定吉七番 秀吉の黄金

【さだきちせぶん ひでよしのおうごん】

ジャンル アドベンチャー
対応機種 PCエンジン
メディア 2MbitHuカード
発売元 ハドソン
開発元 ソフィックス
発売日 1988年11月18日
定価 4,900円
プレイ人数 1人
判定 なし
ポイント 関西弁が飛び交う独特の世界観

概要

PCエンジン初期にリリースされた、コマンド選択型のテキストアドベンチャー。
原作は東郷隆による小説『定吉七番』シリーズで、今作『秀吉の黄金』はゲーム化を前提に書かれた一編である。小説で挿絵を担当する安永航一郎が、ゲームでもキャラクターデザインを担当している。
原作同様、大阪が舞台となっており、登場人物の多くが関西弁を喋ったり、コマンドにも「わらかす」や「どつく」といった選択肢があるのが大きな特徴である。

あらすじ

(オープニングより)

定吉七番は、大阪商工会議所の工作員として、敵の秘密結社NATTO(ナットー)と戦う、殺人許可証を持つ丁稚である。
ある日、大阪城の石垣から、秀吉公が隠した黄金の在り処を記したと見られる古文書が発見された。
ところがどっこい発見された古文書が敵のNATTOによって盗まれてしまったのである。そこで連絡を受けた定吉七番は、会所へと向かったのだった。

ゲーム内容

  • プレイヤーは主人公の定吉七番となり、仲間とともに敵勢力であるNATTOのメンバーと戦いながら、古文書を取り戻し秀吉の黄金の謎を解き明かすのが目的となる。
  • 全8章からなるシナリオが展開され、大阪から東京・六本木、特急列車内、長野県・松本へと舞台は展開していく。
  • 各シナリオの終了後にはパスワードが表記され、タイトル画面の「おなじみ」でパスワードを入力することにより、次章の開始時点から再開ができる。
  • 基本コマンドは12種類。場面を問わずコマンド選択をすれば、なんらかのテキストが表示されるようになっている。敵との戦闘など、イベントによっては特別なコマンドが表示される場合もある。
  • シナリオ展開は一本道で、分岐などは存在しない。いくつかの箇所では、コマンド選択によってゲームオーバーとなることもある。
+ 登場人物
  • 定吉七番
    • 本名・安井友和。表向きは会所の丁稚として働いているが、裏ではスパイ・暗殺者としてその能力を発揮しており「世界で最も危険な丁稚」とされている。
      短く刈り上げた髪型、着物に前垂れ、ハンチング帽という装い。後頭部に十円ハゲがある。
      武器として柳刃包丁を持ち歩いている。
  • 御隠居
    • 会所の大番頭。定吉に秀吉の黄金の謎を解き明かすよう指令を下す。
  • 雁之助
    • 会所の小番頭で、裏では情報屋の顔を持つ。定吉に具体的なアドバイスを送ったり、役立つアイテムを提供したりする。
  • カネコさん
    • 本名・万田金子。会所の秘書で受付にいる。身長166cm•B86•W58•H90の豊満な肉体を持つ美人。
  • カマやん
    • 会所の工作員。日雇い労働者として土木作業に従事する穴掘りのプロ。普段は通天閣のビリケンさんの前で寝ている。お酒が大好物で笑い上戸。
  • キクちゃん
    • いつも着物を着ている美人の女性工作員。普段はブティックでマヌカンをしている。遊びのプロという謎の肩書きを持つ。趣味はお守り集め。
  • キョウジュ
    • 会所の工作員で暗号解読のプロ。古文書の謎について調査しており、シナリオ後半ではNATTOから命を狙われる。会所近くの喫茶店で新聞を読んでいることが多い。カマやんと仲が良い。
  • サイフどん
    • 会所の工作員。普段は梅田で呉服問屋「おうみや」を経営する金勘定のプロ。ソロバンを武器にしたり、時にはスケボー代わりにしたりする。カエルを飼っており溺愛している。
  • トラノスケ
    • 常に白と黒の縦縞の帽子とハッピを着ている会所の工作員で、応援のプロ。キクちゃんに想いを寄せるが、当人からは好かれていない模様。
  • マスやん
    • 情報と漫才のプロ。会所の工作員で、普段は「ハナテンノマスオ」という芸名の漫才師。テレビにも出演している。派手な背広に蝶ネクタイという、いかにも芸人といった格好をしている。

評価点

  • 大阪ならではの独特の雰囲気
    • 大阪をメインの舞台にしているだけあって、主要人物や通行人はほとんどが関西弁を喋るほか、コマンドにも関西弁が表記される(トップメニューも「おはつ」と「おなじみ」)など、他のテキストアドベンチャーには無い独自性がある。
    • 移動ポイントも御堂筋に始まり、くいだおれ横丁や通天閣、梅田など実在のスポットを抑えており、ゲームの世界観作りに貢献している。
  • ファミコンとの差分化
    • PCエンジン初期のゲームにありがちな、ファミコンとの性能差を誇示するかのような点が目立つ。
    • コマンド部分こそ、かなと英数字の表記だが、テキスト部分は大きい文字で漢字も多用されており、それまでのファミコンのテキストアドベンチャーとは一線を画している。
    • 街のグラフィックも発色がファミコンに比べてくっきりしているほか、BGMの音数も多く、PCエンジン初期のゲームとしては性能を存分に発揮している。
  • バラエティに富んだシナリオ
    • 基本的に大阪ならではのコテコテのノリを重視しているため、シリアスな展開もあるが全体的にはコメディ要素が強い。
    • 主要な登場人物も大阪ならではの個性的なキャラクターばかり。原作がシリーズ小説という事もあり、キャラクターの設定がしっかりしているため、物語が破綻することなく楽しめる。
      • 原作自体が「007」シリーズのオマージュであり、敵勢力のスローガンも「全関西人の食卓に納豆(NATTO)を!」という何とも荒唐無稽なものであるなど、元々のコメディ要素がそのまま表現されているという点もある。
    • ストーリーの中盤では、列車内を移動した謎解きがあったり、後半では(この頃のテキストアドベンチャーにはありがちな)ダンジョンを移動する展開があったり、敵工作員との戦闘では特殊なコマンドが出現したりと、シナリオがバラエティに富んでおり、プレイヤーを飽きさせないように工夫されている。

賛否両論点

  • 基本コマンド数が多い
    • 基本コマンド数が多いため、各場面においてはシナリオ進行と関係のないコマンドが複数存在するが、それらのコマンドを選択しても、大抵なんらかのリアクションがある。
      • とりあえず街にいる通行人に「わらかす」や「ほめる」「どつく」などするだけでも、ちゃんとテキストが返ってくるなど、シナリオが作り込まれている。
      • しかし、その多さゆえに正解の選択肢にたどり着くまでには非常に手間がかかる。当時のテキストアドベンチャーにありがちな、コマンド総当たりでの攻略が求められるかと思うが、後述の問題点のために、ただ総当たりをするだけでは正解にはたどり着けず、一筋縄ではいかなくなっている。
  • やや強引な謎解き要素
    • バラエティに富んだシナリオに対して、謎解きの中には少々強引ともいえる要素が目立つ。
    • 中には何気ないテキストが実はフラグとなっていたり、章の序盤で出たキーワードが後半でしっかりと活用されたり、ヒントに対していくつかの要素を繋ぎ合わせることで謎が解けるなど良質な展開もあるが……。
    • テキスト内に無理やりフラグを立てるような違和感があったり、ヒントが中途半端すぎて攻略法無しではなかなか解けない(それにしては解けてもスッキリしない)展開も存在する。

問題点

  • フラグ立てが難しい
    • 前述の強引な謎解き要素とコマンド数の多さから、シナリオを進めるにあたってのフラグを立てるのはかなり難しく、攻略には基本的にコマンド総当たりが求められることになる。
    • 常識では考えづらい選択肢が正解であることも多いため、前述の強引なテキストと相まってフラグ立ての困難さを増している。
      • 元々がやや荒唐無稽なストーリーなので、さほど違和感を感じさせない雰囲気ではあるが……。
    • 同じ選択肢を何度も繰り返すことでフラグが立つ場面がいくつもあるため、単なるコマンド総当たりではなく、同じ選択肢を複数回試す必要があるなど、フラグ立ての困難さにさらに拍車をかけてしまっている。
      • ここでさらに問題となるのが、正解にたどり着く前にその場所から移動をしてしまうと、設定がリセットされてしまうために、正解するにはもう一度同じ選択肢を繰り返さないといけない点。
        そのため、今やっている選択肢が正しいのか間違っているのかが非常に分かり辛く、コマンド総当たりだけでは解けない難易度となってしまっている。
+ 特に難易度の高いポイント・ネタバレあり
  • 7章の中盤
    • 通天閣でのカマやんを巡る展開。寝ながらお尻をかいているカマやんの下にある袋を取り出すために、まさか「ミニくまで」を使うとはお釈迦様でも分かるまい。一旦、落ち着いたとしてもそこでもう一工夫する必要があり、非常に難易度が高い。キョウジュの暗号ヒントもいまいち分かりづらい。
  • シナリオ自体は一本道のため、基本的に手詰まりになる事はない(敵との戦闘などでは選択肢によってゲームオーバーになる事はある)が、正解までの導線が複雑かつ強引な場面が多く、攻略法なしでの謎解きは非常に難しい。

総評

コマンド選択型のテキストアドベンチャーとしては、舞台設定やキャラクター、シナリオ面などを総合的に見て程よくまとまっているように感じるが、謎解き要素やフラグ立てといった肝心な部分の難易度が理不尽に高い箇所が複数あるほか、やや強引なコマンド選択も散見される。
ハードルは低く感じるが、ノーヒントでの攻略にはかなりの根気が求められるので、残念ながら万人受けするゲームとは言い難い。

余談

  • 本作の発売にあたりハドソンが『定吉七番』を商標登録したが、そのために原作者が続編を出せない事態になってしまったというエピソードがある。ただし、現在は解消され原作の続編も刊行されている。
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最終更新:2020年10月05日 23:03