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*言葉に出来ない 【投稿日 2006/05/05】 **[[カテゴリー-斑目せつねえ>http://www7.atwiki.jp/genshikenss/pages/48.html]] かなわぬ恋だと知っていた。 それでも望んでいた。 いつか彼女が自分を振り向いてくれる事を。 多分、俺は出会った時には既に、恋に落ちていたのだろう。 『どこに惚れた』なんていう話が、いかに見当違いなのかが今になってわかる。 俺の好みとは全く違う、現実(リアル)な女性。 多分、だからこそ俺は彼女に強く惹かれたのかもしれない。 数年に渡る彼女との付き合いは、実に楽しかった。 当初、彼女は俺とは、まったく違う価値観を持っていた。 水と油と言っていいだろう。 それでも、様々な出来事を通じて、俺は、彼女は変わっていった。 言うな。 言わなくてもわかってる。 彼女は、彼の、高坂の為に、変わっていった。 …そして俺は、彼女の為に、自分を変えようとした。 彼女がオタクを理解しようとしたように、俺は彼女を知りたかった。 彼女の望む男になりたかった。 彼女の隣に…いや、彼女の『恋人』になりたかった。 俺は彼女を愛していた。 彼以上に。 きっとそうだった、と信じている。 彼女が卒業して、彼女に会えなくなって、伝える事すらできなかった俺の恋は終わった。 今でも思う。もしあの時、自分の思いを伝えていたら。 彼女は、拒んだだろうか。受け入れてくれただろうか。 わかってる。 こんなことは”今更”でしかない事を。 季節が過ぎ、今俺は彼女ではない彼女と付き合っている。 俺は彼女が好きだ。 一人きりで生きていくことに、耐えられなかったから。それがきっかけだったとしても。 それでいて、俺は、彼女と彼女を比べている。 彼女の姿を。声を。心を。 それに気付く度に、俺は哀しくなる。 自分が情けなくて。 いつからだろう。 俺は嘘をつく事が上手くなった。 周りに嘘をつき、自分に嘘をつく。 今も彼女に、大して興味もない、いわゆる”話題作”について熱く語っている。 彼女が笑うたびに、俺は傷つく。 全てをぶちまけたくなる衝動を、必死に堪える。 彼女に嫌われたくなくて。 いや、それも嘘だ。 彼女に嫌われて、一人きりになることが嫌いなだけ。ただそれだけ。 昔を思い出す。 笹原と『ツルペタ』や、『ロリ』や、『幼馴染』などで熱く語り合った日々を。 俺は人生最後の日まで、俺を貫けると思っていた。 だが今の俺は、自分の都合の為に自分を変える、当時最も嫌っていた生き方をしている。 それがくやしい。 ただ、くやしい。 春日部咲さん。 俺は貴方と出会って、変わってしまいました。 そしてそんな自分を、未だに好きになれません。 それでも思います。 『貴方に会えてよかった』と。 『貴方に会えてうれしかった』と。 この想いが彼女に届く事は無いだろう。 想うだけで、言葉にできなかったのだから。 それでも俺は想い続ける。 言葉にできなかった、この想いを。 おまけ 「なあ、斑目。あんた無理してない?」 「え?いや、別に…」 「そう?実は他に好きな人がいるんじゃない?」 「…」 「図星か」 「…ゴメン。どうしても忘れられないんだ…」 「忘れなくていい」 「え?」 「あたしは今の斑目が好きなんだ。”他の人を忘れられない”斑目がね」 「…いいのか?」 「だからって自分に都合のいい想像すんなよ?あたしが言いたいのは、『忘れられないなら、忘れさせてやる』ということだからな」 「…あ~…」 「んな情けない顔するな。いいか、絶対に、忘れてしまうほど、幸せにしてやる…あたしが。約束する」 「だから覚悟しろよ、斑目晴信!」

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