悠久の社 外側からの[[悠久郷]]の結界の管理を[[レドール]]から任されている一族が崇める神の社。 図の少女は、今代当主の巫女だ。 彼らは[[リンティスタ]]という種族が成立する以前から連綿と[[旧態の神>旧態の神と巫女]]への信仰を伝える一族で、 [[魔法素]]の扱いにも長けるものが多いために、レドールが特に命じてこの役職を任されたという。 彼らの役割は、内側に住む同胞の安寧を護る為に、唯己の平穏を望む心を捨てて 表から結界を管理し、郷の話が伝わり、悠久郷が再び現実となることの無いよう 関連の伝承を漏らさずに保持し続けることだ。 『気がつくと、見覚えのない部屋で床に就いていた。起きだして辺りを探ると、一人の少女が現れて、 私が彼女の家の近くで行き倒れていたから助けたという旨の説明を受けた。 どうにも記憶が曖昧だが、他に信ずべき言葉を語る者もいない。 とりあえず、彼女の言うことを信じることにする。 -中略- 一日二日、彼女に世話になり、また旅立つ準備を整えた。これまでのことに礼を言い、 いざ発とうとすると、彼女が私に、一つ歌を教えてくれた。 「……茜色全て 広がる世界に 映り消えぬ懐かしき光 呼ぶ程に遠く 儚い幻 辿る道途切れぬ様に……」 「……何処迄広がる世界に 何を求め夢を見るのだろう 忘れ音でもいい もう一度其処へ 巫の舞う旧りし月……」 ……何故だろう。この旋律を、この詞を聞くと、瞼の裏に楽園の像が浮かび上がる。 争いなどとは全くの無縁。まさに理想郷とでも言うべき、夢の様な場所。そう、あれは…… はっ、と気づくと、彼女の姿は何処にもなかった。辺りを見回しても、影も形も見えない。 「……そうか。そういうことか」 心に蘇った景色を思い浮かべ、確信する。成る程、これは賢者からの土産か。 あの景色を思い出に出来るというのなら、こんなに嬉しいことはない。有難く頂戴するとしよう。 「……あの歌にも、なにか名前をつけよう」 そうだ。あのことを忘れないように。あの素晴らしい場所を忘れないように。 そうだな……彼女に因んで、こう名付けよう。 神舞ノ月と……』 ―――探検家ゴッヘルザッホの手記より &tags()