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常識外の脅威 - (2014/04/12 (土) 23:09:18) の1つ前との変更点
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*Mobieむかしばなし
*第6弾 手負いのケダモノ
**<第3幕>常識外の脅威
&italic(){前回までのあらすじ}
&italic(){追われる身になってもなお、闘いに餓え続ける男、串田龍巳。}
&italic(){ある日彼はその身を癒すべく、セントウ違いの銭湯へと身を投じた。}
&italic(){しかし、彼をつけ狙う敵は無情にもふたりの刺客を差し向けていたのだった!}
&italic(){銭湯を破壊しつつ敵を蹴散らした串田。}
&italic(){だが敵は彼に入浴の余韻にひたる間をも与えようとはしなかった…!}
コツーン、コツーン。
街角にひびく杖の音。
コツーン、コツーン。
闘いに餓えし男、“Sword”串田龍巳。
黒服組織から追われの身となり、毎日が闘いの日々。
それでも、心の餓えを満たせぬ日々を過ごす男。
コツーン、コツーン。
生涯の宿敵との闘いで全身に傷を負った彼は、その若さに似合わぬ杖を用いて移動する。
コツーン、コツーン。
だが甘く見るなかれ、傷は負えどもその剣の鋭さは変わらない。
今夜もすでに、2名の追っ手と銭湯で遭遇したものの冷静に返り討ちにしたところだ。
コツーン、コツーン。
その音は風呂に向かう前と、何も変わらないものだった。
コツーン、コツーン。
ブルルルル、ブロロロロ…
その音の方向へ、ゆっくり向かうエンジン音。
新たな闘いが、彼の餓えを満たそうとしている…
コツーン、コツーン。ブロロロロ。
先を行く串田も既に気づいていた。何者かがつけてきている。
先ほどの黒服の連中の残りか?それとも、先日のあのフルフェイスか?
背後の様子を伺いながら、頭の中で考えが巡る。
その時だった。
バッ。
こうこうと照らされる路面。まばゆい光が串田を包む。
串田はまぶしさのあまり、左腕で顔を覆う。
どうやらクルマのヘッドライトがこちらを照らしているようだ。
誰だ?串田は運転席を凝視する。
…いない?そう、運転席には、誰もいない。
そこには、エンジンをかけたままの無人のクルマが一台、停まっていた。
先ほどからしていた気配はこいつか?
それにしてもおかしい。さっきまでこの場所にはこんなクルマはいなかったはず。
罠か?さっと周囲を警戒する串田。しかし、周囲には人の気配はない。
どういう事だ?
その時、串田の戸惑いをあざ笑うかのように声が響いた。
黒服T「ふっふっふ、久しぶりだな串田さんよォー」
ごごーん(SE)
声は、たしかにクルマから聞こえた。無人のクルマから。
どういう事だ?…串田は動揺する。
それを見透かすかのように、クルマから声が響いた。
黒服T「ふっふっふ、黒服T、トランスフォ…じゃなくて変形!」
ビゴゴゴゴゴ(例の変形SE)
オーマイガッ!なんという事か!
無人のクルマが轟音とともに、みるみるうちに姿を変えていく!
そして数秒後そこには、黒いスーツに身を包んだ男がひとり立っているではないか!
まるでテンコー・ヒキタも泡を吹くかのような、驚愕のイリュージョン!
だが手品でもなければ目の錯覚などではない!たしかにクルマが、人間へと変わったのだ!
クルマだった…男。彼には、串田は見覚えがあった。
彼こそ、黒服組織内でも最強の呼び名高い4人組、Big4のうちのひとり。
何の因果か生まれ持った才能でありとあらゆる物体に変形可能な、黒服Tである。
グレーのシャツの襟を正しながら、黒服Tは喋りだした。
黒服T「久しぶりだなぁー。串田さん。何年ぶりかねー?あんまり変わっていないようで何よりだよ」
ちらり、と銭湯の方向を見る黒服T。
黒服T「さっきはウチの連中が世話になったようだねェー。お楽しみいただけたかな?」
何も言わず、ただ黒服Tをにらみつける串田。
視線を動かさぬまま、ただ杖をひねる。「カチリ」と音がする。
黒服T「さてさて。本題なんだが…下っ端どもじゃなくて、直接俺が来たってことは…
アンタならどういう事か、分かるだろォー?」
彼の言うとおり、串田は理解していた。
雑魚ではなくトップクラスのBig4メンバーが、わざわざ出てきたという事。
それは即ち黒服組織からの最後のチャンス、ということである。
組織に戻れ。さもなくば、その場でもって、全力で貴様を殺す。
串田はニヤリ、と笑った。
好都合だ。チンケな連中を潰すよりも、骨のある連中とやりあえる。
串田の返答は決まっていた。
それを察してか、黒服Tもまたニヤついた。
黒服T「聞くまでもないみたいだなァー…変・形!ヘリコプター!」
ビゴゴゴゴゴ(例の変形SE)
そう叫ぶと彼はふたたび変形!こんどは米軍も使用している戦闘ヘリへと姿を変えた!
住宅街に突如として出現する、超低空飛行中のヘリコプター!
バラバラバラバラバラバラバラバラ(ヘリコプターSE)
吹きすさぶ風!耳をつんざくローター音!
質量だとか形だとか大きさだとかは関係ない!文字通りあらゆる物に変形できるのが黒服Tの能力なのだ!
黒服T「死にさらせーっ!」
ヘリのスピーカーから響き渡る黒服Tの声!そして放たれるはガドリング砲による弾丸の雨あられ!
危うし!串田龍巳!
ドドドドドドドド(ガドリング銃SE)
おお!なんという事か!
串田は飛んでくる雨のような銃弾の軌道を読み、紙一重でかわしている!
あの不自由な右足を抱える人間とは思えないほどに!
杖をうまく使い跳躍、回転しながら毎分6000発もの弾丸をかわし続けているのだ!
そう、その様はまさにニンジャ!現代のニンジャが如く!
遠い島国からやってきたニンジャにもかくあれと見習わせたいものである。ワザマエ!
黒服T「やってくれるじゃないの!」
ガショーン(メカー音SE)
ヘリコプターが今度は、ミサイルの照準を串田に合わせてきた!
串田は一瞬、周囲を見た。両脇はブロック塀に囲まれた住宅街である。
が、先にもお伝えしたとおり、この周囲一帯は外道対策で強化改築が施されている!
おそらくミサイルの爆発をも跳ね返すことであろう!
それがどういう意味をなすのか?串田は瞬時に理解した。
ここでミサイルが炸裂すると、爆発の衝撃が拡散せずそのまま自分に集中的に降りかかってくる!
一発、かする程度であっても何発もの直撃に匹敵するダメージは避けられない!
串田は舌打ちをすると、サーチライトに照らされたヘリの真正面へと
無謀にも姿を見せたのだった!
そして迷うことなく、杖の銃口をヘリの方へと向けたっ!
バババババッバッバババババ(マシンガンSE)
爆発2(SE)
大爆発!しかし、串田は無事である!
ミサイルが発射される直前に、マシンガンの一斉射撃でミサイルを爆破したのだ!
宇宙のヘビ、新宿のシティーに住むハンターばりの鮮やかな射撃!
風向きも幸いし、爆発はヘリコプターに変形した黒服Tを直撃!
煙が晴れた時には、スネ夫のラジコンのように変わり果てていることだろう!
だぁがぁっ!
ビゴゴゴゴゴ(例の変形SE)
黒服T「ハァーッハッハー!」
煙の中から出てきたのは、ガレキと化したヘリではなかった!
耐地雷・伏撃(ふくげき)防護車輌、通称MRAP、エムラップ!
わかりやすくいえば爆弾テロにも耐えうるすっげー固い軍用トレーラーである!
超大型トラックばりの重量を誇る、怪物マシーンだ!
瞬時に変形した黒服Tは、その装甲でもって爆発のダメージを無力化してしまったのだ!
黒服T「このドブネズミがぁーっ!道端のシミにしてやるぜェーッ!」
突っ込んでくる軍用トレーラー!
どがしゃーん(爆発SE)
すんでのところで回避する串田!しかしトレーラーはその勢いのまま、
串田の後方に路駐してあった高級外車に激突!
トレーラーはまったくの無傷!しかし外車はアコーディオンのようにペシャンコにひしゃげてしまった!
所有者はきっと涙をのむことだろう!
黒服T「てめェー、ちょこまかと!」
トレーラーの黒服TはすぐさまUターンし追撃を行おうとする、が、しかし
強化されたブロック塀にどデカい車体が当たり、ターンに手間取っている!
チャンスだ!串田は杖の先の銃口をトレーラー、そのタイヤ部分へと向ける!
バババババッバッバババババ(マシンガンSE)×3
ありったけの弾丸をトレーラーにぶち込む串田。
ただでさえバカデカい図体の車輌、タイヤが破壊されればただの的でしかない。
鬼の形相で弾丸を放つ串田。
その足下には杖から排出された薬莢が雨のように降り注ぐ。
もちろん聡明な視聴者の諸君には、一体細い杖のどこにそんな大量の弾丸が収納されているのかなどと
無駄な詮索はしないでくれることを祈る。
弾丸を撃ち終えた串田。杖に弾薬は1発も残ってはいない。
一方の黒服Tは、砂煙にまみれて姿が良く見えない!
やったか?串田がそう思った時だった!
黒服T「甘いんだよ、てめェーは!」
なんということだ!黒服Tは、車輪部分をタイヤからより頑丈なキャタピラへとトランスフォ…変形させていた!
あらゆる物体に変形できる彼は、いち部分だけを変形させることもできたのだ!
ライフル弾のような弾丸の雨あられも、キャタピラに決定的なダメージを与えることはできなかった!
黒服T「オラァ、モタモタしてっと轢くぞテメェー!」
そう叫ぶや黒服Tはキャタピラからふたたび瞬時に車輪部分を変形させ、レーシングカーのタイヤへと変化!
一気にエンジンをふかす黒服T!タイヤからは白煙があがる!
本物のMRAPでは到底出せない加速で、黒服Tのトレーラーが突進していく!
黒服T「死ねェー!」
あやうし串田!しかし串田は激突の直前、すんでのところで右側面へと回避!
黒服T「テメェー!」
ドリフトし180度ターンする黒服T!そしてふたたび串田へ向け猛烈に突進!
黒服T「死ねェー!」
あやうし串田!しかし串田は激突の直前、すんでのところで左側面へと回避!
黒服T「テメェー!」
ドリフトし180度ターンする黒服T!そしてふたたび串田へ向け猛烈に突進!
黒服T「死ねェー!」
あやうし串田!しかし串田は激突の直前、すんでのところで…
黒服T「お見通しなんだよ!」
読まれていた!黒服Tは、串田の回避する方向を予測!
車体をスピンさせ、側面部を串田のどてっ腹に突き刺した!
ドゴォ(SE)
地雷をもものともしない装甲が、串田の身体を激しく打ちつける!
吹っ飛ぶ串田。そしてその先には、対外道用に強化されたブロック塀が!
ドズシーン(SE)
トレーラーと強化ブロック塀に挟まれた串田。常人ならミンチものだが、さすがは串田。五体満足である。
が、さすがにこれは効いたようだ。ガフッ、と血を吐いた。
初めて彼は、苦悶の表情を浮かべた。
黒服T「おいおいおい、血なんか吐いてもう限界なのかよォー?」
あざ笑う黒服T。しかし串田もその目はまだ死んではいない。
黒服Tは「バックします。ピピー、ピピー。」と、一度わざと串田と距離をおいた。
改めて正面から全速力で串田に衝突し、こんどこそ命を奪うつもりである。
黒服T「デブやババァとやりあっただけでもう一杯一杯なのか?骨あるとこ見せてくれよォー!」
エンジンをふかすトレーラー。爆音が住宅街にこだまする!
血を、ペッと吐き捨てる串田。
彼はゆっくりと、杖をひねった。カシャッ、と、これまでとは違う音が鳴った。
するとどうだろう。杖が外れ、武器としての棒へと姿を変えたのだ。
串田が構えると棒となった杖の側面からは、小さくも鋭利な刃があらわとなった!
そう、忘れてはならない。串田は拳銃だけでなく、剣術の腕前も超一流なのだ。
まるで剣のように高速で杖を回転させ、構えるSwordこと、串田龍巳。
黒服T「そんなデカいカッターナイフもどきで切れると思ってんのかーッ!」
全速力で突っ込んでくるトレーラー。
目光る&バシィィィィン(決めSE)
黒服T「なぬぃっ?!」
一瞬の出来事だった!
最高速度で突進してきたトレーラー!しかし串田は、あたかも透明になったかのようにその車体をすり抜けた!
いや、違う!すり抜けたのではない!斬り抜けたのだ!
車体が串田に衝突する瞬間!串田は目にも留まらぬ早業で重装甲のトレーラーを一刀両断!
まるでモーゼの前で海が裂けたかのように、トレーラーをまっぷたつに斬ってとったのだった!
黒服T「うおおおおおおおおおッ?!」
悲鳴をあげる黒服T!断面部分からは、ガソリンやらオイルやら、黒い液体が噴出し火花も散ってている!
手ごたえはあった!
黒服「と、思うだろう?だから甘いって言ってんだろてめェー!」
ビゴゴゴゴゴ(例の変形SE)
オーマイガッ!神よ!なんという事だ!
まっぷたつに切断されたトレーラーの残骸、その車体が2台それぞれ、轟音をあげて変形したのだ!
そして変形し終えるとそこには、2台に増殖したトレーラーの姿が!
これにはさすがの串田も目を疑う!
黒服T「言っていなかったっけかな。俺はよォー、最大で3台までのマシンに分離・変形が可能なのさ!」
先ほどの攻撃がまるで効いていなかったかのように、エンジンを唸らせる2台のトレーラー!
串田はふたたび杖を構え、迎撃の態勢をとる!
が、その時!串田の身体がグラッと、傾いた。
杖をつき姿勢を維持しようとするも、思うように身体が動かない!
地面に片ひざをつき、必死で身体を支えている!
銭湯の時といい、またしても油断を誘う呼び水か?
いや違う、そうではない!
額には汗がにじみ出、杖を持つ手は震えている!
その目こそいまだにギラついてはいるものの、明らかに先ほどまでと様子が違う!
そう、串田は、身体の限界が近いのだ!
彼は全身の傷をごまかす為に、大量の痛み止めを服用している。
その副作用で、まず全盛期よりも反応速度が鈍くなってしまっていた。
常人を上回る気力と、杖や義足などのアイテムでこれをカバーしているのだが、限界がある。
そして痛め止めの効果が薄れると、某ロボット超人のように
著しくその戦闘能力は激減してしまうのだ!
この夜、串田はすでに3戦目。
本来ならば全力で闘える時間は、わずか1分程度と決まっていたのだ!
黒服T「おやァー?どうしたいSwordさん、顔色が悪いぜェー?」
ニヤける2台のトレーラー!
表情のない鉄のカタマリがニヤケると書くと、いささか不思議な表現かもしれないが
この時明らかに黒服Tは笑っていた!
そう、実は黒服側も串田の身体の問題をすでに把握していたのだ!
むろん最初こそ知らなかったものの、黒服Lをはじめとする一連の刺客を放つ中で、
彼の弱点を把握していったのだ!
そこで黒服Tは、最初に当て馬を銭湯に放ち彼の体力を浪費させ
その後自分の手でじわじわといたぶり殺そうという魂胆でいたのだ!
なんという極悪非道!だが、これこそが黒服組織のやり方なのだ!
黒服T「痛み止めが切れてきたのかなァー?おクスリをキメる時間は与えねーよォ!」
ズダダダダダダダ(マシンガン-5 SE)
満足に動くこともできない串田をもて遊ぶかのように、機関銃を発砲する黒服T!のうちの1台!
かわそうと必死で転がる串田、だが、先ほどまでのスピードはない!
弾丸のうちの数発は容赦なく彼の身体をえぐり取る!
鮮血が飛び散る!歯をくいしばる串田!
と、こんどは背後からも衝撃が!もう1台のトレーラーからも機関銃が発射されたのだ!
全身から血を噴出し、絶体絶命の串田!
黒服T「無様だねェー!串田さん。いい眺めだぜェ!ヒェーッヒェッヒェ!」
勝利を確信し高笑いする黒服T!
満身創痍の串田はいよいよ、その場を動くことも困難になりつつある!
このまま、悪逆非道の黒服の手にかけられてしまうのか!?
&italic(){身体の限界が訪れてしまった串田!}
&italic(){満足に身動きもできぬ中、このまま千変万化の黒服Tの前に屈してしまうのであろうか?}
&italic(){一方、勝利を確信する黒服Tもフラグを立てている事に気付いていない!}
&italic(){勝者と敗者、果たして両雄を分けるのは一体?}
&italic(){次回、長きに渡る激闘の夜に、終止符が打たれる!}
&italic(){最終回第四幕、『ケダモノは、死なず』、お楽しみに!}