蜂の巣システム:火除水帆子の場合

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《蜂の巣システム:火除水帆子(ヒヨケナホコ)の場合/beehave system:In the case of Nahoko Hiyoke》 [[ソレグレイユ]]に暮らす東洋の血を濃く引く少女、火除。彼女は蜂の巣システムの運用において卓越した才能を誇っていた。 彼女は自分の持てるデータストレージを全て蜂の巣システムの拡張に使用、その中で彼女の世界を作り上げた。 常に夜の街。華やかなネオン。満天の星空。自己変容し、形を変え続けるクリスタル・モーフの動物たち。 彼女の開発した様々なプラグインは多くの蜂の巣システムに導入され、 特にクリスタル・モーフは彼女が17歳にして既に自立し生活できるほどの収入をもたらしてくれた。 しかしながら、彼女にある日悲劇が起きる。 それは、彼女の蜂蜜エンジンの中で起きたある事件 ――クリスタル・モーフが無限に変容せず、無限にデータを食いつぶしながら増殖していく――だった。 彼女はその日、ただたんに蜂の巣システムをインターネットに接続し、そして一瞬その『巣』を空にしただけだった。 しかし、その間に何者かがその中に侵入し、その恐るべきウイルスを仕込んだのだった。 火除は早急な判断を迫られる。彼女はスクリプトを使用し動物たちを処理し、ストレージの増設を行い、 その他全てのありとあらゆる方法を試したが、それの全てはただの時間稼ぎにしかならなかった。 彼女は思う。 私が作った動物を、早く全て処理しなくちゃ、そして――こんなことをしてくれた犯人にとびっきりのプレゼントをしてやらなくちゃ。 動き出した時、彼女はある青年と出会う。 全く予想もしないところから、彼女たちは協力し犯人を追い詰めることになる。 『「でもって、この、麗しいぐにゅぐにゅ動く気分を清々しくさせてくれるようなアモルファスが、君のストレージを潰そうとしているわけだ」  彼はそう言って、簡単なデータ処理(クリスタル・モーフの機構設定を呼び出して、増殖ループの部分を手で削除)した。 可愛いぞうさんは、その場で少しも動かなくなって、そのあとブラックアウトした。参照エラーのメッセージが空間にホップアップした。 「気に入らない?」  精一杯強がりを言ってみたつもりだったが、私の声は震えていた。 「君は、火除さんだよね。服装は随分と貧相だけれど」  頷く。今はティアラも、ドレスも着ていない。だって、そんなことをして何になるのだろう?  ――私の作ったクリスタルの一つが私に触って、私の作った処理プログラムに因って、瞬く間に消し飛んだ。  エラー音が断末魔のように悲しく響き渡った。 「で、貴方の名前も聞いてないし、貴方がなんでスタンドアロンの私のストレージにアクセスできるのかも聞いてないんだけど?」  隙を見せてはいけないのだ。私はパーカーの中に手を突っ込んで、緊急ログオフのスイッチに手をかけた。  どうにかなったら、こいつとクリスタルを一緒に閉じ込めてしまおう。そして、もう一回最初からやり直そう。』 &tags()

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