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&size(15){&color(red){r :このビデオレターは護民官または、護民官補の調査と面談を通過した、養子受け入れ希望のご家族しか見ることができない}} ***#12壮大な目標 /*/ その少年は、いつも不機嫌そうに腕を組んでいた。 年のころは10代の前半といったところだろうが、ほかの子供たちよりも大人びて見えた。 ほかの子たちが遊んでいる時、なぜかその子は離れて勉強したり、腕立てだの走りこみだのをしていた。 私はその子供に興味を持った。 「なんやおっさん。ワイになんぞ用事でもあんのか」 「おっさんはひどいなぁ。これでもまだ20代だよ?」 それが少年との始めての会話だった。 その時の彼の姿はなかなかに珍しく、今でも思い出すと笑いがこみ上げてくる。 なにやら難しそうな本(すくなくとも共用語の日本語ではなかった)を読みながら片手で鉄棒にぶら下がり、ひたすら懸垂を続けていたのだから。 本人いわく時間の節約らしいが、 それから私は、何度か彼を訪ねて話をした。 ある時、なぜ自分にかまうのかと聞かれたので、友達になりたいと言ったらひどいしかめっ面をしながら 「ま、ええわ。一人くらい増えてもかまへんやろ」 とだけ言っていた。 それから一週間ほどたったある日のこと。 私はかねてからの疑問をぶつけてみた。 「ねぇ、君は毎日のように体を動かしているけど、運動が好きなの?」 「別に好きなわけやない。必要だからやっとんねん」 「勉強も?」 「せや。どうしても倒したい相手がおる」 「嫌いな人なの?」 「嫌いではないけど、気に入らん」 「へぇ、なんて人?」 「世界」 「……なるほど。そりゃまた、でっかい相手だね」 私にはそう言うのが精一杯だった。よりにもよって、世界が相手とは。 「だからボコボコにして、腐った性根を叩き直したる。そのためにまずは国をつくる」 「藩王に、なるのかい?」 「そうや。王様やったら強くて頭も良くないと、政策出せんし国の見回りもできんやろ」 その時、私ははじめて彼の笑顔を見た。 まっすぐに前だけを見つめた、笑顔を。 「みんな楽しそうに暮らせる国にすんねん。誰もやらんのならワイがやったるわい!」 「ハハハ。そうなったら、僕も君の国に引っ越そうかな」 「おっさん、人を見る目だけはあるしな。特別に摂政にしたってもええでぇ」 そううそぶく彼は汗にまみれた薄汚れた姿だったが。 私にはどこか輝いて見えた。 /*/ [[ビデオレター一覧へ>ビデオレター一覧]] ---- 撮影 国民番号:18-00343-01 PC名@所属国:鈴藤 瑞樹@詩歌藩国さま
&size(15){&color(red){r :このビデオレターは護民官または、護民官補の調査と面談を通過した、養子受け入れ希望のご家族しか見ることができない}} ***#12:壮大な目標 /*/ その少年は、いつも不機嫌そうに腕を組んでいた。 年のころは10代の前半といったところだろうが、ほかの子供たちよりも大人びて見えた。 ほかの子たちが遊んでいる時、なぜかその子は離れて勉強したり、腕立てだの走りこみだのをしていた。 私はその子供に興味を持った。 「なんやおっさん。ワイになんぞ用事でもあんのか」 「おっさんはひどいなぁ。これでもまだ20代だよ?」 それが少年との始めての会話だった。 その時の彼の姿はなかなかに珍しく、今でも思い出すと笑いがこみ上げてくる。 なにやら難しそうな本(すくなくとも共用語の日本語ではなかった)を読みながら片手で鉄棒にぶら下がり、ひたすら懸垂を続けていたのだから。 本人いわく時間の節約らしいが、 それから私は、何度か彼を訪ねて話をした。 ある時、なぜ自分にかまうのかと聞かれたので、友達になりたいと言ったらひどいしかめっ面をしながら 「ま、ええわ。一人くらい増えてもかまへんやろ」 とだけ言っていた。 それから一週間ほどたったある日のこと。 私はかねてからの疑問をぶつけてみた。 「ねぇ、君は毎日のように体を動かしているけど、運動が好きなの?」 「別に好きなわけやない。必要だからやっとんねん」 「勉強も?」 「せや。どうしても倒したい相手がおる」 「嫌いな人なの?」 「嫌いではないけど、気に入らん」 「へぇ、なんて人?」 「世界」 「……なるほど。そりゃまた、でっかい相手だね」 私にはそう言うのが精一杯だった。よりにもよって、世界が相手とは。 「だからボコボコにして、腐った性根を叩き直したる。そのためにまずは国をつくる」 「藩王に、なるのかい?」 「そうや。王様やったら強くて頭も良くないと、政策出せんし国の見回りもできんやろ」 その時、私ははじめて彼の笑顔を見た。 まっすぐに前だけを見つめた、笑顔を。 「みんな楽しそうに暮らせる国にすんねん。誰もやらんのならワイがやったるわい!」 「ハハハ。そうなったら、僕も君の国に引っ越そうかな」 「おっさん、人を見る目だけはあるしな。特別に摂政にしたってもええでぇ」 そううそぶく彼は汗にまみれた薄汚れた姿だったが。 私にはどこか輝いて見えた。 /*/ [[ビデオレター一覧へ>ビデオレター一覧]] ---- 撮影 国民番号:18-00343-01 PC名@所属国:鈴藤 瑞樹@詩歌藩国さま

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