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GENSHIKEN vs LABUyan - (2006/05/05 (金) 02:50:50) のソース

*GENSHIKEN vs LABUyan 【投稿日 2006/05/02】
**[[カテゴリー-他漫画・アニメパロ>http://www7.atwiki.jp/genshikenss/pages/50.html]]

某月某日。 
講談社に多数存在する会議室の一つ。 
俺はそこで、一人の男と相対していた。 

頭は1000円カット屋で刈ったようなザンギリ頭。 
刈ったまま整髪料などまるで使った形跡は見られず、ボーボーのボサボサである。 
そして特徴的な丸メガネ……良く見ると、レンズに傷が多数つき、曇ったようになっている。 
レンズの端のほうは油染みたようになっており、異様な年季を感じさせる。 
トドメは全身をうっすらと覆う「異臭」だ。 
数日に一度しか風呂に入っていないのだろう、激臭とはでは行かないまでも 
ザリガニが腐ったような感じの薄汚い匂いが10M近くはなれたココまで届いている。 
おまけに、それに加えて加齢臭まで混ざっている。もう、彼も若くは無いのだ。 


……しかしながら、首から下のその体はどうだ。 
ジャスコで3枚3900円で売ってそーな安モンのトレーナーに包まれた肉体は、 
筋肉で溢れてはちきれんばかりであり、服の上からでも筋肉の様子が見て取れるほどである。 
ソコまでして鍛え上げられたその肉体は一種異様でさえあった。 

そう、彼の名は、大森カズフサ。 
講談社アフタヌーンで連載中の「ラブやん」の主人公である。 
親愛なるアフタヌーン読者の諸君なら、彼のことはもちろん存じているだろうが、 
ココはげんしけんスレ。単行本派など、ご存じない方のために彼―――カズフサ氏について説明しよう。 

彼の持つ属性は、ロリ・オタ・プー! 今やニッポンのどこにでもいる典型的なニートである! 
欲望をストレートに満たそうとした結果、警察のご厄介になることも度々であり、まさにダメ人間! 
そんなこんなで活躍してきた彼もいよいよ29歳と8ヶ月! 大台の見えてきてしまった彼の未来はどっちだ?! 

ところでこの「ラブやん」と言うマンガ、内容的には「N●Kへようこそ」など足元にも及ばない 
No.1ニートまんがとして出版界に君臨しているのだが、人気の割にはどうにも単行本の売れ行きが芳しくない。 
原因は、扱ってるネタが余りにも「アレ」なんで全メディアから黙殺されてしまっているからと言うことらしい。 
……まー、オナホールの話題で一話丸々使っちゃうようなマンガだから、それも当然ッちゃ当然なのだが。 

―――そこで、2004年下半期にやったように、書店への販促テコ入れとして 
『げんしけん&ラブやん合同ポスター』ってのを、また作ろうって話になったらしい。 
ラブやんだけのPOPでは書店はシカトこくかもしれないが、  
人 気 作 品 である俺達「げんしけん」と一緒の販促品なら、 
そうそう無視も出来ないだろうって思ったんだろう。社のエラい人とかが。 

そして俺も今日はその用事ではるばる音羽の講談社までやってきたと言うわけだ。 
今日やるのは、撮影と……カズフサ氏との対談トークだっけ? 
しょーじき「オタ系」ってだけのくくりで、あんな 変 態 漫 画 と、 
一緒にされちゃ困るんだが、これも仕事だ仕方ない。 

しっかし、流石は講談社。会議室一つが広い広い。今日この部屋使うのは撮影会場もかねているからだろうが。 
この部屋に案内してくれた編集者さんは「大森さんってちょっとアブない人だから気を付けてね?」と、 
言い残して去ってしまったが、それこそそんな 『アブない人』と二人きりにしてどうする気なんだか。 
オタ同士親交を深めろってか? そんなのはゴメンこうむる。 
とは言え、用事が終わらなきゃ、帰るものも帰れない。 
ちゃちゃっと終わらして、今日もアキバめぐりと行こうじゃないか。 

さて、部屋に入ってから、カズフサ氏をしげしげと眺めていたが、こうしていてもラチがあかない。 
ま、とりあえず、挨拶かな? 
カズフサ氏はニヤニヤウハウハしながら手元の漫画誌に夢中になっており、こっちが近づくのにも気づかない―――ってぇ!  
読んでるの『コミックL○』かよ!!(*注1) 
スゲェ、想像以上だ。俺もエロゲ雑誌くらいなら人前でも余裕で読めるが、アレは読めねぇ。 

すると、こっちの『ヒイた』雰囲気を察したのか、 
ふと、カズフサ氏がこちらに目線を向けると「…あ、ども」と、挨拶してきた。 
…で、挨拶してくれたのは良いんだが、その後が良ろしくない。 
「えーと、今来るって事はげんしけんのヒト? 誰だっけ? 漫画にいたっけ君?」等と言い出しやがった。 

しっつれーな!! 3巻から既に登場しとるわい!!  
なんだ? 向こうはこっちから誰が来るのか聞いてないのか?! 編集部の連絡ミスかよ、おい!  
ともあれ、名を聞かれて応えにゃ、男がすたる! 自己紹介してやろうじゃないか、最高にフレンドリイに! 

「ハーイ、カズフサさん! はじめましてですにょー! 英語で言うとナーイストゥゥゥーミィィィィチュゥゥゥゥ!! 
 ワタクシ、朽木学と申します! コンゴトモヨロシクぅ☆ ですが、マナブともクチキとも呼ばないで!! 
 どうかワタクシ推奨の二つ名であるところの『クッチー』と、お呼び下さいませませませ!!」 

―――決まった! ここまで気合の入った自己紹介を決めたのは現視研に出戻ったとき以来じゃなかろーか。 

……ん? しかし、カズフサ氏、なんかヒイてるな? どっかマズったか? 
「あー、うんうん朽木クンね。知ってる知ってる思い出した」と、言う表情もどっか硬い。 
しかし、ココで弱みを見せちゃいけない。どっちが売れている漫画なんだか彼に教育してやらねば! 
「朽木クンではなくてクッチーですクッチー。『クッ・チ・ィ』って言ってください、サン、ハイ、リピートアフターミィ!!」 

「まーなんだ朽木クン」 
ガン無視かよ。 
立場の違いがわかってんのか? 
本気でガン無視したままカズフサ氏は続ける、「スーたんや荻上たんと撮影会と聞いたんだが、彼女らはいつ来るんだね君ィ?」 

………………は? 
「えーと、その、スージー? 多分アメリカだと思いますがにょ?」 
なんだ? どーゆー話になってる?  

「フムゥ。ハリウッダー(*注2)な魅力を持つオレ様のカリスマを持ってしても、 
 スーたんをニッポンに召喚することは適わなかったヨォだな。編集部も『呼べたら呼びます』としか言ってなかったしな」 
なんだ?! 脳内設定か? 脳内設定なのか?!  

しかし、混乱する俺を無視してカズフサ氏はガンガンしゃべくる。 
「…で? 荻上たんは? 彼女、年齢的にはもうオバサンでアウトだけど、外見的には少女子だからインだしネ!」 
なんだよ、インとかアウトって。 
……って、イカン! 向こうのペースに押されてる! いい加減、彼に、どっちが強い立場なのか教育してやらねば!! 
「オギチンはアレです。春イベントのための腐女子本を描いてるはずですにょ。 
 忙しくってこんな所に顔出してる暇はないと思うアルね!」 

「え? なら、オレ的げんしけん最萌えメガネッ娘の北川さんは?!」 
「人妻です。今頃、元・いいんちょさんにブッといお注射されちゃってるかも知れないナリねぇ~」 

「じゃっ、じゃあ、ギリギリに妥協して、咲たんは?!」 
「服のショップとかゆーのを設立するのに忙しいはずですにゃ。まあ3次元の服飾事情には詳しくないのですがにょ」 

「いいよモウ。こないだ話して楽しかった斑目クンでガマンするよモウ」 
「斑目先輩は有限会社 桜管工事工業でお仕事ですナ。本日は平日でアリマすし」 

「ならエロフィギュア談義で盛り上がれそうな、田中クンは?!」 
「本日は専門がっこーです。服飾系は課題が多くて大学の3倍は忙しいとおっしゃっておりましたナ」 

「コーサカクンは?! 修正前のエロ原画こっそり持ってきてもらおうと頼みこむつもりなんダガネ!」 
「ずーーーーっとエロゲ会社で泊り込みでしょうにゃ。ココ数ヶ月、まともに姿を見かけておりませんぞ」 

「……じゃあ、嫌だけど『主人公対談』ってことで、笹原君を」 
「さっき会ったでしょう? 笹原先輩はカズフサさんをこちらに連れてきた編集者さんナリよ。 
 先輩は派遣の漫画編集として講談社でお仕事中でアリマスゆえ。あの後、別の漫画のお仕事のはずですな」 

「ならば、オレは誰とおしゃべりしたり、写真を撮ったりして楽しく過ごせばいいというのカネ?!!」 
「ワタクシです! 貴方の目の前にいるこの朽木学ことクッチーが本日の貴方のお相手でアリマス!!」 
…………つ、疲れる。何だこのヒト。しかしやっとココまで話を持ってこれたわ。 

……しかし、カズフサ氏の反応は俺の想像のさらに斜め上を行く。 
「じゃあ何か?! 仮にも一国一漫画をあずかるラブやん主人公のこのオレがだ、 
 貴様のヨォな不人気キャラと同列に扱われてポスターになるってか?!」 

完全に向こうのペースだが、そうまで言われて黙ってられるか、乗ってやる!! 
ああ、逆ギレ勝負なら負けたことねーよ!!! 
「いい加減にしてくださいにょ、カズフサさん!  
 プーの貴方と違って、皆さんには修めるべき学業や、果たすべき勤めがあるのでアリマスよ!! 
 本日げんしけんサイドで手が空いているのは、このワタクシ朽木と、大野会長くらいのものですナ。 
 ワタクシだって暇では無いのでアリマすぞ!!  
 集めた二次エロ画像を属性ごとにフォルダに分類したり、積みエロゲーを崩したり、 
 ネトゲでキャラを育てたりなど、時間はいくらあっても足りないのです!  
 プーの貴方の時間の使い方と一緒にしないでいただきたい!!」 

「うわっ、うわ~~ん! 不人気がいじめてくるよドラブや~~ん!!」 
一気にまくし立てると、それだけでカズフサ氏、マジ泣き。良い大人がある意味スゲェ。 
 
……ったく、コイツは。今日ちょっと話しただけでも、ラブやんさんの苦労が忍ばれるわ。 
「さっきから聞いていれば、不人気不人気と失敬な!  
 よろしいですか?! 『不人気』と呼ばれるたびに、真紅たんはその小さな胸を痛めてるんですにょ!(*注3) 
 ワタクシも生きた人間! 同様に傷つくのでアリマすぞ!」 

すると、メガネをクイッとかけ直したカズフサ氏は 
「別に不人気なんて、どーでもイイよ。だってオレ、銀様派だモン。ボクもうお家かえゆー」(*注3) 

―――お?  
言い方はムカつく言い方だが、ひょっとしたら俺との接点になりうるか? 
それに『ボクもうお家かえゆー』されてしまっては俺の用事まで果たせない。 
スンゲー嫌だが、ココはカズフサ氏を引き止めねばなるまい。 
「……あ。実はその、ワタクシもメインで好きなのは銀様でアリマして」 
こう言うと予想通りというかなんと言うか、メガネをギラリと光らせながらカズフサ氏が食いついてきた。 
「ホホゥ。初めて意見が合いそうだねキミィ。やはり、ローゼンは水銀燈たんにかぎるヨネ!」 

フィッシュオーン! そうだよ、そう。やっぱオタなら同属性について語りゃ話は通じるんだよ。 

「全くでアリマスな。他のドール達とは一味違う、あの気品! たまらんものがアリマすにゃー!」 
さァ、乗って来い、カズフサ氏。こっちのエサは甘ぁいぞ!! 
「ああ水銀燈たんの事を思うだけで、オレの暴れん棒も暴発寸前…… 
 ……理性を抑えるだなんてムリのムリムリさ……いっそブチ込んでやりてぇ!!」 
あァ? 無理だろそれは。だって銀様は設定では…… 
「あのー、カズフサさん? 銀様は胴体無い筈でアリマすが……どちらにブチ込まれるので?」 
「ウッソ、マッジ?! だってこないだネットで落とした同人だと陵辱シーンあったんダガネ! 
 じゃあ、アレか、ウチに昔いたメイドロボのコレットみたいな感じか?!」 
同人設定かよ! しかもDLしたことを悪びれず言うなよ!! あと、コレットとか嫌なもん思い出させんな。 
……そういや、こないだのオナホールの回で、ラブやんさんに、わざわざビデオとテレビ借りて使ってたな。 
つーことは、カズフサ氏は普段はアニメや映画見ないし、アニオタじゃないってことか。……正直、意外だ。 
なら、銀様の胴体が無いのはアニメのみ設定だし、知らないのも仕方ないか。 

などと、つらつら考えていると、属性話でテンション上がってきたカズフサ氏がしゃべりかけてくる。 
「ンン~~? 何を考え込むことがあるんダネ、朽木クン? ちなみにオレは本編単行本6巻分も全部ネットで拾ったヨ。 
 タダで手に入るものをワザワザ買うのはバカのやることダヨネ、HAHAHAHA!」 
こ、こ、こ、こ、こ、こ、コイツ……ダメダメ人間だぁ~~~~ッ!!! 
アフタの連載で見た感じ『カズフサの部屋、オタルームの割には随分小奇麗に片付いてんなぁ』とか思ってたが、 
全部が全部『DLで済ましちゃう派』だったのか! そりゃ、あんまり部屋にオタアイテム無いはずだわ!! 

いっそ、怒鳴りつけてやろうかとも思ったが、忍耐力と自制心にかけた29歳児に辛く当たると、 
スネちゃって話にならないのは、さっき解った。 
ここは現視研で社会的に揉まれ、大きく成長したこの朽木の度量の見せどころ!! 
コイツにニッポンが生み出したリリンの文化の極みANIMEの素晴らしさを叩き込んでやらねば! 
まずはジャブ代わりに挨拶だ! 
「あーいやいや。特に何を考えていたという訳ではございませんにょ? 
 ただ、カズフサさんはローゼンのアニメの方はご覧になって無いのかなー……などと思いましてにゃ」 

するとカズフサ氏、プイスとむくれながらこんな事を言いやがる。 
「だってアニメは容量デカイんだモン。アニメ一話を落とす時間があったら同人10冊落として 
 日課に励むのが正しい男の在りざまだと思わないカネ、ハニバニ?」 
もうヤダ。コイツと話すんの。何がハニバニだ。 

しかし、ココで沈黙することは敗北を意味する。なんとしてでも一矢報いねば!! 
「いややはり、ローゼンの真の魅力はアニメにアリマすぞ!! カズフサさんも是非とも見るべきですにょ! 
 なかでも銀様は漫画原作者よりもむしろアニメスタッフに愛されておりますゆえ、アニメ版の美しさは三倍界王拳!(当社比) 
 そして何より動いて喋る銀様の可愛さは華麗さは凶悪ナリ!! それも田中理恵女史の熱演あってのこそですがにょ!!」 

「……いや、その。オレあんまアニメとか見ないから声優の話とかされても……」と、最後の方はなにやらブツブツ言うカズフサ氏。 
ハ! りえりえくらい知ってろよ、この雑魚がァ!!  

しかし、行ける。この話題の路線なら行ける。カズフサ氏と相対して以来、こっちが押してる空気を初めて感じているっ! 
ならばこのまま叩き込むのみっ! 愛だ! 俺の銀様に対する愛を語ってやらねば!! 

「アニメはオリジナルストーリーが多いんですがにょ。銀様のツンデレッぷりはまた格別でアリマすぞ!! 
 悪ぶりながらも、めぐを気遣い、めぐを守るために戦う姿にはただ、ナミダナミダの物語! 
 ……しかしながらそのおココロは、がらんどうの体にも似て、寂しく、そして孤独に弱い! 
 そんな銀様だからこそ! ワタクシがそばで支えてやらないと! ワタクシが守って差し上げないと!!」 

おお、最高だぜ俺……輝いてるぜ俺…… 
俺が銀様を思うこの心は、必ずやカズフサ氏にも伝わったはず!! 

―――しかし、運命があざ笑うかのような展開が俺を待ち受けていた。 
この後カズフサ氏は信じがたい一言を口にしたのだ。 




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    お 本 二  ≦     └; 〈  └; n│ __  ,.、 
   ら 気 次  ≦        /∧〉  〈/〈/  フ ∠ ヽ>/> 
    れ. に. 元  ≦      、-- 、ノレ'⌒Z   ̄ ̄  lニ/  /> 
   る な. キ  ≦     , -`       ̄`ヽ、          </ /> 
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       て. ラ  ≦   l' nVl_V _`Y´'_'_ハlハ ,〉       ◇ 
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洲            派    | l,ハ `l ゚    u,イ    ゝ 
  洲州州州州派        lノ ヽ. l   門 リ  ∧/ 
                 ノ>- 、ヽ、 凵 / 
                /´    `丶7´ 
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                /   ヽ         ヽ 




―――――――――え?  

あれ?  このヒト今なんて言った?  
「ニジゲンキャラニホンキニナッテオラレル」って?  
うん。 
そおだね。 
本気だよ。 
愛してるよ銀様。 

いやいやいやいや、今問題にするべきは俺が銀様を愛してるとかどうとか言う話じゃなくて……カズフサの野郎の発言内容だ。 
「二次元キャラに本気になっておられる」と、奴は言った。そして言いつつドン引きしてる。 

つまり。 
カズフサは。 
二次元キャラを愛せないという事か? 
まさか。 
そんなバカな。 
こんな極まった変態が? 
ありえない。物理的にありえない。 
じゃあ俺ってカズフサ以下? 

さまざまな思いが浮かんでは消え、浮かんでは消え、そして俺の脳髄は一つの結論を導き出した。 

裏切りだ! 
裏切りだ! 裏切りだ! 裏切りだ! 裏切りだ! 裏切りだ! 
いや、そもそも仲間ですらなかった!! 
二次キャラを愛せない変態などただの変態、オタクではない! 
奴を『オタク』と認識したのがそもそもの間違いだった! 
敵だ! 
こいつは敵だ!! 
自分の欲望のみを追求し、オタ社会に益する事の無いコイツを敵として認識せねばならないッ! 

いまや俺の意識は冴えに冴え、カズフサの毛穴の数までハッキリ見て取れる。 
他人から見れば、俺の瞳孔は猫科動物のごとく拡大しているに違いない。 
「―――二次元キャラに本気になれぬと申したか」 
そんな気持ちからか、おもわず、時代がかった口調でカズフサに問い掛けてしまう。 

「なんだソリャ、チュパ衛門の真似か……へぶっ!!」(*注4) 
何か言いかけたカズフサのアゴに虎拳を一発。ちなみに虎拳とは手首を用いた当て技の事を虎眼流に置いてそう称する。 
本気でぶん殴ったせいか、なんかカズフサの首がエラい曲ってる気がするが、 
相手はギャグマンガキャラ、この程度の事で死にはしまい。 

「い、いきなり何をするんだねキミィ! いくらチュパ衛門ごっこだからって……アロっ!!」 
曲った方向とは逆方向で更に虎拳を一発。うむ。コレで真っ直ぐになった。 

「あ、あ、あ、アノー、朽木……サン? セッシャがなにか悪いことしたと言うのですカネ?」 
29歳児とは言え所詮は子供同然。やはり子供は叩くに限る。コレでやっと話が通じる状態になった。 
「悪いこと……で、アリマスか? まー、アナタの様な方は存在そのものが『悪』だと言えるんですが…… 
 良く良く考えてみれば、アナタは今現在、悪いことをした訳ではありませんにゃ。 
 ワタクシが勝手に暴走して、ワタクシが勝手に自爆しただけでアリマス。 
 端から見れば『楽しく談笑していた2人の男のうち一人が、突然キレてぶん殴った』ようにしか見えないでしょうナ」 

「ソウダヨ! オレは借りてきた子羊のように大人しい青年なのに、何の言いがかりで……ゴブァッ!!」 
こっちが少しでも非を認めたが否や、鬼の首を取ったかのよーに食って掛かってくるカズフサ。 
そこにパチキ(頭突き)一発かます俺。いつぞやのコス泥棒の時と違って打ち負けはしない。 
何しろこーゆー時の為に鍛えておいた。しかし、こっちの頭も痛ぇ…… 

「何の言いがかりでもありませんな。カッとなってやりました。別に後悔などしておりませんが。 
 ああ、そうですな、先に殴ったワタクシが悪うございますな…… 
 ……だからなんだ! それがどうした! 逆ギレ勝負なら負けたことねえよ!!」 
ぶつけた額を押さえつつ。マジ切れして叫ぶ俺。うわーきまらねー。カッコわるぅ。 

「スンマセン。なんかわからへんけどホンマスンマセン」 
そして、コメツキバッタのごとくペコペコしながら謝りだすカズフサ。 
はっきしゆって100パー俺が悪いんだが、雰囲気に飲まれて向こうが謝ってんなら押すべきだろう! 

「あー、はいはい。二次キャラに本気になって悪うございましたにゃー 
 こちとら真性二次元コンプレックスでアリマスゆえ…… 
 ……ですが! アナタのよーなオタクのフリした真性ロリコンが 
 リアルワールドで事件を犯した時に、ワタシラ善良ないちオタクが 
 どれだけ迷惑で肩身の狭い思いをしてんだかわかってんですかにょ?!! 
 ワタクシ達二次オタは、現実社会に迷惑かかるよーなことはしていないというのにッ!!」 

ついつい前々から思ってた事を一気に吐き出してしまう俺。 
いやまー、カズフサ一人が悪いわけじゃないが、二次オタみんなの総意ではあるだろう、多分。 

「イヤデスネ? ソノデスネ? その件に関してましてはこっちもお互い様と言うか、 
 あんたら極まっちゃった二次オタがアキバ特集とかでテレビに映るたびに、 
 ママンと一緒に食べているご飯がおいしくなくなると言うか何と言うか、 
 オタクまで行かないちょっとした漫画好きエロゲ好きにとってはいい迷惑なんダガネ……げぼおっ!」 

うっさいわ。分かってるわそんな事。今のは単にムカついたから殴った。 

「偉そうなクチは、実際に偉くなってから叩いて欲しいもんですにゃ……この無職がァ!! 
 悔しかったらげんしけんと同じくラブやんもアニメ化してみろってんですにょ! 
 そんでワタクシみたく大御所声優つけてもらってみろや!! あァ!(声の出演:石田彰)」 

―――そのとき。カズフサの体がピクリと震えた。そして血涙を流しつつ、一気にカズフサが吠え立てる!! 
「クフゥ……黙って聞いておれば言いたい放題だなコゾウ。 
 アニメ化がそんなに偉いんけ?! 偉いんけ?!  
 ゆっておくがな、ラブやんはアフタ本誌アンケートではかなり上位なんだぞ!! 
 だのになんで、本誌人気では圧勝してる筈の『夢使い』が先にアニメ化しちゃうんダヨォッ!!」 

しまった! 『アニメ化してみろ』はNGワードだったか! 
これでカズフサにも俺と同じく『怒り』の感情がインストゥールされてしまった…… 
そしてこうなっては五分と五分……いや、体格の分だけ俺のほうがはるかに不利だ!! 
だからって気圧されてたまるか!! ココから先はむしろ精神力の削りあい、押してナンボの勝負だ!! 

「バカ言ってんじゃありませんにょ!! エビとかオナホールとか言ってる漫画をアニメ化できるわけないでしょーが!!」 

「コゾウ……貴様、闇の勢力の殺し屋か!! 言葉の暴力でオレを葬り去ろうとしてもそうはイカンぞ!! 
 田丸漫画キャラの真骨頂は筋肉にあり! 見よ! カズフサ武装化現象(かずふさ・あーむど・ふぇのめのん)!! 
 バルバルバルバルバルバルバルゥ!!」 
どこかで聞いたようなセリフをカズフサが吐くと、それに伴い奴の筋肉が一気に膨れ上がり 
奴の体を包む安物のトレーナーが筋力の内圧に負けて破れて吹き飛んでいく!!  
クソ、流石はギャグマンガキャラ! こーゆーところがハンパねぇ!! 


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(*注1)『コミックL○』:茜新社が発行する「ちっちゃい女の子が大好きなおっきいオトモダチ」向け漫画雑誌。一部伏字にしました。 
(*注2)ハリウッダー:カズフサ語。「ハリウッド俳優的な」とかそんな感じの意味らしい。 
(*注3)「銀様」「真紅たん」:人気アニメ/漫画『ローゼンメイデン』の主要登場人物。生きた人形。 
               ちなみにコレを書いた中の人は作内カズフサと同じくらいの知識しかないので、 
               内容に誤りがあるならガンガンつっこんでください。 

(*注4)「チュパ衛門」:残酷無残時代劇漫画『シグルイ』の登場人物「山崎九郎右衛門」の通称。 
             特技は一人フェラチオ。「ちゅぱっちゅぱっ」と言うその擬音からこの通称が名づけられた。