さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち

【さらばうちゅうせんかんやまと あいのせんしたち】

ジャンル ウォー・シミュレーション
対応機種 プレイステーション
メディア PS用CD-ROM3枚組
発売元 バンダイ
開発元 ベック
エヌケーシステム
発売日 2000年5月2日
定価 通常版:7,800円
限定版(DXパック):12,800円(共に税抜)
プレイ人数 1人
判定 良作
ポイント CD-ROM3枚組となりフルボイス化、更に原作の2つの結末を両方収録
ゲーム的にも前作の問題点をほぼ解消し、非常に良質な出来


概要

西暦2201年、ヤマトは永遠の旅へ…。

無限の広がる大宇宙…… そこには、様々な生命がみちあふれている。

死にゆく星、生まれくる星…… 生命から生命へと受け継がれる大宇宙の息吹は、永遠に終わることはない。

あの忌まわしいガミラスと地球の戦いも、無限の時を刻む宇宙の広がりの中では、つかの間の混乱に過ぎなかった。

……デスラーは去った。スターシャと古代守も、宇宙という永遠の海の彼方に消えていった……

沖田十三が、ヤマトとその乗組員たちと共に旅立ったイスカンダルへの航海のことさえ、人々はもう忘れようとしていた。

……そして、時は流れた。

西暦2201年

地球は今、本土の再建をほぼ達成して、その勢いを太陽系の惑星にまで広げ、各惑星には基地が建設され、資源開発が急ピッチで進められていた。

以前にも増して富み栄えた地球人類は、平和と繁栄に酔いしれ、忍び寄る新たな恐怖のことなど、気づくすべもなかった。

(本作取扱説明書より)

  • 1978年に公開されたアニメ映画『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』(以下『さらば』)、及び1978~79年に放映された同作のテレビアニメ版『宇宙戦艦ヤマト2』(以下『ヤマト2』)を原作としたウォー・シミュレーションゲーム。
    • 前作『宇宙戦艦ヤマト 遥かなる星イスカンダル』の続編。同作で救われた地球が、1年の時を経て新たな脅威にさらされることとなる。
    • 前作同様松本零士氏が全面監修し、メカデザインの宮武一貴氏、作画監督の増永計介氏といった面々や株式会社ベック主導でのゲーム開発といった陣容はそのまま引き継がれている。
    • 原作アニメだけでなく、松本零士漫画版の展開が採用されている場面もストーリー序盤を中心に存在している。更に中盤以降はストーリー分岐が発生し、進行したストーリーによって2通りのエンディングを迎える。
    • 一部、前作のゲームシステムとの比較を行っている記述があるため、前作の記事を併せて参照することを推奨する。
  • 本作には通常版と『DXパック』と題された限定版が存在する。
    • 通常版にも説明書と同サイズの簡易設定資料集(簡易とはいえ40頁超)が付属。
    • 更に限定版では大判サイズの設定資料集、アニメシーンを収録したVHSなどが追加された豪華仕様となっている。
  • CD-ROM3枚の大容量により、セリフやナレーションなどのフルボイス化が達成され、アニメ・CGのムービーシーンの量も大幅に増加。「シナリオは前作の4倍以上」「CGとデジタル映像も前作の1.5倍」とされている(リンク)。
    • その分ストーリーが非常に長くなっているのだが、イベントスキップ(L2+START)が導入されている。
  • 本作の操作パートは主に「戦略」「3D戦闘」(ヤマト/艦載機)「白兵戦」に分かれる。
  • 戦略」画面は前作の航海パートに相当。ヘクス(六角形のマス)で構成されたマップを航行する。
    • ただし、見かけ上は前作とは大きく異なり、ヘクスで形成されたマップが全て3D描画になっており大幅にパワーアップしている。
    • ヘクスのタイプも前作のアステロイドや宇宙ガス、各種惑星・恒星だけでなく、移動方向に制限がかかる宇宙気流や滞在するだけでダメージを受ける炎上地帯なども登場した。
    • 前作同様、惑星探索などでヤマトがパワーアップを得ることが出来る。
    • 敵・味方の行動は全てリアルタイムで進行する。ただし進行速度は相対時間であるようで、行動速度が速い艦載機が出撃している場合は他のユニットの行動が遅くなるような現象も見られる。
    • 戦略画面で出来ることも大幅に増えている。
      • ヘクス上でも敵を攻撃でき、また攻撃を受けるようになった。
      • 艦載機「コスモタイガーII」及び「コスモゼロ」(古代専用機)は独立したユニットとして出撃させることが出来、ヤマトから指示を出すことで行動させることが出来るようになった。行動範囲はヤマトからの通信が届く範囲となる。
      • 乗組員のシステムについても一新され、「第一艦橋などのデフォルト配置」では能力を最大限発揮出来ない代わりに乗組員のHPが回復し、「艦砲制御室などの専門部署」では乗組員の能力を最大限発揮できヤマトの能力が上昇するが、時間経過とともに乗組員のHPが減少していく。
      • 前作では性能上は区別されていなかった古代と南部、島と太田といった同一部署の乗組員も、本作では差別化された能力が設定されている。
      • 「通信」のコマンドが大幅に拡充。味方に対して指示を出したり、敵に対して「宣戦布告」してヤマトに攻撃を集中させることが出来る。更に相原を移動させている場合は更に詳細な指示を出したり、なにもないように見えるヘクスを「探信」して隠れている敵を探索することが出来る。
      • 修理に関しても、本作では基本的に戦略画面上で行う必要がある。前作のように技術班の人員を振り分けるのではなく修理箇所を最大4箇所まで指定するように簡略化された。また前作とは異なり、艦載機についても個別に修理を行う必要がある。
      • 波動砲・ワープは前作同様戦略画面でのみ使用可能。波動砲は直線上の最大5ヘクスに範囲が強化されている。
      • エネルギーゲージの仕様が変更されており、前作の航行速度を示すゲージから、攻撃するごとに消費し時間経過と共に回復するゲージへと変化している。
  • 敵の居るヘクスに味方ユニットが接触する、または敵が接触してきた場合は3D戦闘画面に移行する。
    • ちなみに敵から突っ込んできた場合は画面移行前に乗組員の配置変更が可能。こちらから突っ込む場合は変更できない。
  • 3D戦闘」はヤマトと艦載機では若干仕様が異なるため、分けて説明する。
  • ヤマトはほぼ前作と同様で、移動先を指定しながら自動砲撃で敵を撃破していく。
    • 前作とは異なり手動砲撃は出来ない。また戦略画面同様エネルギーゲージが切れている場合は砲撃が止まってしまう。
    • 戦闘中の乗組員の配置変更はできなくなり、上述のように戦略画面の段階で変更しておく必要がある。
    • 3D画面では「アイテム」を使用することが出来る。その場でヤマトのHPを回復することが出来る「緊急修理ユニット(α・β)」、波動エネルギーを急速回復する「波動エネルギーパック」など様々な種類のアイテムが存在するが、事前に技術班のコマンドで生産しておく必要がある。アイテムの種類や生産最大数はゲーム進行と共に増えていく。
    • ゲームスピードは前作より大幅に上昇しており、敵味方ともに前作とは比較にならないほどスピーディーな戦闘を行うことになる。必然的に指示を出す機会もより多くなっている。
    • 敵艦は今作の主な敵である白色星団帝国の艦隊を中心に登場。やはり本作用にリデザインされている。
  • 艦載機は操縦は完全に自動であるが、□ボタンを押すことで照準が表示され、○ボタンで「アイテム」として「対艦ミサイル」や「誘導ビーコン」などを使用することが出来る。
    • 移動そのものは自動だが、△ボタンでターゲットとなる敵を変更することは可能。
    • また、×ボタンで戦闘から離脱して隣のヘクスに移動することが可能。移動先のヘクスが移動不可でない限りは100%離脱出来る。
    • アイテムはヤマト同様ゲーム進行とともに増えていく。
    • 前作のブラックタイガーと比べると、本作のコスモタイガーIIは高威力のミサイル攻撃が可能になったため対艦攻撃能力が大幅に上昇し、敵艦隊へ突撃しての雷撃戦をこなすことも十分可能なほどに強力なユニットとなっている。
  • 前作同様、特定のイベントで「白兵戦」を行うことになる。
    • リアルタイムSLGである艦隊戦と異なり、どちらかというとクォータービューのアクションシューティングに近いゲームシステムに変化している。操作キャラを任意に切り替え、R1ボタンでロックオンして敵を射撃していく。
    • 「戦闘班」「航行班」「技術班」「通信班」といった前作同様の面々に加え、本作初登場の「空間騎兵隊」が登場。
    • 全員○ボタンで発射するコスモガンを基本装備として所持し、□ボタンで専用の装備を使用することが出来る。またマップ内に別の武器が隠されていることがあり、そちらを装備することが出来る。
    • 側転回避等もでき、操作性自体は全体的には良好。
  • マップ数は全20枚と前作の9枚から2倍以上に。前作と比べるとマップ1枚ずつはスケールダウンしているが、場面場面に応じて異なるミッションが提示され、それに応じて攻略していかねばならず、結果として攻略の密度は跳ね上がっている。
    • マップクリア時には評価画面が表示され、攻略に要した時間、ヤマトが受けたダメージ、撃破した敵などが表示されA~Eの総合評価が行われる。
      • 各種パワーアップなども評価画面で行われるが、マップごとの条件を満たすことによってパワーアップするため、厳密には評価には直結していない(ただし条件を満たすことが評価の上昇条件になっている場合はある)。
    • 序盤~中盤にはヤマトは単艦行動ではなく僚艦を携えて行動するシーンもある。これを守りきれるかどうかも評価対象となる。

評価点

  • 前作に引き続き、原作ゲーとしての完成度が非常に高い
    • CD-ROM3枚の大容量により、イベントシーンのフルボイス化が実現。前作同様メインキャラのキャストは可能な限りオリジナルキャストを採用しており、原作の名シーンを再現してくれる。
    • 公式設定資料集でのインタビューでは古代進役の山寺宏一氏へのインタビューが掲載されているが、その中で本作の台本が「4分冊で30分アニメの7~8倍ほどの分量」と明かされているなど、その物量は凄まじい。
    • 流石に前作と異なり「可能な限り全てがオリジナルキャスト」とは行かなかったものの、代役となったキャラも概ね違和感のない演技を披露している。
    • 本作ではナレーションも付いているが、『さらば』で担当した広川太一郎氏が本作でも担当し、以降のゲームシリーズでも引き続き担当している。
      • 実際の所、『さらば』と『ヤマト2』でキャストが異なるキャラも少なからず存在し、また他のキャラとの兼役もあったという背景や、原作から長い年月の中で声優業から離れている役者も居る。このことからキャスティングに難航したと思われる形跡も少なからず存在している。
+ キャスティングの変更があったキャラ(括弧内が本作でのキャスト。敬称略)
  • 古代進(山寺宏一)
    • 富山敬氏死去による代役。
  • 島大介(田中秀幸)
    • 仲村秀生氏休業中による代役。前作ではささきいさお氏が担当していたが、本作以降のゲームシリーズでは田中氏が担当している。
  • 山本明(岡幸二郎)
    • オリジナルキャストの曽我部和行氏は本作の発売とほぼ同時期に声優業を休業しているため、その関係で代役となったと思われる。全体的にキャスティングが良好な本作の中では珍しく不評が目立つ(後述)。
    • PS2の次回作以降では伊藤健太郎氏が引き継いでいる。
  • 土方竜(大塚明夫)
    • 木村幌氏死去による代役。
  • 藤堂平九郎(大木民夫)
    • オリジナルキャストの伊武雅刀氏は本作にもデスラー役で参加しているが、前作でオファーを受ける際に「デスラー役ならば」という条件だったため、原作で兼役していた藤堂は代役となった。
  • サーベラー(氷上恭子)
    • 本作開発時点では両者とも活動を続けていたが、本作では新規にキャストが当てられている。原作では『さらば』『ヤマト2』で別キャストであり、性格も大きく異なるキャラとして描かれていた。
  • ミル(緒方恵美)
    • 本作でキャラクターデザインが大幅に変更されているため、それに合わせての変更と思われる。
  • イベントシーンだけでなく、ゲームシーンでも指示や乗組員からの報告なども全てボイス付きであり非常によく喋る。
    • 波動砲やワープのシーンもちゃんと原作同様のセリフを喋ってくれる。「対ショック、対閃光防御!」
  • ボイス付きになったことでイベントの長さ・ムービーゲー化に拍車がが掛かっているのは事実なのだが、本作ではイベントスキップが導入されたことによりリプレイ性を阻害しなくなったのも大きい改善点である。
    • ちなみにイベントスキップのコマンドは上記のゲームシーン中のセリフもスキップできる。
  • ストーリーに関しては、150分超の長尺とはいえ劇場版である『さらば』と26話に渡って放送されたテレビアニメ版『ヤマト2』では、ストーリーの大筋は同様でも長さが全く異なるため、全体としては『ヤマト2』の展開を踏襲している。
    • オープニングムービーからして『宇宙戦艦ヤマト2』のオープニングのほぼ忠実な再現である*1。主題歌はもちろんささきいさお氏の『宇宙戦艦ヤマト』。
    • 場面に応じて『さらば』の展開が採用されていたり、両方を折衷したシーンもある。両作品の間には大きな矛盾を生じるシーンも多いのだが、この矛盾に関しても可能な限り整合性を取る形で統一された。
    • 一部前作からの矛盾の解消のためにセリフや展開を変更した点も見られる。
      • 代表的なものとしては『さらば』ではガミラス側の瞬間物質移送器を用いた戦法を南部が「デスラー戦法」と呼んでいたが、前作でこの戦法を用いたのはそもそもデスラーではなくドメルである。これを踏まえ、本作で該当する場面においては「ドメル戦法」というセリフに置き換えられている。
      • ただし、前作のスターシャのメッセージに「地球の大気の中ではガミラス人は生きてはいけない」とある*2が、今作で古代進とデスラーが直接対決するシーンでは『さらば』『ヤマト2』と同様お互いに宇宙服を着ずに対峙している。
      • もっとも、これは原作でも大きな見せ場であったシーンであり、ここで宇宙服を着てしまうとそれはそれで雰囲気を阻害してしまう。この点では設定の統一よりも原作再現を優先したのは評価点と言えるだろう。
      • なお、PS2以降のゲームシリーズでは改めて「ガミラス人は地球(及びイスカンダル)と同一の空気で呼吸できない」設定とされている。上記の描写が特例だったと見るべきだろう。
    • キャラクター設定についても両作品を折衷する形で描写されているキャラが多い。
    • また、序盤を中心に原作であまり描写されなかった航海シーンをオリジナル展開で補完している。反逆発進の嫌疑が解かれた後に地球防衛軍側から援軍が派遣され、ヤマトの僚艦として味方ユニット扱いとなる展開も存在している。
  • ラスボス戦が存在する。
    • 原作(『さらば』&『ヤマト2』双方)では最後に出てくる敵が強大すぎて戦闘らしい戦闘にならず、ゲームだったらイベントムービーで済まされる対決になってしまっていたが、今作では本来のラスボスをイベントにして、その前哨戦にオリジナルの戦艦が登場し、こいつが最後の対戦相手になる。
  • さらに……(以下ネタバレを含む)
+ 原作および本作のネタバレを含むので格納
  • 実は原作である『さらば』と『ヤマト2』は、ベースとなるストーリーは同じながら全く異なる結末をたどっている
    • デスラーは『さらば』では死亡し、『ヤマト2』では生き残る。
    • 戦死したクルーが『ヤマト2』の方が少ない。
    • 崩壊する都市帝国から出現した超巨大戦艦に対し、ヤマトは既に戦う術が残っていない。この後……。
      • 『さらば』では他のクルーを全て退艦させた後、ヤマトはテレサと共に超巨大戦艦に特攻して散る
      • 『ヤマト2』ではテレサが単独で特攻し、超巨大戦艦を撃破。ヤマトは満身創痍となりながらもかろうじて生き残る
    • 原作シリーズにおける『新たなる旅立ち』以降の続編は本作に続くストーリーとして制作され、『さらば』はパラレル扱いとなっている。
  • 本作では、上記の両方のストーリーが収録され、エンディングも両方のバージョンが用意されている
    • 特定条件でストーリーが分岐し、ボイス、ムービーもストーリーが異なる部分についてはちゃんと分けて収録され、2つのストーリーを楽しめるようになっている。
    • 公式設定資料集では原作同様『ヤマト2』ルートが正史とされており、PS2の次回作『イスカンダルへの追憶』以降もこの設定で制作されている。
  • なお、原作ではどちらの作品でも戦死していた山本明だが、今作では特定条件を満たすことで生還させることが出来る。
    • これは厳密には本作オリジナル設定ではなく、原作のアニメーターがコスモタイガーIIが撃墜され山本が戦死するシーンでこっそりキャノピーから脱出する絵を仕込んでいたことが明らかになっている(実際の映像では描写が小さすぎてほぼ見えなかった)。
    • この半ば裏話に近い存在であった山本の生還だが、本ゲームシリーズではこの山本生還が正史扱いとなり、PS2の次回作以降は本作で戦死した加藤の後を継ぎコスモタイガー隊の隊長として活躍することになる。
  • ゲーム部分も、前作の冗長だった部分をほぼ解消。
    • マップ数だけでも大幅に増大しているのに、イベント密度が大幅に詰められ、「目的地に向けて航海しているだけ」というシーンはほぼ皆無に。常に何かしらの目的を持って行動することが必要となり、SLGとしての完成度が一気に高まった。
    • 全体的なゲームスピードの上昇、戦略画面や乗組員周りのシステムの刷新によりプレイヤーが積極的に操作する必要性が高まり、退屈なゲーム展開になりにくくなっている。
      • 一方手動砲撃のような明らかにバランスを壊しているシステムは排除された。逆に前作ではいまいち頼りにならなかったミサイル系武装は弾速・追尾性能・威力の全てが大幅に強化され、更に低エネルギー消費という砲撃とは異なる強みを手に入れ一気に実戦級に躍り出た。
      • なお、主砲の発射音は前作では手動砲撃時の演出及びイベントでのみ原作同様のものが用いられ、自動砲撃時はやや地味にしたようなSEが用いられていたが、本作では常に原作同様のものが用いられている。
        原作では異なる効果音だった敵艦も同一であるところは惜しまれるが、より臨場感が高まったと言える。
      • ちなみにこの仕様は本作唯一となり、PS2の次作以降は前作同様効果音の再現はイベントシーンのみとなっている。
    • 緊急修理ユニットなどの便利なアイテムを容易に生産できるおかげで難易度自体は前作同様抑えめとなっているのだが、評価制の導入により高評価を得ることを目的とすると極力被ダメージを抑えなければならないため、緊張感を持ったプレイが必要となる。
    • 最高ランクの「A」取得はかなりの高難易度であり、全ステージのランクA取得を目指すと非常に歯ごたえがある。

賛否両論点

  • 白兵戦が全く異なるゲームジャンルとなってしまっている
    • 上記の通り艦隊戦は一貫してSLGであるのだが、白兵戦になると突如アクションシューティングに変貌してしまう。
    • SLGである本作でACT・STGのプレイングスキルを求めるというのは変な話であり、賛否両論。
    • 前作で強力すぎた通信班(衛生兵)の回復能力はHPゼロからの蘇生についてはアイテム消費制となったことで、戦闘不能になること覚悟での特攻は適しないシステムになったことや、全員が武装を持ちある程度戦えるようになったなど、ゲームバランス面での改善は数多い。ロックオンがあるおかげで精密な射撃も要求されないなど操作性も良好。
    • 皮肉なことにゲームジャンル的に全く別物になってしまったにもかかわらず、白兵戦の完成度自体は前作よりも断然高いものとなっている
  • 一部のキャラの設定変更・キャスティングについて
    • 山本明は上述の通り本作で声優が変更されているのだが、全体的にキャスティングが良好な本作でひとりだけ明らかに棒読みが目立ってしまっている。
      • 本作で担当した岡幸二郎氏はもともとミュージカル俳優であり、声優業がメインの役者ではない。
    • ミルはストーリー上の役割こそほぼ変わらないものの、極めて女性的な絵柄に変化しており声優も女性(緒方恵美氏)になっている。
      • 公式設定資料集にも「男と思わないほうが良い」「どっちだって良いじゃないですか!」と記載されており、公式に性別不明キャラとして扱われている。
      • 原作では『さらば』ではまつげが長く目が大きい外見で若干オカマっぽい高い口調、『ヤマト2』では精悍な外見で口調も男性的という差異があったが、いずれも明確に男性として描かれており、声優も同一人物(市川治氏)が見事に演じ分けていた。
      • ちなみにこの両作の作風の違いは『さらば』では松本零士氏が直接キャラデザインを担当したのに対し、『ヤマト2』では現場のスタッフにより再デザインされたことによる変化である(このような変化は他の彗星帝国側キャラにも見られた)。
        ミルは特に差異が顕著だったキャラであり、松本零士氏主導の作品である本作で『さらば』準拠のデザインをより強調して採用したこと自体は変な話ではない。
      • …のだが、同じく両作の間で顕著なデザインの違いがあるタランについては『ヤマト2』の方が採用されている。もっともこちらは本作のみの出演ではなく後の作品にも引き続き登場するキャラであるため、そちらとの整合性を優先した可能性もある。
      • 余談だが、後年のリメイク作『宇宙戦艦ヤマト2202~愛の戦士たち』では、完全な男性(優男系)としてデザインされたうえ、重要な役どころとなっている。声優はガンダムUCで有名な内山昂輝氏。

問題点

  • ステージ選択が一切できない
    • 特定のステージを再プレイしたい場合には、あらかじめセーブデータを分けるか最初からプレイし直さなければならない。
    • 本作はいかんせん全20ステージ+一部のステージには複数のミッションや白兵戦があり、更にストーリー分岐も存在するなど、とにかくゲームボリュームが多い。これ自体はむしろ評価点でもあるのだが…。
    • その上に今作は評価制が存在するため、高評価を目指すために同じステージをリプレイしたいシチュエーションも十分考えられる。
    • さらに悪いことに本作のセーブデータ使用容量は1つにつき2ブロックであり、標準の15ブロックのメモリーカードでは7つまでしかセーブできない。複数ミッションや分岐などを完全に度外視して各ステージ開始時のデータを残すと仮定しても3枚もメモリーカードが必要になってしまう。
    • 後に発売されたファンディスク『英雄の軌跡』に前作及び本作のシーン別のセーブデータが収録されていたのはこのような事情も考えてのことだと思われる(『英雄の軌跡』の詳細は前作記事の「余談」の項を参照)。
    • 一応、当時のSLGでステージ選択が出来ないこと自体はありふれた仕様でもあることは付記しておく。
  • 一部削除されてしまった演出がある
    • 本作では手動砲撃が削除されたため、ヤマトの各種武装の発射シーンも併せて削除されている。
    • 冗長な要素ではあったが再現度自体は高く、スキップも可能だったため惜しまれるところである。
  • エンディング関連
    + ネタバレを含むので格納
  • 2つあるエンディングのうち、劇場版『さらば』準拠のエンディングにたどり着いた場合、原作のエンディングテーマだった『ヤマトより愛をこめて』が流れるのだが、歌なしのインストバージョンとなってしまっている
    • もう片方の『ヤマト2』エンディングの方では同作のエンディングテーマ『テレサよ永遠に』がちゃんと歌付きで流れる。
      公式設定資料集の記述によると『ヤマト2』が正史エンドであるため、こちら側のみを歌付きにしたかのように記述されている。
    • しかし、実際は『ヤマトより愛をこめて』の歌手の沢田研二がポリドール・レコード所属であったため、版権問題でオリジナル音源を使用できなかった模様。『宇宙戦艦ヤマト』関連の音楽は基本的に日本コロムビアが版権を持っているのだが、この曲は例外だったのである。
      • 本作発売時点では、日本コロムビアから発売された『宇宙戦艦ヤマト』関連のレコードやCDなどにオリジナルの沢田研二歌唱の『ヤマトより愛をこめて』が収録されたことは1度もなかった。シリーズでも人気の高い『さらば』であるが、それでもアルバムに主題歌が収録出来ないほどには根が深い問題だったようである。
      • 一応楽曲自体の版権まで握られていたわけではないようで、過去にささきいさお氏がカヴァーしたバージョンが日本コロムビアから出たこともあるのだが、やはり沢田氏の歌唱とは全くタイプが異なるため、そちらを起用することも難しかったものと思われる。

総評

前作のゲーム的な問題点をほぼ解決し、1本のSLGとしても十分な完成度を誇る作品となった。
そして開発者からの原作「愛」は本作でも極めて徹底されており、CD-ROM3枚をフル活用したフルボイス化、似て非なる2つの作品をマルチエンディングという形で両方漏らさず収録するなど、可能な限りの原作再現を行っている。
PSのキャラゲーでも指折りの完成度であり、原作ファンであれば大いにプレイする価値がある作品である。

余談

  • 本作の後、2004年10月6日に続編として『宇宙戦艦ヤマト イスカンダルへの追憶』(PS2)が発売され、その後『宇宙戦艦ヤマト 暗黒星団帝国の逆襲』(2005.01.27発売)、『宇宙戦艦ヤマト 二重銀河の崩壊』(2005.04.07発売)が続々と発売された。これらは公式に『暗黒星団帝国三部作』と称される。
    実に4年以上の間が空いての発売となってしまったが、表向きは『宇宙戦艦ヤマト』30周年作品として発売されたためとされている。実際はここまで発売が延びた理由は、『宇宙戦艦ヤマト』シリーズを巡る裁判に振り回されたためである模様。
    • この裁判が直接本作に関わった内容として、西崎氏側が本作及び前作の販売中止を提訴内容に含んでいたことが挙げられる(2001年に請求棄却)。このことが次回作以降の発売にも影響してしまったようである。
+ 松本氏と西崎プロデューサーと東北新社の三者の裁判に振り回されたゲームシリーズ
  • 実は『イスカンダルへの追憶』の開発は順調に進んでおり、2001年の東京ゲームショウに映像出展された記録が当時のアーカイブに残っている
  • しかしこの頃には原作のプロデューサーであった西崎義展氏と総設定・デザイン担当であった松本零士氏との間での『宇宙戦艦ヤマト』の「原作者」を巡る裁判が発生しており、2003年頃にようやく松本氏の敗訴という形で和解が成立したと思ったら今度は「著作権者」として東北新社が間に割って入る形になるなど泥沼化の様相を呈していた。
  • この権利問題に振り回されたのが本シリーズであり、2001年末頃に当時の公式サイトの「ゲーム制作班」のページが事実上閉鎖。以降情報がほとんど発信されなくなり、開発は事実上頓挫したのではないかと言われていた。
  • その後、2004年春頃になって当時の2chのスレッドに「スタッフを名乗る人物」が複数登場、同作におけるストーリーの改変点などや、ゲーム自体は既にほぼ完成しているにもかかわらず裁判の影響で発売が無期限延期となっていることを暴露し、その内情が明らかになった。
  • その後、ようやく発売された『暗黒星団帝国三部作』の内容は上記の暴露内容とほぼ一致していることが判明。無事発売にこぎつけたことは救いであるが、つくづく関連裁判に振り回されたシリーズとなってしまった。
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最終更新:2023年11月14日 22:56

*1 ワンカットのみ異なり、原作において都市帝国からの砲撃だったカットはヤマトがデスラー艦へ強行接舷するカットに差し替えられている。

*2 このガミラス人の呼吸に関する問題は原作『宇宙戦艦ヤマト』の全26話の中ですら矛盾する描写があり、シリーズ通しての大きな矛盾点と言われている。