国際協力銀行

2011.3.4.週刊金曜日(837号)

「原発計画への融資は止めて」世界170団体が菅首相へ書簡

米国のNGO「原子力情報資料サービス」(NIRS)は2月24日、菅直人首相に書簡を送り、
日本の国際協力銀行(JBIC)が米・原発計画へ融資するのを制止するよう求めた。
同書簡は米国をはじめ世界約170団体の連名。

JBICの業務は「途上国」での事業への融資だが、原発は「特例」として「先進国」でも
融資可能とすることが2008年、閣議決定された。その後、対象は高速鉄道などにも拡大されている。

すでに融資検討に入っている原発案件は、米国テキサス州で計画されているサウステキサス原発プロジェクト
(STP)だ。STPには東芝が事業参加し、東京電力も昨年、米国による「債務保証」承諾を条件に出資契約した
(現在まで未承諾)。

「債務保証」とは、融資が焦げ付いた場合、税金で穴埋めする措置。
こうした優遇措置があっても、電力市場の自由化が進んでいる米国では、新規原発は
資金回収リスクが大きく、なかなか融資が集まらない。

そこでブッシュ政権(当時)は日本政府に公的金融による協力を求めた。
JBICが「特例」を設けた背景には、こうした事情がある。

なかでもテキサス州は規制緩和による価格競争が激しく、卸売電力価格は国内有数の低さだ。
また全米一の風力発電量を誇り、太陽光発電も成長著しい。
一方、STP(ABWR2基)の建設コストは、当初(06年)見積もりの56億ドルから、
三年間で180億ドルまで高騰している。

NIRSは書簡のなかで、地元の送配電事業者もSTPの収益を疑問視していることをあげ、
「日本の納税者は米国の原発プロジェクトのために金を失いたくないだろう」と指摘。
菅首相に対し「(融資リスクを)注意深く斟酌するよう強く勧める」と警告した。

日本政府は原発輸出を「新成長戦略」の柱のひとつに据え「稼ぐ」と銘打っている。
しかし輸出をめぐる不安が比較的少ないとされる米国でさえ、先行きは不透明だ。
ちなみに韓国では、アラブ首長国連邦(UAE)からの原発受注は100億ドルの公的融資と
パッケージだったことが分かり、国民の間に波紋が広がっている。

鈴木真奈美・ジャーナリスト

更新2011年04月20日 10:23米国東部時間
東芝との原発投資を断念 米電力大手、テキサス州で
 電力大手NRGエナジーは19日、東芝との合弁で建設計画を進めてきたテキサス州の原子力発電所増設について、
投資を打ち切ると発表した。福島第1原発事故により、「米国での原発建設が不透明となり、建設が予定通り
進む可能性が著しく減った」と説明した。原発事故が米国の原子力業界にも直接的な影響を及ぼし始めた。

 東芝とNRGが2008年に合弁会社を設立し、東京電力も出資する計画だった。NRGはサウス・テキサス・
プロジェクト原発の3、4号機への投資について、1-3月期に約4億8100万ドル(約400億円)の損失を計上する。

 原子炉は、東芝が出力が各135万キロワットの改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)を受注していた。
総事業費は1兆円規模の見込みで、16-17年に営業運転を開始する予定だった。(共同)


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2012年12月11日 19:48