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聖剣術式
[[ユグドラシル]]歴代皇帝が建国以来受け継いできた双極の霊剣、聖剣『エクスカリバー』と魔剣『ガラティーン』は、
帝冠『エウフラムス』、宝珠『カラントクス』、帝笏『ケンディガーン』に並ぶ皇帝の証《レガリア》の一つであった。
初代皇帝バルバロッサは建国戦争においてこの剣を携え、
今では『ユグドラシル大陸』とも呼ばれているテオゴニア大陸を統一したとされる。
皇帝府地下宝物庫には歴代帝室の家宝や過去の戦争での戦利品が収蔵されており、
哭ニヴルヘイム大公国、戒ヘルヘイム王国、神政アースガルズ首長国など各地から献上された、
銘剣『クレスーズ』『マルミアドワーズ』、魔槍『ロンゴミニアト』、聖兜『カフヴァール』魔兜『ゴスウィット』など、
名が不明な物を含めて累計すれば600以上もある。
[[アーサー]]が暗殺者の来襲に備えて隠し持っていた短剣『カルンウェンハン』、
そして第一皇子時代から使用している軽装聖鎧『ウィガール』もその宝物の一つである。
当時は『コルブランド』と『キャリバーン』という剣、『グレイル』と呼ばれる杯と思われるものが存在した記録が残されているが、現在に伝わっていない。
また『グレイル』は、[[ソレグレイユ]]の国名の遠因になったという歴史学者の論文からソレグレイユ領に存在するという説がある。
これらは当時としては明らかに次元の異なる性能を誇るオーパーツであり、記述が殆ど残っていないため出自は定かではないが通常種が鍛えた剣であるとされており、また一説では異次元よりもたらされたのではないかとも言われている。
文献に記載があったこれらの名称の由来については様々な仮説や議論があったが、現在は全てera2初期、久平領からさらに北西のかつて"ヨーロッパ"と呼ばれていた大陸にて発見された超古代の神話、
及び英雄伝説について記した大量の蔵書の中に登場するものと一致することが判明しており、ユグドラシルでは現在でも古代神話を発祥とする名称が武器や道具、艦艇などの兵器にも使われている。
それゆえ根拠も無く落胤を名乗ってまで所有権を主張する者が後を絶たず、内紛が勃発し死者が出たこともあって一部では「破壊してしまえ」という過激な意見まで飛び出したが、
当時の議会は剣を現・皇帝の所有とすることを改めてユグドラシル法大全、すなわち神聖帝国憲法に明記するということでひとまずの解決を図った。
また盗みに入った者の多くはなぜか変死体で発見されており、一部では「初代の怒りに触れたのだ」という黒い噂がまことしやかに囁かれた。
建国以来、長きに亘って皇帝の絶対的な権威を象徴してきた国宝であり、皇帝のみならずユグドラシル臣民の誇りであったがアーサーが脱走した際、
唯一『エクスカリバー』だけは何とか確保できたものの『ガラティーン』と他のレガリアは帝位簒奪を狙ったマイスナーにより隠され、行方は分からなかった。
現在でも近接武器としてはかなり高い完成度を誇り、国内で最高レベルの鍛冶職人であってもこれに並ぶ、もしくは超える武器を造ることは非常に困難である。
鍛冶職人が多い国内の[[ドワーフ]]が純粋な通常種である皇帝を認めているのも、この剣の存在が大きい。
そして技術が発達したera3最初期に実用化され、近接歩兵の戦闘力を大幅に向上させたのがこの聖剣術式である。
era2後期、当時の皇帝ジェフリー・シデス・ユグドラシルの所有していたこの剣の「刀身が発光する」という特性を許可を得て解析した結果、様々な事柄が判明した。
その一つは、複数の[[マナ]]を使用した特殊な技法により通常の魔力鋼に[[霊晶石]]を混合させ、霊晶合金とすることで剣にマナが反応しやすくなるという点だった。
これにより、剣そのものをマナを帯びた強固な[[魔術礼装]]とすることで、使用者の魔力や使用マナの属性に応じ、属性攻撃や[[魔術]]との併用が可能となった。
発光状態の剣はそれだけでも独特の振動音を発するため、視覚以外での識別も容易である。
また改良型では、刀身や柄に古代文字の刻印を入れ、さらに高い魔力を発現させることが可能となっている。
[[魔武装]]と類似しており、現在はほぼ同じ扱いであるが、そもそもの発祥が異なるため厳密には別種である。
例として、微妙な差ではあるもののどちらかといえば魔武装は武器そのものの持つ性質に左右されることが多いのに対し、聖剣術式を応用した魔術礼装は使用者の能力に左右されることが多い。
そのため兵器としては些か微妙な点もあるが、熟練者が扱えばかなりの効果が期待できるため、現在では構造の簡略化の研究が進められている。
また近年、[[久平]]の首都『[[龍陽京]]』の[[太極府]]地下にて、旧・上天帝国帝室の至宝であった『倚天』と『青紅』という二振りの妖剣が発見された。
これらの宝剣はかつて皇帝劉植、皇帝名『礼宗(れいそう)』が項仁を打倒した際に使用していたという記録が残っているが、実物は発見されていなかった。
上天帝国崩壊後、旧・上天帝国皇帝が世襲制の上天民主公国大総統という位に変わり、[[大和皇国]]などかつて侵略した国々を再独立させて久平本国の新たな代表者となった際から、長きに亘り失われてしまったと考えられていた。
大総統補佐として上天民主公国の行政を担当する国家主席、兼久平連合独立同盟の元総帥(または総裁)であり、後にソレグレイユに降った劉懿は当時の大総統で、ユグドラシルと直接交渉を行った『劉仁 子徳』の弟である。
発見後ユグドラシルの学者団が派遣され、久平政府から解析結果を政府にも開示することを条件に特別に許可を貰い、
この『倚天』『青紅』を解析した結果、刻印の位置や性質など『エクスカリバー』『ガラティーン』と酷似した点が多く見つかっていた。
そしてアーサーが双極の剣の片割れを携え、ユグドラシルを奪還するべく奔走していた際、久平領でも一つの動きがあった。
ソレグレイユ占領軍総司令官キーン・ユーズニーの独断で[[ニイドウ>氷の街ニイドウ ]]の地下に幽閉されていた大総統『劉裔 伯紀』が[[リユニオン]]の手引きで脱走したのだ。
彼は先代大総統の急死に伴って大総統位についたためまだ若く、アーサーと同年代である。
彼自身も病気に見せかけ毒殺されかけたが、直前で脱出してリユニオンに加わった。
そしてまたこの後世界は、さらに大きく変わり始めることとなる。
果てしなき混迷の闇の、その先へと。
『とりあえずの使用者であった私がこの剣について述べられる事があるとすればそれはただ一つ、
この剣は君に特殊な力も、知識も与えてはくれないという事だ。
少し物騒な話をすれば、この剣が斬ったのは今のところ10人くらいしかいない。
私を『一騎当千の英雄王』などと持て囃す者がいれば、そいつはとんだ大法螺吹きだ。
私が許すから一発くらいなら殴っても構わない。
“栄光”“勝利”といえば聞こえは良いだろう。だが一つだけ、決して忘れてはならない事がある。
それは栄光の裏では“屈辱”に打ちのめされ滅びゆく者があり、
勝利の裏には“敗北”し地を這う者が常にあるという事だ。
仮に君が栄光の勝利を手にしても、それを忘れてしまえば、途端にその裏側の深淵に引きずり込まれ、
二度と戻っては来られなくなってしまう。
まだ見ぬ絶対的な恐怖に、たった一人で向かい合った時、何を考え、如何に乗り切るか。
絶望と屈辱の泥沼の中で誰も助けてはくれないと知った時、それでも生きることを望み、
醜く不様に足掻けるか。
そして万が一、そんな事を乗り越えたとしても、生きて勝利を、栄光を得られる保証はどこにも無いし、
私には遂に出来なかった。
だが逆に言えば、国を建てるなどという事は気高くなくても、美しくなくても、清くなくても、
ましてや英雄などでなくとも出来る事なのだ。
君がもし本当に偉大で、誇りに満ち溢れた人間であると断じられるなら、このような剣など必要ない。
むしろその誇りを、少し私に分けて欲しいくらいだ。
金が必要なら売り飛ばしてもらっても、私は一向に構わない。
ぶくぶくと肥え太った偉そうな豪商が、度肝を抜いてパイプを取り落とし、
高そうな生地のズボンに穴を開ける様はさぞかし滑稽だろう。
ただし金の一部は教会にでも寄付してやって欲しい。
しかしもし私のように臆病で、恐怖に怯え、誇れるものなど何もかも無くし、
屈辱に塗れて情けなく負け続けながら、それでも何かを成し遂げたいと強く願うなら――
その時にはきっと、この剣がほんの一握りの勇気を、君に与えてくれるだろう』
―――皇帝府地下宝物庫の蔵書棚、“騎士王”による古びたメモ『聖剣と国家について』より
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聖剣術式
[[ユグドラシル]]歴代皇帝が建国以来受け継いできた双極の霊剣、聖剣『エクスカリバー』と魔剣『ガラティーン』は、
帝冠『エウフラムス』、宝珠『カラントクス』、帝笏『ケンディガーン』に並ぶ皇帝の証《レガリア》の一つであった。
初代皇帝バルバロッサは建国戦争においてこの剣を携え、
今では『ユグドラシル大陸』とも呼ばれているテオゴニア大陸を統一したとされる。
皇帝府地下宝物庫には歴代帝室の家宝や過去の戦争での戦利品が収蔵されており、
哭ニヴルヘイム大公国、戒ヘルヘイム王国、神政アースガルズ首長国など各地から献上された、
銘剣『クレスーズ』『マルミアドワーズ』、魔槍『ロンゴミニアト』、聖兜『カフヴァール』魔兜『ゴスウィット』など、
名が不明な物を含めて累計すれば600以上もある。
[[アーサー]]が暗殺者の来襲に備えて隠し持っていた短剣『カルンウェンハン』、
そして第一皇子時代から使用している軽装聖鎧『ウィガール』もその宝物の一つである。
当時は『コルブランド』と『キャリバーン』という剣、『グレイル』と呼ばれる
杯と思われるものが存在した記録が残されているが、現在に伝わっていない。
また『グレイル』は、[[ソレグレイユ]]の国名の遠因になったという歴史学者の論文から
ソレグレイユ領に存在するという説がある。
これらは当時としては明らかに次元の異なる性能を誇るオーパーツであり、
記述が殆ど残っていないため出自は定かではないが通常種が鍛えた剣であるとされており、
また一説では異次元よりもたらされたのではないかとも言われている。
文献に記載があったこれらの名称の由来については様々な仮説や議論があったが、
現在は全てera2初期、久平領からさらに北西のかつて"ヨーロッパ"と呼ばれていた大陸にて発見された
超古代の神話及び、英雄伝説について記した大量の蔵書の中に登場するものと一致することが判明しており、
ユグドラシルでは現在でも古代神話を発祥とする名称が武器や道具、艦艇などの兵器にも使われている。
それ故に、根拠も無く落胤を名乗ってまで所有権を主張する者が後を絶たず、
内紛が勃発し死者が出たこともあって一部では「破壊してしまえ」という過激な意見まで飛び出したが、
当時の議会は剣を現・皇帝の所有とすることを改めてユグドラシル法大全、
すなわち神聖帝国憲法に明記するということでひとまずの解決を図った。
また盗みに入った者の多くはなぜか変死体で発見されており、
一部では「初代の怒りに触れたのだ」という黒い噂がまことしやかに囁かれた。
建国以来、長きに亘って皇帝の絶対的な権威を象徴してきた国宝であり、
皇帝のみならずユグドラシル臣民の誇りであったがアーサーが脱走した際、
唯一『エクスカリバー』だけは何とか確保できたものの『ガラティーン』をはじめとする他のレガリアは
帝位簒奪を狙ったマイスナーにより隠され、行方は分からなかった。
現在でも近接武器としてはかなり高い完成度を誇り、国内で最高レベルの鍛冶職人であっても
これに並ぶ、もしくは超える武器を造ることは非常に困難である。
鍛冶職人が多い国内の[[ドワーフ]]が純粋な通常種である皇帝を認めているのも、この剣の存在が大きい。
そして技術が発達したera3最初期に実用化され、近接歩兵の戦闘力を大幅に向上させたのがこの聖剣術式である。
era2後期、当時の皇帝ジェフリー・シデス・ユグドラシルの所有していたこの剣の
「刀身が発光する」という特性を許可を得て解析した結果、様々な事柄が判明した。
その一つは、複数の[[マナ]]を使用した特殊な技法により通常の魔力鋼に[[霊晶石]]を混合させ、
霊晶合金とすることで剣にマナが反応しやすくなるという点だった。
これにより、剣そのものをマナを帯びた強固な[[魔術礼装]]とすることで、
使用者の魔力や使用マナの属性に応じ、属性攻撃や[[魔術]]との併用が可能となった。
発光状態の剣はそれだけでも独特の振動音を発するため、視覚以外での識別も容易である。
また改良型では、刀身や柄に古代文字の刻印を入れ、さらに高い魔力を発現させることが可能となっている。
[[魔武装]]と類似しており、現在はほぼ同じ扱いであるが、そもそもの発祥が異なるため厳密には別種である。
例としては、微妙な差ではあるもののどちらかといえば魔武装は武器そのものの持つ性質に左右されることが多いのに対し、
聖剣術式を応用した魔術礼装は使用者の能力に左右されることが多い。
そのため兵器としては些か微妙な点もあるが、熟練者が扱えばかなりの効果が期待できるため、
現在では構造の簡略化の研究が進められている。
また近年、[[久平]]の首都『[[龍陽京]]』の[[太極府]]地下にて、
旧・上天帝国帝室の至宝であった『倚天』と『青紅』という二振りの妖剣が発見された。
これらの宝剣はかつて皇帝劉植、皇帝名『礼宗(れいそう)』が項仁を打倒した際に使用していたという記録が残っているが、
実物は発見されていなかった。
上天帝国崩壊後、旧・上天帝国皇帝が世襲制の上天民主公国大総統という位に変わり、
[[大和皇国]]などかつて侵略した国々を再独立させて久平本国の新たな代表者となった際から、
長きに亘り失われてしまったと考えられていた。
大総統補佐として上天民主公国の行政を担当する国家主席、兼久平連合独立同盟の元総帥(または総裁)であり、
後にソレグレイユに降った劉懿は当時の大総統で、ユグドラシルと直接交渉を行った『劉仁 子徳』の弟である。
発見後ユグドラシルの学者団が派遣され、久平政府から解析結果を政府にも開示することを条件に特別に許可を貰い、
この『倚天』『青紅』を解析した結果、刻印の位置や性質など
『エクスカリバー』『ガラティーン』と酷似した点が多く見つかっていた。
そしてアーサーが双極の剣の片割れを携え、ユグドラシルを奪還するべく奔走していた際、久平領でも一つの動きがあった。
ソレグレイユ占領軍総司令官キーン・ユーズニーの独断で[[ニイドウ>氷の街ニイドウ ]]の地下に幽閉されていた
大総統『劉裔 伯紀』が[[リユニオン]]の手引きで脱走したのだ。
彼は先代大総統の急死に伴って大総統位についたためまだ若く、アーサーと同年代である。
彼自身も病気に見せかけ毒殺されかけたが、直前で脱出してリユニオンに加わった。
そしてまたこの後世界は、さらに大きく変わり始めることとなる。
果てしなき混迷の闇の、その先へと。
『とりあえずの使用者であった私がこの剣について述べられる事があるとすればそれはただ一つ、
この剣は君に特殊な力も、知識も与えてはくれないという事だ。
少し物騒な話をすれば、この剣が斬ったのは今のところ10人くらいしかいない。
私を『一騎当千の英雄王』などと持て囃す者がいれば、そいつはとんだ大法螺吹きだ。
私が許すから一発くらいなら殴っても構わない。
“栄光”“勝利”といえば聞こえは良いだろう。だが一つだけ、決して忘れてはならない事がある。
それは栄光の裏では“屈辱”に打ちのめされ滅びゆく者があり、
勝利の裏には“敗北”し地を這う者が常にあるという事だ。
仮に君が栄光の勝利を手にしても、それを忘れてしまえば、途端にその裏側の深淵に引きずり込まれ、
二度と戻っては来られなくなってしまう。
まだ見ぬ絶対的な恐怖に、たった一人で向かい合った時、何を考え、如何に乗り切るか。
絶望と屈辱の泥沼の中で誰も助けてはくれないと知った時、それでも生きることを望み、
醜く不様に足掻けるか。
そして万が一、そんな事を乗り越えたとしても、生きて勝利を、栄光を得られる保証はどこにも無いし、
私には遂に出来なかった。
だが逆に言えば、国を建てるなどという事は気高くなくても、美しくなくても、清くなくても、
ましてや英雄などでなくとも出来る事なのだ。
君がもし本当に偉大で、誇りに満ち溢れた人間であると断じられるなら、このような剣など必要ない。
むしろその誇りを、少し私に分けて欲しいくらいだ。
金が必要なら売り飛ばしてもらっても、私は一向に構わない。
ぶくぶくと肥え太った偉そうな豪商が、度肝を抜いてパイプを取り落とし、
高そうな生地のズボンに穴を開ける様はさぞかし滑稽だろう。
ただし金の一部は教会にでも寄付してやって欲しい。
しかしもし私のように臆病で、恐怖に怯え、誇れるものなど何もかも無くし、
屈辱に塗れて情けなく負け続けながら、それでも何かを成し遂げたいと強く願うなら――
その時にはきっと、この剣がほんの一握りの勇気を、君に与えてくれるだろう』
―――皇帝府地下宝物庫の蔵書棚、“騎士王”による古びたメモ『聖剣と国家について』より
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