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卒業式当日 - (2006/03/01 (水) 05:12:54) の1つ前との変更点

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*卒業式当日 【投稿日 2006/02/23】 **[[カテゴリー-斑目せつねえ>http://www7.atwiki.jp/genshikenss/pages/48.html]]  今日は笹原たちの卒業式だ。 昨日まではまだ肌寒かったのだが、今朝は空がすっきりと晴れ、柔らかな日差しがさしていて暖かい。 まさに卒業式日和といったところだ。 式が終わってから笹原たちと合流する予定になっている。  時間は十分にあるのだが、妙にそわそわと準備をしながら、斑目は思い出していた。 昨日は家についてすぐ着替えてから、ベッドに座ったきりボーっとしていた。しばらくして急に睡魔に襲われ、そのまま寝てしまったのだった。 仕事疲れと、昨日のあの出来事でずいぶん精神的にも疲れていたらしい。熟睡していたようだ。 今朝はすごく寝覚めが良かった。頭がすっきりしている。 (今日で春日部さんの姿も見納めかぁ……。なんか、昨日あれだけお互いに本音で話しあった後だと、気まずいかな…? いや。かえって開き直れる気もするな。 つーか、あれって昨日実際にあったことなんだよな?全然現実感ねぇなあ…。)  ふと気づくと、家を出る時間になっていた。 そのまま出ようとしたとき、あることを思いつき靴をはきかけていた足を止める。 (そうだ…アレ持っていこう) もう一度部屋に引き返し、奥の机の引き出しに手をかけた。  椎応大の正門前で田中と久我山を見つける。後ろから声をかけた。 斑「よう!」 田「お、斑目も来たんか」 久「ひ、久しぶり」 斑「久我山ホント久しぶりだよなー。お前もうちっと部室にも来いよなー!」 久「ま、斑目は来過ぎだろ」 田「そのうち現視研の主って呼ばれるようになるぞ」 斑「いいのう…そしてヘビ神様とか呼ばれるようになるのじゃ!尻尾も二つに裂けたりなんかして。」 田「なんか色々まざってないか?」 久「一体何になる気なんだか…そ、それに主っていえば初代会長じゃない?」 田「じゃあ二代目襲名ってことで」  あははは、と笑いながら、斑目は心の中ではこうつぶやいていた。 (もう、来ないけどな。……なんて、言い出せる雰囲気じゃねえなー。 まあいいか。ていうか来ないほうが普通なんだし) ふと空を見上げる。 雲のほとんどない澄んだ青空に、ちくりと胸が痛む。  卒業式が終わり、卒業生がぞろぞろ外へ出てくる。 斑「笹原たちは?」 田「いまメールでこっちの場所送ったから、そのうち来るんじゃないか?」 久「あ、お、大野さんたちだ」 在校生は卒業生より先に外に出ていたらしく、お互いを早く見つけることができた。 大野さんと荻上さん。後ろから朽木君がルルゥ~と歌いながら歩いてくる。 大「う、うううっ…ひぐっ!」 荻「あーもー、泣かないで下さい!」 大野さんは号泣している。 荻上さんは口調こそ厳しいが、大野さんの背中を、小さい体をのばして支えたり、ハンカチを渡したりと気遣いをみせている。 笹原と付き合うようになって、彼女は変わった。ずいぶん雰囲気が丸くなった。 朽木君はいつものペースだが、大野さんと荻上さんのほうを気にしてチラチラ見ている。だが結局自分は役にたたないと諦めたようで、こちらの姿を見つけ先に走ってきた。 「どおも~~~~~~!!お久しぶりデッス!」 (…ううむ、ああいうときの役に立たないっぷりは、以前の自分を見ているよーだ…) 斑目は思った。朽木君は正直言うと苦手なのだが、なんで苦手なのかわかった気がする。 (…同属嫌悪?空気読めるか読めないかの違いはあるけどな) そう思うと、少し苦手意識が薄れた気がする。 大「だってみんな…卒業しちゃうう~…」 荻「最近泣いてばっかりじゃないですか…どっからそんなに涙出てくるんですか」 大「うっ、うっ…お、荻上さんは寂しくないんですか?笹原さん卒業しちゃうんですよ?」 荻「そりゃ、寂しくないといえば嘘になりますけど…」 大野さんの言葉に、荻上さんまで少し沈んでしまう。 それを見た田中は、あわてて大野さんに泣き止んでもらおうと言葉をかける。 田「ホラでも、もう会えなくなるわけじゃないしね?」 大「でも…でも…今までとは…」 それ以上言葉を続けることができず、大野さんは泣き続けた。泣き止むことができないでいる。 田中は困ったように荻上と顔を見合わせる。皆どうしていいのか分からず、微妙な雰囲気になってしまった。 (…そうだ。今までとは…) 斑「…確かに、今までとは違うよな。学校の中で当たり前のように会うのと、卒業しちまってたまにしか会えなくなるのとさ」 不意に言葉が口をついて出た。 斑「空気みたいに、身近にあった時間がなくなる、ってのが、大野さんは不安なんじゃねーかな…」 そういいながら、ふと顔をあげる。 すると、この場にいるメンバー全員が、目をまんまるにして斑目のほうを向いて固まっていた。 大野さんでさえ、泣くのを忘れてこっちを見ている。 一同「……………………」 (…あ、アレ!?なんだこの雰囲気!?あ、俺らしくないこと言ったから? うわどうしよ、引いてる!?みんな引いてるノ???) 皆の反応に激しく慌てる斑目。 大「…そうですね」 そのとき、泣き止んでいた大野さんが喋り始めた。 大「私も、そう言いたかったんです。この大学にきて、現視研に入って、楽しい事がすごくたくさんありましたから…。思い出していたら、つい泣いてしまって…」 大野さんはもう泣いていなかった。涙をぬぐいながら笑顔をみせる。 それを見てほっとする一同。 荻「…まだ終わりませんよ」 大「え?」 荻「新学期になれば新しい人も入ってくるかもしれないし。…というか、新会員の勧誘とか、やることいっぱいあるじゃないですか。泣いてる暇ないですよ」 荻上さんの目も、心なしか赤くなっている。荻上さんなりに思うところがあったようだ。 大「…そうですね。では…新会長は荻上さんということで」 荻「えっ!?」 大「私も頑張りますので頑張ってくださいね!」 誰も突っ込まないようなので、斑目は一応聞いてみた。 斑「…あの~、朽木君は?」 大「却下です!」 一刀両断。にょ~といいながらオーバーにのけぞる朽木。 大「…まあでも、今後の行動しだいでは、副会長に指名してもいいです」 朽「ふ、副会長?うわ~なんか微妙ですなァ!!!影の会長とかなら美味しいんですけども~ゥ?」 大「嫌ならいいんですよ?」(ジロリ) 朽「い、いえっ!身にあまる光栄であります!!」 何だかんだ言って、イジられて嬉しそうな朽木君。 田「ふう…助かったよ。」 復活した大野さんを見て、安心したように息をはく田中。 田「スマンな」 斑「いやいや別に、大したことしてねえし!」 照れ笑いでごまかす斑目。 (ていうか、自分のことを言っただけだからな…) 田中はまだ何か言いたそうにしていたが、そのまま言わずに大野さんのほうを見た。 大「よろしくお願いしますね!そして、コスプレもして下さいね!」 荻「コスプレ関係ないし!それにもうやったじゃないスか、春日部先輩の溜まってたコス大会やったとき!」 大「うふふ~、駄目ですよ~。それにまだ、忍先生バージョンと副会長バージョン荻上さん仕様が残ってます!」 荻「まっ、まだあるんですか!?あんだけ着たのに!」 大「荻上さんくじアン化計画、目下進行中ですよ!!」  【すいませんが、「春日部先輩の溜まってたコス大会」のSS書いてくださる方いたらお願いします。ワシは無理orz】 すっかり元気になった二人。 ふと向こうを見ると、笹原が妹と歩いてきた。今日は笹原は濃いグレーのスーツを着ている。 斑「おう、笹原」 笹「どおも…なんか盛り上がってますねぇ」 笹原は新学期の話で盛り上がる大野さんと荻上さんの様子を見て言った。 田「いや、さっきまでは大野さんが泣いてて大変だったんだけどね」 久「そうそう。…ひ、久しぶり」 笹「お久しぶりです。…えっ?そうなんですか?」 斑「まーまー、それは置いといて。卒業おめでとう笹原!」 田「おめでとう」 久「お、おめでとう」 笹「ありがとうございます。…なーんか長いようであっという間でしたよ、四年間」 田「ま、そんなもんだ。」 恵「ねー、コーサカさんは?」 笹「おまえなあ、この期に及んで…」 恵「いいじゃん、今日で見納めなんだしィ」 田「高坂と春日部さんはまだ来てないぞ。さっき高坂にもメール入れたけど、そのうち来るんじゃないか?」 笹「そうなんですか。…あ、来た」 笹原の言葉にどきっとする斑目。おそるおそる笹原の視線の先に目をやる。 高「どおもー、遅くなりました。ここに来るまでに咲ちゃんが友達につかまってまして」 咲「もー何枚写真とれば気がすむの、って感じに撮られまくったヨ」 高坂は黒のジャケットにネクタイ、ベージュ地に格子柄のパンツと、少しラフな格好をしている。 春日部さんは卒業式らしい姿をしている。山吹色の着物に、袖口まで描かれた小さい桜の花柄。明るい若草柄の袴をはいて、髪をアップにしている。 …思わず見とれてしまった。 まぶしく見えるのは空が晴れているせいだろうか。 咲「…よ」 斑「…やあ」 咲「………」 斑「………」 (あ、アレ?言葉が出ねー) 春日部さんの姿を見て、現実感が戻ってくる。 今やっと目が覚めた気がする。 (………………今朝家を出るときは、『開き直れるかも』なんて思ってたけど、…駄目だ。 駄目だ。なんかもーーーーーー、頭真っ白でなんも思いつかねーヨ!!!!!) 斑「…あ、そ、卒業おめでと」 咲「…ありがと」 斑「……………………」 咲「……………………」 斑「…き、着物似合うね」 咲「…ぶっ!!!」 春日部さんはいきなり噴き出した。必死で笑うのをこらえているため肩が震えている。 咲「く…くっくっくっく……………!」 斑「へ?な、何…?」(激汗) 咲「に……似合わね~台詞!!!」 笑いをこらえすぎてひーひー言いながら、やっと一言言う。涙目になっている。 斑「わ、悪かったな!何だヨ!『馬子にも衣装』とでも言やー良かったんか!?」 咲「…それは言いすぎ」 急に目じりがつりあがる。 斑「…別に、本気で言ってねーし。その、本当にきれいだと思…」 咲「ぶふうっ!!」 斑「だから、何でそこで笑う!失礼な奴だなー!」 咲「いや、ゴメンゴメン。だってさ……………くっくっく…………!!」 ツボに入ってしまったようで、際限なく笑い続ける春日部さん。  ふと、違和感に気づく。 (?…なんか春日部さんのテンションが変だな。もしかして春日部さんも、緊張してたり、するのかな…??) 斑「…ふん!好きなだけ笑うがいいさ。今日の俺は寛大だからな。そう、この晴れ渡る空のよーに!」 咲「くくっ…!ちょ、笑かさないでよ。帯が苦しいんだから………あは、ははっ………」 何がそんなにおかしいのか、いつまでも肩がヒクついている。ナチュラルハイになっているらしい。 (ったく。ま、いいか。気まずい雰囲気になるよりずっと。一応、意識されてるわけだし! …笑われてるけどな!)  そのころ、高坂は笹原たちと『くじアン第二の黄金期について』という内容の話に花を咲かせていた。 田「まさか新キャラにここまで萌えられるとはなぁ」 高「初登場時には予想もつきませんでしたよねー」 久「う、うれしい誤算かな?連載始まった頃とは、趣旨変わってきてるけど」 笹「俺的には、OBとして元会長がちょくちょく出てきてくれるだけでもう…!」  【上のくじアンについての内容はワシの希望的妄想であり、ネタバレではありません。 ちなみに「くじアン」の部分を「げんしけん」にかえても違和感ないようにしてあります…w】  大野さんと荻上さんは、笑顔と無表情で聞き役に徹している。 恵子は高坂と話したいので近くにいるものの、全く話に入れない。 (くそう…さっきからオタク話しかしてないしー。あーあ、つまんねーな………………ん?) ふと春日部さんと斑目のほうに目をやる。 (んん…?)  恵子は笹原の袖を無理やり引っ張った。 笹「ですから、真ん中分けは最強の『背伸び』の証…ん、何?何だよ?」 『髪型を変えたことでさらなる萌えキャラになった元会長』について熱く語っていた笹原は、恵子に引っ張られて不機嫌そうに言う。 恵子はみんなから少し離れ、小声になって言う。 恵「あのさー、あの二人、なんかあったんじゃね?」 笹「は?あの二人って誰」 恵「春日部ねーさんと斑目」 笹「おまえ先輩を呼び捨て…」 恵「いいから!なーんかあの二人、態度変なんだけどー」 笹「態度が変って?…別に喧嘩してるようにはみえんけど」 恵「ちげーよバカ!恋愛の話だって!!」 笹「はあぁ??ありえねーよ。それはない。絶対ない」 恵「女のカンだよ!とにかく確かめてみなって!」  恵子に無理やり押し出され、笹原は斑目と春日部さんに近づいていく。 笹「あ、あの~斑目さん?」 斑「ん、どうした笹原」 笹原が来ると、春日部さんは高坂のほうへ戻っていってしまった。 視界の隅で追う。少しがっかりする。 (二人で話すのもこれが最後かな…) そう思うと急に寂しくなる。 笹「あのですね、うちのバカ妹の勘違いだと思うんですけど………。」 笹原は声を落としておそろおそる聞いた。 笹「…春日部さんと、何かありました?」 斑「………………」 斑目は空のほうに目をやり、ぽそりとつぶやく。 斑「告った」 笹「え…」 一同「 えええええええええっっっ!!!!!!??????」 斑「うおっ!!?」 実は笹原と斑目の会話に聞き耳をたてていたげんしけん一同(春日部さんと高坂は別)、一斉に驚愕の声をあげた。 その大声にびびる斑目。 笹「アハハハ…そうなんスか。いやーまさかそう来るとは…」 恵「ほらね!ほらね!やっぱそーだろ!」 大「はああぁ…びっくりしました。そうだったんですか…」 田「つか、俺らも知らんかったよな…」 久「そ、そうだね…」 荻「…私も気づきませんでした」 朽「おぉう、荻上さんチガウデショ!!そこは『何で笹原先輩にじゃなくて春日部先輩になんですか!』デショ?」 荻「絶対言いません!!!」 大「なっ…何で私が温泉で言った台詞をパクッてるんですか!まさか盗…」 咲「…いやいや、あの時ベルトで縛ってたじゃん。誰か見張ってたし。」 笹「あ、あれ?高坂くんは驚いてないけど、知ってたの?」 高「うん、昨日咲ちゃんに聞いたんだ」 笹「あ、そうなんだ…」 斑「なっ、な、な、な、な、」 あまりに苦手な話題、しかも自分の話題でみんなが盛り上がっているのを見て言葉が出てこない斑目。 朽「で、どうなんですかァ?見事に玉砕したんですかァ?」 凍りつく一同。 「朽木~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!」 大野さんと荻上さん、朽木君をフクロにする。 大「言っていいことと悪いことがあります!」 荻「どうしてわざわざ聞くんですか!」 笹「ま、まあまあ二人とも…それ以上やると朽木くんが………」  田中と久我山、完全に肩を落とす斑目の両肩にぽんと手をおく。 久「ま、まああんまり落ち込むな」 田「そうそう、これからいい出会いがあるかも知れんし」 斑「………田中には言われたくネェ………」 咲「まあでも、格好良かったよ、あんときの斑目。声小さかったけど」 一同「!!」 春日部さんの言葉に一同、再び固まる。 斑目は真っ赤。 斑「…え、それはフォロー?」 咲「うんまあ、それも半分」 斑「ふーーーん………」 一同「………………………」(////////) 笹「…え、でも高坂君とは別れないよね」 咲「当たり前じゃん!」 笑顔で即答する春日部さん。 (最近キツいな笹原!………う~む、まあいいか。 めちゃめちゃ恥ずかしいけど、こうして皆にバレてから気持ちの整理をつけるのもいいかも知れん。)    その夜、追い出しコンパのため居酒屋に移動するげんしけんメンバー。 (春日部さんは服を着替えてきた。) 田「しかしあの斑目がなあ…」 久「せ、成長したかな?」 笹「いやー、びっくりしました…」 居酒屋でも例の話題が出てきて針のムシロの斑目だが、ふと思い立ってすっくと立ち上がる。 田「お?」 笹「何ですか斑目さん?」 皆が斑目に注目する中、斑目は拳を握り、演説口調で喋りだす。 斑「ここまでバレてしまっては仕方がない…もう隠すことなど何もない! ならば今、あえて晒そう!!! ワタシの『最後の砦』を!!!!!」 一瞬しんと静まり返る一同。 荻上さんと朽木君と笹原妹は知らない。 恵「ん?」 荻「は?」 朽「最後の砦??」 一瞬後。 一同「  や  め  ろ ーーーーーーー!!!!!!!!」 大慌て。 笹「ちょっ、いったい何出す気ですか!!」 田「おいまさかこんなところで…SMの…何か…!?」 久「や、やややばいって!!はや、早まるな!!」 三人は上着の内ポケットに手をつっこむ斑目を止めようと慌てて立ち上がりかける。 斑「ええい止めるな!!これだあーーーーーーー!!」 と、取り出したのは一枚の封筒。 皆、訳が分からず沈黙する。 急にテンションが戻る斑目。 斑「これを春日部さんに。」 咲「へっ?私?」 何を始めるのかと遠巻きに見ていた春日部さんは、びっくりしながら斑目に差し出された封筒を受け取る。 大「な、何が入ってるんですか!?」 恵「えっ何、何?」 咲「ちょっと、今ここで空けてもいい物なんでしょうね」 斑「あー、大丈夫、大丈夫。変なモンじゃないから。」 荻「私達も見ていいんですか?」 笹「…ほ、本当に大丈夫なんでしょうね…」 封を開けると、そこには初めて会長コスをした時の春日部さんの写真が入っていた。 斑「春日部さんに持っていてもらおうと思ってさ。 春日部さんは嫌がるけど、現視研にとってはいい思い出だから。」 咲「……わかった。」 春日部さんは素直に受け取る。 斑目の今までの思いと、斑目の春日部さんを吹っ切ろうとする思いの両方を受け取ったのだと感じていた。 笹「あー…あの時の写真ですか…良かったー…」 田「いやーでも、ある意味恥ずかしいなー…好きな人の写真って…」 久「み、見てるこっちが落ち着かないよね」 大「はああぁ…ドラマのワンシーンみたいですねえ…」 荻「…ドラマだとしたら、いいシーンですね」 恵「うわー春日部姉さん、本当に会長のコスプレもしてたんだ…初めて見た」 高「懐かしいねぇー」 そこへ朽木君。 朽「なるホド、これを毎晩オカズにしてたんデスね!!!!!」 大地雷。 あまりに身もフタもない発言にみんな石になる。 感慨深げに写真を眺めていた春日部さんの額に、ビキッと青筋が走る。 咲「…え、そうなの?」 斑「いや、そんな、事は、しないと思うぞ………?」 咲「こっち向いて話せよ」 恵「いやいやでも、いーじゃん姉さん!それだけ好きだったってことっしょ? 許してあげなよー1人でするくらい。2人でできないんだからさー」 大「け、恵子さん、その辺にしといてあげて下さ……」 (あ…哀れすぎる……) 荻「…せっかくいい場面だったのに、ぶち壊しですね。朽木先輩のせいで…」 荻上さんは朽木君をぎろっと睨みつける。びびる朽木君。 田「………いたたまれねえ……」 笹「…もう聞いてるこっちの胸が痛いっス。すいませんバカ妹で……」 斑「こんなトコで出さなきゃ良かった…」 テーブルにペシャンコに伸びてしまった斑目。穴があったら入りたい。 高「いいじゃない、咲ちゃん。『最後の砦』になるなんてすごいことだよ。」 高坂はそう言った。 この場を救う最上の言葉だった。 咲「ん…まあ高坂がそういうなら、そうなんかもね」 春日部さんは、そのまま写真を受け取ってくれた。  そして。打ち上げも終わり、解散になった。 大「また部室にも顔だしてくださいね!!」 咲「あー、また暇をみていくヨ。大野も、店に遊びに来いよー」 春日部さんと高坂は、「じゃ、またね」と、皆にいつもと変わらない挨拶をして背を向ける。 斑目は皆と一緒に二人を見送っていた。 (…この二人の背中を、今まで何回見送っただろうな…) 斑「…んじゃ、俺らも帰るか!」 笹「あ、そうですか?」 田「……そうだな。今日のところは」 久「じ、じゃあな」 斑「ん、そんじゃ」 なんだか早くこの場を抜け出したかった。一人になりたかった。 斑目は家までの帰り道をゆっくりと歩いていた。 (…………) (………………………) ひたすら歩き続ける。自分の足元の1メートルくらい先を見ながら、ただひたすら。 (…やるべきことは、全部やった。もう何も思い残すことはねー。 …何だろ…開放感?いや…喪失感?疲労感?) (…わかんねー………今わかってることは) うつむいていた顔を上げる。まっすぐ前を見る。 (もうめったに会えないってことぐらいだ) そのまま、さっきより少し早足で歩き始めた。 さっきより少し力強い足取りで。                          END
*卒業式当日 【投稿日 2006/02/23】 **[[卒業式シリーズ]]  今日は笹原たちの卒業式だ。 昨日まではまだ肌寒かったのだが、今朝は空がすっきりと晴れ、柔らかな日差しがさしていて暖かい。 まさに卒業式日和といったところだ。 式が終わってから笹原たちと合流する予定になっている。  時間は十分にあるのだが、妙にそわそわと準備をしながら、斑目は思い出していた。 昨日は家についてすぐ着替えてから、ベッドに座ったきりボーっとしていた。しばらくして急に睡魔に襲われ、そのまま寝てしまったのだった。 仕事疲れと、昨日のあの出来事でずいぶん精神的にも疲れていたらしい。熟睡していたようだ。 今朝はすごく寝覚めが良かった。頭がすっきりしている。 (今日で春日部さんの姿も見納めかぁ……。なんか、昨日あれだけお互いに本音で話しあった後だと、気まずいかな…? いや。かえって開き直れる気もするな。 つーか、あれって昨日実際にあったことなんだよな?全然現実感ねぇなあ…。)  ふと気づくと、家を出る時間になっていた。 そのまま出ようとしたとき、あることを思いつき靴をはきかけていた足を止める。 (そうだ…アレ持っていこう) もう一度部屋に引き返し、奥の机の引き出しに手をかけた。  椎応大の正門前で田中と久我山を見つける。後ろから声をかけた。 斑「よう!」 田「お、斑目も来たんか」 久「ひ、久しぶり」 斑「久我山ホント久しぶりだよなー。お前もうちっと部室にも来いよなー!」 久「ま、斑目は来過ぎだろ」 田「そのうち現視研の主って呼ばれるようになるぞ」 斑「いいのう…そしてヘビ神様とか呼ばれるようになるのじゃ!尻尾も二つに裂けたりなんかして。」 田「なんか色々まざってないか?」 久「一体何になる気なんだか…そ、それに主っていえば初代会長じゃない?」 田「じゃあ二代目襲名ってことで」  あははは、と笑いながら、斑目は心の中ではこうつぶやいていた。 (もう、来ないけどな。……なんて、言い出せる雰囲気じゃねえなー。 まあいいか。ていうか来ないほうが普通なんだし) ふと空を見上げる。 雲のほとんどない澄んだ青空に、ちくりと胸が痛む。  卒業式が終わり、卒業生がぞろぞろ外へ出てくる。 斑「笹原たちは?」 田「いまメールでこっちの場所送ったから、そのうち来るんじゃないか?」 久「あ、お、大野さんたちだ」 在校生は卒業生より先に外に出ていたらしく、お互いを早く見つけることができた。 大野さんと荻上さん。後ろから朽木君がルルゥ~と歌いながら歩いてくる。 大「う、うううっ…ひぐっ!」 荻「あーもー、泣かないで下さい!」 大野さんは号泣している。 荻上さんは口調こそ厳しいが、大野さんの背中を、小さい体をのばして支えたり、ハンカチを渡したりと気遣いをみせている。 笹原と付き合うようになって、彼女は変わった。ずいぶん雰囲気が丸くなった。 朽木君はいつものペースだが、大野さんと荻上さんのほうを気にしてチラチラ見ている。だが結局自分は役にたたないと諦めたようで、こちらの姿を見つけ先に走ってきた。 「どおも~~~~~~!!お久しぶりデッス!」 (…ううむ、ああいうときの役に立たないっぷりは、以前の自分を見ているよーだ…) 斑目は思った。朽木君は正直言うと苦手なのだが、なんで苦手なのかわかった気がする。 (…同属嫌悪?空気読めるか読めないかの違いはあるけどな) そう思うと、少し苦手意識が薄れた気がする。 大「だってみんな…卒業しちゃうう~…」 荻「最近泣いてばっかりじゃないですか…どっからそんなに涙出てくるんですか」 大「うっ、うっ…お、荻上さんは寂しくないんですか?笹原さん卒業しちゃうんですよ?」 荻「そりゃ、寂しくないといえば嘘になりますけど…」 大野さんの言葉に、荻上さんまで少し沈んでしまう。 それを見た田中は、あわてて大野さんに泣き止んでもらおうと言葉をかける。 田「ホラでも、もう会えなくなるわけじゃないしね?」 大「でも…でも…今までとは…」 それ以上言葉を続けることができず、大野さんは泣き続けた。泣き止むことができないでいる。 田中は困ったように荻上と顔を見合わせる。皆どうしていいのか分からず、微妙な雰囲気になってしまった。 (…そうだ。今までとは…) 斑「…確かに、今までとは違うよな。学校の中で当たり前のように会うのと、卒業しちまってたまにしか会えなくなるのとさ」 不意に言葉が口をついて出た。 斑「空気みたいに、身近にあった時間がなくなる、ってのが、大野さんは不安なんじゃねーかな…」 そういいながら、ふと顔をあげる。 すると、この場にいるメンバー全員が、目をまんまるにして斑目のほうを向いて固まっていた。 大野さんでさえ、泣くのを忘れてこっちを見ている。 一同「……………………」 (…あ、アレ!?なんだこの雰囲気!?あ、俺らしくないこと言ったから? うわどうしよ、引いてる!?みんな引いてるノ???) 皆の反応に激しく慌てる斑目。 大「…そうですね」 そのとき、泣き止んでいた大野さんが喋り始めた。 大「私も、そう言いたかったんです。この大学にきて、現視研に入って、楽しい事がすごくたくさんありましたから…。思い出していたら、つい泣いてしまって…」 大野さんはもう泣いていなかった。涙をぬぐいながら笑顔をみせる。 それを見てほっとする一同。 荻「…まだ終わりませんよ」 大「え?」 荻「新学期になれば新しい人も入ってくるかもしれないし。…というか、新会員の勧誘とか、やることいっぱいあるじゃないですか。泣いてる暇ないですよ」 荻上さんの目も、心なしか赤くなっている。荻上さんなりに思うところがあったようだ。 大「…そうですね。では…新会長は荻上さんということで」 荻「えっ!?」 大「私も頑張りますので頑張ってくださいね!」 誰も突っ込まないようなので、斑目は一応聞いてみた。 斑「…あの~、朽木君は?」 大「却下です!」 一刀両断。にょ~といいながらオーバーにのけぞる朽木。 大「…まあでも、今後の行動しだいでは、副会長に指名してもいいです」 朽「ふ、副会長?うわ~なんか微妙ですなァ!!!影の会長とかなら美味しいんですけども~ゥ?」 大「嫌ならいいんですよ?」(ジロリ) 朽「い、いえっ!身にあまる光栄であります!!」 何だかんだ言って、イジられて嬉しそうな朽木君。 田「ふう…助かったよ。」 復活した大野さんを見て、安心したように息をはく田中。 田「スマンな」 斑「いやいや別に、大したことしてねえし!」 照れ笑いでごまかす斑目。 (ていうか、自分のことを言っただけだからな…) 田中はまだ何か言いたそうにしていたが、そのまま言わずに大野さんのほうを見た。 大「よろしくお願いしますね!そして、コスプレもして下さいね!」 荻「コスプレ関係ないし!それにもうやったじゃないスか、春日部先輩の溜まってたコス大会やったとき!」 大「うふふ~、駄目ですよ~。それにまだ、忍先生バージョンと副会長バージョン荻上さん仕様が残ってます!」 荻「まっ、まだあるんですか!?あんだけ着たのに!」 大「荻上さんくじアン化計画、目下進行中ですよ!!」  【すいませんが、「春日部先輩の溜まってたコス大会」のSS書いてくださる方いたらお願いします。ワシは無理orz】 すっかり元気になった二人。 ふと向こうを見ると、笹原が妹と歩いてきた。今日は笹原は濃いグレーのスーツを着ている。 斑「おう、笹原」 笹「どおも…なんか盛り上がってますねぇ」 笹原は新学期の話で盛り上がる大野さんと荻上さんの様子を見て言った。 田「いや、さっきまでは大野さんが泣いてて大変だったんだけどね」 久「そうそう。…ひ、久しぶり」 笹「お久しぶりです。…えっ?そうなんですか?」 斑「まーまー、それは置いといて。卒業おめでとう笹原!」 田「おめでとう」 久「お、おめでとう」 笹「ありがとうございます。…なーんか長いようであっという間でしたよ、四年間」 田「ま、そんなもんだ。」 恵「ねー、コーサカさんは?」 笹「おまえなあ、この期に及んで…」 恵「いいじゃん、今日で見納めなんだしィ」 田「高坂と春日部さんはまだ来てないぞ。さっき高坂にもメール入れたけど、そのうち来るんじゃないか?」 笹「そうなんですか。…あ、来た」 笹原の言葉にどきっとする斑目。おそるおそる笹原の視線の先に目をやる。 高「どおもー、遅くなりました。ここに来るまでに咲ちゃんが友達につかまってまして」 咲「もー何枚写真とれば気がすむの、って感じに撮られまくったヨ」 高坂は黒のジャケットにネクタイ、ベージュ地に格子柄のパンツと、少しラフな格好をしている。 春日部さんは卒業式らしい姿をしている。山吹色の着物に、袖口まで描かれた小さい桜の花柄。明るい若草柄の袴をはいて、髪をアップにしている。 …思わず見とれてしまった。 まぶしく見えるのは空が晴れているせいだろうか。 咲「…よ」 斑「…やあ」 咲「………」 斑「………」 (あ、アレ?言葉が出ねー) 春日部さんの姿を見て、現実感が戻ってくる。 今やっと目が覚めた気がする。 (………………今朝家を出るときは、『開き直れるかも』なんて思ってたけど、…駄目だ。 駄目だ。なんかもーーーーーー、頭真っ白でなんも思いつかねーヨ!!!!!) 斑「…あ、そ、卒業おめでと」 咲「…ありがと」 斑「……………………」 咲「……………………」 斑「…き、着物似合うね」 咲「…ぶっ!!!」 春日部さんはいきなり噴き出した。必死で笑うのをこらえているため肩が震えている。 咲「く…くっくっくっく……………!」 斑「へ?な、何…?」(激汗) 咲「に……似合わね~台詞!!!」 笑いをこらえすぎてひーひー言いながら、やっと一言言う。涙目になっている。 斑「わ、悪かったな!何だヨ!『馬子にも衣装』とでも言やー良かったんか!?」 咲「…それは言いすぎ」 急に目じりがつりあがる。 斑「…別に、本気で言ってねーし。その、本当にきれいだと思…」 咲「ぶふうっ!!」 斑「だから、何でそこで笑う!失礼な奴だなー!」 咲「いや、ゴメンゴメン。だってさ……………くっくっく…………!!」 ツボに入ってしまったようで、際限なく笑い続ける春日部さん。  ふと、違和感に気づく。 (?…なんか春日部さんのテンションが変だな。もしかして春日部さんも、緊張してたり、するのかな…??) 斑「…ふん!好きなだけ笑うがいいさ。今日の俺は寛大だからな。そう、この晴れ渡る空のよーに!」 咲「くくっ…!ちょ、笑かさないでよ。帯が苦しいんだから………あは、ははっ………」 何がそんなにおかしいのか、いつまでも肩がヒクついている。ナチュラルハイになっているらしい。 (ったく。ま、いいか。気まずい雰囲気になるよりずっと。一応、意識されてるわけだし! …笑われてるけどな!)  そのころ、高坂は笹原たちと『くじアン第二の黄金期について』という内容の話に花を咲かせていた。 田「まさか新キャラにここまで萌えられるとはなぁ」 高「初登場時には予想もつきませんでしたよねー」 久「う、うれしい誤算かな?連載始まった頃とは、趣旨変わってきてるけど」 笹「俺的には、OBとして元会長がちょくちょく出てきてくれるだけでもう…!」  【上のくじアンについての内容はワシの希望的妄想であり、ネタバレではありません。 ちなみに「くじアン」の部分を「げんしけん」にかえても違和感ないようにしてあります…w】  大野さんと荻上さんは、笑顔と無表情で聞き役に徹している。 恵子は高坂と話したいので近くにいるものの、全く話に入れない。 (くそう…さっきからオタク話しかしてないしー。あーあ、つまんねーな………………ん?) ふと春日部さんと斑目のほうに目をやる。 (んん…?)  恵子は笹原の袖を無理やり引っ張った。 笹「ですから、真ん中分けは最強の『背伸び』の証…ん、何?何だよ?」 『髪型を変えたことでさらなる萌えキャラになった元会長』について熱く語っていた笹原は、恵子に引っ張られて不機嫌そうに言う。 恵子はみんなから少し離れ、小声になって言う。 恵「あのさー、あの二人、なんかあったんじゃね?」 笹「は?あの二人って誰」 恵「春日部ねーさんと斑目」 笹「おまえ先輩を呼び捨て…」 恵「いいから!なーんかあの二人、態度変なんだけどー」 笹「態度が変って?…別に喧嘩してるようにはみえんけど」 恵「ちげーよバカ!恋愛の話だって!!」 笹「はあぁ??ありえねーよ。それはない。絶対ない」 恵「女のカンだよ!とにかく確かめてみなって!」  恵子に無理やり押し出され、笹原は斑目と春日部さんに近づいていく。 笹「あ、あの~斑目さん?」 斑「ん、どうした笹原」 笹原が来ると、春日部さんは高坂のほうへ戻っていってしまった。 視界の隅で追う。少しがっかりする。 (二人で話すのもこれが最後かな…) そう思うと急に寂しくなる。 笹「あのですね、うちのバカ妹の勘違いだと思うんですけど………。」 笹原は声を落としておそろおそる聞いた。 笹「…春日部さんと、何かありました?」 斑「………………」 斑目は空のほうに目をやり、ぽそりとつぶやく。 斑「告った」 笹「え…」 一同「 えええええええええっっっ!!!!!!??????」 斑「うおっ!!?」 実は笹原と斑目の会話に聞き耳をたてていたげんしけん一同(春日部さんと高坂は別)、一斉に驚愕の声をあげた。 その大声にびびる斑目。 笹「アハハハ…そうなんスか。いやーまさかそう来るとは…」 恵「ほらね!ほらね!やっぱそーだろ!」 大「はああぁ…びっくりしました。そうだったんですか…」 田「つか、俺らも知らんかったよな…」 久「そ、そうだね…」 荻「…私も気づきませんでした」 朽「おぉう、荻上さんチガウデショ!!そこは『何で笹原先輩にじゃなくて春日部先輩になんですか!』デショ?」 荻「絶対言いません!!!」 大「なっ…何で私が温泉で言った台詞をパクッてるんですか!まさか盗…」 咲「…いやいや、あの時ベルトで縛ってたじゃん。誰か見張ってたし。」 笹「あ、あれ?高坂くんは驚いてないけど、知ってたの?」 高「うん、昨日咲ちゃんに聞いたんだ」 笹「あ、そうなんだ…」 斑「なっ、な、な、な、な、」 あまりに苦手な話題、しかも自分の話題でみんなが盛り上がっているのを見て言葉が出てこない斑目。 朽「で、どうなんですかァ?見事に玉砕したんですかァ?」 凍りつく一同。 「朽木~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!」 大野さんと荻上さん、朽木君をフクロにする。 大「言っていいことと悪いことがあります!」 荻「どうしてわざわざ聞くんですか!」 笹「ま、まあまあ二人とも…それ以上やると朽木くんが………」  田中と久我山、完全に肩を落とす斑目の両肩にぽんと手をおく。 久「ま、まああんまり落ち込むな」 田「そうそう、これからいい出会いがあるかも知れんし」 斑「………田中には言われたくネェ………」 咲「まあでも、格好良かったよ、あんときの斑目。声小さかったけど」 一同「!!」 春日部さんの言葉に一同、再び固まる。 斑目は真っ赤。 斑「…え、それはフォロー?」 咲「うんまあ、それも半分」 斑「ふーーーん………」 一同「………………………」(////////) 笹「…え、でも高坂君とは別れないよね」 咲「当たり前じゃん!」 笑顔で即答する春日部さん。 (最近キツいな笹原!………う~む、まあいいか。 めちゃめちゃ恥ずかしいけど、こうして皆にバレてから気持ちの整理をつけるのもいいかも知れん。)    その夜、追い出しコンパのため居酒屋に移動するげんしけんメンバー。 (春日部さんは服を着替えてきた。) 田「しかしあの斑目がなあ…」 久「せ、成長したかな?」 笹「いやー、びっくりしました…」 居酒屋でも例の話題が出てきて針のムシロの斑目だが、ふと思い立ってすっくと立ち上がる。 田「お?」 笹「何ですか斑目さん?」 皆が斑目に注目する中、斑目は拳を握り、演説口調で喋りだす。 斑「ここまでバレてしまっては仕方がない…もう隠すことなど何もない! ならば今、あえて晒そう!!! ワタシの『最後の砦』を!!!!!」 一瞬しんと静まり返る一同。 荻上さんと朽木君と笹原妹は知らない。 恵「ん?」 荻「は?」 朽「最後の砦??」 一瞬後。 一同「  や  め  ろ ーーーーーーー!!!!!!!!」 大慌て。 笹「ちょっ、いったい何出す気ですか!!」 田「おいまさかこんなところで…SMの…何か…!?」 久「や、やややばいって!!はや、早まるな!!」 三人は上着の内ポケットに手をつっこむ斑目を止めようと慌てて立ち上がりかける。 斑「ええい止めるな!!これだあーーーーーーー!!」 と、取り出したのは一枚の封筒。 皆、訳が分からず沈黙する。 急にテンションが戻る斑目。 斑「これを春日部さんに。」 咲「へっ?私?」 何を始めるのかと遠巻きに見ていた春日部さんは、びっくりしながら斑目に差し出された封筒を受け取る。 大「な、何が入ってるんですか!?」 恵「えっ何、何?」 咲「ちょっと、今ここで空けてもいい物なんでしょうね」 斑「あー、大丈夫、大丈夫。変なモンじゃないから。」 荻「私達も見ていいんですか?」 笹「…ほ、本当に大丈夫なんでしょうね…」 封を開けると、そこには初めて会長コスをした時の春日部さんの写真が入っていた。 斑「春日部さんに持っていてもらおうと思ってさ。 春日部さんは嫌がるけど、現視研にとってはいい思い出だから。」 咲「……わかった。」 春日部さんは素直に受け取る。 斑目の今までの思いと、斑目の春日部さんを吹っ切ろうとする思いの両方を受け取ったのだと感じていた。 笹「あー…あの時の写真ですか…良かったー…」 田「いやーでも、ある意味恥ずかしいなー…好きな人の写真って…」 久「み、見てるこっちが落ち着かないよね」 大「はああぁ…ドラマのワンシーンみたいですねえ…」 荻「…ドラマだとしたら、いいシーンですね」 恵「うわー春日部姉さん、本当に会長のコスプレもしてたんだ…初めて見た」 高「懐かしいねぇー」 そこへ朽木君。 朽「なるホド、これを毎晩オカズにしてたんデスね!!!!!」 大地雷。 あまりに身もフタもない発言にみんな石になる。 感慨深げに写真を眺めていた春日部さんの額に、ビキッと青筋が走る。 咲「…え、そうなの?」 斑「いや、そんな、事は、しないと思うぞ………?」 咲「こっち向いて話せよ」 恵「いやいやでも、いーじゃん姉さん!それだけ好きだったってことっしょ? 許してあげなよー1人でするくらい。2人でできないんだからさー」 大「け、恵子さん、その辺にしといてあげて下さ……」 (あ…哀れすぎる……) 荻「…せっかくいい場面だったのに、ぶち壊しですね。朽木先輩のせいで…」 荻上さんは朽木君をぎろっと睨みつける。びびる朽木君。 田「………いたたまれねえ……」 笹「…もう聞いてるこっちの胸が痛いっス。すいませんバカ妹で……」 斑「こんなトコで出さなきゃ良かった…」 テーブルにペシャンコに伸びてしまった斑目。穴があったら入りたい。 高「いいじゃない、咲ちゃん。『最後の砦』になるなんてすごいことだよ。」 高坂はそう言った。 この場を救う最上の言葉だった。 咲「ん…まあ高坂がそういうなら、そうなんかもね」 春日部さんは、そのまま写真を受け取ってくれた。  そして。打ち上げも終わり、解散になった。 大「また部室にも顔だしてくださいね!!」 咲「あー、また暇をみていくヨ。大野も、店に遊びに来いよー」 春日部さんと高坂は、「じゃ、またね」と、皆にいつもと変わらない挨拶をして背を向ける。 斑目は皆と一緒に二人を見送っていた。 (…この二人の背中を、今まで何回見送っただろうな…) 斑「…んじゃ、俺らも帰るか!」 笹「あ、そうですか?」 田「……そうだな。今日のところは」 久「じ、じゃあな」 斑「ん、そんじゃ」 なんだか早くこの場を抜け出したかった。一人になりたかった。 斑目は家までの帰り道をゆっくりと歩いていた。 (…………) (………………………) ひたすら歩き続ける。自分の足元の1メートルくらい先を見ながら、ただひたすら。 (…やるべきことは、全部やった。もう何も思い残すことはねー。 …何だろ…開放感?いや…喪失感?疲労感?) (…わかんねー………今わかってることは) うつむいていた顔を上げる。まっすぐ前を見る。 (もうめったに会えないってことぐらいだ) そのまま、さっきより少し早足で歩き始めた。 さっきより少し力強い足取りで。                          END

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