ここがこうなって・・・食費が・・・・「こらっ!翠、まちなさーい!」んで、来月には・・・・「きゃあ~♪アス姉がくるですぅ逃げるですぅ~」お正月だから多少物入りね・・・「ほらっ捕まえた!こちょこちょこちょこちょ・・・」「きゃはははっ、やめ、止めるですぅ~」ばんばん!!ハルヒが大きく机を叩く。「あんた達、ちょっと静かになさい!!家計簿付けてるんだから!!」
ここは三姉妹だけが住む、小さな小さな一軒屋。年の瀬を迎えて外は雪。しんしんと降り積もり、寒風が吹きすさんでいる。けれど、この家の中はいつも通り賑やかだった。
長女、ハルヒは、こたつに入り難しい顔してこの家の財政と睨めっこをしていた。幸いに僅かながら貯えがあるものの、妹達は成長期。よく食べるし、服も直ぐに駄目になる。何とか大学まで行かしてあげなければと、毎月末はこうして家計簿を睨むのであった。
当の妹達は、最初は大人しくコタツから仲良く首だけ並べてTVを見ていたのだが、それにも飽きたのか、いつの間にかハルヒの周りで追いかけっこを始めたのだ。そして冒頭へ。
机を叩いた姿勢のまま妹達をきっと見つめる。「ハル姉が怒ったですぅ~」「ハルヒが怒った♪」アスカも翠も、まったく堪えた様子も無い。むしろ、新しい『鬼』の出現を待ちわびてるかのような、期待に満ちた目でハルヒを見つめている。
ハルヒもそれを悟ったのか、「駄目よ」とだけ応えて、アスカに翠をお風呂に入れるようにと言い付けた。アスカも珍しく素直に「はーい」と返事をすると、翠星石を抱えたままお風呂へと消えていった。
やっと静かになったリビングで、ハルヒは家計簿に戻る。今月は出費が嵩んで大変だったのだ。「赤字・・・かしら?」ぽつりと呟く。来月も、その後に来る新学期も、いろいろと物要りなので頭が痛い。それでも、今はお風呂場できゃーきゃー騒いでる妹達の為に長女のわたしがしっかりしないとと気合を入れ直したところで、呼ぶ声がした。
「おねーちゃーん!ねえ、おねえちゃーん!」この声はアスカだ。普段は『ハルヒ』と呼ぶアスカが『おねえちゃん』と呼ぶ時はろくな事が無い。だいたいお小遣いをせびる時か、用事がある時か、よっぽど甘えたい時か。「シャンプー持って来てー」今回は2番目だったようだ。やれやれと腰を浮かせる。確か買い置きのシャンプーがまだあったはずだ。
お風呂場の戸をあけて、ぽいっとシャンプーを投げてやる。「ハルヒも入る?」「ハル姉も一緒に入るですぅ」妹達の誘いを断ってまたこたつで家計簿と睨めっこ。
あのこ達が笑ってられるように頑張らないと。また気合を入れる
お風呂場では、二人が湯船でこそこそと言い合っていた。「良いこと、翠星石?ハルヒの邪魔しちゃ駄目よ?ハルヒも大変なんだから」「えー!最初に追いかけてのはアス姉ですよ?」「そ、そうだったかしら?まあ、あれよ、明日は大掃除だから、二人でお手伝いするわよ!」「わかったですぅ!翠星石に任せておくですぅ!」
これは小さな家に住む、あったかい三姉妹の物語
おわり
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