シンクトレアの復興

祖神の出会い

 はじめに光が迸った。すぐに光は消え去り、そして、すべてが崩れ落ちた。シンクトレアには不死の神エルトだけが生きていた。エルトはすべてを覚えてはいなかった。エルトは数万年闇の中で過ごした。エルトは年を取らず、ずっと幼いままであった。
 ある日、闇の中に光るものが見えた。その光は瞬く間に消え、再び闇が戻った。エルトはまた孤独を過ごした。
 またある日、エルトは闇の中で何かに触れた。それは動いていて、自分と同じ姿をしていた。
 それが何を言っているか彼には分らなかったが、それは自分をツェルヨムと名乗ったようだった。
 エルトとツェルヨムはぬくもりを感じ、お互いを話さなかった。ツェルヨムの体はエルトの体よりも幾分か大きく、またたくましかった。ツェルヨムはエルトにはないものを持っており、またエルトはツェルヨムにないものを持っていた。ツェルヨムはすさまじい怪力でエルトを持ち上げると、お互いの体を重ねた。

太陽と月の誕生

 ツェルヨムが光の神レガを生むと、世界に光がともった。それは太陽となった。エルトとツェルヨムはお互い初めて見て、そして笑った。エルトとツェルヨムはしばらくお互いを見つめ合ったが、次第に恥ずかしく思えてきて、今度は闇がまた恋しくなった。
 ツェルヨムが月の神フォーシュを生むと、世界に闇が戻った。フォーシュは月となり、その闇を優しく照らした。エルトとツェルヨムが目覚めると、今度は強い光が恋しくなった。ツェルヨムはレガとフォーシュが一定の周期で大地を回るように命じた。こうしてシンクトレアには1日ができた。
 二人が照らされた世界を見渡すと、そこには荒れ果てたシンクトレアがあった。ツェルヨムとエルトは悲しくなってシャーガル洞窟へと籠ってしまった。レガとフォーシュはそれを悲しんだが、絶え間なく世界を照らした。

水の神と木の神と火の神の誕生

 エルトとツェルヨムが重なった時、体から水が吹きあがった。水が地に流れ、一つになり水の神レオラが生まれた。レオラが地を駆けると草が生え、地が緑になった。ツェルヨムとエルトがそれに唾液を垂らすと木が生え、森の神ユーニアが生まれた。
 レオラの水はレガの光と反射して美しく輝いた。この光を見て籠っていたツェルヨムとエルトが再び外の世界に戻った。
 レオラは川を作り、やがて海となった。海でレオラの体は溶け、肉は魚となり、体毛は海藻となった。
 ユーニアは川の水を吸い、自らの体をもいでは地に植えた。それはまた違う木となり、次第に森が生い茂っていった。
 またエルトとツェルヨムが重なった時、今度は強い熱と共に火の神ヴォンシスが生まれた。ヴォンシスは誕生と共に強い光を発して、暴れまわり、樹々を焼き払った。ユーニアは焼きただれ、溶けるように地に崩れ落ちた。溶け落ちた腕や足が動物となり、膿が滴った地に花が咲いた。ツェルヨムがユーニアを殺したヴォンシスに激怒すると、ツェルヨムは股から出た水をかけてその灯を消した。ヴォンシスは煙となり、それは空を覆い、太陽と月の光を遮った。翌朝、ツェルヨムが空に強い息を駆けると煙はたちまち西へ流れ、光が戻った。

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最終更新:2019年09月03日 17:00