255 タンザニア連合共和国

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255 タンザニア連合共和国 - (2010/07/08 (木) 13:52:02) の編集履歴(バックアップ)



タンザニア連合共和国

United Republic of Tanzania


1 基本情報 ※1)


1.1 地理

(1)面積:94.5万平方キロメートル(日本の約2.5倍)
(2)人口:4,248万人(2008年:世銀)
(3)首都:ドドマ(人口約195万人、2007年)
国会議事堂を有する法律上の首都はドドマだが、政府官庁などはダルエスサラーム(人口約288万人、2007年)にあり、事実上の首都機能を有し、経済の中心地となっているのはこちらである。
(4)経済指標:
  • GNI:184億米ドル(2008年)
  • 一人当たりGNI:440米ドル(2008年)
  • 経済成長率:7.5%(2008年)
(5)政治と経済
  • 1961年、英国委任統治領から独立。
  • 本土タンガニーカと島嶼ザンジバルが合併してできた連合共和国で、大統領は本土および島嶼ザンジバルの有権者の直接投票により選出される。
  • 一院制議会あり。
  • 独立当初は社会主義経済政策を推進。
  • 石油危機や対ウガンダ戦争、旱魃の影響により、1980年代に入り経済は危機的状態に陥り、1986年以降、世銀・IMFの支援を得て、社会主義経済から市場経済へと経済政策を転換し、経済改革を推進した。
  • 財政は歳出超過であるが、貧困削減戦略(Poverty Reduction Strategy Papers)の策定を終え、ドナーの協力を得つつ、その実施に取り組んでいる。

タンザニアの開発計画※2

  • タンザニア政府は、国家開発戦略として、1997年には「貧困撲滅戦略(NPES:National Poverty Eradication Strategy)」を策定して貧困削減のための枠組みを提示し、1999年には「タンザニア開発ビジョン2025」を発表して同国の開発の方向性(生活の質の向上、グッド・ガバナンスと法の支配の確保、強く競争力のある経済)を提示した。

  • これらの国家開発戦略を基礎に、2000年に貧困削減戦略(PRS:Poverty Reduction Strategy)が策定され、2005年7月には第2次PRSとして通称MKUKUTAと呼ばれている「成長と貧困削減のための国家戦略(NSGRP:National Strategy for Growth and Reduction of Poverty)」が策定された



主な指標(2008年)※3

  • 改善された水供給へのアクセス:都市部83%、農村部58%

  • 管路による給水サービス(都市部):83%

  • 改善された衛生へのアクセス(全体):55%

  • 基本的な衛生へのアクセス(全体):82%

  • 飲用可能な信頼できる水の普及率(都市部):83%

  • 1日当たり平均給水時間(都市部):18時間

  • 無収水率(都市部):37.4%

  • 下水道への接続:18%



水部門の目標※3

  • Tanzania’s Development Vision 2025(タンザニア開発ビジョン2025)は、2025年までに貧困を撲滅し、全てのタンザニア人が質の高い生活を送ることを目指しており、特に水部門については、都市部の全てと農村部の90%で安全な水へのアクセスを実現することを目指している。

  • 開発ビジョン、ミレニアム開発目標、National Strategy for Growth and Reduction of Poverty(成長と貧困削減のための国家戦略、スワヒリ語でMKUKUTA)では部門開発目標が設定されている。

  • 特に、部門目標では政府が2010年までに以下を実施することがコミットされている。

 -清浄で安全な水を農村部の65%、都市部の90%の人口に供給する(2003年時点では農村部53%、都市部73%)

 -都市下水の普及率を17%(2003年)から30%に拡張する

 -全ての学校に適切な衛生設備を設置する

 -基本的な衛生へのアクセス率を95%まで高める

 -水に関係する環境汚染のレベルを20%(2003年)から10%に低減する



水道行政

  • 政府の地方分権政策により、水部門におけるサービスの供給責任はBasin Water Offices(流域管理事務所)、Urban Water Supply and Sewerage Authorities(都市上下水道局)、LocalGovernment Authorities(地方自治体当局)に委譲された。(※3)

  • 中央政府の役割は政策や指針を制定し、全セクターの規制を統合することである。法律の施行の管理や実行機能は下位の適当な階層に分権化されており、自律した主体が都市部における水供給や下水道サービスを管理するために設立され、農村部では水供給計画を管理するコミュニティー組織が設立されている。規制に関する責任は資本投資資金の割り当てや優先順位とは切り離されている。(※3)

  • 2002年7月、内閣は2025年までに誰もが上下水道にアクセスできるようにするというNationalWater Policy (NAWAPO)の改正を承認した。(※4)
  • 2005年政府は、改善された水供給を受けられない人(1400万人、人口の約39%)を半分にするという10ヵ年の水計画を立ち上げた。(※4)
  • NationalWater Policy of 2002(国家水政策2002)やNational Water Sector Development Strategy of 2006(国家水部門開発戦略2006)では、地方分権に関する要求に沿った実行フレームワークが明確に定義されている。(※3)



水道に関わる組織※3

○Ministry of Water and Irrigation(水灌漑省)

水資源の開発および管理を所管する。エネルギー水道事業規制機関(EWURA: Energy and Water Utilities Regulatory Authority)に対し、技術指針の制定や規格・ライセンスの付与についての指導を行う。また、水灌漑省はセクターへの資金提供を保証し、計画に対するパフォーマンスを監視し、全体的な品質を保証する。技術基準や水源管理指針の制定に加えて、その調整、監視、評価も行う。



○水灌漑省の下部組織

(1)国家水委員会(NWB: National Water Board)

水灌漑省内の組織で、複数のセクター・技術分野にわたる団体であり、水に関する責任を負う大臣に対して、統合的なセクター間の計画、水域計画管理の調整、セクター間または流域間での対立、投資の優先順位、資金提供パターンに関する助言を行う。

(2)国家環境管理評議会(NEMC: National Environment Management Council)

環境保全に関連する諸問題を監督する。



○地方自治体当局(LGAs:LocalGovernment Authorities)

地方の上下水道の計画と管理に責任を持ち、調達、維持管理、そしてコントラクター、コンサルタント、その他地元のサービス供給者の監視にも責任を持つ。LGAsは、コミュニティーや民間セクターが上下水道サービスの供給に参画できる環境を作るよう求められ、また、地方の水道供給サービスを規制する。



○エネルギー・水道事業監督機関(EWURA:Energy and Water Utilities Regulatory Authority)

EWURAは民営の都市上下水道局(UWSSA:Commercialized Urban Water Supply and Sewerage Authority)に免許を与えてこれらを規制し、財政的な成果やサービスの業績を測るための業務指標の開発している。また、EWURAはサービスのパフォーマンスを監視し、水道料金を承認する。EWURAの役割は、地方公務員と消費者の代表で構成され、サービスの質や利用者の利益を監視する消費者協議会(Consumer Consultative Council)によって補完される。



○民営の都市上下水道局(UWSSA:Commercialized Urban Water Supply and Sewerage Authority)

都市部に上下水道サービスを供給するため、商業ベースでの事業計画を作成する。EWURAによりライセンスを与えられ、その規制を受ける。自立した法人として、インフラ資産の保護、維持管理、開発に責任を持つ。



○水消費者協会(WCA:Water Consumer Associations)

上水道サービスを所有、管理、運転、維持するためにコミュニティーによって設立された法人。サービスは、コストリカバリーの原則に基づいて完全なオペレーションと維持管理が行われ、手頃な価格での供給が求められる。



○水利用者協会(WUA:Water User Associations)

ある特定地域の水源利用者によって設立された法人。その地域内での水源の割り当てを管理し、水利用者間の紛争を解決する。



その他省庁の水道行政への役割※3

  • 財政経済省(Ministry of Finance and Economic Affairs):全体計画と予算

  • 首相府(Prime Minister’s Office)-地域行政と地方自治体(PMO-RALG):地方自治体当局(LGAs: Local Government Authorities)を通じた地方自治体当局の計画の調整

  • 教育職業訓練省(MoEVT: Ministry of Education and Vocational Training):学校における衛生教育と衛生施設の供給

  • 保健社会福祉省(Ministry of Health and Social Welfare):衛生的な環境と施設の促進

  • 農業食糧安全保障省(Ministry of Agriculture and Food Security)、畜産省(Ministry of Livestock Development)、産業貿易省(Ministry of Industry and Trade)、エネルギー鉱物省(Ministry of Energy and Minerals):水源の利用および灌漑、産業、発電への効率的な水利用

  • 天然資源観光省(Ministry of Natural Resource and Tourism)、土地住宅人間居住省(Ministry of Lands, Housing and Human Settlement):水源の保護

  • コミュニティー開発・ジェンダー・児童省(Ministry of Community Development, Gender and Children):ジェンダー・メインストリーミング(男女平等の考え方をシステムや政策に取り入れること)を実施し、社会開発問題を取り上げて調整する



資金提供※4

  • ドイツとEUは現在Mwanza、Iringa、Mbeyaに住む100万人の水利用者に安全な水を供給するために5100万米ドルを提供している。


問題点※3

  • タンザニアには現在の水需要をまかなうだけの十分な水源がある。

  • 一方で、水需要の増大に対処するための効果的かつ効率的な水分配の実現に向けて、水源開発やその管理に関して複雑な問題を抱えている。



農村部の状況

  • タンザニアの多くの地域は極度の乾燥地帯にあり、基本的な農業開発には水が必要であるが、国は国際的な資金や援助に大いに頼っている状況である。(※4)
  • 1983年から94年の間にイギリスの上下水道慈善団体WaterAidが約63万人に飲料水供給インフラを提供したが、村人達はこれらのプロジェクトが提供する水に対して世帯収入の10-15%を支払う意思があった。(※4)

  • 1971年に誰もが水を手に入れられるようにする(400m範囲内)という20年計画が立てられたが、農村部では2003年までに導入された計画の約30%が職員の訓練不足のために十分に機能していなかった。(※4)
  • MKUKUTAの2010年に向けた目標(※3)

 -農村部における清浄で安全な水へのアクセス率を53%(2003年)から65%に上げる

 -全ての学校に適切な衛生設備を設置する

 -基本的な衛生へのアクセス率を95%まで高めるため、家庭での衛生設備導入を推進する

  • 以下の分野には短中期的に対策が必要とされる問題がある。(※3)

 -技術設計の品質保証

 -関係者間での技術の共有

 -使用製品の規格化

 -マッピング

 -地域計画の統合

 -大規模な事業での財政保証

 -建設能力の確保

 -コミュニティリーダーの能力開発

 -O&Mマネジメントのアウトソーシングモデル確立

 -パフォーマンスのモニタリング



都市部の状況

  • Urban Water Supply and Sewerage Authorities(UWSSAs、都市上下水道局)は、水道法No.8(1997年)に従って主要な19都市に設立されたものである。(※3)

  • これらに加え、Dar es Salaam Water and Sanitation Authority(DAWASA、ダルエスサラーム上下水道局)が、ダルエスサラームとPwani地域の一部(BagamoyoとKibaha地区を含む)に給水するために2001年の水道法No.20の下で設立された。(※3)

  • 技術的なパフォーマンスについては、水の生産、水質、サービス普及率、水道メーターによる計量、不明水(UFW)の低減といった分野に改善が見られる。(※3)

  • 以下の分野には短中期的に対策が必要とされる問題がある。(※3)

 -会計

 -水質テスト

 -水道メーターの修理、取替え

 -職員の生産性

 -財政管理情報システム

 -管路のリハビリ、拡張(投資不足)

 -事業計画

 -小規模事業体に対する規制

 -下水道(普及率と財政)

  (都市別データあり、※3 p.16、17)

  • WaterAidによると、都市部の家庭が水汲みにかける時間は1990年代半ばよりも増えており、これは人口増加と都市化がインフラ開発を凌いでいたことを意味している。(※4)
  • 都市部での下水道へのアクセスは2000年には10%で、2003年は17%へと伸びたが、2006年は17%のままであった。(※4)







ダルエスサラームの上下水道※4

  • 1993年ダルエスサラームではたった22%の家庭しか管路による給水を受けておらず、下水道サービスについては6%であった。
(上水道)

  • 1999年ダルエスサラームは水需要管理および漏水探知戦略に向けた第1段階として10万個の水道メーターの設置のために世界銀行から1億1700万米ドルのローンを受けた。
  • 市の配水ロスは35~40%で、27,280万リットル/日を供給しているが、対する水需要は2003年時点で40,920万リットル/日であった。
  • 水の売価は1リットルあたり12タンザニアシリング、または1m3あたり12米ドルである。
  • 一方で中間層は給水車による水供給を利用しており、10m3あたり60米ドルを支払っている。

(下水道)
  • ダルエスサラームにはタンザニアで最も古い下水システムがある。
  • 都市部から出る汚水の約35%が処理され、300万人いるダルエスサラームの住民のたった20%(接続数98,000)しか下水道に接続していない。
  • 街の高度密集地帯に住む27%の人達は状態の良くない落とし便所を利用している。
  • 下水システムで集められた汚泥の大部分は処理されないまま海に放流されているが、政府は安定化池(waste stabilization pond)で一部を処理しようと試みている。
  • 9つの安定化池がダルエスサラームやその他の小さな事業体に設置されており、これらはBODの70%までを除去でき、水の溶存酸素濃度を妥当な値にすることができる。



都市部サービスの民営化※4

  • 1993年の政府による事業売却プログラムは営利目的の民間参画(PSP)に集中し、1998年までに州が所有する企業の約半分を売却した。
  • 1996年6月、National Urban Water Authority (NUWA)/ダルエスサラーム上下水道局(DAWASA:Dar es Salaam Water and Sewerage Authority)は費用回収を認められ、民間参画を可能にする政府の経済自由化プログラムの一環としてDAWASA法が2003年に成立した。
  • その結果、半官半民セクター改革委員会(PSRC:Parastatal Sector Reform Commission)はダルエスサラームの上下水道サービスの10年間に渡るO&M契約をCity Waterと結んだ。
  • City WaterはBiwater International(英、25.5%)、Guaff Ingenieure(独、25.5%)、Superdoll Trailer Manufacturers Ltd.(タンザニア、49%)のJVであり、2003年8月1日に営業を開始したが、2005年3月13日に契約は政府によってキャンセルされた。





※2 外務省タンザニア国別データブック


※3 タンザニア水灌漑省 WATER SECTOR STATUS REPORT 2009

※4 Pinsent Masons Water Yearbook 2009-2010
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