深夜廻

【しんよまわり】

ジャンル 夜道探索アクション

対応機種 プレイステーション・ヴィータ
プレイステーション4
Windows 7/8.1/10
発売・開発元 日本一ソフトウェア
発売日 【PSV/PS4】2017年8月24日
【Win】2017年10月25日
定価 【PSV】
 通常版:5,980円(税抜)
 限定版:7,980円(税抜)
【PS4】
 通常版:6,980円(税抜)
 限定版:8,980円(税抜)
【Win】
 通常版:6,090円 → 2,000円
レーティング CERO:C(15才以上対象)
判定 良作
夜廻シリーズ
夜廻 / 深夜廻 / 夜廻三



あなたをさらいに夜がくる



ストーリー

夏休みが終わるころ。
ふたりの少女は裏山へ、花火を見に出かけました。

しかし、夜が更けるにつれ、帰り道がわからなくなってしまいます。
繋いでいた手を離した際に、ふたりははぐれてしまいました。

ふたりの少女は何者かが潜む不気味な夜の街を、
お互いを探して、勇気を振り絞って冒険します。
(公式サイトより)

概要

幼い頃に誰もが感じた「夜の怖さ」をコンセプトとした『夜廻』シリーズの第二弾。
本作は主人公が二人となっており、はぐれてしまった親友二人が互いを探して夜の街を奔走する事になる。


特徴

  • 二人の主人公
    • 本作は「ユイ」と「ハル」の二人を交互に操作していくシステム。山ではぐれてしまった親友同士の二人が無事に出会い、家に帰るのが最終目的となる。
      • シナリオ上で強制的に操作キャラが変わり、二人の視点で物語が進んでいくというものであり、二人を任意で切り替えてパズルを解いていくといったものではない。
    • この視点切り替えにはいったいどういう意味があるのかは…実際にゲームを最後までプレイして確かめていただきたい。
  • アクションの変化
    • 前作のアクションに加え「大きな物を押して動かす」「小さな物を持ち上げて移動させる」というアクションが追加されている。
      • これらの動作中は懐中電灯も切れてしまうため注意が必要。
    • 使用できるアイテムも、飛距離が長く使いやすい「かみひこうき」、その場で隠れられる「ゴミぶくろ」など少しだが増量。
      • 一方で砂山を掘る「スコップ」は削除されている。
  • おまもり
    • 今回は「おまもり」という装備品を身に着けられる。これらはストーリーを進めたりサブイベントをこなしていくことで入手できる。
    • お守りごとに異なる効果があり、自宅で付け替える事が出来る。

評価点

  • 夜を歩く恐ろしさ
    • 宵闇の中をわずかな街灯と懐中電灯だけで恐る恐る進んでいく心細さと恐怖は、前作と変わらず良くできている。
      • どこかノスタルジックながらも不安を感じさせる夜の街並みと、かわいらしい絵柄と目線で描かれる主人公たちとのギャップも独特の雰囲気を産んでいる。
    • グラフィックも良く見ると少し描き込みが増えている。アニメ塗りだった前作の主人公と見比べてみると分かりやすい。
      • また、ゲームオーバー時の演出も増加。敵の攻撃方法に応じて表現が変化するようになっている。
    • 楽曲と呼べるものがほとんど無く、BGMのほとんどが環境音なのも前回と同じく。ちょっとした事で鳴り響く心臓音、不安をあおるギシギシ音などは雰囲気の演出に効果を上げている。
      • ほぼ唯一と言えるのはPVやエンディングで使われている一曲。静かに夜の不安を表現したような前作の曲とは違い、今回は夜の静けさに哀愁を感じさせる曲調になっているが、本作のエンディングに非常にマッチしており好評。
    • 前作で便利だったお地蔵さまワープも続投。広大なマップを不必要に歩き回らずに済む。
  • ボリューム増加
    • 新しい街は前作より倍近く広く、シナリオクリアの所要時間・探索要素共に増加している。
      • またほぼ屋外での探索だった前作だが、今作では屋内のマップなどロケーションのバリエーションも増えている。
    • 収集要素も健在で、主人公の子供らしい視線でちょっとしたコメントが添えられていたり、一部のアイテムは部屋に飾れたりする。
      • これらのコレクションアイテムやサブイベントの数も前作より増加している。
  • シナリオ
    • あっさり気味だった前作と比べてストーリー性が増している。
      • 主人公であるユイとハルの掘り下げもしっかり行われており、二人のかけがえのない友情が描かれるさまは評価が高い。
      • またさりげない伏線、シナリオを読み直す事で気付けるような要素なども多く、そういった情報の出し方も巧妙にできている。
    • 要所で重大な決断を迫られるユイとハルだが、そういった場面でもイベントの自動進行で済ませるのではなく、操作や選択をプレイヤーに委ねる事で驚きや没入感を上手く演出している。
      • 特にとある「プレイヤー心理の盲点を突いたギミック」は非常に高く評価されている。詳細は省くが、プレイすれば間違いなく何の事かが分かるだろう。
    • また本作のあるテーマ性に関する描写も好評。
      + ネタバレ注意
    • 終盤まで進めると自ずと分かって来る事だが、本作のシナリオは「縁」をテーマとして作られている。
      • 良縁や悪縁、縁を失う不安や失うまいと繋ぎ続ける様、あるいは結ばれる事や断つ事など縁にまつわる様々が、ある時はそれとなく、ある時は明確に描かれており、考察のし甲斐もありつつ一貫性のあるシナリオとして評価が高い。
    • 前作とのストーリー的な繋がりは無いと思っても差支えない。前作をプレイした事が無くとも問題なく理解できるシナリオになっている。
      • ただし、前作を知っていると嬉しい要素もいろいろと存在する。
  • バランス調整
    • 初見では何をしたらいいのか良く分からず、とりあえず死んで覚える…というような部分もあった前作だが、本作ではあまり理不尽な初見殺しは多少減っている。
    • 操作キャラのスタミナの減少スピードが遅くなっており、前作よりも走りやすくなった。
    • 調べられるオブジェクトに対し、アクションが起こせる程度にまで近づいた時のマーカーの種類が増えた。
    • お化けの出現パターンが増えている。前作ではだいたい同じ場所には決まったお化けが設置されていたが、本作では訪れるたびに出現するお化けが変化するようになっており、見飽きない工夫がされている。

賛否両論

  • シナリオのとある要素
    + ネタバレ注意
  • 少女たちをつけ狙う悪意は前作にも増して容赦がなく、何の罪もないユイとハルは身勝手で残酷な存在に振り回された挙句、最後には大切なものを失ってしまう。
    • とは言え決してただ惨い目に遭わされるだけの物語ではなく、先述したように一貫したテーマに沿って巧みに作られており、互いを思い合う事の美しさ、恐怖に立ち向かい歩き出す強さといった描写にきちんと活かされている。
      • しかし、あまりに救いがない事には違いない。これはこれで(むしろこの展開だからこそ)完成された物語なのだが、それでも「ハッピーエンドがあって欲しかった」と望む声は多い。
      • 二人の健気な気持ちがしっかりと描写されているだけに、彼女たちに感情移入してしまうと余計そのように思えてくるだろう。
  • そこまで大きく変わっていないゲーム性
    • 前作に引き続き、恐怖の演出のためか操作キャラの動きがそこまで速くないなど、もどかしさを感じる調整になっている。
      • 見通しの悪い闇の中を探る不安感も健在ではあるが、攻略が手探りになりやすいぶん恐怖を覚えるホラーゲーと言うよりは死んで覚える死にゲーにもなりやすい。
      • お化けの出現パターンが増えた事でマンネリ感は減少してはいるが、「一触即発のお化けたちを掻い潜る」というゲーム性自体は変わっていないため、やはりホラーゲームとしての驚きよりは神経を集中させるアクションゲームといった感覚になりがち。
      • バランスがマイルドになったとはいえ、ボス戦などはしっかり対処法を覚えないと攻略が難しいものも。相変わらず理不尽な攻撃を仕掛けてくるお化けも一部だがまだ存在する。
  • 相変わらず石投げなどはそこまで重要ではない
    • 投げられるアイテムは増えたが、どれも使わなくとも何とかなる場面も多い。
      • もちろん使っても便利なので、攻略に変化をつけるために必要な要素でもあるし、使っても使わなくても攻略できる丁度いい調整とも言えるが、所持数制限があるだけに使わなくても済む石がマップ中に大量に落ちているのは邪魔にも感じやすい。
    • ただし、前作と比べるとアイテムを使ったほうが楽な場面は増えている。
      • 例えば「凶暴なお化け」は足が速いためむしろアイテムで気を引かなければ逃げ切るのが難しく、「化け犬」などは投げたアイテムをくわえてどこかへ走り去るため通り道からの排除が可能、等。
  • セーブの仕様変更
    • 前作ではセーブできるのは自宅のみ、お地蔵様はチェックポイントを作るだけで電源を落とすと消えてしまう、という仕様だったが、本作では自宅でもお地蔵様でもセーブが可能になっている。
      • またセーブポイントとして「電話」も新しく設置されており、セーブポイントが多くなったことでゲームの中断がしやすくなっている。
    • 一方で、セーブするのに家に戻る必要がなくなったためか「おうちワープ」が削除されている。おうちワープが無くてどうしても困るという場面も無いが、便利機能であっただけに残念ではある。

問題点

  • 前作の問題点は一部そのまま
    • 遠くから何かオブジェクトを発見した時に出るアイコンが「?」マークのみなのは前作から据え置き。
      • 暗闇の探索ゆえに近くまで行かないと判別できないのかも知れないが、隠れるポイントなどは大きいものが多いため、遠くからでも分かってもいいのではないだろうか…。
    • 分かりづらい・遭遇しづらいランダム要素なども一部ある。やはりただのランダム要素を引くために何度も同じ場所へ通わなくてはいけない点はそれなりに面倒。
  • ボリュームは増えたとはいえそこまでではない
    • ストーリークリアまでに10時間前後、探索や収集要素をやり込んでもせいぜい20時間で、よっぽどこの世界観をブラブラするのが好きでもなければそれ以上は難しい。
      • その割にフルプライスなので割高感は感じやすい。
  • おまもり
    • 「少し長く走れるようになる」効果のあるお守り「ぬいぐるみのみぎうで」だが、検証の結果伸び幅はたったの2%程度。装備する意味がほぼ無い。
      • しかも「スタミナ回復速度が早くなる」効果の「ナマズのヒゲ」というお守りも存在するため、完全にこっちに食われている。調整ミスなのだろうか。
    • 「ちゃいろのこいぬ」は前作にも登場した「よまわりさん」を避ける隠し効果があるのだが、作中で説明が無い。「よまわりさん」にさらわれなければ行けない場所もあるため隠し効果の説明は欲しかったところ。

総評

「夜を歩く恐怖」を扱った『夜廻』の2作目としてあらゆる面で順当にパワーアップした本作。
夜の不安を煽る演出も増強されているが、人によっては相変わらずホラーよりアクションのほうに集中してしまいがちという点は少々残念である。
しかし、美しくも寂しさを感じさせるシナリオは完成度が高く、プレイした人間の心を大きく揺さぶる作品となっている。
ボリュームに対する値段が最大のネックではあるが、それだけで敬遠せず本作の世界に浸ってみてはどうだろうか。


余談

  • 2018年6月18日に小説版『深夜廻』が発売された。
    • ゲームでは軽く触れられるだけだった設定にも深く踏み込んでおり、前作に引き続きノベライズ作品として好評。
  • 2018年10月15日にはSwitchに2作品をカップリングした移植版『夜廻と深夜廻 for Nintendo Switch』が発売された。追加要素は特になく、2作とも単純移植となっている。
    • ただし、ソフト一本分の価格で2作ともが遊べるため、結果的に「値段に対するボリュームが少なめ」という難点が軽減されている。
  • 2020年6月2日にSteam版が2,000円に価格改定された。

その後の展開

  • 2022年4月21日にシリーズ最新作『夜廻三』がPS4/Switchで発売された。シリーズ初となる主人公のキャラクタークリエイトが実装されている。
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  • 日本一ソフトウェア

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最終更新:2023年12月01日 16:16