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里親探し支援活動/ビデオレター一覧/七人少年少女 - (2009/02/12 (木) 23:07:08) のソース

&size(15){&color(red){r :このビデオレターは護民官または、護民官補の調査と面談を通過した、養子受け入れ希望のご家族しか見ることができない}}


***#11:七人少年少女


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かちり。



 たびびとがせにのると、魚はすいへいせんめがけてぐいぐいとおよぎだしました。
 空と海を、二人はどこまでもすすんでいくのでした。

絵本の読み聞かせの声が、冷たい廊下まで響いている。
夜中、子供たちは明りのついた一室によせ集まるようにして居座っていた。
中心には絵本を開いた谷坂。
真剣な目、夢中な目、眠そうな目、冷たい目、苛苛した目、どこも見ていない目、何かを忘れようとする目。
7人ほどで固まった子供らは、各々の瞳で彼女を見つめていた。

それで?

目は言った。

つづく。



「…………え?」

「つづくの?」
「なんでおわらないんだ」
「このあとどうなるの」
「眠い」
「ふざけんな!」
「やあー」

予想外のブーイングの嵐。谷坂は地味に戸惑った。
安っぽさ漂う絵本をパタンと閉じる。裏表紙には写真、コメント、『私が作りました』

 続きは目下製作中、終わるのは自分が死すときです。まさに終わりなき物語。



「…………え?」

「おわらないの?」
「読むほうのことを考えようぜ」
「どうりで構成が甘いわけだ」
「眠い」
「ごまかそうとするな!」
「うえー」

 ……う、じゃあ既製品を読みますよ。読めばいいんでしょ。

「はなっからそうすればいいのに」

くすん、と鼻をすするような音が聞こえた。
言い過ぎたか。子供の一人が表情を曇らせた。

「ごめ……」

 とりあえず青髭かな?
「止めろ」

 えー、じゃあヘンゼルとグレーテルでお願いします。
「それは知ってるよ」

すぐさま硬い声が答えた。

「なにそれ?」
 仲のいい兄弟がおりましてね。飢饉時代に、口減らしのために両親に捨てられ……。

重い空気が振ってきた。
暗い表情、落ち込んだ様子。
笑顔を失う子供たち。

……悲しいときに笑顔で居るよりよっぽどいいかな。

 落語、禁酒番屋をば一席。

子供たちが顔を上げた。

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 ここまで馬鹿にされるとは。まぁ、笑ってくれるだけいいですよね

眠った子供たちに布団を羽織らせる。
あどけない横顔の、頬をそっとなでると、小さくつぶやくのが聞こえた。

「おかあさん」

ああ。
呻いて、設置しっぱなしだったビデオテープを見た。
まだ撮れてるな。


「どうか、この子達に笑顔を」

笑って、停止ボタンを押した。




かちり。


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撮影
国民番号:36-00818-01
PC名@所属国:谷坂 少年@神聖巫連盟さま