真 流行り神

【しん はやりがみ】

ジャンル ホラーアドベンチャー

対応機種 プレイステーション3
プレイステーション・ヴィータ
発売・開発元 日本一ソフトウェア
発売日 2014年8月7日
定価 【PS3】7,344円
【PSV】6,264円
レーティング CERO:Z(18才以上のみ対象)
判定 クソゲー
ポイント ×「ホラー」○「グロテスク」
消えた都市伝説
感情移入できないキャラクター
格段にレベルの下がった立ち絵
ギャグに見えるイベント絵
流行り神シリーズ



コノ女、嘘ニ憑カレ、真ヲ突ク。



概要

都市伝説のような事件を捜査していくホラーアドベンチャー『流行り神』シリーズの一作。
前作『流行り神3』でシリーズは完結したとされていたが、スタッフを変更、登場人物を一新して復活した。
ちなみに、今作のレーティングはシリーズ初のCERO:Z(18歳以上のみ対象)となっている。

舞台はとある寒村。ここで起こっている事件について情報を持っているという殺人事件の容疑者が、主人公である警察官たちに村へ連れてこられるところからストーリーは始まる。
科学とオカルトのストーリーに分岐するという前作までのシステムを廃し、基本となるストーリーから別のストーリーに分岐していくというシステムを採用している。


システム

続投システム

  • 勇気を表す「カリッジポイント」。選ぶには勇気がいる選択肢を選ぶために必要となる。
  • ゲーム中で集まるキーワードを適切な場所に当てはめることで、それまでの状況を整理する「推理ロジック」。

新システム

  • 前作までのストーリーは別々の事件が独立しているオムニバス形式で、それぞれの事件を科学とオカルトの両面から捜査していくというものだったが、
    本作では基本となる「ブラインドマン編」から別のストーリーに分岐していくというものとなっており*1、科学・オカルトという区別はない。
    • このため、どちらかと言うとサウンドノベルのようなシステムとなっている。
  • 嘘を並べて相手の信頼を得る「ライアーズアート」。
    • 3つの言葉が選択肢として表示され、選ぶとその言葉を含む台詞を相手に投げかける。制限時間内に選択肢を選ぶ、または何も選ばないことを複数回繰り返し、相手の信頼を勝ち取るというシステム。終了すると得た信頼に応じてその後の展開が変化し、カリッジポイントが回復する。
  • 『3』までにあった「セルフ・クエスチョン」は未採用。

ストーリー

  • ブラインドマン編:ハサミで目を抉り出すという殺人鬼・ブラインドマンの謎を追っていく。
  • 悪霊編:村人が次々に心停止により死んでいく。主人公は事件に関わるうちに、奇妙な黒い影を目にするようになる。
  • 生け贄編:主人公は宿の地下に監禁される。そこでは、殺人が収められた「スナッフビデオ」の撮影が行われていた。
  • パンデミック編:人々が感染症により、ゾンビのように変貌していく。主人公たちは感染者に噛まれてゾンビ化することを防ぐため籠城を開始する。
  • 死臭編:主人公が村人に貰った醤油からは死臭が漂っていた。主人公は醤油の製造業者から醤油について聴取しようとする。
  • 洗脳編:主人公は、上司や先輩とともに、殺人犯の拷問に加担することとなる。
  • 寄生虫編:村の地下で人間に寄生する虫が大量発生していた。主人公たちは村からの脱出を試みる。
  • 人形編:殺人現場の近くで度々人形を目撃した主人公は、事件が人形によるものではないかと考える。
  • 秘密クラブ編:主人公は、事件の被害者が通っていた秘密クラブへの潜入を試みる。

問題点

  • ストーリーによってキャラクターの役割や性格が全く変わる上に、掘り下げられる前にすぐ死ぬため、感情移入しにくい。
    登場人物に思い入れがないため、物語が怖くもなんともなくなっている。
    • 主人公の先輩はどのストーリーでもクズもしくは役立たずであり、そういう意味でも感情移入はし辛い。
    • 主人公の設定はどのストーリーでも共通しているが、
      • 嘘や演技がうまいという設定だが、単なるその場しのぎの言い訳にしか見えない(描写の不一致)
      • 警察官であるのに、制服を着ていないせいでその設定が感じられない、大人の男に敵わず護身術も使えない(警察官らしさの欠如)
      • 「設定厨」は知っているが「ツンデレ」は知らない(知識の妙な偏り)
      • 自分の容姿に自信を持っているということが何度も描写される(過剰なナルシシズム)
    • と、違和感のある描写ばかりが共通している。
  • 派生ストーリーはいずれも上述した「ブラインドマン事件の情報を持っているという殺人事件の容疑者が村へ連れてこられる」という経緯の後の時間軸となるが、その設定が活かされているとは言い難く、派生にする必要があったのか疑問が残る。
  • 恐怖演出にオカルト的なホラー描写が全くない。暴力やスプラッタシーンを延々と見せられる、肉体的・精神的に怖い内容である。
    • これではグロテスクアドベンチャーである。『3』はグロ要素が不評だったのに、なぜ増やしてしまったのか?
    • ディレクター兼サウンド制作の高須和也曰く「ホラーに感動なんていらない」とのことだが、感動以前にホラーですらないのだから、こんなことを言う資格はない。
  • そもそもどのストーリーも「どこが都市伝説なのか?」と首をかしげたくなる内容。時々思い出したように「都市伝説のようだ」とキャラが語るくらいだが、とてもわざとらしい。
  • 『流行り神』でもホラーでもないグロテスクアドベンチャーとして見ても、どこかで見たようなありがちな話ばかり。
    人間による殺人が行われるストーリーは、「狂人が猟奇殺人を行う」という内容ばかりでワンパターン。
    その他意味深な描写の未回収・誤字・間違った日本語・活かされていない人物設定など、単純に出来が悪い。
    たびたび挟まれるネットスラングも評価が分かれるところ*2
    + 各編のおかしなところ(ネタバレ)
  • ブラインドマン編
    • ブラインドマンの正体に関する伏線が存在しない。ストーリーが特に盛り上がりもなく進む中、終盤にいきなり自分から現れて全ての真相を教えてくれる。
    • 悪霊編
      • ある人物たちの「友達の友達」が悪霊により殺されていくのだが、「両親が殺されるが、親を友達というのか?」「対象が友達と認識されてから死ぬまでの期間が自由自在」などルールが曖昧・デタラメ過ぎる。
    • 生け贄編
      • 序盤に主人公に起死回生の策となるキーワードを教えてくれる人物は、終盤では殺人犯の首を持ちながら、気絶している主人公を隙間からじーっと覗いていたと思われる。
      • 上記のキーワードや、子供を安全な場所に隠れさせるなど良い人であることは窺えるのに、どうしてこんなことをしたのか不明。
        • また、この人物は事件の証拠品を持って逃げたと思われるのだが、その理由も不明。
    • パンデミック編
      • 主な舞台である警察署の背景画にはニュース番組を映すテレビが描かれているが、無人・無音の場面や終盤の壊滅的状況でも一切画面が消える事はない。そのくせ、テレビに関する場面は序盤に一度あるだけで、以降は点けっぱなしのまま放置。
        そもそもこの話に分岐する選択肢自体が、「仕事場に来ない先輩に携帯で連絡する場面で、"普通に電話するかチェーンメールでいたずらするか"」という適当なもの*3
    • 死臭編
      • 終盤、獄中の人物が主人公を助けに来る。どうやって抜け出せたのかというと、謎の人物が手引きをした。その人物の正体・目的は不明。ご都合主義という言葉すら生温い。
    • 洗脳編
      • 主人公が洗脳されるが、何のために洗脳が行われているのか不明。どう見ても行うメリットが存在しない。
      • 主人公が同僚に拷問の事実を打ち明ける場面で、「一人しか殺していない容疑者なら終身刑が妥当だ」と話すシーンがあるが、日本の刑罰に終身刑は無い。この二人は本当に警察官なのだろうか?*4
    • 寄生虫編
      • 「兵糧攻め」の言葉の意味を知らない主人公の先輩が、馬鹿にされた時に「ネットばっかりやってる奴は自分だけがわかる表現を多用してむかつく」と逆ギレ。言いたい事は分かるが、兵糧攻めの意味は普通の人なら常識の表現である。
      • 虫に囲まれた主人公たちをある人物が助けに来てくれるのだが、その目的は虫ではなく、青酸カリか焼却による死を選ばせるというもの。何の意味があるのか分からない。
      • 特殊部隊により地上の虫の焼却が行われるが、空を飛ぶ虫はどう焼却するのか不明。
      • 虫に寄生された死体を燃やし忘れるといううっかりミスまで。
    • 「悪霊編」と「洗脳編」は全く救いのない完全なバッドエンドである。
  • 「推理ロジック」とはいうものの、作中で事件の捜査が行われていない、そもそも(警察が捜査するような)事件とは言えないものがあるため、推理とは言えない。
    • 多くは事件の全貌が明らかになったところで行われるので、「推理」というよりは「答え合わせ」になっている。
    • 当てはめたキーワードについても、過去作では主人公がそのキーワードに関する見解を長々と語ってくれていたのだが、本作ではあっさりと済ませてしまう。
  • 用語のデータベースは前作までは200個だったが、本作では100個に半減。内容自体も薄く、それでいて「フロリダ・ゾンビ」と「バスソルト」のように同じ項目で纏められるであろう単語を分けており、水増し感が強い。
  • 立ち絵とイベント絵の絵師が違うので違和感を覚える。
    • あまりにも違いすぎるため、これがグラフィック面の不満の一つとしてあがっている。
  • 立ち絵のキャラクターデザインは前作から絵師が変更されているのだが、今回は格段にレベルが下がっており、立っているだけなのに違和感を覚えるという出来なうえ、キャラクターの服装差分すらほぼ無い。
    • 「生け贄編」などの一部キャラクターにはかなり偏った差分が用意されている。が、その差分も人体が描けてないという根本的な問題で、かなり出来が悪い。
    • 立ち絵は単純な画力のみではなく、デザインの時点で服装などのセンス自体がおかしいという批判もされている。
      • 主人公の革ジャンにミニスカや、男性キャラの取ってつけたようなタイなどがよく上げられる。
    • 一部立ち絵の絵師が担当しているカットインがあるが、首吊りロープの結び方が明らかにおかしいなど、本当に調べて描いたのかと感じる程の出来。
  • イベント絵の出来も悪く、「生け贄編」終盤の凄惨なシーンは、このイベント絵のせいでギャグシーンに見える有り様である。
    • 伊藤潤二のような絵柄の絵師であるために、ゲーム中あまりにも突然代わる画風に批判の声が上がっている。
    • ただし、「生け贄編」は「ブリーフ一枚の男を怖く描け」ということ自体にかなり無理がある為、ギャグに見えるイベント絵はシナリオに振り回された結果ともいえる。
    • イベントを担当した絵師は背景も担当しており、こちらは緻密に書き込まれており概ね好評である。
  • 新システムのライアーズアートは問題だらけ。
    • 選択肢から予想される主人公の台詞は予想に反した内容であることが多々あるため、信用を得られるかどうかは運に左右される。
    • 制限時間が非常に短いため、選択肢によってどう展開するかを考える間もなく適当に選ばされることとなる。
    • 選択肢を間違えてもバックログなどで戻ることが出来ず、取り敢えず終わらせなければならないため面倒。
    • BGMはクラブミュージック調のアップテンポな曲。世界観からあまりにも浮いている。
    • 失敗した場合、ほぼバッドエンド直行。成功・失敗に関わらず特に展開に変化がないこともあり、どちらにしても「無駄に複雑な選択肢」でしかなく必要性が感じられない。
    • 前作まではシナリオの終盤に推理ロジックが行われ、そこでグッドエンドに進めるかどうかの判定が行われていたが、今作では成功後にもライアーズアートが行われるため、推理ロジックの必要性が薄まってしまっている。
      • それにも成功すれば晴れてゲームクリア…とはならず、シナリオによってはその後も選択肢が登場し、間違えたらバッドエンド。このようなシナリオが一つでもあったら、新システムを採用した意味がないのでは?
    • 事件の資料を見せてくれない同僚の鑑識や、捜査方針が自分と食い違う先輩に対して行われる場合もある。嘘や詭弁を使わなければ仲間との協力も出来ない主人公って…。
  • カリッジポイントはライアーズアート後に一定値回復する仕様のせいで、わざと消費し切ろうとしない限り0になることはほぼなく、ほとんど無意味になってしまっている。
    • 前作まではシナリオ読了までは回復しないため、序盤で無駄に勇気の要る選択をしたせいで必要な行動が出来ない、という事態に陥ることもあった。親切になったと言えなくもないが、ホラーゲームとしての緊迫感を削いでしまったことは明らかにマイナス。

評価点

  • BGMは時におどろおどろしく、時にしっとりとしており、雰囲気に合っている。
    • 推理ロジック時のBGMは『3』までのもののフレーズが使われているというファンサービスがある。
    • ライアーズアートのBGMは基本的に「雰囲気に合っていない*5」という評価だが、最後のライアーズアートは通常時よりさらにスピード感のあるBGMになり焦燥感を際立たせ、絶体絶命の状況と相まって燃えるという意見もある。
  • バックログや分岐ツリーなど、サウンドノベルとしてのシステムは快適で、ストレスにはならない。
  • 「悪霊編」は「過去作の似た題材の話の方が余程面白い」と、「人形編」は「犯人の最期が脱力物」という問題点はあるが過去作のオカルトルートに近い雰囲気であるた為、好評の声もある。

総評

完結したと思われていたシリーズの新作ということや、CERO:Z指定ということから話題を集め、累計出荷本数は3万本を越えてシリーズ最高となった。
しかし、ホラーアドベンチャーなのに恐怖感がないどころか必要以上のグロ要素が詰め込まれ、警察官が主人公で推理ロジックというシステムまであるのに推理要素なしと看板に偽りあり。
続投システムであるカリッジポイントや推理ロジックも、取ってつけたようなものであるため存在意義を疑いたくなる。
都市伝説の要素は見当たらず、文章自体のレベルも低い。
『流行り神』独特の良さはどこにも残っておらず、シリーズファンからは「なぜ『流行り神』というタイトルにしたのか?」という疑問を呈され、都市伝説やホラーなどの要素に惹かれた新規ユーザーからは「前情報と違う」と非難されることとなってしまった。

発売前、高須和也は「生け贄編が一番好き」と語っていたが、このストーリーは最初から最後まで猟奇シーンが延々と続くという内容で、都市伝説の恐ろしさなど微塵もない。こんな考えをディレクターという重要な責任者が持っていたという時点で、本作の出来は決まっていたのかもしれない。


余談

「3作目で完結しており、タイトルに『真』とつけて復活するもファンからは不満の声が挙がる出来」という点で、『真かまいたちの夜 11人目の訪問者』と比較されることがある。


その後の展開

  • 2017年12月12日に本作のスマホ版がiOS/Androidで配信開始。各エピソード個別での購入となる。
    • ただし、Android版のみブラインドマン編しか配信されていないので、Androidユーザーは要注意。
  • 2019年7月18日にSwitchでカップリング移植『真 流行り神1・2パック』が発売された。
  • 2021年7月29日に5年ぶりの新作『真 流行り神3』がPS4/Switchで発売された。
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最終更新:2023年02月26日 23:08

*1 「パンデミック編」のみ「生け贄編」から派生する。

*2 「○○厨」「クレイジーサイコ」「ファッ!?」等。

*3 電話で連絡すると分岐するが、以降の話にこの件は全く関わらず、分岐の理由は不明。そもそもどちらの選択肢を選んでも、先輩は着信に気付かずに話が進む。

*4 無期懲役が終身刑にあたると誤解される事が多いが、無期刑はあくまでも刑期に満期(終わり)がないだけであり、身元引受人がいることや受刑者本人の意思等の条件を満たせば仮釈放は認められる。ただ、現在の日本では、無期懲役に処された受刑者のうち多くが仮釈放されることなく獄死しているのも事実である。

*5 いわゆる「ユーロビート」と呼ばれる曲調。2000年代前半に流行った「パラパラ」や、アニメ『頭文字D』の挿入歌を想像して貰えればわかるはずである。