田中三彦

日刊ゲンダイ 2011/3/26
1号機「温度急上昇」3号機「黒い煙」

福島第1原発3号機の発煙が収まったと思ったら、今度は1号機の原子炉圧力容器の温度が急上昇。一時、設計上の最高温度である302度を超え、400度以上になったという。炉心を冷やす海水注入量を増やして175度まで下がったと東電や政府は説明しているが、燃料棒が入った圧力容器に異変があったのは間違いない。刻一刻とメルトダウンの恐怖が迫っている。

元原子炉設計技師でサイエンスライターの田中三彦氏は、1号機の現状をこう推測する。
「400度という温度そのものようりも、この高温が圧力容器の炉底部分で計測されたことが問題です。炉底には水が入っている。おそらく燃料棒が溶け、一部が炉底に落ちている。溶けた燃料は2500度以上なので、圧力容器内の水はほとんど蒸発し、このままだと炉底が溶けてしまうので、慌てて注水量を増やしたのだと思います」

専門家は、3号機から「黒い煙」が出たことについても重大な関心を寄せている。通常の水素爆発なら「白い煙」のはずだからだ。
原子力安全・保安院は黒煙について「いくつかのポンプの類があり、潤滑油が使用されているので、燃えた可能性がある」と説明しているが、前出の田中氏は、福島原発4号機の圧力容器設計にも関わった経験から、別の可能性を心配してこう言う。
「潤滑油だけが原因であれだけ長い間、煙を上げるとは考えにくい。格納容器内配線も燃えて、黒っぽい煙が出たのではないか。テレビや新聞では簡略化された図解や模型を使っているので、フラスコ状の格納容器は内部が空洞のように思うかもしれませんが、実際は配管や配線がたくさんあるのです。格納容器内は爆発や火災や高温でかなり壊れていると思います」
格納容器内のケーブル等が切れていたら、通電しても冷却装置がうまく作動しない恐れがある。しかし、取り替えることは難しい。誰かが大量被曝を覚悟で突入するしかない。1~4号機、すべてが予断を許さない状況なのだ。東電は23日になって、12~15日にかけて中性子線が計13回検出されていたと発表した。こういう重大な情報が、いつも後になって出てくる。観測データの計算ミスで見落としていたというが、それが本当だとしてもフザケた話だ。中性子線が意味するのは「臨界」である。福島原発で今、何が起こっているのか。東電は包み隠さず公表するべきだ。


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最終更新:2012年12月10日 14:49