シムアース

【しむあーす】

ジャンル ライフシミュレーション
対応機種 IBM PC
PC-9801
Windows 3.x
FM TOWNS
スーパーファミコン
PCエンジン
メガCD
発売元 【PC】マクシス
【PC98/SFC】イマジニア
【PCE】ハドソン
【MCD】セガ・エンタープライゼス
開発元 【PC/PCE/MCD】マクシス
【SFC】トムキャットシステム
発売日 【PC98】1991年9月6日
【SFC】1991年12月29日
【PCE】1993年1月14日
【MCD】1993年3月12日
定価 【PC98】12,800円
【SFC】9,800円
【PCE】6,800円
【MCD】7,800円
プレイ人数 1人
セーブデータ 1個
判定 良作
ポイント 生命40億年の歴史をたどれる壮大なスケール
リアリティのある惑星の変遷
システムはやや難解
シムシティシリーズ


概要

シムシティー』の流れを汲む、シムシリーズ第2弾。本格的な星作りシミュレーションゲーム。
オリジナルのPC版が発売された後、SFC・PCエンジン・メガCDに移植された。

以下ではSFC版の内容を基に記述していく。


特徴

  • プレイヤーは「ガイアナイザ」と呼ばれる神の立場になり、生まれたての星を管理する。
    • 大気の成分、日光と雨の量、陸と海のバランス、生物の進化スピードなどを管理し、生命が快適に棲める環境を作りあげていく。
    • 生物や文明を配置したり、酸素や雨などを発生させる「テラフォーマー」で環境を整えたりすることが出来る。
    • ほぼすべての行動で「Ω(オメガ)」と呼ばれるエネルギーをリソースとして消費する。Ωは時間経過で少しずつ回復する。
      • 上位の生物や高度な文明ほど、配置に多くのΩを要する。 「調査」で地形の情報を見たり、繁殖スピードなどの調整をする「コントロールパネル」を開いたりするだけでもΩは減る。
      • 生物はプレイヤーが配置しなくても、適切な環境だと自然発生したり、高位の生物に自力で突然変異したりすることがある。
  • 遊べるモードは以下の3つ。

シナリオ

  • メインとなるモード。様々な環境の星で、提示された課題(期間内に生命人口を一定以上にする)をクリアしていく。
    • 課題をクリアすると次の星へ進める。全8種のシナリオをクリアするとED。以降は8つのシナリオを自由に再プレイ出来る。

ランダムプラネット

  • いわゆるフリーモード。目標やEDはなく、一から自由に生態系を作っていける。
    • このモードのみ難易度設定がある。「むせいげん」「やさしい」「ふつう」「むずかしい」の4段階。
      • 「むせいげん」ではΩを一切気にせず育成が可能。最難の「むずかしい」を選ぶと、生物が自然発生や突然変異をしなくなるため、より適切な生物配置とΩ管理が必要となる。

デイジーワールド

  • 「ガイア理論*1」 に基づいた架空の惑星をシミュレートするモード。
    • 生命はデイジーの花以外に存在しない。デイジーは気温によって花の色を変化させていく。

評価点

壮大なスケール

  • 一つの都市が舞台だった『シムシティー』から一転、星全体にまで舞台が広がった。
    • 生命の誕生、陸への進出、文明の獲得…といった、数十億年に渡る進化の過程を目の当たりに出来る。カンブリア紀→ジュラ紀→新世代へと連綿と続く、遥かな古代ロマンを感じられる。
  • 「酸素や二酸化炭素の濃度を調整し、最適な気温や降水量を維持する」「浅瀬を広げ、海洋生物を陸上生物に進化させる」など、本格的な生態系構築シミュレーションの域に達しており、プレイヤーは文字通りの「神」になれる。
    • その気になれば、特定の生物種が知性を持つようにプレイヤー自身が操作して誘導したり、 逆に進化させず原始生物だけがのどかに暮らす星にすることも出来る。自分の手で生態系を操作していく快感を得られる。
  • 最終的にナノテクロジーやテレポーテーションまでも実用化させた、覇権生物の科学技術は現実のものを遥かに越える。 そして「極限まで進化した知的生物が、別の星を求めて旅立っていく」というSF的な壮大な展開を見せる。
    • ランダムプラネットの場合、生物が旅立った後はまた別の生物に知性を持たせることが出来、ほぼ永遠に遊び続けられる。*2

リアリティ溢れる星の発展

  • 「隕石で大量の生物が絶滅」「温暖化により各地で砂漠化が進行」「文明の発展により戦争・公害・疫病が蔓延」など現実に則した問題が発生し、リアリティがある。
    • 刻一刻と変化していく状況を見極めて、大気や文明のエネルギー配分などを調整しなければならず、適度な緊張感がある。
      • 石油を使い過ぎると公害が発生しやすい、哲学に注力すると戦争が起きにくくなる、といった原因と対策の関連性もリアル。
  • 生物のグラフィックは1マスごとにアイコンが表示される簡易的なものだが、同種の生物でも進化する毎にグラフィックが変化していき、芸が細かい。
    • 次々と高位のグラフィックに変わっていったり、世界規模の広範囲に生息圏を広げていったりするのを見るのは充足感がある。
  • 一方で「現代まで生き続ける恐竜」「文明を持ち、星の覇者となる昆虫」といった、現実では成し得なかったifの歴史を紡ぐことも可能。自分の理想の惑星を生み出せるロマンがある。

要所で挟まれる一枚絵

  • マップ画面では簡素なアイコン表示に留まるが、OPでまだマグマの塊でしかない地球が映し出されるシーン、シナリオで人類が宇宙を渡り別の星に移住していくシーン等では、緻密に書き込まれた美麗なドットの一枚絵が表示される。 本作のスケールの大きい世界観を表現するのに一役買っている。
    • OPでは星の成り立ちや生物の進化についての解説文も挿入され、生命史入門としても読み応えがある。
    • 今まで登場した生物達が一堂に会するEDイラストも、「同じ星に生きる仲間」としての一面を強調しておりなかなかに感慨深い。

美しいBGM

  • シナリオモードでは、8つの星にすべて異なるBGMが用意されている。 しかもそのいずれもそれぞれの星の特色を表現したものになっており、完成度が高い。
    • 中でも過酷な環境を感じさせる「金星」、未来感の溢れる「地球未来」といったBGMは人気がある。
    • サウンドルームも搭載されており、質の高い楽曲を心行くまで味わえる。

賛否両論点

Ωの管理の難しさ

  • テラフォーマーや上位生物を使うと大量のΩを消費するため、何も出来なくなりただ見ているだけの「待ち」の時間が発生しやすい。 『シムシティー』の銀行のようなΩの前借りシステム等もなく、純粋に自然回復を待つことしかできない。
    • ただ前作にも言えることだが、『シムシティシリーズ』自体が「見守りシミュレーター」としての側面も強く、元々常に操作し続けるゲームではないことは念頭に置いておきたい。生物が自力で進化していくのを眺めるだけでもそれはそれで楽しさはある。
    • 収入が税金に依存していた『シムシティー』と異なり回復量は一定なので、前作に比べれば管理しやすくはなっている。

ガイア君が役立たず

  • 『シムシティー』の「Dr.ライト」に相当するアドバイザーとして「ガイア君」が存在するが、彼のアドバイスは的外れなものが多く、ほぼ役に立たない。
    • 公害が大量に発生しているのに「問題は特に無いみたい」と断言したり、難関ステージで特にアドバイスが欲しい火星や金星のシナリオでは「生命が誕生するまで眠らせて」と職務放棄したりする。
    • 一応、硬派すぎて無味乾燥になりがちな本作に潤いを与える、マスコットキャラの役割はある程度果たしてはいる。 Dr.ライトにも言えるが「有用なお助けキャラ」というよりは、「プレイヤーの孤独感を薄れさせる賑やかし要員」としての役割が大きいのかもしれない。

問題点

システムの複雑さ

  • コマンドの種類が多いにもかかわらず、ゲーム中で説明はほとんどされない。 説明書の記述も充分とは言えず、説明書が無い場合は理解はさらに困難を極める。
    • 試しにコマンドを使って覚えようとしても効果が微細だったり、効果が現れるまでに時間がかかったりするので、 自力で全容を把握するのはかなり難しい。
      • 極めつきに使ってもほとんど効果が現れないコマンドさえもあるので厄介。
  • 「草原では生物が繁殖しづらい」「モノリス(生物に文明を持たせるテラフォーマー)の詳細な効果」といった、重要な要素についてまったく説明が無い。
    • しかも草原は、植物の中でも非常に発生しやすいというおまけ付き。
  • 「窒素の割合を高めておくことの重要性」「バイオ工場の有用性」などが説明書にまことしやかに書いてあるが、ほぼ嘘である。*3草原に至っては「陸上の生物が快適に暮らせる場所です」とさも良環境のように書かれている。
  • これ以外でもパッと見では到底気付かない仕様や、マスクデータ(可視化されていない情報)が大量にある。

シナリオモードの問題点

  • 上記のシステム理解の難解さもあり、後半のシナリオは正攻法でクリアしようとするとかなり苦労する。
    • 一方で必勝法も確立されており、「雨 or 酸素のテラフォーマーで適度な気温にし、針葉樹 or 広葉樹を繁殖させた後、文明を配置して放置」でほぼすべての課題がクリア可能。
      • 説明書には「火星ではまず海を作りましょう」などと書かれているが、そんな必要はまったく無い。
      • この方法を使うと今度はあっという間に8シナリオが終わり、あっさりEDに到達できてしまう。
  • 『シムシティー』にもあった「プレゼント」がシナリオモードのみ搭載されているが、ほとんど無意味なプレゼントや使うと逆に不利になるプレゼントが大半。
    • 有用なのは1番目の「水の惑星」で貰えるプレゼント(エネルギーを500Ωもらえる、シムシティでいうと現金プレゼント)くらいであり、しかもこのシナリオはプレゼント無しでも簡単にクリア出来る。
  • 「どのシナリオもやることがあまり変わらない」「期限を迎えると強制終了し、続きをプレイ出来ない」といった、『シムシティー』でもあった問題点がそのまま引き継がれている。

セーブに時間がかかる

  • 約30秒弱とPS2並の長時間を要する。ロードも読み込み量が多いと時間がかかり、無限ロードになることもある。

バグ

  • 文明のエネルギー配分を調整しても、実際にゲーム中に反映されるまでにかなりのタイムラグがある。
    • 各シナリオ開始直後に、配分を調整することで回避自体は可能。
    • 哲学や医学に適度に振っておかないと、文明が生まれた直後に戦争や病気で滅亡してしまうため、バグに気付かないといつまで経っても文明が発展しないということにもなり得る。

総評

『シムシティー』のコツコツと積み上げていく楽しさをそのままに、スケール観を極限まで高めた作品。
前作に比べると見た目的にはかなり地味になった硬派シミュレーションで、システムの理解の困難さなどからもとっつきにくさは否めない。
しかし『シムシティー』に負けず劣らずの自由度があり、何より自身が神そのものになれるプレイ感覚は他のゲームでは味わえないもの。
46億年物語 はるかなるエデンへ』などの生命ロマンが好きな人であれば、是非触れてみて欲しい隠れた良作である。


余談

  • 2009年5月12日より、WiiのバーチャルコンソールにてPCエンジン版が配信されていた。
    • 2019年1月31日のWiiショッピングチャンネルのサービス終了に伴い、本作も配信終了した(既に購入済であれば再DLは可能)。
  • 植生のうち高温多湿環境で「ジャングル」は分かるが、なぜか降水量が少し減ると「ぬまち(沼地)」になる…逆では?。
  • 本作オリジナル生物の「トリクロデート」は、「はるかむかしに生きていた原始動物ですが、絶滅してしまい現在はいません。シムアースではかわいそうなので残しています」というあんまりなガイア君の解説文から、一部でコアな人気がある。
    • 意外にも繁殖力は高めで、知性の無さそうな見た目に反して文明を持つこともある。
    • 元ネタは太古の単純構造生物「トリブラキディウム」であるとされている。

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最終更新:2023年02月18日 00:45

*1 星そのものを一つの巨大な生命体とみなし、星と生物が相互に作用し合って環境を作り上げているとする仮説。

*2 100億年で太陽が寿命を迎えるためそこがプレイ限界となるが、そこまでプレイし続けるのは相当なやり込みである。

*3 窒素がほとんど無い惑星でも生物は問題なく進化していく。バイオ工場は、生物が根付きにくい草原を大量に発生させてしまう危険性がある。