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***#12:壮大な目標


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その少年は、いつも不機嫌そうに腕を組んでいた。
年のころは10代の前半といったところだろうが、ほかの子供たちよりも大人びて見えた。
ほかの子たちが遊んでいる時、なぜかその子は離れて勉強したり、腕立てだの走りこみだのをしていた。

私はその子供に興味を持った。

「なんやおっさん。ワイになんぞ用事でもあんのか」
「おっさんはひどいなぁ。これでもまだ20代だよ?」

それが少年との始めての会話だった。
その時の彼の姿はなかなかに珍しく、今でも思い出すと笑いがこみ上げてくる。
なにやら難しそうな本(すくなくとも共用語の日本語ではなかった)を読みながら片手で鉄棒にぶら下がり、ひたすら懸垂を続けていたのだから。
本人いわく時間の節約らしいが、
それから私は、何度か彼を訪ねて話をした。
ある時、なぜ自分にかまうのかと聞かれたので、友達になりたいと言ったらひどいしかめっ面をしながら

「ま、ええわ。一人くらい増えてもかまへんやろ」

とだけ言っていた。

それから一週間ほどたったある日のこと。
私はかねてからの疑問をぶつけてみた。

「ねぇ、君は毎日のように体を動かしているけど、運動が好きなの?」
「別に好きなわけやない。必要だからやっとんねん」
「勉強も?」
「せや。どうしても倒したい相手がおる」
「嫌いな人なの?」
「嫌いではないけど、気に入らん」
「へぇ、なんて人?」

「世界」

「……なるほど。そりゃまた、でっかい相手だね」
私にはそう言うのが精一杯だった。よりにもよって、世界が相手とは。

「だからボコボコにして、腐った性根を叩き直したる。そのためにまずは国をつくる」
「藩王に、なるのかい?」
「そうや。王様やったら強くて頭も良くないと、政策出せんし国の見回りもできんやろ」

その時、私ははじめて彼の笑顔を見た。
まっすぐに前だけを見つめた、笑顔を。

「みんな楽しそうに暮らせる国にすんねん。誰もやらんのならワイがやったるわい!」
「ハハハ。そうなったら、僕も君の国に引っ越そうかな」
「おっさん、人を見る目だけはあるしな。特別に摂政にしたってもええでぇ」

そううそぶく彼は汗にまみれた薄汚れた姿だったが。
私にはどこか輝いて見えた。


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撮影
国民番号:18-00343-01
PC名@所属国:鈴藤 瑞樹@詩歌藩国さま

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