが攻撃範囲が狭い(槍)という特色を持つ。どの武器も、不死鳥シリーズといわれる武器が強力で、これが手に入ったら他の武器は実質飾りになりやすい。
    • 3種類の武器とアイテムは、方向キーで変更または使用を行うようになっており、ストレスを感じる事はまずない。
    • なお、本作に登場する武器の半分以上は、『DOD』シリーズにも登場した武器である。また、DLCにてファンには嬉しいとある武器が追加された。もちろんウェポンストーリーも存在する。
  • 武器以外にも、LRボタンに任意に設定した魔法を使うことができる。
    • ボスを倒すごとに使用できる魔法が増えていき、対応できる状況が増えていく。
  • ワードエディットというシステムが存在し、これにより武器や魔法を強化できる。
    • 敵を倒したときに入手することが出来、武器や魔法の前後に言葉を追加することで威力の強化・MP回復速度上昇・特殊効果付加・ドロップ率や経験値の向上など、様々な効果が与えられる。
    • 出てくる言葉は簡潔で当たり障りのない言葉だったり痛々しい言葉だったりしており、組み合わせ次第ではかなり病んだ文章となる。
  • ちなみに、本作は主人公の名前をユーザーが任意に決める事ができる。
    • むしろニーアという名前自体がゲーム中にも説明書にも提示されない裏設定となっているため、事前に外部の情報から主人公の名前だと知っていなければ入力できず、クリアしても「結局のところニーアとは何だったのか」となってしまう。
    • ちなみに「ニーア」という名前が1か所だけボイス付きで呼ばれるシーンがある。もっとも、効果音で名前の部分はほとんどかき消されて鮮明には聞こえないが…。

本作の魅力

  • 本作が名作扱いされる最大の理由は、やはり「キャラクター」「ストーリー」「BGM」の3点にあるといえる。

キャラクター

  • キャラクターはどれも『DOD』に負けず劣らず強い個性を持っており、ユーザーから高い評価を得た。
    • とはいえ『DOD』ほど歪んだ性格・趣味の持ち主はおらず、一部マイノリティな人物こそいるが基本的に根はいい人となっている。むしろあちらが強烈だったというべきか
+ キャラクター一覧
  • 主人公(ニーア)
    • 妹のヨナと2人で暮らしている少年。お人好しかつ仲間思いであり、唯一の肉親であるヨナをとても大切にしている。
    • そのため行動理念はほぼヨナを最優先としており、ヨナが男の子と文通していると知った時は相当動揺していた。
    • 青年期では常にどこか影を感じさせ、笑顔を見せる事は少なく、言動も少々乱暴。マモノに対して極めて強い恨みを持っており、どんな状況でも相手がマモノならば容赦のない行動を取る。
    • しかし、これはヨナと仲間を守りたいが故であり、良くも悪くも目的に対してブレが無いことの表れでもある。「良くも」の部分はユーザーに共感や好評を得ている一方、「悪くも」の部分が描かれる印象的なシーンやクエスト*2も描写されている。
    • 余談だが、ニーアの誕生日は6月6日、つまり兄の日である。
    • なお、先述したように「主人公の名前がニーアである」という情報はゲームでは出てこないが、設定資料集に記載されていたこともあってユーザー間には浸透しており、当記事でも便宜上ニーアと呼ぶ。
  • 白の書(シロ)
    • ゲーム序盤でニーアと出会う、人語を話す「封印の書物」である。博識で尊大だが、時々ボケたりするなど憎めない性格の持ち主。
    • ニーア一行からは「シロ」と、サブキャラクターの女性陣からは「シロちゃん」と呼ばれており、威厳が全く無いためかなり不満げ。
    • ニーアが魔法を使うために必要な存在でもあり、シロがいない時や異常が発生した場合は魔法が使えなくなってしまう。
    • 声優は初代『DOD』のカイムとアンヘルに引き続きピーター氏が担当している。
    • 似た役でありながらしっかりとキャラクターの違いを演じ分けており、改めてその演技の上手さをユーザーに印象付けた。
  • カイネ
    • 左半身をマモノに侵されている「マモノ憑き」の女剣士。その可憐な容姿に反して、口も態度も乱暴、大雑把で大飯喰らい。というよりも悪食に近く、まずい上に猛毒な木の実をうまいといって平気で食べてしまう。
    • 北平原の先にある崖の村の出身だが、他の村人たちから酷いいじめや差別を受けており、村で暮らしてはいない。
    • 日光に弱いマモノの侵食を抑えるために肌の露出面積を増やすなどの理由で、常に下着姿*3
    • そのため、シロからは下着女と呼ばれることが多い。なお、この下着は曜日ごとに着替えてちゃんと洗っているらしい。
    • 本作を語る上で欠かすことのできない強烈な個性を持つキャラクターであり、ひとたび口を開けば放送禁止用語の嵐が巻き起こる*4。 特にシロとカイネのやりとりは非常に好評であり、ユーザーを爆笑の渦に巻き込んだ。
    • 戦闘では双剣や魔法による攻撃でサポートしてくれる。
    • 主人公・ニーアとの関係性の変化や本作の2周目(Aエンドクリア後のセーブデータ)で明かされる彼女自身の心境、リメイク作(PS4版)でのクリア後のエピソードでのもう1人の主人公かつメインヒロインらしい立ち位置の扱いから、プレイヤー達から高い人気を獲得している。
      + ネタバレ注意!
    • テュラン
      • カイネに取り憑いているマモノ。
      • 猟奇的な性格で、人間だろうとマモノだろうととにかく殺したいとカイネに力を貸している。カイネの魔力や再生力はこいつの力。
      • 針振りきったようなハイテンションで悪意に満ちたセリフを吐きまくり、声だけながら強烈な個性を発揮している。外道ながら憎めないキャラである。
  • 実験兵器7号(エミール)
    • とある出来事がきっかけで、ニーア達と共に旅をする事になる、骸骨のような謎の生き物。
    • こちらもカイネ同様に、本作を語る上で欠かすことのできないキャラクターであり、そのキモ可愛い容姿は本作のマスコットとして愛されている。
    • 見てくれこそ初見ではまず敵にしか見えないものなのだが、実は本作屈指の良識人。特に終盤のとある展開では多くのプレイヤーを感動させ、またとあるシーンにおいては大いに脱力させた。
      • 戦闘では攻撃魔法や回復魔法を駆使する。なお、名前の由来はグリム兄弟の末弟から。
  • デボル
    • 村に住む双子の姉妹の片方で、村の噴水や酒場で歌を歌っている。
    • 少年のような口調をしており、活発な性格であるが酒には弱く、少しでも飲むと可愛い言葉遣いになるらしい。残念ながら酔い状態中の彼女を作中で見ることはできない。
    • 彼女のいるフィールドでは、彼女の歌声が聞こえるようになっている。
    • ちなみに、『DOD』シリーズではデボルポポルという武器が存在していたが、本作では背信の刃という名称になって続投。
  • ポポル
    • 村に住む双子の姉妹の片方で、図書館の館長。
    • 才色兼備の上に優しい性格で、人々から厚い信頼を受けている。また、村長的な立場でもあり、他の村と手紙などでやり取りをしている。
    • 自分たち同様2人で生きているニーア兄妹をとても気にかけており、様々な情報を集めてくれる。
    • デボルと同様美声の持ち主だが、極めて特殊な酒を飲まないと歌ってはくれない。さらに、酔い過ぎると暴れて店を壊すなどしてしまう。
      • デボルの件を含めてニーアからこの話を聞いたシロは酒とは怖いものだという感想を漏らしている。
  • ヨナ
    • ニーアの妹。ニーアを気遣い、とても大切に思っている。生まれつき病弱であったが、さらに謎の奇病「黒文病」を患ってしまう。
    • 不治の病に冒されながらも、自らのために奔走する兄を思う姿勢は、見ていてとても健気である。
    • ローディング画面では彼女の日記が表示される場合があり、心境などを垣間見ることが出来る。
      • 料理は得意ではないようで、煮込みすぎたりしてしまう。なお、名前の由来は旧約聖書の1つの「ヨナ書」から。

ストーリー

  • 開発スタッフも公言している通り、ストーリーの大筋は「さらわれたヨナを救うために旅をし、魔王を倒す」という王道的なもの。
    • 王道だが「王道を通り越して陳腐」というような評価はされていない。むしろシナリオの魅せ方が上手いがために、王道さを微塵も感じさせない。
    • サブクエストの「伝えたいこと」なども独特の世界観を上手く使ったエピソードであり、ユーザーからの評価は高い。
    • また、「台詞や文章を用いずにキャラクターの表情で語る」という演出方法も見事なものである。
    • 実験兵器7号やカイネの一見すると強烈すぎる設定も、ストーリーに上手く組み込んでおり、しっかりとプレイヤーの評価を得ている。
  • 周回プレイ
    • 一度ゲームをクリアすると、レベル・武器・クエストの進行状況等を引き継いでの2周目がプレイ可能。
    • 1周目と2周目以降との違いは、「1周目では語られなかった描写・エピソードが物語全体に追加される」というもの。
    • 一見些細な変化に思えるが、実は追加要素の尽くがユーザーの価値観を根底から覆してしまうものだらけだったりする。
      • ムービーやカットシーン、戦闘中の会話等も大きく増加するので、「一度見たから」と言ってスキップはしないように。
    • この2周目の描写が追加されたストーリーは恐ろしいほど評価が高く、ネタバレは避けるが機械の理・忠誠のケルベロスのエピソードなどは特に好評。
    • この2周目をプレイして初めて、パッケージ裏の【一人の為に全てを滅ぼす】・PVの【その戦いに正義を求めてはならない】という一文の意味が理解できる構成になっている。
    • 【忠誠のケルベロス】といった敵キャラの二つ名も同様で、後述の設定資料集ではさらにこの方向性に拍車が掛かる。
  • また周回ごとにエンディングも変化するが、どのEDも、どこか割り切れない部分もありながら、壮美なED曲も相まって不思議とスッキリした後味を残す造りとなっている。
  • この独特な世界観・舞台設定は、本作の大きな魅力の一つである。
    • しかし、その多くは断片的に示唆されるのみで、作中では多くは語られない。興味がある人は、紹介・考察サイトや設定資料集等に目を通すとよい。
      • 真実を知ると共に、これまた価値観ががらりと変わる事だろう。

音楽

  • 本作のBGMは飛び抜けて高評価であり、ゲームの雰囲気をより一層、幻想的かつ儚げになものにしてくれる。
    • ストーリー・キャラクターと同等かそれ以上に、本作を名作たらしめる決定的な要素として作用している。
  • 本作は長いゲーム史でも数少ない、もしくはほとんど例を見ない、ほぼ全てのBGMがボーカル曲の作品なっている。
    • バックグラウンド・ミュージック/ビデオゲーム・ミュージックではなく、楽曲単体としても聴き応えがあり、物語との相乗効果も見事。
      • 多くの楽曲でボーカルを担当するEmi Evans(Emiko Rebecca Evans)氏の声色、歌唱力も本作の雰囲気に非常によくマッチしている。
    • 全体的に捨てる曲がないほどの名曲揃いだが、特に「カイネ/救済」「イニシエノウタ/運命」「魔王」「カイネ/逃避」等は非常に評価が高い。
      • 「1つの旋律を複数の曲に渡って多用する事で統一感を生み出す」という手法をとった作品の1つであり、同じメロディでも曲調の違いで様々なシチュエーションを印象付けている。
    • 例えば村で流れる「イニシエノウタ/デボル」は、村の歌姫が歌っているというシーンに合わせ、普段はインストゥメンタルだが、彼女の近くに行くとボーカル曲に変化するなど、表現も凝っている。
      • また、この曲自体も村の、ひいては作品全体の虚ろな雰囲気が非常に上手く表現されている。
      • 上記のイニシエノウタには、「イニシエノウタ/虚ロナ夢」というパターンもあるが、やはりこちらも評価が高い。
      • しかし、こちらは「少年期のクエスト進行によるその一時のみで聞ける」と、非常に限定的な場面でしか聞けないのが惜しいところである。
    • 真っ白で美しいスタッフロールの中で流れる「Ashes of Dreams」も、本作の物語を見事に表現した名曲と評価が高い。
    • 最終ボス戦で流れる「魔王」という曲は特にストーリーの演出や展開にマッチする素晴しい曲で、「様々なシーンやキャラの心境をたった!1つの曲で演出した」と評価されている。
      • もちろんこの曲もボーカル入りであり、曲単体の評価も高い。

その他の評価点

  • メインキャラの人気も然ることながら、フィーア・国王・副官などサブキャラの人気もかなり高い。
    • いずれのキャラクターもしっかりとした個性があって感情移入でき、ゲーム内で重要な役目を果たしている。
    • 『DOD』で人気(?)を博した狂気も健在。ロボット工場にいる兄弟の弟や、終盤の実姉のデポルをニーア達に殺害され激怒したポポルの狂いっぷりは『DOD』ファンを歓喜させた。
    • メインキャラ・サブキャラ問わず、声優さんの演技も非常に上手い。演出やストーリーの良さも相まってゲームを盛り上げてくれる。
  • 釣り・栽培・武器のカスタマイズ・クエストなどやり込み要素も豊富。
    • 栽培はあるクエストをこなせば解禁され、野菜・穀物・花等を育成できる。ゲームの進行には関係ないが、金策やサイドクエストに関連する。
    • カスタマイズに使うアイテムは出現率が低い物が多い。収集・コンプリートには相当な時間を要するので注意されたし。
    • クエストに関しては、途中の選択肢によって最終的な展開が変化してしまうものが存在している。
    • クリアして消滅したクエストの状態も全て以降の周回に引き継がれてしまうので、一度選択した結末は後味が悪かろうとロードしてやり直す以外は修正不可能である。
  • PS3のXMBで確認できるプラチナトロフィーのコメントが、『DOD』のあの台詞である。スタッフの遊び心だろうか。

賛否両論点

  • ストーリーが説明不足
    • プレイ中、随所に見られる伏線の大部分がゲーム内では放ったらかしにされる。謎が残ったままエンディングを迎えるので、煮え切らない思いを抱くプレイヤーは少なくない。
      • これは「主人公のニーアにとっては妹と仲間が全てでありそれ以外はどうでもいい」という表現とも言える。恐らくこれが最重要テーマ。
    • 公式設定資料集で伏線はほぼ全て回収されるが、最初からゲーム本編に入れるべきなど不満もある。
      • この設定資料集ですら全く明かされていない事柄もある。『DOD3』において、横尾氏が考察の余地を残すために意図的に伏線を放置している旨を語っているので、本作もそうなのかもしれない。
    • 設定を全てゲーム内に入れるとソフ倫に引っかかるから、規制されるから、考察も楽しい等の擁護・肯定的な意見もある。
  • メタ的な要素
    • 『ゼルダの伝説』『ドラクエ』『FF』『バイオハザード』といった人気を博したゲームの内容をオマージュしている部分が多い。
      • スタッフの遊び心とも思えるが、ケレン味のある独自の世界観や物語が評価されている事もあり、何故?と疑問視する人も少なくない。
      • 1つ例を挙げると、南平原に存在する洋館はカメラワーク・演出ともに初代『バイオハザード』そのものである。流石にゾンビはいないが。
    • 最後のエンディングを見るためにはとあることをしなければならない。
+ その「とある事」とは…
  • 最後のエンディング、すなわちDエンドを見るとセーブデータが消滅し、そのセーブデータで使用していた主人公名が二度と使用できなくなる。
    • ある意味本作らしい演出ではあるが、唐突にデータを消されるためプレイヤーからしてみればたまったものではない。
    • しかも厄介なことにこのDエンドは、選択肢次第では3周目で到達可能。つまり、3周目でCエンドを見ずにDエンドを見てしまうと、そこで同一の主人公名を使ったデータが全て消滅。再びCエンドに到達するのは早くて7周目という悲劇的なことに…。
    • もっとも、Dエンド選択後は「セーブデータが消えます」という警告がしっかり出る。
    • 複数回に渡って警告される上、最後は主人公の名前を入力する必要があるため、適当にやってたらデータが消えたということはまず無いように作られている。
    • なお、この演出は本作が「7周完結」構成だった頃の名残である。
    • スタッフ対談によると、企画段階ではこのイベントでカイネの記憶が消滅、その後リセットした状態で再び3周することでカイネの記憶が取り戻され、その際に1周目の主人公の名前が鍵となるという構成だったらしい。
    • そして、この構成は10年の年月を得て、後のPS4版リメイクのEエンドでようやく実現された。

問題点

  • 使用キャラの問題
    • 個性的なキャラクターは沢山いるのに、使用できるキャラクターはニーアしかいない。
      • 『DOD』シリーズは主人公以外のキャラクターも使用できたので、「せっかく仲間が3人もいるのに勿体ない」と嘆かれた。
  • グラフィック関連が今一つ
    • PS3作品でありながら、お世辞にも綺麗なグラフィックとは言えない。PS2以上PS3未満である。
    • ゲームプレイに差し支えるほどの影響ないものの、ゲーム中に表示される字幕が読みづらいことが多い。
      • 判別しづらい文字も多く存在する他、白い背景に白文字が表示される場面もある。
    • 広けた場所では問題ないが、ロボット山や南街道といった狭いロケーションでは、カメラが扱いにくいのもマイナスポイント。
  • 判定処理が雑
    • 敵や味方の当たり判定は見た目通りではなく、箱のように四角型になっているため引っ掛かりやすい。オブジェクトの間に隙間があるように見えても引っかかって進めないなどザラ。
      • 仲間ユニットは「プレイヤーから一定距離離れるとワープで追ってくる」という仕様になっているのだが、こちらの移動の邪魔になる位置にワープで現れる事もしばしばある。
    • 地形の判定も雑。どう見てもジャンプで越えられる程度の段差を越えられなかったり、足場に見えても乗れなかったり、逆に越えられそうもない場所は越えられたり…。
  • 戦闘システム周りが全体的に大味
    • 特にボス戦闘で顕著だが、敵が目まぐるしく動く一方でこちらには大して行動の選択肢はない。
    • 戦略云々などはほとんどなく、せいぜい回避と攻撃の使い分けを迫られる程度。単に強い武器で殴りつけるのが最適解となる場面がほとんどである。
    • 『DOD』シリーズと比べると武器ごとの個性が薄まっており、単純な攻撃力で優劣が付きやすく、出番の無い武器が多い。
      • 特に、青年期以降は強力なワードも集まり、対複数では魔法でアーマーを剥いだり、雑魚を一掃が基本になる。
      • 故に、動作が比較的速く、火力もあり、出の速さ、距離詰め、吹き飛ばしを兼ね備えた突進を使える「槍」が飛び抜けて強い。
      • 逆に「片手剣」は火力に乏しく攻撃範囲も狭いため、後半はほとんど出番が無く不遇。
    • 魔法に関しても使い分けを求められる場面はほとんど無く、強力な魔法を2つ程度見繕っていけば難易度ハードでも最後までいける。
    • 死んでいるシステムも多い。例を挙げるとネタプレイですら使い所の無い「壁蹴り」、敵の出現箇所に予め置いておくぐらいしか使い道の無い(それでも使いづらい&正直通常攻撃で十分な)「チャージ攻撃」などがそれにあたる。
    • 大体そんな具合の大味なバランスのため、少しレベルを上げればボスも攻撃連打で撃破可能。アクションゲームとしては作り込みが浅い。
  • クエストや移動関連が面倒
    • プレイ中、NPCから「クエスト」という形で依頼を受けることがあるが、その多くはおつかいイベントである。
      • また「素材集め」系クエストの中には「ダンジョン中を駆けずり回っても2~3個出れば良い方ぐらいのレアドロップアイテムを10個集める」など面倒な依頼もある。
      • 「釣り」関連も面倒。本作の「釣り」は無駄に難易度が高く、一匹釣り上げるごとに時間と集中力を要するのだが、「○○(魚名)を10匹釣って来い」のようなクエストが幾つも出される。
      • これらは当然受けても受けなくても良いのだが、本作の豊富に用意されたクエストとそれに伴うサブストーリーは世界観を深めるために欠かせないものとなっているので、無下にはしづらいのが悩みどころ。
    • また、本作の移動手段は基本的に徒歩。クエストではあちらこちらへ行ったり来たりのおつかいイベントが多いためだれやすい。
      • 青年期に入ると船で要所間のワープが出来るようになるが、「崖の村」「神話の森」といった内陸地にはワープできない上、行く頻度が高い「仮面の街」にはワープ地がないなど、結局ある程度は歩く必要がある。
  • その他不評点
    • ゲーム内のとあるシーンでプレイできるサウンドノベルは、選択肢を間違えると即ゲームオーバーという単純かつ面倒な構造が多い。
    • 採取や栽培などのモーションは冗長で、テンポがかなり悪い。敵からの剥ぎ取りなどは必要回数が多いため、特に顕著。
    • 「石の神殿」の使い回し回数が多く、前半で一回、後半でさらに2回も攻略する必要がある。マルチエンディングを全て見るためには後半を何度も周回する必要があるため、ここでダレやすい。
      • その他にも、スタッフロールがスキップできない、周回するたびにワードの装備がリセットされ再設定が面倒など、周回に際して不親切な部分がある。
    • 入手できる期間が限定されているワード、アイテム、チュートリアルが多い。入手しなくとも問題は無いが、コンプリートプレイを目指すユーザーにとっては気になるかも知れない。
    • 少年期・砂の神殿では、一度入るとクリアするまで外に出られない上に、中にセーブポイントが存在するため、ギリギリの状態でセーブしてしまうと詰んでしまう可能性がある。
      • もっとも砂の神殿の難易度は高くなく、ボスもあまり強くないので、詰む可能性は低いが。

総評

グラフィック・システム面ではそれなりであり、さほど高い評価はされなかったものの、ストーリー・キャラ・BGMの3点がそれを補って余りある高評価をされている。
固定視点の箇所がある、周回前提の構造、鬱要素のある設定など独特のクセはあるが、『DOD』シリーズに馴染みがないプレイヤーにも概ね受け入れられている。
初週で6万以上も売り上げ、ほとんどの店が軒並み品切れ状態となったが…スクエニがあまり出荷してないため在庫がない状態が続いた。
そこから口コミで広まって10万以上も売り上げている辺り、本作が如何に高い評価を得ているかが見て取れるだろう。
14~15万本という数字は今の時代完全新作のRPGとしては充分ヒットと呼ぶことができ、ゲシュタルト含め世界累計は39万本に達している。


余談

  • 本作と同時期に発売したサウンドトラック、後日発売された公式設定資料集も高売り上げ高評価を得ている。興味があるなら買ってみてはどうだろうか。
    • なお、設定資料集には『DOD』から本編までの出来事や、人物や事象の本編に描かれていない設定など、とても膨大な量の設定が事細かに解説されている。また、様々なサイドストーリーを描いたSSも数本掲載されている。
      • ちなみに、これらの大半が非常にショッキングな内容であり、読む場合は相当な覚悟が必要。また、制作者インタビューでも笑いながらとんでもない話をしている。やはりキャビアはキャビアだった。
      • 初代『DOD』にもまつわる情報*5がいくつか載っているので、そちら方面で気になる人は見てみるといいかもしれない。
    • 2011年4月27日にはドラマCD「ウシナワレタコトバトアカイソラ」が発売された。ゲームや資料集で描かれなかったストーリーであり、本編および付属のブックレットから新たな設定を知ることができる。
      • しかし相変わらずショッキングなことになっており、これを聴くのにもまた覚悟が必要。
      • 本編は全体的に暗く重い話なのに対し、おまけシナリオの「私立レプリカント高等学校 体育祭編」はその名の通りキャラ、世界観、ストーリーなどあらゆるものがぶっ飛んでいる爆笑モノの学園パロコメディになっている。
      • 本編では『DOD』のあの曲が流れたり、おまけではゲームで見られなかったデボルポポル姉妹の酔った姿が見られたり、教頭が中の人繋がりの『DOD2』のあの人の台詞を言ったり、ファンにうれしい要素も多い。
      • そして、締めくくりはやはり『DOD』のあの台詞である。もはや恒例か。
      • また、7号のエピソード「宇宙大戦争」は、ギャグじみたノリでありつつも、下記の続編への橋渡し的な重要エピソードとなった。
  • スクエニ製カードゲーム『LORD of VERMILION Re:2』にも本作のキャラがゲスト出演。出演するのはカイネと7号の2人。
  • 今作は『DOD』シリーズで好評を博した「ウェポンストーリー」が収録されなかったため、残念がるユーザーが多かった。
    • これはディレクターの横尾氏がウェポンストーリーの好評ぶりを知らなかったこと、また元々ウェポンストーリーはボリュームアップのためのおまけのつもりで入れた要素だったため、あまり重要視されていなかったことが原因である。
    • しかしそういった不満の声を受けてか、後に雑誌『電撃ゲームス』にて連載企画としてウェポンストーリーの執筆が開始され、またさらに後日発売された上記の公式設定資料集にも、雑誌収録分も含めた全ての武器のウェポンストーリーが掲載された。
      • 中身も(狂気的な意味も含めて)ファン納得の出来に仕上がっており、好評。『DOD』で人気の高かったあの武器も、まあいつも通りと言えばいつも通りの結末に仕上がっていたりもする。
      • 『DOD』のヒロインを模したあの武器もしっかり書かれているので、気になる人はぜひ確認を。こちらはこちらで、こっそり驚きの内容が記載されている。

360版『Gestalt』と海外版『NIER』について

  • 日本国内だとPS3版は『NieR RepliCant』と、360版は『NieR Gestalt』と銘打たれ、内容は大筋こそ同じであるものの若干異なる。
    • 海外では両ハード共に『Gestalt』の内容で発売されており、タイトルも『NIER』のみとなっている。
      • つまり『Gestalt』は海外向け仕様の内容であり、国内版の音声も英語のみで、日本語字幕付きとなっている。
    • 本来はPS3独占タイトルとして『RepliCant』のデザインで発売する予定だった。しかし、上層部や海外スタッフが「このデザインでは海外だと売れない」と反発し、主人公のデザインを筋肉モリモリの中年男性に変更してしまう。
    • その一方で、元のデザインを残したいという開発スタッフの強い要望があり、売上も考慮して日本でのみPS3版をオリジナルの『RepliCant』として、360版を海外向けに主人公のデザインを変更した『Gestalt』として2バージョンのマルチタイトルで発売という現在の形に落ち着いた。
    • なお、主人公の変更に伴いヨナとの関係を「兄と妹」ではなく「父と娘」に変更している。
      • また、立場やキャラクター性の変化に伴って発言内容や言い回しにも多く変化がある。
  • 主人公と音声の変更により、一部の演出の印象が変わったり、少年から青年への成長による演出の効果が失われている等、ユーザーからの評価は芳しくない。
    • ビジュアル変更の影響と思われる例として、物語の序盤で筋骨隆々の中年男性が自分の娘ほどの年齢差はあるであろうポポルに仕事を斡旋してもらったり*6、生きる意味を失ったカイネに対して「俺たちはもう仲間だ」と青臭く説得するなど。
      • もちろん、決定的に妙なシチュエーションというわけでもないため、どう感じるかは人によるかと思われる。
      • 仕事を紹介してもらう中年男性ぐらいは現実にも良く居るであろうし、中年男性が青臭く生きる価値を説いてはいけないわけではない。
    • また、シナリオ中で大きく時間が経過する際に眼帯をし始めるのだが、どういう経緯でそうなったのか作中では全く触れられず、推測するしかない。
  • そして当の海外ユーザーには受け入れられたとも言い難く、青年主人公のほうが良かったという意見も珍しくない。
    • 日本では2バージョンを選択できるのに対し、海外では両機種とも『Gestalt』固定であるのも不満を後押ししている。
    • 日本のゲームを好んでプレイする海外のユーザーは意外にも多い。 』『ペルソナ4』の高評価や賛否の分かれた『バイオハザード5』に加え『ファイナルファンタジー』シリーズの売り上げを見ても、如何に日本のゲームをプレイする海外ユーザーが多いかが窺えるだろう。
      • 海外市場を狙いわざわざ中年男性にしたのにかかわらず、皮肉にも国内版『Gestalt』も海外版『NIER』も売上ランキングにすら載らず全く売れなかった。
      • 本作に限らず、当時は「ゲーム業界全体が海外を意識していた」と後年に回顧されるほどの風潮があり、他にも『SIREN: New Translation』など海外を意識し過ぎて失敗した例も少なくない。
  • 公式でのその後の扱いも少々寂しい。
    • 日本での攻略本等での扱いもほぼ『RepliCant』がメインで、『Gestalt』は「ゲシュタルトのほうも内容は概ね同じです」といった注釈が加えられる程度にしか触れられなかったり。
      • 上記のSSやドラマCDなどのメディア展開も全てレプリカントの世界観・キャラクターの作品となっている。もっとも、日本で英語音声のドラマCDを出されても困るのだが…。
    • とは言え、後発作品でも可能な形で『Gestalt』の要素はしっかり押さえていたりと、『RepliCant』をベースとしているコンテンツの中でも親父ニーアが拾い上げられることはそこそこ多い。
    • 後述のようにそこそこ支持を得ていることは開発陣も知っているのか、決して忘れ去られゆくキャラにするつもりは無いようである。
  • 親父ニーアには中年男性特有の渋さがあり、青年版には無い魅力もあるので一概に悪いとも言えない。実際、これはこれで良いという声もある。
    • 既婚故にそういう方面のセリフが妙に生々しくなっていたりする。具体的には男性の浮気調査の依頼中に言う台詞「浮気も甲斐性」が青年版には無い含みを察せられたり、結婚する友人相手への発言が「ご愁傷様」に変更されていたり。両方ともギャグで言っているが説得力がありすぎる。
    • 「大剣は親父に使わせた方が似合う」「兄妹より父子の関係性の方がしっくりくる」といった好意的な意見も決して少なくはない。
  • 声優は英語版でも評価が高い。シロのとぼけた演技やニーアとの掛け合いには『RepliCant』にはない個性がある。
    • なお、字幕は『RepliCant』のものを微妙に変えて使い回しているだけなので、向こうの声優がやりたい放題やっているように見える。
    • 特に顕著なのがカイネの罵倒で、とあるシーンはゲシュタルトだとOP最初のセリフになっていたりする。台詞は字幕で修正が入っているのだが、英語版だとなぜか音声は無修正。 ガッ×ムだのアス×ールだのファ×クだのと非常に素晴らしいカイネの罵倒が聞ける。物好きな方はどうぞ。
  • なお、有料DLCである「15 Nightmares」においては『RepliCant』では『Gestalt』の主人公を、『Gestalt』では『RepliCant』の主人公を操作できる。

その後の展開

  • 2017年2月にまさかの続編『NieR:Automata』が発売された。詳細は作品ページを参照。
  • 2021年4月22日に『RepliCant』の復刻兼バージョンアップ版である『NieR Replicant ver.1.22474487139…』がPS4/One/Winで発売された。詳細は後述。

NieR Replicant ver.1.22474487139...

【にーあ れぷりかんと ばーじょんいってんにーにーよんななよんよんはちなないちさんきゅう】

ジャンル アクションRPG
対応機種 プレイステーション4
Xbox One(ダウンロード専売)
Windows 10
発売元 スクウェア・エニックス
開発元 トイロジック
発売日 【PS4/One】2021年4月22日
【Win】2021年4月24日
定価 8,580円(税込)
レーティング CERO:D(17才以上対象)
判定 良作


遠い約束。千年の嘘。



概要(ver.1.22)

PS3用作品『NieR RepliCant』を『NieR』シリーズ10周年を記念して、PS4/One/Win向けに復刻した作品。
実質リメイク作品ではあるが、公式ではリメイクやリマスターという言葉は使われておらず、「バージョンアップ版」と銘打たれている。
開発は元キャビアの開発メンバーたちが所属しているトイロジック*7が担当。


特徴・評価点(ver.1.22)

  • キャラクターデザインや設定は全機種共通で『RepliCant』準拠となっている。
    • 360版『Gestalt』及び海外版『NIER』のキャラデザ・設定は本編には採用されていない。
      • 海外でも同タイトルで販売されており、そちらでも主人公とヨナの関係性は「兄と妹」である。
      • 例外として「15 Nightmares」では原作同様に主人公の交代が発生。当然これ用にしっかり親父版主人公も作ってある。
  • ボイスはすべて新たに収録し直しており、フルボイス化されている。
    • 声優陣はオリジナル版とほぼ同じキャストだが、白の書の声優はピーター氏から『NieR:Automata』でポッド042を演じた安元洋貴氏へと変更。
      • 交代理由はピーター氏が2019年から2020年にかけて休養期間に入っていたためと思われる。
      • 安元氏による白の書の演技はかなりピーター氏に寄せており、交代が発生したなりに違和感を覚えさせない努力は行われている。
      • それでもピーター氏が良かったという意見も無いではないが…やむを得ない事情での交代は問題点とまでは言えないだろう。
    • オリジナル版ではボイス無しだったモブキャラにも全てボイスが当てられている。仮面の町の住民たちも架空原語でしっかり喋る。
    • 「15 Nightmares」で操作することになる親父主人公も台詞量が少ないにもかかわらず、松田健一郎氏による日本語ボイスがついている。
    • また、『Automata』で主要キャラを演じた声優陣も本作でちょっとした役を演じている。
  • BGMも全て再収録している。
    • 全ての曲にアレンジも施されているが、本作の雰囲気から逸脱せず、原曲の良さを活かすものになっている。
      • 多くの曲にメロディーが追加され、一曲ごとのループも長くなっている。
      • これは原作版でディレクターのヨコオ氏に「曲のループ短くない?」と指摘されたのを、作曲担当の岡部氏が気にしていたためらしい。
    • 新エピソード用に、新曲も複数収録されている。
  • グラフィック面の改善
    • オリジナル版ではPS2以上PS3未満と評されていたグラフィックが、本作では第8世代機(PS4/One)相応のグラフィックとなった。
    • fpsも60に。滑らかに動くようになった。
    • キャラデザインも一新された。オリジナル版はD.K氏が全てのキャラクターデザインを担当していたが、本作では『Automata』でキャラデザインを担当していた吉田明彦氏*8や板鼻利幸氏*9、過去に『DOD』シリーズに関わっていた藤坂公彦氏*10が新たに描き起こしている。
      • これに関しては、恐らくD.K氏が既にイラスト関係の仕事から手を引いているための交代措置と思われる。
    • オリジナル版では魔法使用時にしか表示されなかった白の書も常にプレイヤーの側で浮かんでいるようになった。
    • 一部追加されたモーションもある。原作では畑の水やりに「片手から水を零す」という妙な挙動をしていたが、今回はちゃんと器から水をやるようになった。
    • マップ背景のオブジェクトが増強された。雰囲気を壊さない程度に小物が増えていたり、背景の見栄えが良くなっていたりする。
    • 血糊のエフェクトが強化。血の質感のバリエーションが増えていたり、血だまりの上を歩くとしばらく足跡に血が付着するようになった。
  • テコ入れされたバトルシステム
    • 全体的にアクション性が向上するよう、スタイリッシュにテコ入れされている。
      • 全ての武器アクションが一新。多彩な攻撃が行えるようになったほか、原作版では使い所が無いとされた「チャージ攻撃」も有用な物に変更。
      • またジャンプ直後に攻撃を入力すると上昇攻撃が出せるようになるなど、新たなアクションも追加されている。
      • 空中回避、空中魔法など、ジャンプ中に様々なアクションが使用可能になった。
      • 魔法の発動待機時にも移動や攻撃ができるようになった。
      • 原作の魔法は「チャージなし」と「チャージあり」の使い分けのみだったが、新たに「ダッシュor回避中に魔法を入力」で派生魔法が出せるようになった。
      • 武器カテゴリのクイック切り替えが追加。メニュー画面を開かなくても別カテゴリの武器に切り替えられるようになった。
    • 戦闘のバランスも変更。槍ばかり強かった原作と違い、それぞれの武器が使いやすくなっている。
      • 難易度を上げると敵が硬くなりやすくなり、かなりヌルかった原作よりも敵が多少強くなった。
      • 弾き攻撃で大きなダメージを出せるようになったことで、弾きを狙う意味が大幅に増しているなど、プレイヤーの採れる戦略の幅も増えている。
    • ロックオン機能が追加された。細かく動き回る小型の敵も多いため、便利に使える。
    • 難易度Easy限定で『Automata』と同じく、自動でバトルを行うように設定することも可能。
    • 一定時間走り続ける事で移動速度が加速する機能が回避アクションの直後から発生するようになり、使いやすくなった。
    • オリジナル版にあった「壁蹴り」は削除されているが、元々全く使わないアクションだったので、評価には影響しないだろう。
  • 期間限定要素の救済
    • オリジナル版では特定時期を逃すと二度と入手できなくなる「ワード」がいくつか存在したが、そういったワードを後から入手できる機会が追加された。
    • 一方で少年期にしか出ない動物素材の救済措置は無いままだが、こちらは採り逃してもゲーム的なデメリットは無い。
  • 追加エピソード
    • 設定資料集などでしか語られなかったエピソードや世界観の補完が追加されている。
    • オリジナル版では短編小説として公開され人気を博したエピソード「人魚姫」をゲーム本編にエピソードとして収録。
      • この「人魚姫」は予算の都合により収録できなかったものらしく、11年越しでゲーム内収録となる。
  • ウェポンストーリーの正式採用
    • オリジナル版では設定資料集のみに記述のあったウェポンストーリーが、ゲーム内でも閲覧できるようになった。
    • 下記「4 YoRHa」のものも新たに収録されている。
  • 平原の天候が追加された。
    • オリジナル版では晴れと曇りのみだったが、BGMの曲調だけ変わる「夕方」が追加されている。
  • オリジナル版で有料DLCとして配信していた「15 Nightmares」も最初から収録済。
  • 新たな無料DLC「4 YoRHa」が配信。
    • キャラクターの衣装と音楽が『Automata』のものになり、同作に登場した武器も手に入る。
  • 日本語ボイスと英語ボイスが自由に切り替えられるようになった。

賛否両論点(ver.1.22)

  • 追加エピソード・シナリオの補完・キャラクターの過去が追加された。
    • これらの内容自体は好評。中には3周しないと見られないような派生シナリオもあるため、飽きを軽減する要素にもなる。
    • 一方で、周回がオリジナル版より大変になったという見方もできる。
      • 特に相違点の減ってくる3・4周目ともなると、面倒に感じて来る可能性も。
    • 『DOD』や『Automata』にあったチャプターセレクト機能も追加されていない。
  • ボス戦開幕時、会話イベントが終わるまで与ダメージが大幅に減少するようになった。
    • 会話イベントを見切らないままボスを倒してしまうことを避けるための措置と思われる。
    • 実際、原作ではボスが脆すぎて会話前に瞬殺してしまう事も良くあったため、シナリオ的には妥当という見方もできる。
      • とは言え、強制的に待たされる仕様でもあり、何回も見ていると邪魔くさくもある。
      • 難易度を下げれば与ダメ減少効果もかなり無視できるため、難易度にこだわりが無ければ一応それで対処も可能。
  • きわめて原作に忠実なリメイク
    • アクションの大幅改善、一部追加エピソードや仕様の変更はあるものの、それ以外はかなり忠実。
      • 基本的なマップ構造、敵味方やNPCの挙動、独特のカメラワークや演出など、あえて変更を加えた部分以外は寸分違わず忠実と言っても過言ではない。
      • 当時の操作感覚や雰囲気をほぼそのまま感じられるという評価ができるし、リメイクとしてそれで真っ当である。
      • 再現度は本当に細かく、「レアアイテム『鷲の卵』が確実に何個も手に入るようになる」といった、バグか仕様なのか良く分からなかった小技すらきっちり再現している始末。
    • 一方、あまりに忠実なせいで、2021年に出るゲームにしては不便な要素もそのまま。
      • ワープ地点が少ないので移動が面倒、採集アクションが冗長、石の神殿使い回されがち、スキップ出来ないシーンが多い等。
      • 石の神殿に関しては、3回目に訪れる際にBGMが「夏ノ雪」に変化するという変更が加えられており、これはこれで雰囲気は良いが、そもそも同じダンジョンに何度も潜る面倒くささは解消されていない。
      • 『Automata』で追加された便利機能なども特に追加は無し。

問題点(ver.1.22)

  • ロックオン時のカメラワークが悪い。
    • 特に背の高い敵をロックオンした際、カメラがキャラクターにやたら近付き、ものすごく地面に寄る。
      • そのため視野が狭くなる上、地面の草や障害物によって非常に見づらくなってしまう。
  • 強力すぎる追加アクション「追い打ち」
    • ダウンした雑魚敵を即死させられる*11が、これが青年期以降に登場する鎧を着た雑魚敵にも有効であり、これに「黒の槍」や「黒の処刑」などのダウンを取れる魔法攻撃と組み合わせると雑魚戦で非常に便利。かなり簡単に倒せるので些かバランスを欠いている印象もある。
    • とはいうものの高難易度や高周回での鎧持ち雑魚は、追い打ちを積極的に活用しないとやってられないほど硬くなる。ダウン自体も取りにくくなり正攻法では非常に時間が掛かるため、ここらへんの調整はもう少し丁寧にやってほしかったところ。
  • クリア後にBGMを『Automata』のものに変更できるオプションが追加されるが、本作には合わないミスマッチなシーンも少なくない。
    • その最たるものが最終ボス戦。先述の通り原作/本作では、BGM「魔王」だけで様々なキャラの心境や状況を表現し、また通常VerとオルゴールVerの2曲を使って緩急を持たせるという非常に凝った使い方をしていた。
    • しかしBGM変更後はそういった効果的な演出はされておらず、それどころかボス戦の最終段階で『Automata』のEDテーマ「Weight of the world」が流れるという非常に違和感のある使い方になっている。
    • もちろん全ての状況でミスマッチな訳ではなく、フィールドで流れる「遺サレタ場所」等は問題なくマッチしている。

とある追加エピソードについて

+ ネタバレ注意
  • 本作では設定資料集でしか語られなかった新エンディング、「Eエンド」が追加されている。以下にEエンドの特徴を記述する。

評価点

  • Dエンドの後日談となっているため、プレイヤーは主人公ではなく、カイネを操作して話を進める。
    • オリジナル版では主人公しか操作できなかったことが不満点として挙げられていたため、この点は好評。
  • EエンドをクリアするとDエンドで消去したセーブデータを一つだけ復活させることができる。万が一やり残しがある状態でDエンドを選択してしまっても、取り返しがつくようになった。
  • そして、Eエンドクリア後には、主要人物たちからシリーズ恒例の例のセリフが聞ける。

賛否両論点

  • Eエンドへのストーリーをある程度進めると、ゲーム中のグラフィックやUIなどが『Automata』風のものとなる。
    • 世界観設定は共有しているとはいえ、『Replicant』の雰囲気とはかなり違っているため、『Automata』風の雰囲気にしていることに、違和感を覚える人もいる。
    • と言っても、設定的には問題があるわけではない。
      • 衰退した世界のように見えて実は機械技術がかなり発達しているため、『Automata』の技術が使われていることは設定どおりである。
    • 今となっては『Automata』の方が有名なので、『Automata』からNieRを知った人からはむしろ親しみやすいかもしれない。
      • 『Automata』と本作を繋ぐ要素として演出の驚きもある。この点は評価点とも言える。
  • Eエンドへの到達方法が非常に分かりづらい。
    • Eエンドの追加は、事前情報で仄めかしただけで公式発表はされておらず、ゲーム中にもEエンドの存在を示唆するヒント等はない。
    • 設定資料集等を読んでいるシリーズファンならまだしも、新規ユーザーがネタバレ情報なしで、Eエンドの存在に気付くことはかなり難しい。
    • ちなみにその到達方法は、「Dエンドに到達してセーブデータ削除後、再びNew Gameを選択してフック撃破まで物語を進める」というもの。
    • あらゆるジャンルの他作品と比較しても非常にトリッキーな分岐条件なため、到達どころか存在自体に気づかない人も珍しくない。
    • 一方、初めてEエンドに分岐した時の驚きはノーヒントだからこそとも言える。これを事前に知っていては驚きも大きく減衰するだろう。
      • また、ゲームを一からやり直す事で取得できる早解きトロフィーも存在するため、自然と分岐に入れる造りには一応なっている*12
      • Dエンド後にニューゲームを始めさえすれば必ず分岐するため、条件はそこまで複雑でもない。どちらかと言うと、データ消去後にもう一度始める気があるかという所が焦点となるだろう。

問題点

  • 折角カイネがプレイアブルキャラとして使用できるようになったが、使用期間はあくまでEルートの中だけである。
    • Eルートのボリュームは正直多くない上、一度クリアしてしまうと再びEルートの条件を満たして突入するまで進めるしかない。
    • ニーアとは全く異なるアクションのキャラに仕上がっているため、クリア後はキャラチェンジで常時使用できるなどの配慮が欲しかったところ。

総評(ver.1.22)

オリジナル版同様、アクションRPGとしてのゲームバランスが大味だったり、周回プレイが大変などのシステム面の問題点はそのままであり、2021年のゲームとしては、やや古臭く感じてしまうかもしれない。
それでも、オリジナル版の魅力であったストーリーやBGMなどを損なうことはなく、グラフィック面の改善や、エンディング・エピソードの追加により、オリジナル版プレイ済の人からも高評価を得ている。
『Automata』から『NieR』シリーズを知った新規プレイヤーにも、オリジナル版プレイ済の人にも、おすすめできる作品と言えるだろう。


余談(ver.1.22)

  • 正式タイトルにある「1.22474487139」という数字は「√1.5」を計算した値。
    • だが、このタイトルにどのような意味が込められているのか、公式からの明確な発表はされていない。
    • 正式タイトルの読みがやや長く、公式からも「1.22 (いってんにーにー)」と略されて呼ばれている。
  • 本作の『Gestalt』版については、『NieR』シリーズプロデューサーの齊藤氏曰く本作が『Automata』の全世界売上本数の半分くらい売れたら製作を検討するとのこと。
    • ちなみにインタビューを受けた時点での『Automata』の全世界売上本数は500万本。その半分となると250万本ということでヨコオ氏は「無理です!!」と言っているが…?
  • スマホ向けのソシャゲである『NieR Re[in]carnation』に本作のキャラクターがコラボ出演していた。
    • 出演したのは主人公、カイネ、7号の3名。主人公の名前は「ニーア」ではなく「世界を滅ぼした男」という名前での出演となっている。
+ タグ編集
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  • ドラッグオンドラグーン
  • キャビア

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最終更新:2024年04月04日 16:00

*1 キャラがいかなる行動をしたつもりでもサウンドノベル上で表示された文面が優先される、という変わった演出がされている。

*2 例えば、浮気に対して満更でもない反応を示すなど。しかし、その後のカイネからの「まず△☆※を切り落とす」という発言を聞いて臆した為が手の平を返した。

*3 驚くことなかれ、仮にも王族の結婚式でもこの格好である。

*4 例を挙げるなら、「貴様の△○※□裏返して、蹴っ飛ばしてやるよ!」など。

*5 本当にちょっとした情報であるが、たとえば「アンヘル撃墜の真相」のヒントなどもある。

*6 ベースである『RepliCant』は、「身寄りのない幼い兄妹を不憫に思ったポポルが、簡単な仕事を紹介してあげている」という描写になっている。

*7 過去には『大乱闘スマッシュブラザーズX』や『サイコブレイク』等の作品に協力会社として開発に参加している。

*8 ニーアやカイネ等のメインキャラを主に担当。

*9 『Automata』同様デボル・ポポルを担当。

*10 仮面の王やフィーアなどのサブキャラを担当。

*11 厳密には即死ではなく、大抵の敵は耐えられないほどの大ダメージ。

*12 さらに言えば、PS4のトロフィーリストにて、Dエンド達成で獲得できるゴールドトロフィー「Dエンディング」の下に、もう一つゴールドトロフィーがあるためそれがヒントになっている。